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あの時からジョニーは僕の騎士様なんだよ。

『夕ご飯までには帰ります。メイ』
こっそりと台所の机にメモを置いて船を出る。
今日は買い物当番でもお手伝い当番でもないから一寸位いいか。
最近ジョニーは船を空けがちだ。
僕は一寸悲しい。
ジョニーの顔が見れなくて声が聞けないのが悲しい。
だから今日はジョニーを探しに行くんだ。
「あなた、ジャパニーズね…?」
突然目の前に赤い帽子のおねえさんが現れる。
…ジョニーの好みってこんな人なのかなぁ…?
色っぽいってこう言う事なのかな?
でもそれより気になった事がある。
「じゃぱ…?」
僕がきょとんとしていると女の人は苛立った様に嫌な感じになった。
よくわかんないけど、なんか闘うみたいだ。
「ふん…!!あんた自覚無いの?」
突然の衝撃に碇を前に持ってくる暇さえなかった。
「きゃっ!!」
思わず出た悲鳴に女の人が舌なめずりしている。
「ふふふ…まぁいいわ……。思わぬ収穫物ですもの…あの方もよろこぶわぁ…」
ウットリした目だ。
…えー…!!ちょ…まってよ…!!じゃ何とかって何!?
僕このままつれてかれちゃうの!?
攻撃は止まらない。
僕もイルカさんの力を借りたり色々攻撃したり抵抗してる。
してるんだけど…。
僕は此処で負けらん無いのに!!
「んっんー…そこでグレートに俺様が登場って訳だ」
聞きなれた声に僕は振り返った。
「駄目だぜぇメイー。…全くとんだじゃじゃ馬姫さんだなこりゃ」
サングラスと帽子を直してひょいと僕に近づくとジョニーは僕を軽く小突いた。
「お説教は後でだ。…とりあえず共同戦線、いっとくかい?」
偶然でもいいよ、ご都合主義でもいいよ。
僕はこうやってジョニーのそばに居られればいいんだもん!!
怒られたって、意味もなくじゃなくって愛があるからなんだから!!
僕は笑顔で頷いた。





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jm
「お譲ちゃん、親は如何したんだい?」
少女は下げていた瞳を上げ、潤みを掌で擦る。
其処には黒い帽子、コート、サングラスに長い金髪という男が膝をおって彼女の前に居た。
言葉は出てこなかった。
出せないのではない。
日本という、軟禁状態の国から辛うじて両親と出てきた矢先に少女は一人になった。
目の前で両親はギアに殺された。
其処に颯爽と現れたのがこの男だったのだ。
首を二度大きく振る。
口を開き懸命に何かを言おうとしているが言葉は発声されなかった。
どうして欲しいかも、どうなっているのかも何も言うことが出来なかった。
いうことが出来ないほど少女には恐ろしかった。
そして只泣いた。
男は優しく少女の頭を撫で、男の船らしき所につれてこられた。
状況もよく解らないまま少女はダイニングに連れてこられて暖かいココアを出された。
少し呑む。
そして少女は号泣した。

それ以来少女は尊敬以上の感情を男に向けるようになっていた。
船に居るのは皆似た境遇の少女達だった。
故に彼女達はすぐ打ち解けた。
少女の感情を笑いながらも、皆応援してくれる。
少女が此処に来たのは五月五日のことであった。





「ジョニー!!」

その日、ジョニーは大分怪我して帰ってきた。




.......リベンジ





ボクが駆け出すと、ジョニーはボクの頭をくしゃくしゃとかき回して苦しげに笑う。
「なかなかデンジャラスな輩に出会っちまってね」
自慢のコートは刃に切り刻まれ、ところどころ切り傷が出来ている。

服が切られても寸前でかわした、ということなのだろうか、それとも。



まさかジョニーが誰かと戦って負けたということなのだろうか。―――それだけは信じたくなかった。



ボクが心配のあまりボロボロになった服に手を伸ばすと、ジョニーはまたボクの頭をくしゃっと撫でた。
「そういう訳だが、悪いが換えの服を」
「ジョニー、誰にやられたの」
ボクの声が遮った。

