失語症
スペイン。
地中海性気候独特の乾燥した空気が市街地を包み込む。
昼下がりの空は快晴で、眩しい日差しを遮るものは何もなかった。
場所は同国首都、マドリード。かつて勃発した最大最悪の大戦―――『聖戦』の惨禍に巻き込まれ、
深々とその傷跡を刻む事となったこの都市も、復興作業は数年前に完全に完了、
活気を取り戻し、往時と変わらぬ大都市としての機能を取り戻していた。
繁華街は際立って多くの人々で賑わい、遥か天空より眩しい陽光が分け隔てなく降り注ぐ。
昼時となると、昼食を取ろうとこの繁華街はより一層、多くの人がやってくる。
市内各所の飲食店はそんな人々で溢れ返り、店の方もごった返す事だろう。
そんな中に一つ、程よく空いている軽食店があった。
メインストリートに存在するにも関わらず、あまり目立たない感じのシックな店。
石造りの床に、丸い洋風のテーブルと洒落た椅子が3~4脚セットで店内の各所に置かれ、
壁際には洒落たアンティークがパラパラと置かれている。
昼時と言う事で明かりを灯してはいなく、とてもゆったりと、落ち着いた雰囲気を醸し出している。
壁はガラス張りになっていて、眩しい陽光が店内の一部を優しく照らしている。
物静かなで空気も涼しく、人もそんなに居ない。
そんな店内の、出入口の近くの壁際の席に、二人の男女が座っていた。
女性の方は、肩に掛かるぐらいの、しっとりとした水色の美しい髪を持ち、
すっと通った鼻、小さな潤んだ唇、そして何処か憂いに満ちた眼。
動きやすい白生地のノースリーブの服を着て、膝より少し下までを包み込むズボンの両腰には、
奇妙な形の柄をした細身の剣が2本、鞘に収められてベルトに掛けられていた。
そして、その女性と向かい合って座っている男性。
容姿から判断して30代だろうか、普段なら常にかぶっている、大きなツバをした黒い帽子も、
流石に店内では外して、長い金髪を後ろで結わえてるのが見える。
だが漆黒のサングラスは外さず、その眼を伺うことは出来ない。
がっちりとした長身には、薄地の長い黒コートを羽織っているだけで、鍛え抜かれた胸板や腹筋が見える。
これまた黒色のズボンは大きなベルトバックルが大きく目立ち、上から下まで黒で統一されている。
そんな風貌ではあるものの、不思議と違和感は無かった。
男の前には、白いコースターの上にコーヒーカップが置かれ、
そして中にはこの店自慢のコーヒーがブラックで入れられている。
だが女性は何も注文せず、男性と目を合わさない様に俯き、ただ視線を泳がせていた。
「悪いな。忙しいとこ、時間取らせちまって」
男性が、飄々とした声で女性に話しかける。
しかし女性は尚も俯いたまま、言葉を返さなかった。
「ま、初対面でいきなり悪いが、大事な話があるんだ」
元々女性は、マドリードの大通りをこれと言った当てもなく歩いていた。
そこへ現れた、この謎のサングラスの男。全く見知りもしないこの男が、彼女に声を掛けてきた。
最初は無視していたが、何か用があるなどと言い張るので、この軽食店へと一緒にやって来たのだ。
そんな状況下に置かれていれば、女性が不審な気持ちを抱くのも当然であった。
「…その前に…あなた、誰…?」
ずっと口を閉ざしていた女性がようやく口を開いた。
とても小さく、ボーっとしていれば聞き逃してしまう様な声であったが、
男性はしっかりと聞き取り、返事を返す。
「おっと。この俺としたことが、レディを前に自己紹介を忘れるたぁ。」
相変わらずのつかみ所のない声を出し、男は少し笑ってコーヒーを口に運ぶ。
一口啜った後、カップをコースターに置き直して、言葉を続ける。
「空を駆ける、紅い飛行船。お前さんも一度ぐらいは見たこと、あるだろ」
「…知らない」
「おっと…。じゃ、今知っておくといい。
空飛ぶ紅い飛行船に乗り込むは、その名も『ジェリーフィッシュ快賊団』!
んでその快賊団を率いるエレガントでハンサムな団長が、ジョニーって名前なんだが…この俺の事さぁ。」
サングラスの男はそう答えたが、女性の知りたい事はそんなものではなかった。
このジョニーと名乗る男が、初対面の自分にナンパ以外に何の用件があるのか、その一点だけだった。
「さて、本題に入ろうか。…お前さん、これ、知ってるか」
コーヒーカップを置き、ジョニーは何かをコートの内側から取り出す。
それは、何かの紙…大きめで、また真新しいものであった。
ジョニーはそれをテーブルの上に置き、女性に見える様に広げた。
「…!?」
女性はそれを見て、目を疑った。
水色の髪、物静かな雰囲気の顔立ち―――自分の顔が、その紙にはデカデカと載っていた。
そしてその下には、『WANTED $7500000』と言う文字が見えた。
「(…賞金首の手配書?)」
女性は呆然とするしか出来なかった。
何で自分が、こんな法外な懸賞金とともに、手配されているのか全く分からなかった。
この理不尽な状況に、表面では冷静を装いながらも、頭の中は混乱していた。
「その様子だと、知らなかったらしいな。この手配書の通り、お前さんには賞金が掛けられている。」
さっきまでの飄々とした声から途端に変わり、ジョニーは真面目な声で話す。
「こないだのギアの騒ぎの時程じゃないが、それでもかなりの額だ。
何したか知らんが、相当な事したんだろ?」
女性はやがて落ち着きを取り戻し、自身の状況をようやく受け入れた様である。
とは言え、まだ多少の動揺は残っているらしい。
「…私、何もしてないのに…何で、こんな…」
小さな掠れた声で、女性がつぶやいた。
「身に覚えもないのに、この額か?不思議な事もあるもんだな」
「…私…数ヶ月前までの記憶が全然ないから…。丁度、武道大会とか言うのが終わった辺り…」
「成程、記憶喪失。だがぁ…」
ジョニーはそこで言葉を止める。
この女性とは今日が初対面であるが、見る限りではとても犯罪をする様な人間には見えなかった。
記憶を失ったと言うのは武道大会が終わった頃らしいが、それも大分前の事である。
この手配書が出回ったのは最近の事で、どうにも食い違うのが彼にとっての疑問なのだ。
「とにかく、もうこの手配書は世に出回っている。
これから先、賞金稼ぎどもがお前さんの都合などお構いなしに襲い掛かってくるだろうゼ」
この手配書が存在する限り、彼女は賞金稼ぎ達の標的となる。
細身の剣を2本、便宜上持ち合わせているとは言え、実は彼女に戦闘の経験など殆どなかった。
「じゃあ…あなたは何?賞金稼ぎじゃないの?」
今度は、女性の方からジョニーへと質問を投げかけた。
ようやく話題に食いついてきた手応えを感じ、ジョニーはカップにまた手を伸ばす。
「勘違いされちゃあ困る。でかい声じゃ言えんが、俺だって一級の賞金首。お前さんと同じ類の人間さ。」
「…?」
「俺はお前さんを、救いに来たのさ」
救いに来た?
