始まりはいつも突然だ。
狂犬の呼び名の通り、吾朗は普段から己の狂気を振るう。
隠そうともしないその狂気の犠牲者は様々だ。
しかし普段の狂気は、まだほんの僅かしか顔を見せていない状態。
常に表に出ているのは、吾朗の狂気の一部。
そして、吾朗の中に眠る狂犬が完全に目覚めきっていない状態。
狂犬が完全に目覚めきった時、吾朗は本当の意味で狂犬と化す。
そして、それはいつも突然にやってきた。
そう、突然だった…。
グシャ!
何かが潰れる音。
ズル………ドサっ!
そして、滑る音と落ちる音がした。
「…足りんわ。」
「ヒっ!」
「も、もう、勘弁して下さ…」
「先に喧嘩売ったんは、そっちやないか。」
「あ、ゆ…、許し…」
男達の言葉は、最後まで紡がれることなく途絶えた。
「ぁ、あ…」
何を言っても聞き入れてもらえない。
まだ生き残った男達は、喧嘩を売った最初の時に受けた、バットで殴られた痛みですぐに逃げ出せない。
男達は絶望した。
逃げられない彼らに課せられた宿命。
狂犬の餌食。
そして、死の宴が始まる。
吾朗が満足するまで…。
吾朗が飽きるまで…。
今日、この日。
今この瞬間、吾朗の前にいる男達は、恐怖とともに己の死を感じた。
吾朗は目覚めるままに、狂犬を解き放つ。
始まる狂気の宴。
血を求めた狂犬の、目覚めだった。
壁に身体を押し付け、鉄パイプを肩に刺す。
壁に1人縫い付け、次の獲物へ。
鬼炎のドスが男の背中を捕らえる。
悲鳴を上げる男を無視し、そのままドスを引き下ろした。
背中を一直線にドスが走り、次には血渋きが上がる。
そして男は壁に放り投げられた。
そうやって、生き残った男達を1人残らず、逃がさないようにした。
逃げ出そうとすれば、今まで遊んでいた男を一旦離した吾朗が、ドスを振り下ろしてくる。
男達に逃げ場は無かった。
壁に縫い付けられた男は、まるで解剖される蛙の気分を味わいながら死んでいった。
瞳は抉り出され、まだ意識があった男の、残った片目に見せ付けるように、抉り取った眼球に舌を這わす。
何度か繰り返した後、眼球はドスで真っ二つになって地面に落ちる。
肩に突き刺したドスを下に引けば、皮一枚で繋がったのか、落ちきらない肩が垂れ下がった。
喉の下にドスを刺して、一直線に下に引く。
流れ出る血を気にすることなく、切り口を開いた。
中には当然、誰にでも備わっている内蔵の数々。
手を入れて腸を引き出し、ドスで胃を裂いた。
左の肺にドスを刺し、左手は心臓を握り、右の肺を掴み出す。
肺に刺さっていたドスを抜き、眉間に突き立てる。
そのまま上に向かって、力任せに何度も突き刺して、頭を二つに割る。
割れた頭から、脳を掴み出して握り潰した。
まだ握ったままだった心臓を引き抜き、すでに動いていない心臓を舐める。
遊びつくして興味が無くなったのか、手にした心臓を捨てて次の玩具へ向った。
何度も加えられた殺戮に、大半は死んでいる。
生き残ったのは、残り僅かだ。
その僅かな男達に、吾朗の牙が襲いかかる。
落ちていた鉄パイプを地面に刺し、それに男の肩を押して差し込んだ。
次は腹に鉄パイプを刺し、下から身体を持ち上げる。
そうやって、繰り返し身体に鉄パイプを刺していく。
そして出来上がる、人間の標本。
身体のいたる所に鉄パイプが刺さり、身体は空中に浮いていた。
支えは身体に刺さった鉄パイプ。
まだ生きているのか、微かな呻き声。
だが吾朗に届くはずもなく、吾朗は鉄パイプに伝う血を指でなぞっていた。
そこで人の気配を感じた。
こちらに向かって来る2つの気配。
だが吾朗は慌てなかった。
