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             『飛行機雲、月へ』


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「…飛行機ってのは、戦争で発達した乗り物なんだよな」


ある日、ケティの修理中。
スパナを握って船体の下に滑り込んでいた彼の言葉に、横の木箱に座り、アルフレッドは顔を上げる。


「…どうしたんだい」
「いんや。…さっき見た新聞に、物騒なこと書いてあったからよ」
「ああ…ヨーロッパの方の内戦か」


言って、彼は本をぱたん、と閉じる。
そういえば、先程届いた新聞では先の大戦で負けて圧迫された国達に絡み、再びきな臭い雰囲気が感じ取れた。



「――なんでだろうな。…ただ最初は空に近付きたいだけだってのに」


顔は見えないが、モンタナが苦笑した雰囲気が伝わってくる。
それを察し、アルフレッドも複雑な笑みを浮かべた。


戦争は、人類の技術を発展させる。
歴史を勉強しているアルフレッドは、良くも悪くもそれを良く知っていた。
鉄・火薬など、今人々の生活を豊かにしている殆どのものが、戦争によって改良されてきたものだ。飛行機も、その中の一つである。


「わっかんねぇな…そりゃあ、飛行機は便利だろうよ。戦争に使えれば。
だけど――空まで戦場にすることは無いだろうに…っと、ペンチとってくれ」
「はい。…うん、そうだね」

モンタナが伸ばした手に赤いペンチを乗せると、アルフレッドは一つため息をついた。


見上げた空は、綺麗な青空。
けれど――先の大戦ではあそこで死んだ人間が、沢山いるのだ。

それを思うと、複雑な気持ちになる。
――と。



「…地球には、まだまだ人間の知らない所があるに違いねえのに…なーんで殺し合いに躍起になるかねえ。
やりたがる奴は、冒険のひとつでもしてみりゃいいんだ。そんなこと、つまらんって一発で判るのに」

「…」
「そうだろう?――きっと退屈してる暇なんかなくなって、戦争なんかなくなるぞきっと」



彼らしい言葉に、アルフレッドは微笑んだ。


「地球上の人間が、全部君みたいだったら大変だね」
「なんでだ?」
「だって、全部冒険しちゃったら、皆知ってる土地ばかりで、この世には冒険できるところなくなっちゃうよ?」
「そりゃ困るな」

言って、モンタナはケティの下から這い出す。
がしゃん、とペンチを道具箱に放り込み、うーん、と唸った。そして。



「なら、――あそこがまだあるぜ?」










指差したのは、真昼の白い月。



「…ええ?」
「人間は、空だって飛べたんだ。…いつかあそこにだって、行けるさ」
「まさか」




途方もない話。アルフレッドは肩をすくめ――
















「――そん時には、お前も一緒に行くだろ?」








俺達は、コンビだからな。



「――…」


微塵も、不可能だと考えていない言葉。
確信を持った笑み。

彼らしい、――この上なく彼らしい、言葉。















「…そうだね」


夢だとしても、いいではないか。



いつも――少年のように夢を追いかけ、実現しようとしているのが、この愛すべき従兄弟なのだから。






「そうだね、いつか」

夢みたいな言葉。不可能のように見えること。

だけど彼の夢は、いつか現実になる日が来る。
そんな気がするのだ。




言って、アルフレッドは空を見上げた。
その向こうには、白いまん丸の月。

「おう」


に、と笑って、モンタナは傍に置いておいた帽子を被った。





「行こうぜ、相棒」









空に、月までの飛行機雲が見えるのは、いつの日の事か。





                END.

 
 

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