その言葉の意味を、女性は理解しかねる。
怪訝な表情を浮かべて黙り込んだまま、ただジョニーを見つめて次の言葉を待った。
「俺は、孤独な者を救済する事を使命としている。例えそれがギアであろうと、賞金首であろうとだ。」
「…孤独な者を、救済?」
「そうだ、この手配書を見た時、俺ァすぐ分かったぜ?
お前さんも例外じゃねぇ、孤独に苦しんでる存在だ。…実際そうなんだろ」
「…」
「たまたまこの街に食料の調達にやって来たんだが、いきなりお前さんを見かけたんでなぁ」
ジョニーのその言葉を最後に、会話が途切れる。
しばらく二人とも話を切り出さなかったが、不意にジョニーから再び言葉が出る。
「ってなワケで、どうだ。うちの快賊団に来ねぇか?」
「……えっ…?」
突然そんな誘いを持ちかけられて、女性は一瞬、何が何だか判らなかった。
露骨に困惑する彼女を尻目に、ジョニーは言葉を続ける。
「急な話で悪いが、俺達と一緒にいれば、賞金稼ぎやら何やらに襲われる心配はねぇゼ?」
女性は口ごもる。目の前の自分の手配書を眺めたまま、呆けていた。
だが数秒の沈黙の後、ようやくジョニーの言葉に返事を返した。
「…気持ちは嬉しいけど。
いきなり現れた見ず知らずの人についていく気なんてないし…
私は自分が何者なのか知りたいし、記憶を探さなきゃいけないし…」
女性のつれない返事を聞いて、ジョニーは左手で頬杖をつく。
余った右腕で再びコーヒーカップの取っ手を握り、またコーヒーを口に運んだ。
「そんな事言わずにィ。
俺達快賊団の仲間に入れば、衣食住の保障は当然として、楽しい事だらけで退屈はしねぇし、
賞金稼ぎなんか立ち入る隙間もねぇ、安全だ。
…あー、こないだ変な女にエンジンやられて落っこちたりしたが、何、俺が守ってやる。
それにお前さんが探している記憶も、世界中飛び回っていればすぐに見つかるだろうさ。」
「…自分の力で見つけ出したいから」
手にしていたカップをゆらゆらと弄びながら、ジョニーも口を閉ざした。
そのままお互いに言葉もなく、しばらくの間沈黙が続いた。
「…お前さんが自ら、荊の道を選ぶその志は褒めてやる…しかしだ、理想を語る前にもっと現実を見た方がいい。
このまま一人旅してりゃ、いつどこで、どんなおっかない野郎に襲われるかわかったもんじゃねぇ。
捕まって、機関にでも差し出されたりしてみな。そこでお前さんの全てが終わるんだ」
「……」
「確かに急な話だが、時間はいくらでもある。とりあえず一緒に来てから、よく考えて…お?」
ジョニーは何かに気を取られ、言葉を止めた。
窓際に座っていれば、窓のすぐ向こうに誰かが立っているとすぐに気づく。
そして今、窓のすぐ向こうに誰かが立っていたので、二人ともその誰かに視線を送る。
一人の少女が、店の窓を介して二人の前に立っていた。
オレンジの、あたかも海賊を髣髴とさせるデザインの大きな帽子をかぶって、薄く茶色がかった長い髪を持ち、
パッチリと大きな眼をした可愛らしい少女であった。
服も帽子と同じオレンジ色のノースリーブで、それ以上は店の垣根に隠れて見る事は出来なかった。
そしてその少女は何故か、ジョニーの方を見てどこか怒っている様な表情を浮かべていた。
「(ジョニーッ!何よ、その女!!)」
少女が外で何かを言っている様だが、ガラス窓がその声を全て跳ね返してしまい、二人に届く事はなかった。
「あ~…やかましいのが来ちまった。」
ジョニーは少女を見て、慌ててコーヒーを飲み干す。
カップをコースターに置いて、外に居る少女に何かしらの合図を送った後、
テーブルに広げてあった女性の手配書をしまう。
「じゃあ、話の途中で悪いが俺は行くぜ? お前さんが一人で旅を続けたいって言い張るのなら、俺は止めはしねぇ。」
「……」
「だが、もし気が変わったんなら、俺んとこに来な。
…ま、俺ぁ一つの場所に落ち着く様な柄じゃ、ねぇけどな。」
ジョニーは冷静を保ったまま、横においていた黒い帽子を被って、席を立つ。
改めて見るとやはり長身で、膝まで届く程の大きな黒コートの裾がユラユラとなびく。
女性は何も言わないまま、身支度をするジョニーを見ていた。
「代金は、俺のコーヒーの分だけか。
…おっとそうだ。手配書にもお前さんの名前が無かったが、最後に名前、教えてくんねぇか?