鉄パイプに刺さった男を、押し付けて更に深くに差し込んだ。
そして、気配を感じた場所へ移動する。
やってきたのは若いカップルだった。
その2人が行動を起こすよりも早く、吾朗は女の手を掴み壁に押し付け鬼炎のドスを肩に刺す。
彼女を助けようとした男の腕を掴み、さっき男を押し付けて出来た鉄パイプの上の部分に、座らせる格好で身体を押さえ付ける。
咄嗟に手で押さえようとしたのか、後ろに伸ばされた手のひらに鉄パイプが刺さり、両の太股にも鉄パイプは刺さって身体を空中で固定された。
痛みに流れ出る涙の瞳で、彼女を見つめている。
女は彼氏を見て、泣いている。
そんな2人を無視した吾朗は、女に近寄った。
泣きながら恐怖に顔を引きつらせ、震えている。
「ぁ、た、助け…」
「災難やったなぁ。」
「ぉ、お願、ぃ。」
それには答えず、口元には笑みを浮かべる。
女の目の前に来た吾朗は、肩に刺さったままだったドスを抜いて、腹に差し込んだ。
女の悲鳴が響き、彼氏は動けない自分に涙を流す。
腹に刺したドスを引き抜いて、太股・脇腹・腕と滅多刺しにする。
そして、ドスで服を裂いて全裸にしてから、再び肩に刺した。
裸に剥かれた彼女の姿に、彼氏は声を上げたが、それで吾朗が止まる訳もなく、女の片足を持ち上げて、猛った自身を取り出す。
狂犬が目覚めきった時の殺戮は、血と血の匂いに興奮して勃った。
普段では勃つほどまでにはいかない。
しかしこの時ばかりは、吾朗も抑えることはしなかった。
出した自身を慣らしてもいない秘口に、一気に突き挿れた。
女の苦しげに漏れる悲鳴は、うるさいとばかりに吾朗が自分の手を当て口を塞いだ。
女の身体を気遣うことなく、自分の快感だけを追う。
切れたのか、女の秘口からは血が出て、太股に伝っている。
だがそれで滑りが良くなり、吾朗は腰の動きを早くした。
女が犯されている間、止血されていない傷からは血が流れ続けている。
悲鳴すら上げる力が残っていないのか、うわごとしか言わなくなると、吾朗は手を外した。
そして肩から流れ出た血の後を舌でなぞる。
死にかけた女の瞳は、開いたまま死の色を浮かべる。
吾朗はその瞳の下を一度舐めてから、眼球を舐めた。
そうやって、死んでいく女をなぶりながら、吾朗は女を犯し続けた。
どのくらいそうしていただろう、吾朗が果てて中に精を注いで、自身を引き抜いたのと同時くらいに、女は完全に死んだ。
それを興味なく見やって、自身をしまい込むと、鉄パイプに刺したままだった男に視線を向けた。
一部始終見せられ、彼女の死を見せられ、男は絶望していた。
吾朗が近寄っても身動きせず、ただ小さく言葉にならない声を出し泣いていた。
その男の首にドスを突き刺し、続けて力任せに差し込んだ。
髪の毛を掴み、頭が落ちないようにし、首を切り放して、それを手前にあった鉄パイプに刺した。
死の直前のままの顔、首から下には鉄パイプ。
その後ろに、座った格好で空中に繋ぎ止められた、首のない身体がある。
辺りにも五体バラバラになったものなど、様々な死体があった。
そこは血の海。
地獄絵図さながらの光景があった。
「…兄さん。」
「来たんか。」
その地獄に、龍と呼ばれし男がやって来た。
「まだ足りてへんのや。桐生ちゃんなら、楽しめるなぁ。」
言うが早いか、吾朗は一馬に向かって行く。
この地獄に気を取られていた一馬は、一瞬の反応が遅れた。
吾朗がそれを逃すはずもなく、腕を掴んで身体を入れ替え、地獄の中に完全に引き入れる。
そのまま足払いをして地面に倒し、腰を跨いで一馬の上に乗った。
どこから出したのか、吾朗の手には紐。
