10月31日。
キリスト教が出回ってる地域ではハロウィンの日。
しかし英国国教騎士団にそんな年中行事に浮かれる輩などおらず。
人間が扮する怪物が闊歩する夜、正真正銘の怪物はヘルシング邸でいつものように夜を過ごしていた。
こんこん。
「はい?」
自室の扉がノックされる音で、セラスは手入れしていたハルコンネンから顔を上げた。
「嬢ちゃん、オレでーす♪」
「隊長サン? どうしたんですかー?」
がちゃ。
「ハッピー・ハロウィーン!! Trick or Treat!?」
と、陽気な声とスマイルのベルナドット隊長の頭には、お馴染みのパンプキンヘッドがすっぽりと被
さっていた。
ぱたん。
前言撤回。
年中行事に浮かれる輩はどこにでも存在した。
「ああッ!! 嬢ちゃん冷たいっ!!!」
「何やってんですかアナタは!? イイ歳してっ!!」
「(イイ歳!?Σ( ̄□ ̄;))何って、今日はハロウィンだぜ♪
オレ様のココロはいつでもヤングボーイ♪♪」
「‥‥‥‥‥‥‥‥(溜め息)」
「じょーちゃ~ん、Trick or Treat~~~~~(T-T)」
「お菓子なんてあるわけないでしょう!?」
思わず閉じた扉を開けば、待ってました的なベルナドットの笑み。
「お菓子じゃなくっても、嬢ちゃんは甘いもの持ってるでショ?」
「はい?」
つん、とベルナドットの指先がセラスの唇をつつく。
「蜂蜜よりあま~い、嬢ちゃんのスウィート・キッスをプリ~ズ~~‥‥ごァッ!!」
ずびしぃっっ!!
対ベルナドット用標準武器・デコピン、炸裂☆(しかも指2本使用)
あえなくベルナドットは吹っ飛び、被っていたパンプキンヘッドはデコピンの衝撃で砕け散った。
しくしくしく。
「泣かないでくださいっ!!」
「だってよ~~~~、嬢ちゃんが楽しくなるようにと思って、せっかくよ~~~~~(涙)」
「あ‥‥‥‥」
石畳とお友達になりながら吐き出されたベルナドットの言葉に、セラスはしばし考える。
結局、なんだかんだいっても心配してくれているのだ、この人は。
悪気があってのことではないし、行為が多少(?)セクハラになってしまうのは‥‥‥まあ、今日
くらいは大目に見てあげてもいいかもしれない。
セラスの怒気が鎮まってゆくのを、突っ伏した背中で感じ取り(ここらへん腐っても傭兵である)、
ベルナドットはニヤリ☆と笑みを浮かべた。無論セラスには見えていない。
「なら、嬢ちゃん、妥協案~。」
「なんデスカ?」
「クチビルは諦めるから、代わりにこっちくれ~VV」
そう言うなり、ベルナドットはがばりと起き上がり、
モふ♪
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥VVVVVV」
微妙なギ音の後、流れる沈黙。ただし片方はハートマークの乱舞付き。
「‥‥‥‥‥タイチョーサン?」
「んん?VVVV」
「コレが一体何だと??」
「何ってV 嬢ちゃんだけが持ってる最高級のマシュマロVVV
いやー、このナイスな大きさとマーベラスな感触がぜっぴ‥‥‥ごべしっ!!!」
ごばきゃっ。
セラスの拳がうなり、見事な左アッパーが決まった。
キラキラと血と何かをまき散らしつつ、ベルナドットは廊下の宙を舞った。
「ナ、ナイスアッパ‥‥‥ごフっ(吐血)」
親指を立てて、ベルナドットは石畳に沈む。
「隊長サンにちょっとでも気を許したワタシがバカでした‥‥‥‥!!!!」
顔を埋められた胸を押さえつつ、怒りでセラスはブルブルと震えている。
そのまま部屋に入り、後ろ手にがちゃん!と鍵をかけた。
(あううううう、何でこんな目に~~~~~~~~(T-T)
隊長さんのバカバカバカセクハラエロ男~~~~~~~~!!!!!!!
しばらく口きいてやんない~~~~~~!!!!!!!!)