記憶をなくして、自分の名前まで忘れてたりしてなけりゃ、の話だがな。」
「本当の名前もわからないから、…アパーシャって名乗ってる。」
「…アパーシャ、『失語症』か。
確かにお前さん口数少ないが、どうせ名乗るんならもっとエレガントな名前にした方が良い。
ま、とにかく縁があったら又会おうか。」
ジョニーはテーブルにコーヒー代を置いて、アパーシャに背を向ける。
彼がゆっくりと歩いてこの静かな軽食店を出て行くと、先ほどの少女がすぐさま彼に飛びついた。
そんな様子を、アパーシャはただずっと眺めていた。
やがてジョニーと少女がマドリードの人ごみの中に紛れて行って、遂には姿が見えなくなった。
スペイン。
地中海性気候独特の乾燥した空気が市街地を包み込む。
昼下がりの空は快晴で、眩しい日差しを遮るものは何もなかった。
場所は同国首都、マドリード。かつて勃発した最大最悪の大戦―――『聖戦』の惨禍に巻き込まれ、
深々とその傷跡を刻む事となったこの都市も、復興作業は数年前に完全に完了、
活気を取り戻し、往時と変わらぬ大都市としての機能を取り戻していた。
繁華街は際立って多くの人々で賑わい、遥か天空より眩しい陽光が分け隔てなく降り注ぐ。
昼時となると、昼食を取ろうとこの繁華街はより一層、多くの人がやってくる。
市内各所の飲食店はそんな人々で溢れ返り、店の方もごった返す事だろう。
そんな中に一つ、程よく空いている軽食店があった。
メインストリートに存在するにも関わらず、あまり目立たない感じのシックな店。
石造りの床に、丸い洋風のテーブルと洒落た椅子が3~4脚セットで店内の各所に置かれ、
壁際には洒落たアンティークがパラパラと置かれている。
昼時と言う事で明かりを灯してはいなく、とてもゆったりと、落ち着いた雰囲気を醸し出している。
壁はガラス張りになっていて、眩しい陽光が店内の一部を優しく照らしている。
物静かなで空気も涼しく、人もそんなに居ない。
そんな店内の、出入口の近くの壁際の席に、二人の男女が座っていた。
女性の方は、肩に掛かるぐらいの、しっとりとした水色の美しい髪を持ち、
すっと通った鼻、小さな潤んだ唇、そして何処か憂いに満ちた眼。
動きやすい白生地のノースリーブの服を着て、膝より少し下までを包み込むズボンの両腰には、
奇妙な形の柄をした細身の剣が2本、鞘に収められてベルトに掛けられていた。
そして、その女性と向かい合って座っている男性。
容姿から判断して30代だろうか、普段なら常にかぶっている、大きなツバをした黒い帽子も、
流石に店内では外して、長い金髪を後ろで結わえてるのが見える。
だが漆黒のサングラスは外さず、その眼を伺うことは出来ない。
がっちりとした長身には、薄地の長い黒コートを羽織っているだけで、鍛え抜かれた胸板や腹筋が見える。
これまた黒色のズボンは大きなベルトバックルが大きく目立ち、上から下まで黒で統一されている。
そんな風貌ではあるものの、不思議と違和感は無かった。
男の前には、白いコースターの上にコーヒーカップが置かれ、
そして中にはこの店自慢のコーヒーがブラックで入れられている。
だが女性は何も注文せず、男性と目を合わさない様に俯き、ただ視線を泳がせていた。
「悪いな。忙しいとこ、時間取らせちまって」
男性が、飄々とした声で女性に話しかける。
しかし女性は尚も俯いたまま、言葉を返さなかった。
「ま、初対面でいきなり悪いが、大事な話があるんだ」
元々女性は、マドリードの大通りをこれと言った当てもなく歩いていた。
そこへ現れた、この謎のサングラスの男。全く見知りもしないこの男が、彼女に声を掛けてきた。
最初は無視していたが、何か用があるなどと言い張るので、この軽食店へと一緒にやって来たのだ。
そんな状況下に置かれていれば、女性が不審な気持ちを抱くのも当然であった。
「…その前に…あなた、誰…?」
ずっと口を閉ざしていた女性がようやく口を開いた。
とても小さく、ボーっとしていれば聞き逃してしまう様な声であったが、
男性はしっかりと聞き取り、返事を返す。
「おっと。この俺としたことが、レディを前に自己紹介を忘れるたぁ。」
相変わらずのつかみ所のない声を出し、男は少し笑ってコーヒーを口に運ぶ。
一口啜った後、カップをコースターに置き直して、言葉を続ける。
「空を駆ける、紅い飛行船。お前さんも一度ぐらいは見たこと、あるだろ」
「…知らない」
「おっと…。じゃ、今知っておくといい。
空飛ぶ紅い飛行船に乗り込むは、その名も『ジェリーフィッシュ快賊団』!
んでその快賊団を率いるエレガントでハンサムな団長が、ジョニーって名前なんだが…この俺の事さぁ。」
サングラスの男はそう答えたが、女性の知りたい事はそんなものではなかった。
このジョニーと名乗る男が、初対面の自分にナンパ以外に何の用件があるのか、その一点だけだった。
「さて、本題に入ろうか。…お前さん、これ、知ってるか」
コーヒーカップを置き、ジョニーは何かをコートの内側から取り出す。
それは、何かの紙…大きめで、また真新しいものであった。
ジョニーはそれをテーブルの上に置き、女性に見える様に広げた。
「…!?」
女性はそれを見て、目を疑った。
水色の髪、物静かな雰囲気の顔立ち―――自分の顔が、その紙にはデカデカと載っていた。
そしてその下には、『WANTED $7500000』と言う文字が見えた。
「(…賞金首の手配書?)」
女性は呆然とするしか出来なかった。
何で自分が、こんな法外な懸賞金とともに、手配されているのか全く分からなかった。
この理不尽な状況に、表面では冷静を装いながらも、頭の中は混乱していた。
「その様子だと、知らなかったらしいな。この手配書の通り、お前さんには賞金が掛けられている。」
さっきまでの飄々とした声から途端に変わり、ジョニーは真面目な声で話す。
「こないだのギアの騒ぎの時程じゃないが、それでもかなりの額だ。
何したか知らんが、相当な事したんだろ?」
女性はやがて落ち着きを取り戻し、自身の状況をようやく受け入れた様である。
とは言え、まだ多少の動揺は残っているらしい。
「…私、何もしてないのに…何で、こんな…」
小さな掠れた声で、女性がつぶやいた。
「身に覚えもないのに、この額か?不思議な事もあるもんだな」
「…私…数ヶ月前までの記憶が全然ないから…。丁度、武道大会とか言うのが終わった辺り…」
「成程、記憶喪失。だがぁ…」
ジョニーはそこで言葉を止める。
この女性とは今日が初対面であるが、見る限りではとても犯罪をする様な人間には見えなかった。
記憶を失ったと言うのは武道大会が終わった頃らしいが、それも大分前の事である。
この手配書が出回ったのは最近の事で、どうにも食い違うのが彼にとっての疑問なのだ。
「とにかく、もうこの手配書は世に出回っている。
これから先、賞金稼ぎどもがお前さんの都合などお構いなしに襲い掛かってくるだろうゼ」
この手配書が存在する限り、彼女は賞金稼ぎ達の標的となる。
細身の剣を2本、便宜上持ち合わせているとは言え、実は彼女に戦闘の経験など殆どなかった。
「じゃあ…あなたは何?賞金稼ぎじゃないの?」
今度は、女性の方からジョニーへと質問を投げかけた。
ようやく話題に食いついてきた手応えを感じ、ジョニーはカップにまた手を伸ばす。
「勘違いされちゃあ困る。でかい声じゃ言えんが、俺だって一級の賞金首。お前さんと同じ類の人間さ。」
「…?」
「俺はお前さんを、救いに来たのさ」
救いに来た?