素早く一馬の両腕をそれで縛り、二人分の死体を支えている鉄パイプに括り付けた。
「なんのつもりだ!」
「そやから楽しむんや。」
そう言って、右手で一馬自身を服の上からなぞった。
「は、離せ!」
「2人で楽しもやないか。なぁ?」
そうして空いていた左手で首を軽く絞めながら、吾朗は一馬の唇を舐めた。
首を抑えられた一馬は、抗議の声が出せなくなった。
首の手はそのままに吾朗は、一馬のズボンからベルトを抜きジッパーを下げた。
そして器用に口を使いながら革手袋を脱いだ右手で、下着の中から一馬自身を取り出すと、上下に擦り始める。
「気持ちよぉしたるからな、桐生ちゃん。」
吾朗はもう一度唇を舐めてから、キスをした。
首を絞められ無意識で薄く開けている一馬の唇に、吾朗は舌を入れる。
角度を変えて深く何度もキスしながら、首から手を離し身体を移動させた。
そうしてもう片方の革手袋も取り外す。
首から手がなくなったことで、一馬は酸素を求めた。
吾朗は移動した先で、緩く反応しだした一馬自身を舐め始める。
「ぁ、やめ…」
「やめへん。もう止まらんわ。」
勃ち始めた一馬自身を口に含み、片手で自分のズボンのベルトを緩め、ジッパーを下げ中からすでに勃っている自身を取り出した。
相当興奮しているのか、先走りが地面に落ちる。
右手で自分自身を緩く擦りながら、左手は一馬自身を触り、舌や口に含んで追い詰めていく。
「あかん、我慢出来ん。」
吾朗はそう言うと、一馬のズボンを下着ごとズリ下ろして脱がせた。
再び一馬自身に刺激を与えながら、後ろに指を這わせた。
自身の先走りでぬめる指で、入り口をなぞってから中指を1本差し入れる。
いくらも出し入れしないうちに、2本目を入れた。
吾朗に余裕などなく、早く一馬の中に挿れたくて仕方なかった。
慣らしていたはずの2本の指は早急に引き抜かれ、吾朗は猛って張り詰めた自身を一馬の中に挿れていく。
「くっ、う。」
「もう少し辛抱しいや、すぐによくしたるからな。」
一馬に声をかけて、自身をすべて収めた吾朗はゆっくりと腰を使い始めた。
吾朗は一馬の反応を見ながら、中で一馬のいいところを探す。
「っあ、ああ!」
ビクンと反応を示した一馬に薄く笑ってから、そこを執拗に突いた。
「あっ、に、兄さん。」
「気持ちえぇか?…っ…もっと欲しがってえぇで。」
一馬は抵抗を忘れ、吾朗が与える快楽に身を任せた。
一馬が抵抗しなくなると、吾朗は両腕を繋ぎ止めた紐にドスを刺し、紐を切って両腕を自由にすると、その腕を自分の首に回させた。
首に回した腕で吾朗に縋りつきながら一馬は喘いだ。
吾朗は一馬の声に、更に欲情して激しく攻め立てた。
血塗れの紅い海。
残酷な死体が数多く存在する中。
吾朗は一馬を抱く。
そして一馬は吾朗に抱かれた。
血に汚れるのも構わずに、淫らに絡み合う2つの影。
龍は地獄で、般若に愛された。
「溺れてまえ。」
吾朗に言われた言葉に、一馬は答えなかったが、縋る力が強くなった。
そんな一馬を、吾朗は腰の動きを早くして追い詰めていく。
最後は2人同時に果てた。
ずっと欲しいと願っていた、唯一の存在。
この地獄で、般若は龍を手に入れた。
end
狂犬の呼び名の通り、吾朗は普段から己の狂気を振るう。
隠そうともしないその狂気の犠牲者は様々だ。
しかし普段の狂気は、まだほんの僅かしか顔を見せていない状態。
常に表に出ているのは、吾朗の狂気の一部。
そして、吾朗の中に眠る狂犬が完全に目覚めきっていない状態。
狂犬が完全に目覚めきった時、吾朗は本当の意味で狂犬と化す。
そして、それはいつも突然にやってきた。
そう、突然だった…。
グシャ!