もはやハルコンネンの手入れの続きをする気にもなれず、セラスは部屋に備え付けのベッドに倒れ
込んだ。
「いい夜だ」
「!?」
唐突に聞こえた声に、がばりとセラスは起き上がる。
月光が溢れるテラスに人影。鍵をかけたはずの大きな窓が、開いていた。
「マスター」
ベッドを降り、とてとて、と長身の影へと近づく。
「今夜の街は怪物(フリークス)で溢れ帰る。『本物』が混じっていても気づかれないだろう。
行ってみるか?」
「『ドラキュラ』と『ドラキュリーナ』で、ですか?」
思わず、くすりと笑うと、ふっと目の前が陰った。
「?」
顔をあげると、満月を背に従えて、アーカードが覗き込んでいた。
「‥‥‥マスター?」
「Trick or Treat ?」
「はい?」
間の抜けた声を出して、セラスはまじまじと目の前の吸血鬼を見つめた。
ややあってから、彼女の表情が憮然としたものに変わる。
「も~、マスターまで‥‥‥‥。ふざけないでくださいよ~」
「冗談で言ったつもりはないが?」
「っ!?」
く、と腰と後頭部に力を感じたと思ったら、セラスの体が少し浮き、アーカードの顔が接近する。
「ええええ、あの、ちょっと、マスター~~~~~!?!?(//◎o◎//)」
「”お菓子をくれなきゃイタズラするぞ”だろう?」
「あ、えと、あの‥‥‥‥‥‥ぅ~~~‥‥‥」
頬が熱くなるのが自分でもわかる。
そんなセラスをアーカードは面白そうに見つめて、彼女の次の行動を待っている。
「ま、マスター‥‥‥‥‥」
「ン?」
「~~~~~~~‥‥‥‥(/////)」
顔中を真っ赤に染めて、瞳まで潤ませたセラスがアーカードの横髪をひっぱる。
浮かべた笑みを深くして、吸血鬼はされるがままに背をかがめ、重ねられる唇を受け止めた。
「‥‥‥‥‥‥ッ、ン? ん、んん~~~~~~っ!!」
触れるだけのキスをしてすぐに離れようと思っていたセラスの唇は、しかし、その通りにはできな
かった。
腰と後頭部に添えられた手に力が込もり、キスが深くなる。
「ん‥‥‥‥‥‥! っ、ふ‥‥‥‥‥‥」
するり、と滑らかにアーカードの舌がセラスの唇に忍び込んだ。
ざらりとした感触の舌に自分のそれをなぞられ、口内を蹂躙されて、ぞくぞくとしたものがセラスの
背を走り抜ける。
「は、ぁ‥‥‥‥‥」
たっぷりと貪られて、解放された時にはほとんど足に力が入らず、セラスはアーカードの服にしがみ
つき、半ばもたれかかるようにして体を支えていた。
「確かに‥‥コレはどんな砂糖菓子より甘い‥‥‥」
笑みを多分に含んだ声に、反論しようとすれば、月光に縁取られた相手の微笑があまりに魅力的で、
言葉は喉の奥で立ち消えた。
「さて‥‥ではもらった”お菓子”は残さず食べなければ、な」
「!! え、えぇえええ、あの、ちょっと、マス‥‥‥!!」
アーカードに見とれていた意識が復活したのもつかの間、セラスのあわてふためく声は、吸血鬼から
仕掛けられたキスと、ばさりと広がった深紅のコートに飲み込まれた。
手にしたこの世で最高の”お菓子”を、アーカードがどんな風においしく平らげたのか。
それは、二人だけの秘密。
(マスターのばかぁぁ~~~~~~~~~~~(赤面+涙))(by セラス)
ENDVV
‥‥‥‥‥‥‥‥‥余談だが、この日から3日間ほど、ベルナドットの姿はヘルシング邸の何処を探
しても見あたらなかった。
数日後戻って来た彼は、その間どうしていたのか、誰に聞かれても決して口を割らなかったという。
合掌。
キリスト教が出回ってる地域ではハロウィンの日。
しかし英国国教騎士団にそんな年中行事に浮かれる輩などおらず。
人間が扮する怪物が闊歩する夜、正真正銘の怪物はヘルシング邸でいつものように夜を過ごしていた。
こんこん。
「はい?」
自室の扉がノックされる音で、セラスは手入れしていたハルコンネンから顔を上げた。
「嬢ちゃん、オレでーす♪」
「隊長サン? どうしたんですかー?」
がちゃ。
「ハッピー・ハロウィーン!! Trick or Treat!?」
と、陽気な声とスマイルのベルナドット隊長の頭には、お馴染みのパンプキンヘッドがすっぽりと被
さっていた。
ぱたん。
前言撤回。
年中行事に浮かれる輩はどこにでも存在した。
「ああッ!! 嬢ちゃん冷たいっ!!!」
「何やってんですかアナタは!? イイ歳してっ!!」
「(イイ歳!?Σ( ̄□ ̄;))何って、今日はハロウィンだぜ♪
オレ様のココロはいつでもヤングボーイ♪♪」
「‥‥‥‥‥‥‥‥(溜め息)」
「じょーちゃ~ん、Trick or Treat~~~~~(T-T)」
「お菓子なんてあるわけないでしょう!?」
思わず閉じた扉を開けば、待ってました的なベルナドットの笑み。
「お菓子じゃなくっても、嬢ちゃんは甘いもの持ってるでショ?」
「はい?」
つん、とベルナドットの指先がセラスの唇をつつく。
「蜂蜜よりあま~い、嬢ちゃんのスウィート・キッスをプリ~ズ~~‥‥ごァッ!!」
ずびしぃっっ!!
