首を捻って何事か思案していた葉月は、ポンと手を打ち鳴らして
「抵抗されるなら、相手の動きを封じてしまえばいいのでは?
リツ様、私が喇叭独特の手の縛り方を教えてさしあげますよ。」
またとんでもない事を妙案とばかりに聞かされ、今度は本当に眼が回りました。
「葉月、旦那様を縛るなんてそんな事…」
「何仰ってるんですか。緊縛だって愛があれば問題ないことは、
リツ様も昨夜見られたでしょう?」
昨夜の艶かしいお二人を思い出し、今度は頭にカッと血が上ります。
私の様子を興味深げに見ていた葉月は、今度は私の手を曳きました。
「喇叭の薬湯は即効性だから、もう効いてきたでしょう?
そうとなれば、見て覚えるのが一番!」
曳かれるまま寝所を出て縁側まで行くと、
其処には何時もの様に伝べえが昼寝しておりました。
「丁度いいところにいい獲物が。
リツ様、よぉーくご覧になっていてくださいよ。」
笑ってそう言うと、葉月は早速懐から縄を取り出し
猫のように伝べえに近づくと…あっという間にその手首を縛り上げてしまったのです。
「なぁっ?!お、おめぇ葉月!!一体なにするだ?!」
驚いた伝べえが手首を捩っても、一向に解ける気配がありませぬ。
これなら確かに、女の細腕でも殿方の動きを封じることができそうです。
「何するも何も…相変わらず隙だらけ。
そんなことで伝べえの主人の役にたてるのか?」
「う、煩いっ!屋敷で昼寝していて何が悪い!!
…何乗ってきてるだ、早くこれを解くだ!」
「嫌なこった。それぐらい自分で解けなきゃ、間者なんて務まらないよ?」
真っ赤になって怒鳴る伝べえに、何時の間にやら伸しかかって楽しそうな葉月。
何やらお邪魔のような気がして、
私はこっそり寝所に戻って床に入りました。
薬湯の御蔭か、ぐっすり眠って夕刻に眼を覚ますと
おくまが白湯と、珍しい練り菓子を盆に載せて持ってきてくれました。
「おくま、その菓子は?」
「ああ、これは旦那様が。
『リツが眼を覚ましたら、食べさせてやってくれ』だと。」
朴念仁の癖に妙な所だけ気が回るだな、と笑うおくまと一緒に笑って
私はその、甲斐では滅多に手に入らない菓子を口に入れました。
ほんのりと甘さが口の中に広がり、溶けて消えてゆくそれはとても美味。
「リツ様、元気になっただか?」
「ええ、とても。旦那様にはお礼をしなくては。
おくま、縄を一本持ってきて欲しいのだけど。」
「?それでお礼をするのけ?」
おくまの訝しげな問いに、私はにっこり笑って答えました。
その翌朝。
旦那様の悲鳴ともなんとも付かない声が、山本家の屋敷に響き渡りました。
太吉たちは
「どうせいつものことずら。」
と、寝所には来なかった様でございます。
さらにその夕刻。
心なしか煤だらけになった伝べえが、私の元へ訪れました。
「リツ様、一体旦那様に何しただ?うら、
『葉月は一体何をリツに吹き込んだ!!喇叭縛りなんぞ仕込んで、
なんのつもりだっ!!』って旦那様に城の中庭で、種子島の的にされただよ。
あいつのやったことで、うらを責めてもどうしよーもねえだに。」
ぼやく伝べえに手ぬぐいを渡しつつ、私は首を傾げます。
「さぁ、腕を縛った時は確かに随分と驚かれておられました。
でもその後は、喜んで頂けたと思っておりましたけど…?」
ただ、拙いながらも於琴姫からご教授された技を駆使しておりましたら
息を荒げて涙目になった旦那様に
「リツっ…本日はどうしても、朝一番に出仕せよと、お舘様が…
だから、ひとまず離れてくれっ…」
と仰られて致し方なく離れて、縄を解いて差し上げたら
物凄い速さで仕度されて朝餉も取らずにお屋敷を出て行かれたぐらいで。
「殿方は、途中で止められるとたいそう辛いとお聞きしました。
それでご機嫌が悪かったのでしょうか?」
考えつつ伝べえを見やると、何故か目頭を押さえています。
「旦那様…道理で泣きながら種子島を構えてただか…。
うら、今回ばかりは旦那様に同情するだ…。」
「?」
私の悩み事は、ひとまず進展した様でございます。
旦那様が帰ってこられましたら、是非今朝の続きをして差し上げないと。
そしてゆくゆくは、旦那様のお子を産んで差し上げねばなりません。
「勘助…、このままだと心労で禿げるんでねえか?」
「??」
勘助が不憫です、これでも勘助ファンですごめんなさい。
突っ込みどころ多すぎるんで書き逃げします。
「抵抗されるなら、相手の動きを封じてしまえばいいのでは?
