開幕前夜(1/7)
現在国営放送局にて放送中の某サッカーアニメの監督(主人公)×広報で。
・若干無理矢理、のち和姦。エロ自体はそんなに激しくも変哲もないです。
「遅くなっちゃった」
そう独りごちて見た有里の腕時計の針は、午前0時を迎えようとしている。
「終電なくなっちゃう」
明日は大事な開幕戦。諸方面へのアポイントや、書類の整理に手間どって結局、事務所の最終退出者になってしまった。
重いカバンを肩にかけクラブハウスを出たとき、用具室から明かりが漏れていることに気付く。
(達海さん、まだ起きてるんだ)
こんな時間まで相手チームの映像チェックをしているんだろうか。
明日は試合なんだから早く寝たら、と一言言ってから帰ろうと思い、一度出たドアを引き返した。終電にはまだ間に合うし、むしろ今から行って駅についても延々と待たされるだけだ。
用具室のドアをノックする。
しかし反応は無い。
「達海さん?」
控えめにドアを開け、中を覗きこむ。
達海は、モニターをつけたままベッドの上で倒れていた。手にはリモコンが握られている。
どうやら映像を見ている間に眠り込んでしまったようだ。
「まったくもう」
春とは言え、3月の夜はまだ冷える。
何もかけずに寝て風邪をひかない保証は無い。
つかつかとベッドまで歩み寄ると、カバンを床に置いて
ベッドの下の方で丸まっている毛布を引っつかみ、ばさりと達海にかけてやった。
あまり丁寧とは言い難いかけ方が災いし、その風に鼻腔をくすぐられた達海が目を開ける。
「うん……?」
「あ、ごめんなさい起こしちゃった?」
言葉とは裏腹に、あまり悪びれたそぶりは無く有里は達海からリモコンを取り上げて、モニターの電源を落とした。
「明日は開幕戦なのに、風邪でもひいたらどうするんですか。もう今日は寝たほうがいいですっ」
「あぁ、有里ちゃんか…」
達海はぼりぼり頭を掻きながら上体を起こした。
「ありがと。でもまだやらなきゃならないこと、あるから」
「達海さんが今やらなきゃいけないのは、明日に備えて休むことでしょ!ほら、寝た寝た!」
有里は達海の肩に手をかけて体を倒そうとした。が、その拍子に床に置いていたカバンに足を取られ、そのまま達海の上に倒れこんでしまった。
「きゃっ!ごめんなさい」
達海の顔が未だかつてないほど至近距離にきたことに動揺しつつ、慌てて起き上がろうとする。
が、それを阻止する力を腕に感じて、有里は少しパニックになった。なんで、と思うのと達海が自分の手首を掴んでいることに気付くのが同時だった。
「有里ちゃんさぁ」
達海が低い声で呟く。その声に、有里は少し背筋がぞくっとするのを感じた。
「な、何よ」
「いくら俺がここの監督でも、やっぱり男一人の部屋に夜中に勝手に入ってくるってのは、ちょーっとまずいんじゃないの」
「な、何言ってるのよ、私はただ」
「言い訳してもだーめ。俺、その気になっちゃったから」
「ちょっと、『その気』ってなんのこ…」
有里の言葉は最後まで紡がれなかった。達海が口づけたせいで。
「決まってるじゃん」
達海は有里の上半身に腕を絡め、体制を入れかれると強引に組み敷いた。
「セックスしたいの」
事も無げに放たれた達海の言葉に、抵抗することすら忘れていた有里の表情がたちまち固まっていく。
「な……なに言って……っ」
わずかに自由になる足をバタバタさせてみるが、元スポーツマンの力に女性が敵うわけもなく、靴が脱げるだけに終わった。
「ごめんね有里ちゃん。俺、言い出したらきかないの、ピッチの上だけじゃないから」
微笑みすら浮かべてそう語る達海。
服をたくし上げられ下着を露にさせられた有里の目から涙が一筋、二筋とつたった。
「こんな…こんな…」
少なくとも有里は、達海に好意を寄せていた。
それが、幼い頃の憧れや、達海のカリスマ性に惹かれるサッカー関係者としてのものなのか、
恋愛感情に起因するものなのかは自分でも分かっていなかった。
でもそれがどちらにせよ、こんな形ではなくて、もっと丁寧に、優しく、段階を踏んで睦みあうことになったのならば、幸せだと思えたに違いなかったのだ。
けれど今、こうして半ば犯されるようにして用具室のベッドの上にいる。