対ベルナドット用標準武器・デコピン、炸裂☆(しかも指2本使用)
あえなくベルナドットは吹っ飛び、被っていたパンプキンヘッドはデコピンの衝撃で砕け散った。
しくしくしく。
「泣かないでくださいっ!!」
「だってよ~~~~、嬢ちゃんが楽しくなるようにと思って、せっかくよ~~~~~(涙)」
「あ‥‥‥‥」
石畳とお友達になりながら吐き出されたベルナドットの言葉に、セラスはしばし考える。
結局、なんだかんだいっても心配してくれているのだ、この人は。
悪気があってのことではないし、行為が多少(?)セクハラになってしまうのは‥‥‥まあ、今日
くらいは大目に見てあげてもいいかもしれない。
セラスの怒気が鎮まってゆくのを、突っ伏した背中で感じ取り(ここらへん腐っても傭兵である)、
ベルナドットはニヤリ☆と笑みを浮かべた。無論セラスには見えていない。
「なら、嬢ちゃん、妥協案~。」
「なんデスカ?」
「クチビルは諦めるから、代わりにこっちくれ~VV」
そう言うなり、ベルナドットはがばりと起き上がり、
モふ♪
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥VVVVVV」
微妙なギ音の後、流れる沈黙。ただし片方はハートマークの乱舞付き。
「‥‥‥‥‥タイチョーサン?」
「んん?VVVV」
「コレが一体何だと??」
「何ってV 嬢ちゃんだけが持ってる最高級のマシュマロVVV
いやー、このナイスな大きさとマーベラスな感触がぜっぴ‥‥‥ごべしっ!!!」
ごばきゃっ。
セラスの拳がうなり、見事な左アッパーが決まった。
キラキラと血と何かをまき散らしつつ、ベルナドットは廊下の宙を舞った。
「ナ、ナイスアッパ‥‥‥ごフっ(吐血)」
親指を立てて、ベルナドットは石畳に沈む。
「隊長サンにちょっとでも気を許したワタシがバカでした‥‥‥‥!!!!」
顔を埋められた胸を押さえつつ、怒りでセラスはブルブルと震えている。
そのまま部屋に入り、後ろ手にがちゃん!と鍵をかけた。
(あううううう、何でこんな目に~~~~~~~~(T-T)
隊長さんのバカバカバカセクハラエロ男~~~~~~~~!!!!!!!
しばらく口きいてやんない~~~~~~!!!!!!!!)