リツ様、私が喇叭独特の手の縛り方を教えてさしあげますよ。」
またとんでもない事を妙案とばかりに聞かされ、今度は本当に眼が回りました。
「葉月、旦那様を縛るなんてそんな事…」
「何仰ってるんですか。緊縛だって愛があれば問題ないことは、
リツ様も昨夜見られたでしょう?」
昨夜の艶かしいお二人を思い出し、今度は頭にカッと血が上ります。
私の様子を興味深げに見ていた葉月は、今度は私の手を曳きました。
「喇叭の薬湯は即効性だから、もう効いてきたでしょう?
そうとなれば、見て覚えるのが一番!」
曳かれるまま寝所を出て縁側まで行くと、
其処には何時もの様に伝べえが昼寝しておりました。
「丁度いいところにいい獲物が。
リツ様、よぉーくご覧になっていてくださいよ。」
笑ってそう言うと、葉月は早速懐から縄を取り出し
猫のように伝べえに近づくと…あっという間にその手首を縛り上げてしまったのです。
「なぁっ?!お、おめぇ葉月!!一体なにするだ?!」
驚いた伝べえが手首を捩っても、一向に解ける気配がありませぬ。
これなら確かに、女の細腕でも殿方の動きを封じることができそうです。
「何するも何も…相変わらず隙だらけ。
そんなことで伝べえの主人の役にたてるのか?」
「う、煩いっ!屋敷で昼寝していて何が悪い!!
…何乗ってきてるだ、早くこれを解くだ!」
「嫌なこった。それぐらい自分で解けなきゃ、間者なんて務まらないよ?」
真っ赤になって怒鳴る伝べえに、何時の間にやら伸しかかって楽しそうな葉月。
何やらお邪魔のような気がして、
私はこっそり寝所に戻って床に入りました。
薬湯の御蔭か、ぐっすり眠って夕刻に眼を覚ますと
おくまが白湯と、珍しい練り菓子を盆に載せて持ってきてくれました。
「おくま、その菓子は?」
「ああ、これは旦那様が。
『リツが眼を覚ましたら、食べさせてやってくれ』だと。」
朴念仁の癖に妙な所だけ気が回るだな、と笑うおくまと一緒に笑って
私はその、甲斐では滅多に手に入らない菓子を口に入れました。
ほんのりと甘さが口の中に広がり、溶けて消えてゆくそれはとても美味。
「リツ様、元気になっただか?」
「ええ、とても。旦那様にはお礼をしなくては。
おくま、縄を一本持ってきて欲しいのだけど。」
「?それでお礼をするのけ?」
おくまの訝しげな問いに、私はにっこり笑って答えました。
その翌朝。
旦那様の悲鳴ともなんとも付かない声が、山本家の屋敷に響き渡りました。
太吉たちは
「どうせいつものことずら。」
と、寝所には来なかった様でございます。
さらにその夕刻。
心なしか煤だらけになった伝べえが、私の元へ訪れました。
「リツ様、一体旦那様に何しただ?うら、
『葉月は一体何をリツに吹き込んだ!!喇叭縛りなんぞ仕込んで、
なんのつもりだっ!!』って旦那様に城の中庭で、種子島の的にされただよ。
あいつのやったことで、うらを責めてもどうしよーもねえだに。」
ぼやく伝べえに手ぬぐいを渡しつつ、私は首を傾げます。
「さぁ、腕を縛った時は確かに随分と驚かれておられました。
でもその後は、喜んで頂けたと思っておりましたけど…?」
ただ、拙いながらも於琴姫からご教授された技を駆使しておりましたら
息を荒げて涙目になった旦那様に
「リツっ…本日はどうしても、朝一番に出仕せよと、お舘様が…
だから、ひとまず離れてくれっ…」
と仰られて致し方なく離れて、縄を解いて差し上げたら
物凄い速さで仕度されて朝餉も取らずにお屋敷を出て行かれたぐらいで。
「殿方は、途中で止められるとたいそう辛いとお聞きしました。
それでご機嫌が悪かったのでしょうか?」
考えつつ伝べえを見やると、何故か目頭を押さえています。
「旦那様…道理で泣きながら種子島を構えてただか…。
うら、今回ばかりは旦那様に同情するだ…。」
「?」
私の悩み事は、ひとまず進展した様でございます。
旦那様が帰ってこられましたら、是非今朝の続きをして差し上げないと。
そしてゆくゆくは、旦那様のお子を産んで差し上げねばなりません。
「勘助…、このままだと心労で禿げるんでねえか?」
「??」
勘助が不憫です、これでも勘助ファンですごめんなさい。
突っ込みどころ多すぎるんで書き逃げします。
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