何かが潰れる音。
ズル………ドサっ!
そして、滑る音と落ちる音がした。
「…足りんわ。」
「ヒっ!」
「も、もう、勘弁して下さ…」
「先に喧嘩売ったんは、そっちやないか。」
「あ、ゆ…、許し…」
男達の言葉は、最後まで紡がれることなく途絶えた。
「ぁ、あ…」
何を言っても聞き入れてもらえない。
まだ生き残った男達は、喧嘩を売った最初の時に受けた、バットで殴られた痛みですぐに逃げ出せない。
男達は絶望した。
逃げられない彼らに課せられた宿命。
狂犬の餌食。
そして、死の宴が始まる。
吾朗が満足するまで…。
吾朗が飽きるまで…。
今日、この日。
今この瞬間、吾朗の前にいる男達は、恐怖とともに己の死を感じた。
吾朗は目覚めるままに、狂犬を解き放つ。
始まる狂気の宴。
血を求めた狂犬の、目覚めだった。
壁に身体を押し付け、鉄パイプを肩に刺す。
壁に1人縫い付け、次の獲物へ。
鬼炎のドスが男の背中を捕らえる。
悲鳴を上げる男を無視し、そのままドスを引き下ろした。
背中を一直線にドスが走り、次には血渋きが上がる。
そして男は壁に放り投げられた。
そうやって、生き残った男達を1人残らず、逃がさないようにした。
逃げ出そうとすれば、今まで遊んでいた男を一旦離した吾朗が、ドスを振り下ろしてくる。
男達に逃げ場は無かった。
壁に縫い付けられた男は、まるで解剖される蛙の気分を味わいながら死んでいった。
瞳は抉り出され、まだ意識があった男の、残った片目に見せ付けるように、抉り取った眼球に舌を這わす。
何度か繰り返した後、眼球はドスで真っ二つになって地面に落ちる。
肩に突き刺したドスを下に引けば、皮一枚で繋がったのか、落ちきらない肩が垂れ下がった。
喉の下にドスを刺して、一直線に下に引く。
流れ出る血を気にすることなく、切り口を開いた。
中には当然、誰にでも備わっている内蔵の数々。
手を入れて腸を引き出し、ドスで胃を裂いた。
左の肺にドスを刺し、左手は心臓を握り、右の肺を掴み出す。
肺に刺さっていたドスを抜き、眉間に突き立てる。
そのまま上に向かって、力任せに何度も突き刺して、頭を二つに割る。
割れた頭から、脳を掴み出して握り潰した。
まだ握ったままだった心臓を引き抜き、すでに動いていない心臓を舐める。
遊びつくして興味が無くなったのか、手にした心臓を捨てて次の玩具へ向った。
何度も加えられた殺戮に、大半は死んでいる。
生き残ったのは、残り僅かだ。
その僅かな男達に、吾朗の牙が襲いかかる。
落ちていた鉄パイプを地面に刺し、それに男の肩を押して差し込んだ。
次は腹に鉄パイプを刺し、下から身体を持ち上げる。
そうやって、繰り返し身体に鉄パイプを刺していく。
そして出来上がる、人間の標本。
身体のいたる所に鉄パイプが刺さり、身体は空中に浮いていた。
支えは身体に刺さった鉄パイプ。
まだ生きているのか、微かな呻き声。
だが吾朗に届くはずもなく、吾朗は鉄パイプに伝う血を指でなぞっていた。
そこで人の気配を感じた。
こちらに向かって来る2つの気配。
だが吾朗は慌てなかった。
鉄パイプに刺さった男を、押し付けて更に深くに差し込んだ。
そして、気配を感じた場所へ移動する。
やってきたのは若いカップルだった。
その2人が行動を起こすよりも早く、吾朗は女の手を掴み壁に押し付け鬼炎のドスを肩に刺す。