もはやハルコンネンの手入れの続きをする気にもなれず、セラスは部屋に備え付けのベッドに倒れ
込んだ。
「いい夜だ」
「!?」
唐突に聞こえた声に、がばりとセラスは起き上がる。
月光が溢れるテラスに人影。鍵をかけたはずの大きな窓が、開いていた。
「マスター」
ベッドを降り、とてとて、と長身の影へと近づく。
「今夜の街は怪物(フリークス)で溢れ帰る。『本物』が混じっていても気づかれないだろう。
行ってみるか?」
「『ドラキュラ』と『ドラキュリーナ』で、ですか?」
思わず、くすりと笑うと、ふっと目の前が陰った。
「?」
顔をあげると、満月を背に従えて、アーカードが覗き込んでいた。
「‥‥‥マスター?」
「Trick or Treat ?」
「はい?」
間の抜けた声を出して、セラスはまじまじと目の前の吸血鬼を見つめた。
ややあってから、彼女の表情が憮然としたものに変わる。
「も~、マスターまで‥‥‥‥。ふざけないでくださいよ~」
「冗談で言ったつもりはないが?」
「っ!?」
く、と腰と後頭部に力を感じたと思ったら、セラスの体が少し浮き、アーカードの顔が接近する。
「ええええ、あの、ちょっと、マスター~~~~~!?!?(//◎o◎//)」
「”お菓子をくれなきゃイタズラするぞ”だろう?」
「あ、えと、あの‥‥‥‥‥‥ぅ~~~‥‥‥」
頬が熱くなるのが自分でもわかる。
そんなセラスをアーカードは面白そうに見つめて、彼女の次の行動を待っている。
「ま、マスター‥‥‥‥‥」
「ン?」
「~~~~~~~‥‥‥‥(/////)」
顔中を真っ赤に染めて、瞳まで潤ませたセラスがアーカードの横髪をひっぱる。
浮かべた笑みを深くして、吸血鬼はされるがままに背をかがめ、重ねられる唇を受け止めた。
「‥‥‥‥‥‥ッ、ン? ん、んん~~~~~~っ!!」
触れるだけのキスをしてすぐに離れようと思っていたセラスの唇は、しかし、その通りにはできな
かった。
腰と後頭部に添えられた手に力が込もり、キスが深くなる。
「ん‥‥‥‥‥‥! っ、ふ‥‥‥‥‥‥」
するり、と滑らかにアーカードの舌がセラスの唇に忍び込んだ。
ざらりとした感触の舌に自分のそれをなぞられ、口内を蹂躙されて、ぞくぞくとしたものがセラスの
背を走り抜ける。
「は、ぁ‥‥‥‥‥」
たっぷりと貪られて、解放された時にはほとんど足に力が入らず、セラスはアーカードの服にしがみ
つき、半ばもたれかかるようにして体を支えていた。
「確かに‥‥コレはどんな砂糖菓子より甘い‥‥‥」
笑みを多分に含んだ声に、反論しようとすれば、月光に縁取られた相手の微笑があまりに魅力的で、
言葉は喉の奥で立ち消えた。
「さて‥‥ではもらった”お菓子”は残さず食べなければ、な」
「!! え、えぇえええ、あの、ちょっと、マス‥‥‥!!」
アーカードに見とれていた意識が復活したのもつかの間、セラスのあわてふためく声は、吸血鬼から
仕掛けられたキスと、ばさりと広がった深紅のコートに飲み込まれた。
手にしたこの世で最高の”お菓子”を、アーカードがどんな風においしく平らげたのか。
それは、二人だけの秘密。
(マスターのばかぁぁ~~~~~~~~~~~(赤面+涙))(by セラス)
ENDVV
‥‥‥‥‥‥‥‥‥余談だが、この日から3日間ほど、ベルナドットの姿はヘルシング邸の何処を探
しても見あたらなかった。
数日後戻って来た彼は、その間どうしていたのか、誰に聞かれても決して口を割らなかったという。
合掌。
PR
夕焼けをくぐって
君の瞳に映りこむ世界の持つ色彩を
僕もいつか感じ取れるのだろうか
クソ博士から何か命令を言われたような気もするが、
そんな言葉を聞く気分じゃなかった。
だから街をふらふらと当ても無く歩いていたら、あの子に出会った。
彼女の視界を遮る程の大荷物に翻弄され、あっちへふらふらこっちへふらふら
危ないな、とぼんやりとその様を見ていたその時
「あ・・・あー・・・!!!」
ぐらり、と紙袋から覗いていた赤い林檎が一つ地面へ転がり落ちたのを皮切りに
中の荷物達が大洪水を起こしそうだったその瞬間
自分の身体はしっかりとそれを食い止めていた。
