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as
コンコンコン。

ノック3回。 返事ナシ。


「‥‥‥アレ?」

コンコンコン。

もう1度。 やっぱり返事ナシ。

「‥‥‥マスター‥?」

ぎぃ、と恐る恐るドアを開けたら。

その先には。

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥眠ってる‥‥‥‥‥」

珍しく。本当に珍しく。

棺桶でなく椅子に腰掛けて目を閉じている吸血鬼の姿が。

”とてとて”と近付いたセラスは、その足下にちょこん、と座り込んだ。

(どうしよう‥‥‥インテグラ様からこの書類を渡すようにって言われてるんだけど‥‥)

持っている茶封筒に目を落としてから、吸血鬼の顔を見上げる。

静かな表情(かお)。

纏う雰囲気は変わらないのに、目を閉じているだけで、印象が変わる。

(白い肌‥‥‥‥。私より白いかも。
 あ、それに意外と睫が長い。 わ、それもびっしりついてる。
 ‥‥‥重たくないのかな?)

思わず、しげしげと眺めてしまっていて、はっと我に返ったセラスはぶんぶんと頭を振った。

(えーと、どうしよう。 棺か、膝の上にでも置いておけばいいんだろうけど、でも‥‥‥)

滅多に見られない状況に、このまま退室してしまうのは気が引けて。

恐る恐る、彼の片方の膝の上に手を置いてみても目覚める気配は見受けられず。

(どんな夢を、見てるんだろう‥‥‥‥)

自分は、南米に渡った時にどえらく珍妙なモノを見てしまったが。

「ん‥‥‥‥」

しばらくすると、とろん、とセラスの瞳が溶けて来た。

主人である吸血鬼の、静かな呼吸に感化されたのかもしれない。

「なん‥‥‥か、わたし‥‥まで、ねむ、く、なって‥‥‥きちゃ‥‥‥‥」

こしこし、と必死で目を擦るが、ほどなくして部屋の中には静かな呼吸が二つに増えることになった。















「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

部屋を満たす、月夜の蒼い闇の中、アーカードの紅い瞳に金色が映る。

膝の上、乗せた両手に顔を伏せて、窮屈そうなその格好で器用に。

熟睡している、セラスがいた。

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

セラスが眠っているのとは別の膝に置かれた茶封筒を取り上げる。

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

ちらり、とそれを一瞥しただけで床の上に放り投げた。

この吸血鬼にとって、たかだか30枚前後の紙の束を読むのに、封筒から取り出す必要などなかったらしい。

「フ‥‥‥‥‥」

小さく笑って、膝で眠っている少女を抱き上げると、吸血鬼は己の最後の領地へと戻って行った。









「‥‥‥‥‥うにゃ?」

ネコのような声を出して目覚めたセラスの目に映ったのは、一面の闇。

「‥‥‥‥‥‥あれ?」

「やっと起きたか、半端者」

「マ、マスタ‥‥‥‥ッ!?!?」

ごん、とイイ音がセラスの後頭部で響いた。

「うううう~~~~~」

音から数秒遅れてじんじんとした痛みを伝える部分に手をやって、セラスが呻く。

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

「あ、あの、わたし、なんでマスターと一緒にいるんでしょうか‥‥‥?」

少々涙まじりの声で問いかけると、小さな、呆れた溜め息がそれに答えた。

「人の膝で熟睡しておいてよく言うものだ‥‥‥‥」

「え、え、えぇええええ!?!?」

「騒ぐな。耳に響く。」

「‥‥‥‥‥‥‥‥スミマセン‥‥‥‥」

もしセラスに猫と同じような耳があれば、間違いなくぺたんと垂れたような声で謝る。

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

「‥‥‥‥‥‥‥マスター?」

怒ってしまったのかと恐る恐るセラスが問いかけると、伸びて来たアーカードの手が、無造作に彼女の頭を己
の胸元へと引き戻した。

「あ‥‥あの‥‥‥マスター‥‥‥‥」

「いいから眠れ。 私は眠い。」

至極簡潔にそれだけを述べて、アーカードは瞳を閉じる。

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

しばらくためらっていたセラスも、促すようにアーカードの手が髪を撫でると、彼の胸元に頬を寄せるように
して、目を閉じた。

(えへへ、ちょっと、ラッキー、かもV)

と思って彼女が幸せそうな笑みを浮かべていたことは。

セラスは気付かれていないと思っていても、しっかりアーカードには伝わっていたりする。



大英帝国にも、ヘルシング家にも。

たまにはこんな、平和な夜。


End.
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