彼女を助けようとした男の腕を掴み、さっき男を押し付けて出来た鉄パイプの上の部分に、座らせる格好で身体を押さえ付ける。
咄嗟に手で押さえようとしたのか、後ろに伸ばされた手のひらに鉄パイプが刺さり、両の太股にも鉄パイプは刺さって身体を空中で固定された。
痛みに流れ出る涙の瞳で、彼女を見つめている。
女は彼氏を見て、泣いている。
そんな2人を無視した吾朗は、女に近寄った。
泣きながら恐怖に顔を引きつらせ、震えている。
「ぁ、た、助け…」
「災難やったなぁ。」
「ぉ、お願、ぃ。」
それには答えず、口元には笑みを浮かべる。
女の目の前に来た吾朗は、肩に刺さったままだったドスを抜いて、腹に差し込んだ。
女の悲鳴が響き、彼氏は動けない自分に涙を流す。
腹に刺したドスを引き抜いて、太股・脇腹・腕と滅多刺しにする。
そして、ドスで服を裂いて全裸にしてから、再び肩に刺した。
裸に剥かれた彼女の姿に、彼氏は声を上げたが、それで吾朗が止まる訳もなく、女の片足を持ち上げて、猛った自身を取り出す。
狂犬が目覚めきった時の殺戮は、血と血の匂いに興奮して勃った。
普段では勃つほどまでにはいかない。
しかしこの時ばかりは、吾朗も抑えることはしなかった。
出した自身を慣らしてもいない秘口に、一気に突き挿れた。
女の苦しげに漏れる悲鳴は、うるさいとばかりに吾朗が自分の手を当て口を塞いだ。
女の身体を気遣うことなく、自分の快感だけを追う。
切れたのか、女の秘口からは血が出て、太股に伝っている。
だがそれで滑りが良くなり、吾朗は腰の動きを早くした。
女が犯されている間、止血されていない傷からは血が流れ続けている。
悲鳴すら上げる力が残っていないのか、うわごとしか言わなくなると、吾朗は手を外した。
そして肩から流れ出た血の後を舌でなぞる。
死にかけた女の瞳は、開いたまま死の色を浮かべる。
吾朗はその瞳の下を一度舐めてから、眼球を舐めた。
そうやって、死んでいく女をなぶりながら、吾朗は女を犯し続けた。
どのくらいそうしていただろう、吾朗が果てて中に精を注いで、自身を引き抜いたのと同時くらいに、女は完全に死んだ。
それを興味なく見やって、自身をしまい込むと、鉄パイプに刺したままだった男に視線を向けた。
一部始終見せられ、彼女の死を見せられ、男は絶望していた。
吾朗が近寄っても身動きせず、ただ小さく言葉にならない声を出し泣いていた。
その男の首にドスを突き刺し、続けて力任せに差し込んだ。
髪の毛を掴み、頭が落ちないようにし、首を切り放して、それを手前にあった鉄パイプに刺した。
死の直前のままの顔、首から下には鉄パイプ。
その後ろに、座った格好で空中に繋ぎ止められた、首のない身体がある。
辺りにも五体バラバラになったものなど、様々な死体があった。
そこは血の海。
地獄絵図さながらの光景があった。
「…兄さん。」
「来たんか。」
その地獄に、龍と呼ばれし男がやって来た。
「まだ足りてへんのや。桐生ちゃんなら、楽しめるなぁ。」
言うが早いか、吾朗は一馬に向かって行く。
この地獄に気を取られていた一馬は、一瞬の反応が遅れた。
吾朗がそれを逃すはずもなく、腕を掴んで身体を入れ替え、地獄の中に完全に引き入れる。
そのまま足払いをして地面に倒し、腰を跨いで一馬の上に乗った。