「コンナニ一度ニ持ッテハ、コウナル事ハ眼に見エテイルダロウ。」
呆れたようにそう言った自分の言葉を少女は気にも留めず、
ロボカイ今日和と呑気な笑顔で挨拶をくれた。
「だって、仕方無いんだ。
みんなそれぞれ忙しくって、誰も買出しにいける状況じゃなくてさ。
それに僕、案外力持ちだから一人でも平気だし。」
そう言ってメイは、半分の量になった荷物を軽々と頭上へ持ち上げた。
もう半分は、自分がしっかりとバランスが崩れぬよう両手で抱えている。
「力ガ在ロウガ無カロウガ、貴方ノ手ハ二本シカ無い。
ソレニバランスを崩シタラ、ドウシヨウモナイダロウ?」
そりゃあそうなんだけど、と今度は笑顔が拗ねたような表情に取って代わった。
本当にこの少女の表情はくるくると回転木馬のように変わるものだと
ロボカイⅡは内心、感嘆の溜息をつかずにはおれなかった。
「それより、ロボカイは何をしてたの?お散歩?」
ぱっちりとした瞳が、興味の対象を今度はこちらへと向けてきた。
何をしていたのかなど、そんなのこっちが問いたい。
一体自分は何をしているのだ。この金属のような無機質な世界に作り出されて。
「・・・・ねぇ、ロボカイってば。」
考え込んだ為、だんまりだった自分の態度が御気に召さなかったか、
メイの口調には不満がありありと含まれている。
「・・・・マァ、ソンナトコロダ。」
これ以外的確な回答を自分の思考回路は、はじき出してはくれなかった。
「・・・それじゃあさ、折角だから僕とお散歩の続きでもしない?」
軽い口調でそう言ったメイの科白に、
今度はその役立たずな思考回路が、瞬時に一つの言葉をはじき出してくれた。
これぞ即ち『デートのお誘い』
「喜ンデ!!」
ヒートアップして微かに赤くなった顔で何度も頷くと
「じゃあ、こっちだよ。」
メイは自分の硬い手を取ると、ある方向へと引っ張っていった。
最近ノ婦女子ハ随分ト大胆ナノダナ・・・
どんどん人気の無い方向へと進む、メイの背中を見つめつつ
しばらく至福の時を過ごした自分が連れ出された場所は
何も無い、ただ一面短い草の生える少しだけ小高くなっている小さな丘だった。
「・・・・ココハ?」
訝しげに問い掛けた自分にふわりと微笑むと、メイは一歩自分の前に出た。
「ほら、見てロボカイ・・・・陽が沈むよ。」
それは自分の問いに対しての答えでは無いのは考えずとも明白で
それでも自分が黙ってメイの視線を追うと
目の前には今日一日世界を照らした太陽が、
燃え尽きるように西の空へと傾いていく赤い光景が広がっていた。
「・・・ソレハソウダ、太陽ガ西ノ空ヘト沈ムノハ当たり前ダロウ。」
「・・・もう、解ってないなぁロボカイは!そんな当たり前の事、僕だって知ってるよ!」
研究所で学んだ「一般教養」としての言葉を述べた自分に
メイは酷く不満げな顔でこちらを軽く睨んできた。
「僕が言った意味はね、その様子が綺麗だなぁって君に同意を求めたの!」
「・・・・綺麗・・・・?」
その言葉に、もう一度目の前に光景に視線をやった。
太陽、赤、染まる街並み
ただそれだけが情報として、視神経から人工頭脳へと伝えられていく。
だがそこに、「綺麗」という感情の情報は含まれてはいない。
何故?この少女と自分の目の前には全く同じ光景が広がっている筈なのに。
「僕ね、秋の夕暮れ時ってすごぉく好きなんだ。胸がきゅん、て締め付けられて
まるで恋をしている時と同じような気持ちになるの。」
そう呟く彼女の大きな瞳には、赤い色に染まり行く光景が映りこんでいて
でも彼女はそこに、自分とは違う何かの情報を得ているのだ。
それは一体何なのだろうか?それが理解出来ない自分のポンコツさに酷く腹が立った。
「・・・・悔シイ・・・・」
思わず言葉として溢れ出たその感情に、メイが些か驚いたような表情でこちらを振り返った。
「貴方ト同ジモノヲ見テイルノニ・・・同ジヨウニ感ジラレナイ自分ガ悔シイ・・・。」
夕陽を美しいと思える感情のデータは自分の回路の中には流れていない。
それが自分は人間よりも劣っていると言われているような気がして、酷く歯痒かった。
一体メイの感じているその感情は何なのだろう、何という感情なのだ?
