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sad
奥深く



「お慕い、申し上げております」
掠れた声は、しかし重みをもって全身に響き渡った。
男の紅い瞳が大きく見開かれて、やがて柔らかな弧を描く。

「あなたを、ずっと、お慕い申し上げておりました」
今度は自分で確かめるように呟いた。

あなたが好きだと、ただそれだけのことを口にしただけだというのに、全身に沸き起こる幸福感はなんだろう。
なんて甘く、色めいて、魅惑的な感覚。
これはこの男の見せる瞳の奥にたゆたう紅い情熱の炎。
私を抱きしめる陽に焼けた逞しい腕。
時に甘い熱を与える唇から紡ぎ出される心地良い音色。

その全てが。


次第に苦しくなる胸を抑えて、彼女は深く息を吐いた。
その時初めて、心底この男に惚れていたのだと気が付いた。
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