その言葉の意味を、女性は理解しかねる。
怪訝な表情を浮かべて黙り込んだまま、ただジョニーを見つめて次の言葉を待った。
「俺は、孤独な者を救済する事を使命としている。例えそれがギアであろうと、賞金首であろうとだ。」
「…孤独な者を、救済?」
「そうだ、この手配書を見た時、俺ァすぐ分かったぜ?
お前さんも例外じゃねぇ、孤独に苦しんでる存在だ。…実際そうなんだろ」
「…」
「たまたまこの街に食料の調達にやって来たんだが、いきなりお前さんを見かけたんでなぁ」
ジョニーのその言葉を最後に、会話が途切れる。
しばらく二人とも話を切り出さなかったが、不意にジョニーから再び言葉が出る。
「ってなワケで、どうだ。うちの快賊団に来ねぇか?」
「……えっ…?」
突然そんな誘いを持ちかけられて、女性は一瞬、何が何だか判らなかった。
露骨に困惑する彼女を尻目に、ジョニーは言葉を続ける。
「急な話で悪いが、俺達と一緒にいれば、賞金稼ぎやら何やらに襲われる心配はねぇゼ?」
女性は口ごもる。目の前の自分の手配書を眺めたまま、呆けていた。
だが数秒の沈黙の後、ようやくジョニーの言葉に返事を返した。
「…気持ちは嬉しいけど。
いきなり現れた見ず知らずの人についていく気なんてないし…
私は自分が何者なのか知りたいし、記憶を探さなきゃいけないし…」
女性のつれない返事を聞いて、ジョニーは左手で頬杖をつく。
余った右腕で再びコーヒーカップの取っ手を握り、またコーヒーを口に運んだ。
「そんな事言わずにィ。
俺達快賊団の仲間に入れば、衣食住の保障は当然として、楽しい事だらけで退屈はしねぇし、
賞金稼ぎなんか立ち入る隙間もねぇ、安全だ。
…あー、こないだ変な女にエンジンやられて落っこちたりしたが、何、俺が守ってやる。
それにお前さんが探している記憶も、世界中飛び回っていればすぐに見つかるだろうさ。」
「…自分の力で見つけ出したいから」
手にしていたカップをゆらゆらと弄びながら、ジョニーも口を閉ざした。
そのままお互いに言葉もなく、しばらくの間沈黙が続いた。
「…お前さんが自ら、荊の道を選ぶその志は褒めてやる…しかしだ、理想を語る前にもっと現実を見た方がいい。
このまま一人旅してりゃ、いつどこで、どんなおっかない野郎に襲われるかわかったもんじゃねぇ。
捕まって、機関にでも差し出されたりしてみな。そこでお前さんの全てが終わるんだ」
「……」
「確かに急な話だが、時間はいくらでもある。とりあえず一緒に来てから、よく考えて…お?」
ジョニーは何かに気を取られ、言葉を止めた。
窓際に座っていれば、窓のすぐ向こうに誰かが立っているとすぐに気づく。
そして今、窓のすぐ向こうに誰かが立っていたので、二人ともその誰かに視線を送る。
一人の少女が、店の窓を介して二人の前に立っていた。
オレンジの、あたかも海賊を髣髴とさせるデザインの大きな帽子をかぶって、薄く茶色がかった長い髪を持ち、
パッチリと大きな眼をした可愛らしい少女であった。
服も帽子と同じオレンジ色のノースリーブで、それ以上は店の垣根に隠れて見る事は出来なかった。
そしてその少女は何故か、ジョニーの方を見てどこか怒っている様な表情を浮かべていた。
「(ジョニーッ!何よ、その女!!)」
少女が外で何かを言っている様だが、ガラス窓がその声を全て跳ね返してしまい、二人に届く事はなかった。
「あ~…やかましいのが来ちまった。」
ジョニーは少女を見て、慌ててコーヒーを飲み干す。
カップをコースターに置いて、外に居る少女に何かしらの合図を送った後、
テーブルに広げてあった女性の手配書をしまう。
「じゃあ、話の途中で悪いが俺は行くぜ? お前さんが一人で旅を続けたいって言い張るのなら、俺は止めはしねぇ。」
「……」
「だが、もし気が変わったんなら、俺んとこに来な。
…ま、俺ぁ一つの場所に落ち着く様な柄じゃ、ねぇけどな。」
ジョニーは冷静を保ったまま、横においていた黒い帽子を被って、席を立つ。
改めて見るとやはり長身で、膝まで届く程の大きな黒コートの裾がユラユラとなびく。
女性は何も言わないまま、身支度をするジョニーを見ていた。
「代金は、俺のコーヒーの分だけか。
…おっとそうだ。手配書にもお前さんの名前が無かったが、最後に名前、教えてくんねぇか?