それでも達海への好意を捨てきれない自分と、こんな形で体を許すなんてしたくないという気持ちのせめぎあいが、心と体を震わせていた。
達海が胸のふくらみの頂点に唇を寄せる。
「ひゃんっ!」
意図しない声が出てしまい、赤面する有里。
「有里ちゃんけっこうおっぱい大きいんだねー。知らなかった」
知ってるわけがないだろう、見せたことないんだから。
犯しているという自覚すらなさそうな相手に、有里は若干呆れてしまう。
そう、この人に常識なんて通用しないのはずっと前からよく知っていたこと…。
だからと言って力ずくで押し倒していいことにはならないが、欲望を吐き出すのに黒い感情を挟まないことに達海らしさを感じて、有里は少しだけ肩の力を抜いた。
達海の指が、衣服を取り払った有里の腰をなぞり、少しずつ下へと向かっていく。
その行方を想像して、有里は少しだけ期待をしてしまう。
この数年、仕事に夢中で恋人をつくるなんて考えたことは殆どなかった。
クラブ、サッカーが恋人だとまでは言えなくても、彼氏がいないことで寂しさを感じることなどなかったのだ。
でも、体は違っていた。時には一人で慰める夜だってあったのだ。
この期でそんな自分を思い出して恥ずかしくなり、有里は自分を心の中で叱咤した。
しかし、体の奥がじわっと熱くなってしまったのも事実だ。
達海の指は有里の内股を行き来する。だが、中心へは向かわない。
有里は少しじれったくなって、ついくぐもった吐息を漏らしてしまった。
それを聞いた達海がくすっと笑う。
「素直になんなよ」
「な、何のことよっ」
恥ずべき期待を見透かされ、食ってかかる有里。
「触って欲しいんじゃないの?」
「……っ、ちがうわよ」
嘘を見破られそうで、顔を背けた。
「じゃあ、どうして濡れてるのかな?」
不意に、ショーツ越しにそこを触れられ、有里の体を電流のような快感がひとすじ走った。
「っあ…濡れて、なんか」
「じゃあ見せて?確かめてあげるから」
臆面も無く言い放つ達海。その目は少しだけ意地悪だ。
「っ、勝手にすればっ」
「はーい、勝手にしまーす」
おどけたような返事をすると、達海は有里の下着に手をかけた。
「ほーら、やっぱり濡れてるじゃん。しかもすっごく」
「そんなのっ、こんな暗いとこで見たって、わからないでしょ」
「もうー、素直じゃないなぁ。触って欲しいならそう言えばいいのにー」
「だから違うってば!」
ちゅぷん、という音。
「あっ…」
達海の中指が、有里の入り口に入り込む。
「うん、すごく濡れてる」
その指が、そのまま蕾へと滑っていく。
「ひぁん!!」
「やっぱり、ここが好き?」
有里は必死で首を横に振る。でも、ほんの少し刺激されるだけで、頭の中がとろけてしまいそうだった。もちろん頭だけでなく、達海が触れるその場所も。
やわやわと、くにくにと、しばらくそこを弄ばれて、有里はもう艶かしい声を上げることに抵抗がなくなってきていた。
と、達海が手を放す。
有里はつい、物欲しげな目で達海を見てしまった。
それを達海は見逃さない。
「なに?どーしてほしい?」
「……して」
有里は、蚊の泣くような声で呟いた。
「聞こえなーい」
達海はニヤニヤしている。
「もっと、して!!」
顔を真っ赤にして有里が叫んだ。
「うん、素直でよろしい」
達海は体を下にずらすと、有里が求めた花芯へ舌を這わせた。
「あああああーっ!!」
指よりも、暖かく、淫らな感触。
有里は軽く気をやりそうになった。
尚も達海は舌を動かす。
舐め、つつき、僅かに吸う。
「あっ、あっ、あっ…もう…」
達海が顔を上げると、全身がうっすらと紅潮し、目に涙を溜めた有里がそこにいた。
ずくん、と自身が反応してしまう。
「いい……?」
達海は一応問う。
だがここでよくない、と言われてもおそらく自分を止めることはできないと思った。
視線が絡む。
ややって、有里はうなずいた。
その拍子、涙が一筋だけ流れる。
「大丈夫、俺、有里ちゃんのこと好きだから」
唐突にそう呟かれて、有里は達海の顔を見た。
真摯な瞳が自分のそれをじっと捉えている。
鼓動が早くなり、顔が赤くなるのが分かった。それを悟られるのが嫌で、悪態をついてしまう。
「好きだったら、何してもいいわけ?」
すると達海はにっと笑った。
「うん、いいの」