自分だって人並みの感情を持っている。それでも理解し得ない難解なモノ。
そんなモノがこの小さな少女には理解出来るのに、何故自分には解らない。
不意に俯いた自分の手を取る、優しい熱。
見上げると、だいだい色に染まったメイの笑顔があって
とても「綺麗」だと思った。
「ロボカイ・・・いいんだよ、物の見方なんて千差万別なんだから。
君は自分の感じたいように、感じればいいんだ。
無理に綺麗だなんて思う必要は無いんだから。
それにね、全ての事柄に理論や理屈なんて必要ないんだよ。」
メイの言葉がじんと胸に染みた。
そうか
そうだったんだ
自分のこの感情も、存在理由も全て説明付ける必要は無いのか
彼女に向けられた、このなにやら温かい気持ちにも
きっと言葉は要らないんだ。
「ゴメンね、ロボカイにとってはこの場所はつまらない場所だったかな。
そろそろ行こうか?」
そう言った彼女を思わず引き止めて自分はこう言っていた。
「モウ少シ・・貴方ト夕陽ヲ眺メテイタイデス・・・・」
どうしてそんな事を口走ったのかは解らない。
それでも嬉しそうに微笑んだ彼女の笑顔が
何故かとても嬉しかったから、深く考えるのは止めた。
もしかしたら人間は、こういう感情を「幸せ」と呼ぶのかもしれない。
そんな事を想いつつ、沈みゆく夕陽をぼんやりと眺めていた。
女の子は得てして誕生日を聞くものです。
「誕生日、っていつ?」
「2月・・・9日」
「何その間」
「うっせ」
「っていうか9日!?過ぎてるじゃん」
「そーだな」
「なんで言ってくんないの!?」
「あぁ!?知るかよ!」
「馬鹿!ばかっ!」
「アァ!?」
お祝いしてあげたかったのに!
++++++++++++++
「ミルクねぇのか」
「? そこにポーションミルクあるじゃん」
「・・・これ、マズい」
「ワガママ」
「なんか薬品の味っつーか・・・これはミルクじゃねぇ。認めねぇ」
「そのまま飲めば?」
「苦い」
「こっどもー」
「うっせぇよガキっ」
「うっさいしらがっ!!」
+++++++++++++
「ボクはジョニーを守るんだ。地球がひっくりかえったって爆発しちゃったって守るんだ」
少しあきれて、でもきっとやり通すような気もしながら、
頬杖をついてそんな彼女を見つめる。
じゃあ俺はお前を守るよ
恥ずかしすぎて口には出せなかった。
++++++++++++
「なんでいつも窓から入ってくるかなあ」
呆れながらも、もうどこかあきらめたような顔をして
メイは自分のベットにぽすんと座る。
「ドアも窓も変わんねぇだろ」
「・・・まあ天井とか床から出てきた時よりはマシだけどさ」
「テーブル投げつけてきたよなお前」
「だってびっくりしたんだもん!だいたい鍵壊すしさっ」
「鍵なんざかけるのが悪ィんだよ」
「あんたねえ!」
+++++++++
『メイ』
呼ばれて振り替えると、そこにはチップがいた。
少しだけ頭が右に傾いていて、今自分の名前を呼んだことさえ、
口を開くという動作が不自然に思えるほどの
何日も寝てないような顔をして、
もう一度自分の名前を呼ぶ。
『メイ』
口だけしか動いていない。
「・・・何?ちょっと、どうしたの・・・」
駆け寄ると、ゆらりと腕がこっちに伸びてきた。
手首から先はだらんと下がって、指先にまったく力は入っていないような、
まるで最初から動くものではないような、手。
チップの指先がメイの体に触れると、
耐えられなくなったかのように、チップの指先がぱしゃ、と
水のように音たてて崩れた。
べしゃべしゃべしゃ、と