記憶をなくして、自分の名前まで忘れてたりしてなけりゃ、の話だがな。」
「本当の名前もわからないから、…アパーシャって名乗ってる。」
「…アパーシャ、『失語症』か。
確かにお前さん口数少ないが、どうせ名乗るんならもっとエレガントな名前にした方が良い。
ま、とにかく縁があったら又会おうか。」
ジョニーはテーブルにコーヒー代を置いて、アパーシャに背を向ける。
彼がゆっくりと歩いてこの静かな軽食店を出て行くと、先ほどの少女がすぐさま彼に飛びついた。
そんな様子を、アパーシャはただずっと眺めていた。
やがてジョニーと少女がマドリードの人ごみの中に紛れて行って、遂には姿が見えなくなった。
PR
メイ「この船ってさ、どうやって浮いてるの?ジョニー?」
ジョニー「細かいことは気にするな。まぁなんにしろ、動力源が壊されないかぎり、落ちることはない」
エイプリル「船長!動力源が・・・」
メイ・ジョニー「・・・」
ジョニー「細かいことは気にするな。まぁなんにしろ、動力源が壊されないかぎり、落ちることはない」
エイプリル「船長!動力源が・・・」
メイ・ジョニー「・・・」
幸せ~ディズィ-(ギルティギア)~
「ふぁ~」
眩しい日差しと鳥達の鳴き声に起こされるようにして目が覚めました
「今日もいい天気」
雲一つないとても気持ちの良い快晴。窓から入って来る風が気持ちの良い朝です。
『おはよう~みんな朝御飯の準備出来たから食堂に集まって~』
館内放送です。待たせては悪いので着替えて食堂に向かいました。
「あっ!ディズィ-おはよう~」
「おはようございます」
部屋を出たところでエイプリルに会いました。
「ディズィ-今日が何の日か知ってる?」
「?」
私は首を傾げました。
「ふふふ、今日はとっても大事な日だよ」
私が考えてるのを見てエイプリルは笑いながら言いました。
「誰かの誕生日とかですか?」
「ぶぶー残念でした。…でも誰かを祝う日って言うのはあってるよ」
何を祝うのかを聞こうと思いましたが、エイプリルに朝御飯を急かされてそのまま食堂に向かいました。
「おはようディズィ-」
「おはようございます」
みんなに一通り挨拶が終り席につくととメイが立ち上がりました。
「みんなおはよう。今日はディズィ-がジェリーフィッシュ海賊団に入って丁度一年経ちます。」
もうそんなに経つんですね。時間って不思議ですね。
「あの時はごたごたしてて、祝ったあげれなかったから今日改めてディズィ-歓迎会をします!」
「そんな気を使わなくても良いですよ」
その気持ちだけで私はとても嬉しいですから。
「何言ってるんだよ。ディズィ-は僕達の大切な仲間だよ。ちゃんと迎えいれてあげたいんだ」
「メイ…」
思わず嬉しくて涙が出てきました。
「メイ…みんなありがとう」
「だから良いんだって僕達は当たり前の事をしてるだけだよ」
「はい」
その当たり前の事がとても嬉しくて嬉しくて…
「ほら、これで拭きな」
そんな私に見かねてジョニーさんが小さなハンカチを渡してくれました。
「泣いた顔も良いがお前さんには笑顔の方が似合うぜ」
こうやってたくさんの人と
「ジョニーったらす~ぐカッコつける」
当たり前の事を当たり前のように
「おーと悪い。お前さんの笑顔も素敵だぜ」
みんなで笑って泣いて騒いで
「ジョニーったら」
今ここに私がいられる事が
「うふふふ」
「さて続きを始めるとするか」
とても幸せです。
『ディズィ-!ジェリーフィッシュ海賊団へようこそ!』
「ふぁ~」
眩しい日差しと鳥達の鳴き声に起こされるようにして目が覚めました
「今日もいい天気」
雲一つないとても気持ちの良い快晴。窓から入って来る風が気持ちの良い朝です。
『おはよう~みんな朝御飯の準備出来たから食堂に集まって~』
館内放送です。待たせては悪いので着替えて食堂に向かいました。
「あっ!ディズィ-おはよう~」
「おはようございます」
部屋を出たところでエイプリルに会いました。
「ディズィ-今日が何の日か知ってる?」
「?」
私は首を傾げました。
「ふふふ、今日はとっても大事な日だよ」
私が考えてるのを見てエイプリルは笑いながら言いました。
「誰かの誕生日とかですか?」
「ぶぶー残念でした。…でも誰かを祝う日って言うのはあってるよ」
何を祝うのかを聞こうと思いましたが、エイプリルに朝御飯を急かされてそのまま食堂に向かいました。
「おはようディズィ-」
「おはようございます」
みんなに一通り挨拶が終り席につくととメイが立ち上がりました。
「みんなおはよう。今日はディズィ-がジェリーフィッシュ海賊団に入って丁度一年経ちます。」
もうそんなに経つんですね。時間って不思議ですね。
「あの時はごたごたしてて、祝ったあげれなかったから今日改めてディズィ-歓迎会をします!」
「そんな気を使わなくても良いですよ」
その気持ちだけで私はとても嬉しいですから。
「何言ってるんだよ。ディズィ-は僕達の大切な仲間だよ。ちゃんと迎えいれてあげたいんだ」
「メイ…」
思わず嬉しくて涙が出てきました。
「メイ…みんなありがとう」
「だから良いんだって僕達は当たり前の事をしてるだけだよ」
「はい」
その当たり前の事がとても嬉しくて嬉しくて…
「ほら、これで拭きな」
そんな私に見かねてジョニーさんが小さなハンカチを渡してくれました。
「泣いた顔も良いがお前さんには笑顔の方が似合うぜ」
こうやってたくさんの人と
「ジョニーったらす~ぐカッコつける」
当たり前の事を当たり前のように
「おーと悪い。お前さんの笑顔も素敵だぜ」
みんなで笑って泣いて騒いで
「ジョニーったら」
今ここに私がいられる事が
「うふふふ」
「さて続きを始めるとするか」
とても幸せです。
『ディズィ-!ジェリーフィッシュ海賊団へようこそ!』
「以上が貴様が偵察すべき重要人物だ」
とある研究施設のとある(いかにも怪しげな)部屋に男が一人…いや、正確には二人。
「ワシの手にかかればこの程度の事、楽勝だ」
椅子(充電器?)に偉そうにふん反り返る男…カイのデータを元に作られた人型兵器。
「このミッションは可能な限り隠密に頼むぞ?」
「ワシを誰だと思っている?」
「心強い返事だ。では頼んだぞ、ロボカイ」
「…面倒臭い…」
さっきまでの忠誠心はどこへやら…
考え無しに行動した結果、行き着いた場所が中国だったりする。
「そういえば、ここには「気」を使う女がいるらしい」
…女だって?