その瞬間、達海は有里の中に深く潜った。
たまらず高い声を上げる有里。
「だって、有里ちゃんも俺のこと好きでしょ?」
腰を少し引いて、自信たっぷりの顔でいたずらっぽく笑いかける達海。
「っバカ……、ひぁっ」
精一杯の抵抗の言葉を吐いた有里に、達海は再び沈み込む。
熱い塊りが自分の中を行き来する感覚、そして「好き」という達海の言葉。
有里は目を閉じた。本当は、私も、と言いたかった。
でもそれを口にしたら、この強引な行為を認めてしまうようで、悔しかった。
その代わり、達海の背中に腕を回した。
目を開けた時、達海と視線がかち合い、その眼差しがとても優しくて、そのまま口づけられて、舌を絡められても心地よかった。
(達海さんとキスするの、初めてだ)
ふと気がついて、ふふっと笑ってしまった。
「なに?」
唇を離し、少し怪訝な顔をする達海。
「なんでもない。それより達海さん、張り切りすぎないように腰、気をつけてよね」
「ばーか、このくらいなんてことねぇよ」
達海は少し憮然とした表情を返す。
子供みたいだ、三十も半ばのくせに。
俄然動きを激しくした達海を、有里はいとおしく思った。
狭いベッドで達海の横に引っ付きながら、有里は窓の外が少しだけ白んできたのを感じた。
「つかれたぁ~ふぁあ」
達海があくびまじりにぼやく。
「達海さん、張り切りすぎ!明日試合なのにもうこんな時間じゃない」
「思い知ったか、俺の持久力を」
「バカ!」
有里はくるりと達海の反対側を向いた。
「有里ちゃん、俺まだ返事聞いてないんだけど」
「なんの?」
「俺、言ったじゃん。『有里ちゃんも俺のこと好き?』って」
有里は全身の血が顔の方に集まってくるのを感じて口をわなわなさせた。
「ば、バカじゃないの、あんなの真っ最中のたわごとでしょっ」
「え~本気なんだけどなぁ。ま、いっか。おやすみー」
達海はそんな有里の背を見て微笑み、目を閉じる。
(もう分かってるくせに)
有里はすぐに寝息を立て始めた達海の方に向き直ると、頬に軽く、キスをした。
fin.
現在国営放送局にて放送中の某サッカーアニメの監督(主人公)×広報で。
・若干無理矢理、のち和姦。エロ自体はそんなに激しくも変哲もないです。
「遅くなっちゃった」
そう独りごちて見た有里の腕時計の針は、午前0時を迎えようとしている。
「終電なくなっちゃう」
明日は大事な開幕戦。諸方面へのアポイントや、書類の整理に手間どって結局、事務所の最終退出者になってしまった。
重いカバンを肩にかけクラブハウスを出たとき、用具室から明かりが漏れていることに気付く。
(達海さん、まだ起きてるんだ)
こんな時間まで相手チームの映像チェックをしているんだろうか。
明日は試合なんだから早く寝たら、と一言言ってから帰ろうと思い、一度出たドアを引き返した。終電にはまだ間に合うし、むしろ今から行って駅についても延々と待たされるだけだ。
用具室のドアをノックする。
しかし反応は無い。
「達海さん?」
控えめにドアを開け、中を覗きこむ。
達海は、モニターをつけたままベッドの上で倒れていた。手にはリモコンが握られている。
どうやら映像を見ている間に眠り込んでしまったようだ。
「まったくもう」
春とは言え、3月の夜はまだ冷える。
何もかけずに寝て風邪をひかない保証は無い。
つかつかとベッドまで歩み寄ると、カバンを床に置いて
ベッドの下の方で丸まっている毛布を引っつかみ、ばさりと達海にかけてやった。
あまり丁寧とは言い難いかけ方が災いし、その風に鼻腔をくすぐられた達海が目を開ける。
「うん……?」
「あ、ごめんなさい起こしちゃった?」
言葉とは裏腹に、あまり悪びれたそぶりは無く有里は達海からリモコンを取り上げて、モニターの電源を落とした。
「明日は開幕戦なのに、風邪でもひいたらどうするんですか。もう今日は寝たほうがいいですっ」
「あぁ、有里ちゃんか…」
達海はぼりぼり頭を掻きながら上体を起こした。
「ありがと。でもまだやらなきゃならないこと、あるから」
「達海さんが今やらなきゃいけないのは、明日に備えて休むことでしょ!ほら、寝た寝た!」
有里は達海の肩に手をかけて体を倒そうとした。が、その拍子に床に置いていたカバンに足を取られ、そのまま達海の上に倒れこんでしまった。