まるで腕が泥でできていたかのように簡単に崩れていく。
「・・・・-------おい!」
「・・・う?」
「・・起こそうか迷った」
けどあまりにもうなされてたから。・・・と彼は言いたかったのかもしれない。
手を握られている感覚が伝わってくる。すがるように握り返した。
「とけてない?」
「・・・・・・・あ゛?」
(悪夢を見た話)
+++++++++
「・・・なあに?」
メイは答えが返ってこないとなんとなく思いつつも、訊ねる。
こういうとき、あまりチップは喋らない。
チップの手は暖かくも冷たくもない。
髪に触れ、指の背で涙をぬぐわれるように頬を撫でられる。
赤い眼が少し泣いているように見えた。それは多分気のせいだろうけど。
こういうときの彼の目を見ていると、
優しい気持ちとせつない気持ちが混ざったような、変な気持ちになる。
言葉はいらない。だから出てこない。
そして多分彼もそれを望んでいない。
幸せが溢れるようなこの気持ち。
いとしい。
+++++++++
「・・・どうした」
「なんで?何が?」
ぽす、とメイがチップの胸あたりに顔をうずめながら、
そう言った。
「・・・・・」
メイの背中に手をまわして、視線を少し下に落とす。
チップからは、彼女の表情は見えなかった。
「・・・寒くなってきたな」
「そうだね」
++++++++
ちょっとブルーなメイと
それに気付くチプ
萌→自覚無自覚関係なくチップにくっつくメイ
それに気付くチップ
+++++++++
03.13 (GG メイチ イメージ)
13回喧嘩して
13回仲直りして
13回キスをして。
+++++++
(息してんのカナ)
これで口と鼻を塞いだりしたら本当に反応が返ってこなさそうなのでそれはしなかったが、
静かに深く眠るチップの顔に視線を落とす。
なにより彼の眠りを妨げることはしたくなかった。
眠ることが好きなのに、うまく眠れないことを知っているのでなおさらだった。
前触れもなくふらりとやってきて、
「どしたの」ときいたとたん「ねみい」と言って倒れこんできた。
めずらしいこともあるものだ。眠いだなんて。
彼の髪を撫でたい気分になったが、
それは我慢した。
チップがおきてからでも遅くは無い。
なにより、もう少しチップの顔を見ていたかった。
「いつまで寝てんのさ」
思ってもないことを、つぶやいた。
+++++++++
ぺと、とメイの手のひらがチップの背中にくっつく。
「・・・んだよ」
顔だけ後ろを向いて、羽織ろうとしたジャケットをつかんだ手を止める。
ぺたぺたぺちぺちと素肌を叩くメイに怪訝な表情を向けると、
メイがむーっと頬を膨らませた。
「・・・・・」
何か怒らせるようなことをしたかと思考を巡らしていると、
後ろからがばりと抱きつかれた。
「・・・?」
疑問符を浮かべたのは何か違ったから。
抱きつく、というよりは何かを調べるような・・・
「・・・やっぱり」
「あ?」
恨めしそうなメイの声と顔。
「痩せたでしょ」
「・・・は?」
「絶対ヤせた。細くなってる。ずるい」
「ずるいってお前・・・・」
「やだ。ズルイ。ずるい。やだやだ」
「何がヤなんだよ・・・」
「ばーか!」
++++++++
++++++++
+++++
+++++++
「誕生日、っていつ?」
「2月・・・9日」
「何その間」
「うっせ」
「っていうか9日!?過ぎてるじゃん」
「そーだな」
「なんで言ってくんないの!?」
「あぁ!?知るかよ!」
「馬鹿!ばかっ!」
「アァ!?」
お祝いしてあげたかったのに!