3秒ほどフリーズする。
結論…
「これはワシがしっかりみっちり偵察しなければ」
というわけで早速女の元へ…
「ほわっちゃー!!」
威勢の良い掛け声が聞こえる。
片やキック3連撃をまともにもらい、致命傷(というか死にかけ)の紙袋頭。
確か奴は、近ごろ身体能力がギアを超えたという説があったはず…(自分の頭投げる位だし…)
「あ~…医者がぼろ切れに…投げ青キャン始動の溜め付き攻撃って痛いんだよね~」
呑気に酢豚を食らうバンダナの男…確かアクセルとか言ったな…がぼやく。
「おっ?団長さん…じゃね~な…誰だい?お前さん?」
まずい…隠密行動なのに…早速姿がバレてしまった…。
ここは上手く誤魔化すしかない。
「ワタシハひす×、ニセモノデハアリマセン」
「…いいよな~翡×…というかメイドさん…。次回作の新キャラで入ってこないかな~」
…なんかベクトルの違う話になったが誤魔化せた。
というか次回作って何のことだ…?
「これはアクセルさん…と…そこにいるのは誰ですか?見たところ、私と同じ格好をしていますが?」
…最高のタイミングで一番会いたくない奴に…
「もしや…」
こんなところで正体がバれるとは…
「貴方もアルベイン流奥義の使い手!?」
「そっちかよ!」
思わず突っ込んでしまった。
「…で、団長さんは何のためにこんな所に?」
「ジャパニーズのコロニーへ出向こうと思いまして…」
「あ~そうか!もうすぐ夏コミだね~!さすが団長さん、やる事が違う!」
…今のは褒め言葉なのか…?…ていうかまだ存在するのか?コミケって…。
「ねえ…貴方達…ザトーを見なかった?」
金髪萌え娘到来。
「こ…これは…ワシの好み…」
「ザトー…?見掛けないな~。それより俺とお茶しない~?」
「そこの馬鹿二人は放って置いて…団長さんなら知ってるんじゃない?」
なぜか、戦闘のときにしか見せない様な真剣な顔のカイ…そして…
「ヴァルキリー!僕にグングニルを貸して下さい!」
唐突に訳の分からない事を言う団長…
「これは貴様の様な愚かな人間に使える代物ではない!」
その訳の分からない事になぜか応対しているミリア。
「しかし…グングニルが無ければ…ダ○スの勢力に勝ることは出来ません!」
誰だよ…ダ○スって…
「旅人は…時に詩人になるものさ…」
ハーモニカを吹きながらやってくる黒い影。
言ってることはキ×なのに行動はスナフ○ン…?
「ザトー様ぁ!」
さらにどこからともなく沸いて出た陰湿男。
「あっ…ホモだ」
「今度ボーイズラヴの同人誌でも書いてみましょうかね」
「悪いねムーミン…僕はそんな趣味は無いのさ」
「邪魔をしないで…私がザトーを殺すのだから…」
思い思いのネタを吐く人達…すごい言われ様だ…
「フッ…どうせ私は攻略本にも「才能が開花せず」なんて書かれるような役立たずさ…畜生」
いじけてるし…
というか…攻略本…?
「だが…ザトー様を愚弄するなぁ!」
誰もしてないから…。
いきり立つヴェノムの前に立ちはだかるミリア。
「貴方…邪魔よ…殺しちゃおうかしら…?」
ぴたりと動かなくなる(というか金縛り状態)ヴェノム。
「なんか…ミリアさんの目紅くありませんでした?」
焦るアクセル。
「…魔眼だと!?…く…なぜ白き姫が…」
同じく焦るカイ。
…というか誰だよ…白き姫って…
「やっと会えたわね…ネ×・カオス」
とりあえず訳の分からない事を言うミリア。
「会う日をずっと待ち焦がれていた…愛しのヴァルキリーよ…」
眼鏡とローブと狂気が似合いそうな台詞。
「うっわ~…ぎりぎりのネタ…分かる人少ないんじゃないの?」
アクセルがまた訳の分からない事を言う…ていうかさっきまでのザトーのキャラはどこに …?
「あ…超ドリルハメが入った」
「ミリアさんの装甲だとあのまま逝けますね…」
確かにダムドファングとドリル設置が決まっている。
あとは殴ってシャドウギャラリーを決めればミリアさんは終了な訳だ。
「ぐ…ザトー…」
息も絶え絶えのミリア。
「トドメだ…空破斬!!」
…殴ってシャドウギャラリーじゃないの…?
「ア×ベル!?」
「いえ…子安さんなので今のは×ィアスです!!」
ひどく焦る二人。子安さんって誰…?
…というか同じ空破斬大差無いだろ…それ以前にネタが古い…。
「ミストファイナーっ!」
一瞬の閃光、崩れるザトーの影。
「私は…魔物を狩る者だから…」
…そりゃ確かに性能は似てますよ(舞=ジョニー+エディな訳だし…えっ?何のことか分からない?そんな貴方にはEFZを推奨)
だからってその台詞はまずいだろ…?