「きゃっ!ごめんなさい」
達海の顔が未だかつてないほど至近距離にきたことに動揺しつつ、慌てて起き上がろうとする。
が、それを阻止する力を腕に感じて、有里は少しパニックになった。なんで、と思うのと達海が自分の手首を掴んでいることに気付くのが同時だった。
「有里ちゃんさぁ」
達海が低い声で呟く。その声に、有里は少し背筋がぞくっとするのを感じた。
「な、何よ」
「いくら俺がここの監督でも、やっぱり男一人の部屋に夜中に勝手に入ってくるってのは、ちょーっとまずいんじゃないの」
「な、何言ってるのよ、私はただ」
「言い訳してもだーめ。俺、その気になっちゃったから」
「ちょっと、『その気』ってなんのこ…」
有里の言葉は最後まで紡がれなかった。達海が口づけたせいで。
「決まってるじゃん」
達海は有里の上半身に腕を絡め、体制を入れかれると強引に組み敷いた。
「セックスしたいの」
事も無げに放たれた達海の言葉に、抵抗することすら忘れていた有里の表情がたちまち固まっていく。
「な……なに言って……っ」
わずかに自由になる足をバタバタさせてみるが、元スポーツマンの力に女性が敵うわけもなく、靴が脱げるだけに終わった。
「ごめんね有里ちゃん。俺、言い出したらきかないの、ピッチの上だけじゃないから」
微笑みすら浮かべてそう語る達海。
服をたくし上げられ下着を露にさせられた有里の目から涙が一筋、二筋とつたった。
「こんな…こんな…」
少なくとも有里は、達海に好意を寄せていた。
それが、幼い頃の憧れや、達海のカリスマ性に惹かれるサッカー関係者としてのものなのか、
恋愛感情に起因するものなのかは自分でも分かっていなかった。
でもそれがどちらにせよ、こんな形ではなくて、もっと丁寧に、優しく、段階を踏んで睦みあうことになったのならば、幸せだと思えたに違いなかったのだ。
けれど今、こうして半ば犯されるようにして用具室のベッドの上にいる。
それでも達海への好意を捨てきれない自分と、こんな形で体を許すなんてしたくないという気持ちのせめぎあいが、心と体を震わせていた。
達海が胸のふくらみの頂点に唇を寄せる。
「ひゃんっ!」
意図しない声が出てしまい、赤面する有里。
「有里ちゃんけっこうおっぱい大きいんだねー。知らなかった」
知ってるわけがないだろう、見せたことないんだから。
犯しているという自覚すらなさそうな相手に、有里は若干呆れてしまう。
そう、この人に常識なんて通用しないのはずっと前からよく知っていたこと…。
だからと言って力ずくで押し倒していいことにはならないが、欲望を吐き出すのに黒い感情を挟まないことに達海らしさを感じて、有里は少しだけ肩の力を抜いた。
達海の指が、衣服を取り払った有里の腰をなぞり、少しずつ下へと向かっていく。
その行方を想像して、有里は少しだけ期待をしてしまう。
この数年、仕事に夢中で恋人をつくるなんて考えたことは殆どなかった。
クラブ、サッカーが恋人だとまでは言えなくても、彼氏がいないことで寂しさを感じることなどなかったのだ。
でも、体は違っていた。時には一人で慰める夜だってあったのだ。
この期でそんな自分を思い出して恥ずかしくなり、有里は自分を心の中で叱咤した。
しかし、体の奥がじわっと熱くなってしまったのも事実だ。
達海の指は有里の内股を行き来する。だが、中心へは向かわない。
有里は少しじれったくなって、ついくぐもった吐息を漏らしてしまった。
それを聞いた達海がくすっと笑う。
「素直になんなよ」
「な、何のことよっ」
恥ずべき期待を見透かされ、食ってかかる有里。
「触って欲しいんじゃないの?」
「……っ、ちがうわよ」
嘘を見破られそうで、顔を背けた。
「じゃあ、どうして濡れてるのかな?」
不意に、ショーツ越しにそこを触れられ、有里の体を電流のような快感がひとすじ走った。
「っあ…濡れて、なんか」
「じゃあ見せて?確かめてあげるから」
臆面も無く言い放つ達海。その目は少しだけ意地悪だ。
「っ、勝手にすればっ」
「はーい、勝手にしまーす」
おどけたような返事をすると、達海は有里の下着に手をかけた。
「ほーら、やっぱり濡れてるじゃん。しかもすっごく」