随分強い口調で、ジョニーをも黙らす低さで、ボクの声がジョニーを少し突き刺した。

「お前……」
「ジョニー負けたの?」

下から鋭く睨んだ。


ボクは悔しかったんだ。



あのジョニーが負けたってことじゃない。
あのジョニーを、これだけ無様に仕立てあげたやつがいるってことが。



ボクはそこに置いてあった碇を思いきり担ぐと、ジョニーの来た道を走り始めた。
「お、おい!」
ジョニーの声はもう大分遠くなっていた。


金髪の青い服の剣を持った男がメイシップをまだ見ていた。


「お前! よくもジョニーを!」

ボクは碇を振り下ろして、戦いの幕を切り開いた。







ふと、メイは考えていた。
ボクはジョニーに拾われてメイとして生きてきたけど、本当はボクは何者なんだろうか。

ジョニーやエイプリル以外の人間と共に生きていたことなど、今となっては考えようにもありえないことで、メイの思考はそこで停止した。








..............幸せの法則




ボクはどこから来たんだろう?




ジェリーフィッシュ快賊団として、ジョニーは迎え入れてはくれたけれども。


けれども。









「ジョニー」
メイは少しの勇気を奮い立たせて、自分を救ってくれた神様のような彼の名を呼ぶ。
「どうしたぃ、メイ」
ジョニーはカウボーイハットを大きな手で少し浮かせて、メイを見やる。


その目はとても温かくて、今まで考えていた自己犠牲のようなマイナス思考が、少し、いや、かなり馬鹿らしくなる。


「そんなに暗い顔してっと、足元の幸せも逃げちまうぜ? それに……」
快活だけどなんだか深みのある声がメイの心に刺さっていく。
ジョニーは振り返り、後ろ姿を見せながらこう続けた。

「メイには、笑っていてほしいねぇ」


ジョニーはそう言って、振り返りもせずにメイから離れていく。



笑っていて、ほしい。

口の中で繰り返してみた。
そしてその言葉の意味を解いてみる。




ボクが何者でも、どこから来たんでも、どうでもいいじゃないか。
今はジェリーフィッシュ快賊団の一員で、みんなと一緒に笑っていける。



「ありがとう」



絶対絶対聞こえないように、少し顔を赤らめて彼女はいろんなすべてに例を言う。


ここにいる。
ボクは幸せだ。


その真実だけで、メイには十分すぎるほどの幸せだった。







END


「ディズィーっ! 頼む、今生の願いだ!」
 テスタメントは黒い長髪を振り乱し、木でつくられた簡素なテーブルを叩いた。双眸は血走りくまが浮き出ている。ああまた始まった、ディズィーのほほ笑みがぴくりとひきつる。
「これをだな、いやっ、私からだなんて言わなくてもいいんだ! ただあの娘に渡してもらえないだろうか!」
左手を差し出す。そこには一本の橙色の花がひょろりとのびていた。あからさまに渋い表情のディズィーなどお構いなしに、花を握りしめたまま彼は身をくねらせる。
「名前も知れぬ小さな花だ。だがこの花のように、彼女は人間を忌み嫌っていた私にささやかな希望の光りをくれたのだ」
我が想いとともに彼女に送りたいのだ、そう言って彼はうっとりとした視線を虚空に浮かべた。何事かを想像し、顔を赤らめる。
森の奥での小さな茶会はディズィーとテスタメントのふたりきりで、彼女が空賊に拾われてからも定期的に行われていた。木漏れ日が柔らかい土を照らす。ティーセットとプチケーキはディズィーが持参したものである。それらをぺろりとたいらげ、初恋に胸を踊らせる少女のように、テスタメントは目を伏せた。
「ああ……」
「そんなに好きならメイに告白してみたらどうですか?」
「こっ、ここここ告白だと!?」
空のティーポットが傾きそうになった。テスタメントの大声に、近くまで寄って来た鳥たちが慌てて逃げていく。
「はい、それにテスタメントさんからジェリーフィッシュに遊びに来ていただいてもいいんですよ。みんな喜ぶと思います」
「メ、メイもか? 喜んでくれるのか?」
鼻息も荒く、噛み付いてきそうなほど乗り出す彼に、ディズィーは少し距離を取って頷いた。
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