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ただその時を



衣擦れの音で目が覚めた。

辺りは未だ闇の中。
窓の奥にある山の上に傾いた下弦が浮かんでいた。
焚いてあった火鉢の炭が消えていて、何か羽織っていないとすっかり冷えてしまう。
女は布団に包まりながら、慣れた手付きで脱ぎ捨てた着物を羽織る男をぼんやりと眺めていた。
ではまた、とだけ言い残して、男は部屋を後にした。

夜空に浮かぶ月は既に消えかけ、窓から見下ろした雲の海はほんのり白み始めていた。
月が完全に沈んでしまえば、やがて待ち侘びていたかのように太陽が顔を出す。
彼等が決して顔を合わせることのないように、私たちもまた、結ばれることはないのだ。

あの男が飽きるまでは、このままの関係でいれば良い。
この想いは一時の過ちであったと、そう思える日が来るはずだから。

女は再び寝台に身体を横たえると、浅い眠りについた。
覚めることのない悪夢が、彼女を待っている。
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