「そんなのっ、こんな暗いとこで見たって、わからないでしょ」
「もうー、素直じゃないなぁ。触って欲しいならそう言えばいいのにー」
「だから違うってば!」
ちゅぷん、という音。
「あっ…」
達海の中指が、有里の入り口に入り込む。
「うん、すごく濡れてる」
その指が、そのまま蕾へと滑っていく。
「ひぁん!!」
「やっぱり、ここが好き?」
有里は必死で首を横に振る。でも、ほんの少し刺激されるだけで、頭の中がとろけてしまいそうだった。もちろん頭だけでなく、達海が触れるその場所も。
やわやわと、くにくにと、しばらくそこを弄ばれて、有里はもう艶かしい声を上げることに抵抗がなくなってきていた。
と、達海が手を放す。
有里はつい、物欲しげな目で達海を見てしまった。
それを達海は見逃さない。
「なに?どーしてほしい?」
「……して」
有里は、蚊の泣くような声で呟いた。
「聞こえなーい」
達海はニヤニヤしている。
「もっと、して!!」
顔を真っ赤にして有里が叫んだ。
「うん、素直でよろしい」
達海は体を下にずらすと、有里が求めた花芯へ舌を這わせた。
「あああああーっ!!」
指よりも、暖かく、淫らな感触。
有里は軽く気をやりそうになった。
尚も達海は舌を動かす。
舐め、つつき、僅かに吸う。
「あっ、あっ、あっ…もう…」
達海が顔を上げると、全身がうっすらと紅潮し、目に涙を溜めた有里がそこにいた。
ずくん、と自身が反応してしまう。
「いい……?」
達海は一応問う。
だがここでよくない、と言われてもおそらく自分を止めることはできないと思った。
視線が絡む。
ややって、有里はうなずいた。
その拍子、涙が一筋だけ流れる。
「大丈夫、俺、有里ちゃんのこと好きだから」
唐突にそう呟かれて、有里は達海の顔を見た。
真摯な瞳が自分のそれをじっと捉えている。
鼓動が早くなり、顔が赤くなるのが分かった。それを悟られるのが嫌で、悪態をついてしまう。
「好きだったら、何してもいいわけ?」
すると達海はにっと笑った。
「うん、いいの」
その瞬間、達海は有里の中に深く潜った。
たまらず高い声を上げる有里。
「だって、有里ちゃんも俺のこと好きでしょ?」
腰を少し引いて、自信たっぷりの顔でいたずらっぽく笑いかける達海。
「っバカ……、ひぁっ」
精一杯の抵抗の言葉を吐いた有里に、達海は再び沈み込む。
熱い塊りが自分の中を行き来する感覚、そして「好き」という達海の言葉。
有里は目を閉じた。本当は、私も、と言いたかった。
でもそれを口にしたら、この強引な行為を認めてしまうようで、悔しかった。
その代わり、達海の背中に腕を回した。
目を開けた時、達海と視線がかち合い、その眼差しがとても優しくて、そのまま口づけられて、舌を絡められても心地よかった。
(達海さんとキスするの、初めてだ)
ふと気がついて、ふふっと笑ってしまった。
「なに?」
唇を離し、少し怪訝な顔をする達海。
「なんでもない。それより達海さん、張り切りすぎないように腰、気をつけてよね」
「ばーか、このくらいなんてことねぇよ」
達海は少し憮然とした表情を返す。
子供みたいだ、三十も半ばのくせに。
俄然動きを激しくした達海を、有里はいとおしく思った。
狭いベッドで達海の横に引っ付きながら、有里は窓の外が少しだけ白んできたのを感じた。
「つかれたぁ~ふぁあ」
達海があくびまじりにぼやく。
「達海さん、張り切りすぎ!明日試合なのにもうこんな時間じゃない」
「思い知ったか、俺の持久力を」
「バカ!」
有里はくるりと達海の反対側を向いた。
「有里ちゃん、俺まだ返事聞いてないんだけど」
「なんの?」
「俺、言ったじゃん。『有里ちゃんも俺のこと好き?』って」
有里は全身の血が顔の方に集まってくるのを感じて口をわなわなさせた。
「ば、バカじゃないの、あんなの真っ最中のたわごとでしょっ」
「え~本気なんだけどなぁ。ま、いっか。おやすみー」
達海はそんな有里の背を見て微笑み、目を閉じる。
(もう分かってるくせに)
有里はすぐに寝息を立て始めた達海の方に向き直ると、頬に軽く、キスをした。
fin.
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