「ちょっと、ジョニー!今日は迷子の3歳児を探しに来ただけでしょう?」
迷子の3歳児…AVのタイトルじゃあるまいし…。
「線が…見えるんだ…僕はただ…その線をなぞっただけ…眼鏡をしてないと…世界が今にも崩れてしまいそうで…」
「はいはい…もういいから」
「お待ちなさい」
呼び止めるカイ。
「おっと…もうお前さんは公務の者じゃないだろう?」
真剣なまなざしのカイ…そして…
「私と共に、冬コミに向けて同人誌を書きませんか」
「その話、載ったぜ?」
…即答かよ…
「ちょっ…ちょっとジョニー!」
「ん~…お前と俺のネタいってみるか?」
ジョニーとメイ…絶対的に18禁同人誌じゃん…
「も~ジョニーってば~(ぽっ)」
「ザトーなんかは結構鬼畜係に使えますね」
あっ…いまザトー様が愚弄された…って顔の金縛り男。
和気藹々に去っていく人達。
取り残されたロボカイとアクセルと陰湿男と死者二人。
「何だったんだろうな…?」
何か、やたらとネタが炸裂していた様な…
「は~…俺もう帰るわ…」
「…はたしてこのデータは有力なのか…?」
夕日で朱く染まる砂漠…じゃなくて中華飯店前。
ただ慌ただしい時間が過ぎただけの一日。
ジャムの低空ダッシュ牽制で固められているソル(いつの間にか対戦相手が変わっていた)
「…むなしい…今日の偵察はやめよう…」
…色の濃すぎる面子のそろうこの世界。
はたして、ロボカイは無事に偵察を済ませることは出来るのか?
次回に続く
「…わけがない!」
とある研究施設のとある(いかにも怪しげな)部屋に男が一人…いや、正確には二人。
「ワシの手にかかればこの程度の事、楽勝だ」
椅子(充電器?)に偉そうにふん反り返る男…カイのデータを元に作られた人型兵器。
「このミッションは可能な限り隠密に頼むぞ?」
「ワシを誰だと思っている?」
「心強い返事だ。では頼んだぞ、ロボカイ」
「…面倒臭い…」
さっきまでの忠誠心はどこへやら…
考え無しに行動した結果、行き着いた場所が中国だったりする。
「そういえば、ここには「気」を使う女がいるらしい」
…女だって?
3秒ほどフリーズする。
結論…
「これはワシがしっかりみっちり偵察しなければ」
というわけで早速女の元へ…
「ほわっちゃー!!」
威勢の良い掛け声が聞こえる。
片やキック3連撃をまともにもらい、致命傷(というか死にかけ)の紙袋頭。
確か奴は、近ごろ身体能力がギアを超えたという説があったはず…(自分の頭投げる位だし…)
「あ~…医者がぼろ切れに…投げ青キャン始動の溜め付き攻撃って痛いんだよね~」
呑気に酢豚を食らうバンダナの男…確かアクセルとか言ったな…がぼやく。
「おっ?団長さん…じゃね~な…誰だい?お前さん?」
まずい…隠密行動なのに…早速姿がバレてしまった…。
ここは上手く誤魔化すしかない。
「ワタシハひす×、ニセモノデハアリマセン」
「…いいよな~翡×…というかメイドさん…。次回作の新キャラで入ってこないかな~」
…なんかベクトルの違う話になったが誤魔化せた。
というか次回作って何のことだ…?
「これはアクセルさん…と…そこにいるのは誰ですか?見たところ、私と同じ格好をしていますが?」
…最高のタイミングで一番会いたくない奴に…
「もしや…」
こんなところで正体がバれるとは…
「貴方もアルベイン流奥義の使い手!?」
「そっちかよ!」
思わず突っ込んでしまった。
「…で、団長さんは何のためにこんな所に?」
「ジャパニーズのコロニーへ出向こうと思いまして…」
「あ~そうか!もうすぐ夏コミだね~!さすが団長さん、やる事が違う!」
…今のは褒め言葉なのか…?…ていうかまだ存在するのか?コミケって…。
「ねえ…貴方達…ザトーを見なかった?」
金髪萌え娘到来。
「こ…これは…ワシの好み…」
「ザトー…?見掛けないな~。それより俺とお茶しない~?」
「そこの馬鹿二人は放って置いて…団長さんなら知ってるんじゃない?」
なぜか、戦闘のときにしか見せない様な真剣な顔のカイ…そして…
「ヴァルキリー!僕にグングニルを貸して下さい!」
唐突に訳の分からない事を言う団長…
「これは貴様の様な愚かな人間に使える代物ではない!」
その訳の分からない事になぜか応対しているミリア。
「しかし…グングニルが無ければ…ダ○スの勢力に勝ることは出来ません!」
誰だよ…ダ○スって…
「旅人は…時に詩人になるものさ…」
ハーモニカを吹きながらやってくる黒い影。
言ってることはキ×なのに行動はスナフ○ン…?
「ザトー様ぁ!」
さらにどこからともなく沸いて出た陰湿男。
「あっ…ホモだ」
「今度ボーイズラヴの同人誌でも書いてみましょうかね」
「悪いねムーミン…僕はそんな趣味は無いのさ」
「邪魔をしないで…私がザトーを殺すのだから…」
思い思いのネタを吐く人達…すごい言われ様だ…
「フッ…どうせ私は攻略本にも「才能が開花せず」なんて書かれるような役立たずさ…畜生」
いじけてるし…
というか…攻略本…?
「だが…ザトー様を愚弄するなぁ!」
誰もしてないから…。
いきり立つヴェノムの前に立ちはだかるミリア。
「貴方…邪魔よ…殺しちゃおうかしら…?」
ぴたりと動かなくなる(というか金縛り状態)ヴェノム。
「なんか…ミリアさんの目紅くありませんでした?」
焦るアクセル。
「…魔眼だと!?…く…なぜ白き姫が…」
同じく焦るカイ。
…というか誰だよ…白き姫って…
「やっと会えたわね…ネ×・カオス」
とりあえず訳の分からない事を言うミリア。
「会う日をずっと待ち焦がれていた…愛しのヴァルキリーよ…」
眼鏡とローブと狂気が似合いそうな台詞。
「うっわ~…ぎりぎりのネタ…分かる人少ないんじゃないの?」
アクセルがまた訳の分からない事を言う…ていうかさっきまでのザトーのキャラはどこに …?
「あ…超ドリルハメが入った」
「ミリアさんの装甲だとあのまま逝けますね…」
確かにダムドファングとドリル設置が決まっている。
あとは殴ってシャドウギャラリーを決めればミリアさんは終了な訳だ。
「ぐ…ザトー…」
息も絶え絶えのミリア。
「トドメだ…空破斬!!」
…殴ってシャドウギャラリーじゃないの…?
