忍者ブログ
Admin*Write*Comment
うろほろぞ
[94]  [93]  [92]  [91]  [90]  [89]  [88]  [87]  [86]  [85]  [84
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

「ふう…」
長年愛用している革張りの椅子に座った途端、樊瑞はため息をついた。
ここのところ、とにかく会議が多いのである。
大掛かりな作戦が幾つも同時にスタートした為もあるとはいえ、雁首そろえて話し合いばかりで時間を浪費しても良いものか。
現場の最高責任者である十傑集リーダーの樊瑞はそう思う。
十傑集はBF団の最高幹部であり、かつ全員が超A級のエージェントである。
役目は様々だが、常に第一線で作戦の遂行に当たっていてメンバーが全てそろうことは稀だった。
その為、本部のこういった会議(多くは策士の一人舞台であるが)の内容をまとめ、全員に伝えるのもリーダーたる樊瑞の仕事なのである。
「…これでは使い走りではないか…」
おもわず本音が出る。
もともと頭より体を動かしている方が性にあっているはずの自分が、会議だ書類だと官吏の真似事など勤まるはずもない。
こうなったらカワラザキに申し出て、リーダーなぞやめてしまおうか…
しかし、現在のメンバーを思い浮かべると躊躇してしまう。
十常寺は知性では申し分ないが、個性的すぎてリーダーには不向きだ。
幽鬼は人を束ねるタイプではなし、残月はなかなか見所はあるが新参故、難しい。
レッドと怒鬼に至っては、話し合いの前に血を見るだろうし…
「…」
結局自分しかいないのか。
いつものように其処に思い至って、ついでにいまいましい策士の顔を思い浮かべてしまう。
『樊瑞殿、これは我等のビッグファイア様の御意志ですぞ』
「やかましい!!」
思わず目の前の机に拳をたたきつけると、「きゃっ!」と小さな悲鳴が聞こえた。
「サ、サニー…」
戸口にいつの間にかサニーが立っており、心配そうな眼差しで樊瑞を見つめている。
「すみません…お呼びしたのですが、お返事が無くて…」
「いやいいのだ。すまん、考え事をしていたものでな」
樊瑞は可愛がっている少女を怖がらせてしまったことを後悔しながら、その場を取り繕った。
「おじ様、お帰りなさいませ」
しかしサニーは気にした様子も無くにっこりと微笑むと樊瑞のもとに駆け寄ってその手をとり、いつものように帰宅を迎えた。
「ああ、ただいまサニー」
サニーの笑顔をみて、樊瑞は心が温かくなった。
思わずサニーを抱えあげて、軽く抱きしめる。
「おじ様…?」
サニーは少し驚いたように身を引いたが、すぐにおとなしくなり、樊瑞の首に手を回す。
「おじ様、お疲れですの?」
「ん?いや、大丈夫だ。本部のいかつい面々の顔ばかり見ておると、サニーがあんまり可愛くて、ついな」
樊瑞がそう言って笑うと、サニーは頬を赤くして答える。
「いやですわおじ様ったら」
そんな他愛もないやりとりが、樊瑞の心を癒してくれる。
しかしこんな平和も長くは続かないだろう。
だが、いまはまだ、いいではないか…。
甘いことだと思いながらも、樊瑞はつかの間の幸せに浸るのだった。


PR
rarara * HOME * tataat
  • ABOUT
うろほらぞ
Copyright © うろほろぞ All Rights Reserved.*Powered by NinjaBlog
Graphics By R-C free web graphics*material by 工房たま素材館*Template by Kaie
忍者ブログ [PR]