どこから出したのか、吾朗の手には紐。
素早く一馬の両腕をそれで縛り、二人分の死体を支えている鉄パイプに括り付けた。
「なんのつもりだ!」
「そやから楽しむんや。」
そう言って、右手で一馬自身を服の上からなぞった。
「は、離せ!」
「2人で楽しもやないか。なぁ?」
そうして空いていた左手で首を軽く絞めながら、吾朗は一馬の唇を舐めた。
首を抑えられた一馬は、抗議の声が出せなくなった。
首の手はそのままに吾朗は、一馬のズボンからベルトを抜きジッパーを下げた。
そして器用に口を使いながら革手袋を脱いだ右手で、下着の中から一馬自身を取り出すと、上下に擦り始める。
「気持ちよぉしたるからな、桐生ちゃん。」
吾朗はもう一度唇を舐めてから、キスをした。
首を絞められ無意識で薄く開けている一馬の唇に、吾朗は舌を入れる。
角度を変えて深く何度もキスしながら、首から手を離し身体を移動させた。
そうしてもう片方の革手袋も取り外す。
首から手がなくなったことで、一馬は酸素を求めた。
吾朗は移動した先で、緩く反応しだした一馬自身を舐め始める。
「ぁ、やめ…」
「やめへん。もう止まらんわ。」
勃ち始めた一馬自身を口に含み、片手で自分のズボンのベルトを緩め、ジッパーを下げ中からすでに勃っている自身を取り出した。
相当興奮しているのか、先走りが地面に落ちる。
右手で自分自身を緩く擦りながら、左手は一馬自身を触り、舌や口に含んで追い詰めていく。
「あかん、我慢出来ん。」
吾朗はそう言うと、一馬のズボンを下着ごとズリ下ろして脱がせた。
再び一馬自身に刺激を与えながら、後ろに指を這わせた。
自身の先走りでぬめる指で、入り口をなぞってから中指を1本差し入れる。
いくらも出し入れしないうちに、2本目を入れた。
吾朗に余裕などなく、早く一馬の中に挿れたくて仕方なかった。
慣らしていたはずの2本の指は早急に引き抜かれ、吾朗は猛って張り詰めた自身を一馬の中に挿れていく。
「くっ、う。」
「もう少し辛抱しいや、すぐによくしたるからな。」
一馬に声をかけて、自身をすべて収めた吾朗はゆっくりと腰を使い始めた。
吾朗は一馬の反応を見ながら、中で一馬のいいところを探す。
「っあ、ああ!」
ビクンと反応を示した一馬に薄く笑ってから、そこを執拗に突いた。
「あっ、に、兄さん。」
「気持ちえぇか?…っ…もっと欲しがってえぇで。」
一馬は抵抗を忘れ、吾朗が与える快楽に身を任せた。
一馬が抵抗しなくなると、吾朗は両腕を繋ぎ止めた紐にドスを刺し、紐を切って両腕を自由にすると、その腕を自分の首に回させた。
首に回した腕で吾朗に縋りつきながら一馬は喘いだ。
吾朗は一馬の声に、更に欲情して激しく攻め立てた。
血塗れの紅い海。
残酷な死体が数多く存在する中。
吾朗は一馬を抱く。
そして一馬は吾朗に抱かれた。
血に汚れるのも構わずに、淫らに絡み合う2つの影。
龍は地獄で、般若に愛された。
「溺れてまえ。」
吾朗に言われた言葉に、一馬は答えなかったが、縋る力が強くなった。
そんな一馬を、吾朗は腰の動きを早くして追い詰めていく。
最後は2人同時に果てた。
ずっと欲しいと願っていた、唯一の存在。
この地獄で、般若は龍を手に入れた。
end
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