++++++++++++++
「ミルクねぇのか」
「? そこにポーションミルクあるじゃん」
「・・・これ、マズい」
「ワガママ」
「なんか薬品の味っつーか・・・これはミルクじゃねぇ。認めねぇ」
「そのまま飲めば?」
「苦い」
「こっどもー」
「うっせぇよガキっ」
「うっさいしらがっ!!」
+++++++++++++
「ボクはジョニーを守るんだ。地球がひっくりかえったって爆発しちゃったって守るんだ」
少しあきれて、でもきっとやり通すような気もしながら、
頬杖をついてそんな彼女を見つめる。
じゃあ俺はお前を守るよ
恥ずかしすぎて口には出せなかった。
++++++++++++
「なんでいつも窓から入ってくるかなあ」
呆れながらも、もうどこかあきらめたような顔をして
メイは自分のベットにぽすんと座る。
「ドアも窓も変わんねぇだろ」
「・・・まあ天井とか床から出てきた時よりはマシだけどさ」
「テーブル投げつけてきたよなお前」
「だってびっくりしたんだもん!だいたい鍵壊すしさっ」
「鍵なんざかけるのが悪ィんだよ」
「あんたねえ!」
+++++++++
『メイ』
呼ばれて振り替えると、そこにはチップがいた。
少しだけ頭が右に傾いていて、今自分の名前を呼んだことさえ、
口を開くという動作が不自然に思えるほどの
何日も寝てないような顔をして、
もう一度自分の名前を呼ぶ。
『メイ』
口だけしか動いていない。
「・・・何?ちょっと、どうしたの・・・」
駆け寄ると、ゆらりと腕がこっちに伸びてきた。
手首から先はだらんと下がって、指先にまったく力は入っていないような、
まるで最初から動くものではないような、手。
チップの指先がメイの体に触れると、
耐えられなくなったかのように、チップの指先がぱしゃ、と
水のように音たてて崩れた。
べしゃべしゃべしゃ、と
まるで腕が泥でできていたかのように簡単に崩れていく。
「・・・・-------おい!」
「・・・う?」
「・・起こそうか迷った」
けどあまりにもうなされてたから。・・・と彼は言いたかったのかもしれない。
手を握られている感覚が伝わってくる。すがるように握り返した。
「とけてない?」
「・・・・・・・あ゛?」
(悪夢を見た話)
+++++++++
「・・・なあに?」
メイは答えが返ってこないとなんとなく思いつつも、訊ねる。
こういうとき、あまりチップは喋らない。
チップの手は暖かくも冷たくもない。
髪に触れ、指の背で涙をぬぐわれるように頬を撫でられる。
赤い眼が少し泣いているように見えた。それは多分気のせいだろうけど。
こういうときの彼の目を見ていると、
優しい気持ちとせつない気持ちが混ざったような、変な気持ちになる。
言葉はいらない。だから出てこない。
そして多分彼もそれを望んでいない。
幸せが溢れるようなこの気持ち。
いとしい。
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「・・・どうした」
「なんで?何が?」
ぽす、とメイがチップの胸あたりに顔をうずめながら、
そう言った。
「・・・・・」
メイの背中に手をまわして、視線を少し下に落とす。
チップからは、彼女の表情は見えなかった。
「・・・寒くなってきたな」
「そうだね」
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ちょっとブルーなメイと
それに気付くチプ
萌→自覚無自覚関係なくチップにくっつくメイ
それに気付くチップ
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03.13 (GG メイチ イメージ)
13回喧嘩して
13回仲直りして
13回キスをして。
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(息してんのカナ)
これで口と鼻を塞いだりしたら本当に反応が返ってこなさそうなのでそれはしなかったが、
静かに深く眠るチップの顔に視線を落とす。
なにより彼の眠りを妨げることはしたくなかった。
眠ることが好きなのに、うまく眠れないことを知っているのでなおさらだった。
前触れもなくふらりとやってきて、
「どしたの」ときいたとたん「ねみい」と言って倒れこんできた。
めずらしいこともあるものだ。眠いだなんて。
彼の髪を撫でたい気分になったが、
それは我慢した。
チップがおきてからでも遅くは無い。
なにより、もう少しチップの顔を見ていたかった。
「いつまで寝てんのさ」
思ってもないことを、つぶやいた。
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ぺと、とメイの手のひらがチップの背中にくっつく。
「・・・んだよ」
顔だけ後ろを向いて、羽織ろうとしたジャケットをつかんだ手を止める。
ぺたぺたぺちぺちと素肌を叩くメイに怪訝な表情を向けると、
メイがむーっと頬を膨らませた。
「・・・・・」
何か怒らせるようなことをしたかと思考を巡らしていると、
後ろからがばりと抱きつかれた。
「・・・?」
疑問符を浮かべたのは何か違ったから。
抱きつく、というよりは何かを調べるような・・・
「・・・やっぱり」
「あ?」
恨めしそうなメイの声と顔。
「痩せたでしょ」
「・・・は?」
「絶対ヤせた。細くなってる。ずるい」
「ずるいってお前・・・・」
「やだ。ズルイ。ずるい。やだやだ」
「何がヤなんだよ・・・」
「ばーか!」
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