「ア×ベル!?」
「いえ…子安さんなので今のは×ィアスです!!」
ひどく焦る二人。子安さんって誰…?
…というか同じ空破斬大差無いだろ…それ以前にネタが古い…。
「ミストファイナーっ!」
一瞬の閃光、崩れるザトーの影。
「私は…魔物を狩る者だから…」
…そりゃ確かに性能は似てますよ(舞=ジョニー+エディな訳だし…えっ?何のことか分からない?そんな貴方にはEFZを推奨)
だからってその台詞はまずいだろ…?
「ちょっと、ジョニー!今日は迷子の3歳児を探しに来ただけでしょう?」
迷子の3歳児…AVのタイトルじゃあるまいし…。
「線が…見えるんだ…僕はただ…その線をなぞっただけ…眼鏡をしてないと…世界が今にも崩れてしまいそうで…」
「はいはい…もういいから」
「お待ちなさい」
呼び止めるカイ。
「おっと…もうお前さんは公務の者じゃないだろう?」
真剣なまなざしのカイ…そして…
「私と共に、冬コミに向けて同人誌を書きませんか」
「その話、載ったぜ?」
…即答かよ…
「ちょっ…ちょっとジョニー!」
「ん~…お前と俺のネタいってみるか?」
ジョニーとメイ…絶対的に18禁同人誌じゃん…
「も~ジョニーってば~(ぽっ)」
「ザトーなんかは結構鬼畜係に使えますね」
あっ…いまザトー様が愚弄された…って顔の金縛り男。
和気藹々に去っていく人達。
取り残されたロボカイとアクセルと陰湿男と死者二人。
「何だったんだろうな…?」
何か、やたらとネタが炸裂していた様な…
「は~…俺もう帰るわ…」
「…はたしてこのデータは有力なのか…?」
夕日で朱く染まる砂漠…じゃなくて中華飯店前。
ただ慌ただしい時間が過ぎただけの一日。
ジャムの低空ダッシュ牽制で固められているソル(いつの間にか対戦相手が変わっていた)
「…むなしい…今日の偵察はやめよう…」
…色の濃すぎる面子のそろうこの世界。
はたして、ロボカイは無事に偵察を済ませることは出来るのか?
次回に続く
「…わけがない!」
闇慈・チップ・メイの3人はのほほんとみかんを食べながらコタツにあたっていた。
「ねぇ、今日って何日?」
メイの言葉に闇慈が応対し、暦に目をやった。
「今日は5日・・・3月5日だな。」
その言葉を聞いてチップが反応した
「3月5日っていえば、姐さんの誕生日じゃねぇか」
「そういや、そうだな。・・・そうだ!丁度姐さんは修行で滝にうたれに行ってて当分帰って来ねぇから
今のうちに姐さんの誕生日祝いの準備しねぇか?」
「面白そー!!僕賛成」
「俺ものった!!」
「よっしゃ、じゃ、姐さんが帰ってきたら驚かせてやろうぜ!!」
「おーーーーッ!!!」
その頃の姐さん
「へくしゅっ!!・・・チッ誰だ?俺の噂をしてんのは」
遠くでそんな事もあったが、とりあえず準備が始まった
3人は朝早くから準備をし始めた為、日が沈む前には準備が終了した。
あとは梅喧を待つだけだった。
そんな時、戸を開く音と共に梅喧の声が聞えた。
それを聞いた闇慈は玄関へと向かい、メイとチップは待機となった。
足音が止むと同時にふすまが開いた。
「誕生日おめでとー!!」
梅喧は驚いたというよりは何が起きたのか理解しかねているようだった。
そんな梅喧の前に紙吹雪が舞った。
それはメイとチップが撒いているもので、それを見た梅喧は自分の誕生日を祝ってくれていることに気づいた。
「誕生日を祝うなんざ、何年ぶりだ?ま、なんにしろ、祝いの席にはかわりねぇ。・・・アレはあんだろうなぁ?」
梅喧が闇慈に尋ねると、闇慈はもちろんといった表情で『鬼殺し』と書かれた一升瓶を見せた。
梅喧は上機嫌でそれを受け取った。
「そいじゃあ姐さんの誕生日を祝って・・・
「乾ぱーーい!!」
掛け声と共に各々の行動に移った。
梅喧と闇慈は酒を酌み交わしていた・・・というよりは闇慈が梅喧のお酌をしていたというほうが正しい状態だった。
チップとメイの方はというと、チップがメイの狙っていたマグロをとったことが発端で、ネタ取り合戦が開始されていた。
そんな2人を見て梅喧は笑っていた。
しかし、その笑いも長くは続かなかった。
それは闇慈が何度目かのお酌をしているときだった。
突然梅喧が闇慈にも酒を飲めと言ってきた。
闇慈は自分は酒が強くないからといって、梅喧の勧めを断った。
しかし梅喧は自分の勧めを断られたのが気に入らなかったようだ。
「俺の酒が飲めねぇっていうのか!!」
闇慈は、そういう訳ではないと弁解したが、梅喧は闇慈のはっきりしない態度に苛立ち酒を無理矢理飲ませた。
闇慈はいきなり度の強い酒を飲まされた為、一発でのびてしまった。
梅喧は闇慈がのびてしまったので、次にメイとチップに酒を勧めた。
だが2人はまだ酒が飲める年ではない為、勧めを断ったが、梅喧はそんなことでは許してはくれなかった。
「てめぇらも俺の酒が飲めねぇてのか!?」
このままだと闇慈の二の舞を演じるのがオチだと分かりきっていた2人は、少しだけでも飲んでおくことにした。
しかし、2人が出された酒を飲みきらないことが気に触れた様で、闇慈のように無理矢理飲まされてしまった。
チップは闇慈同様で酔い潰れてしまった。
一方メイはというと、酔いつぶれるどころか梅喧にもう1杯欲しいといってきた。
梅喧はそれを見てメイをひどく気に入ったらしく、2人で飲み明かすことにした。
後日、メイはひどい二日酔いでダウンた。
梅喧はというと、特に異常もなく朝から酒を飲んでいた。