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「ディズィーっ! 頼む、今生の願いだ!」
 テスタメントは黒い長髪を振り乱し、木でつくられた簡素なテーブルを叩いた。双眸は血走りくまが浮き出ている。ああまた始まった、ディズィーのほほ笑みがぴくりとひきつる。
「これをだな、いやっ、私からだなんて言わなくてもいいんだ! ただあの娘に渡してもらえないだろうか!」
左手を差し出す。そこには一本の橙色の花がひょろりとのびていた。あからさまに渋い表情のディズィーなどお構いなしに、花を握りしめたまま彼は身をくねらせる。
「名前も知れぬ小さな花だ。だがこの花のように、彼女は人間を忌み嫌っていた私にささやかな希望の光りをくれたのだ」
我が想いとともに彼女に送りたいのだ、そう言って彼はうっとりとした視線を虚空に浮かべた。何事かを想像し、顔を赤らめる。
森の奥での小さな茶会はディズィーとテスタメントのふたりきりで、彼女が空賊に拾われてからも定期的に行われていた。木漏れ日が柔らかい土を照らす。ティーセットとプチケーキはディズィーが持参したものである。それらをぺろりとたいらげ、初恋に胸を踊らせる少女のように、テスタメントは目を伏せた。
「ああ……」
「そんなに好きならメイに告白してみたらどうですか?」
「こっ、ここここ告白だと!?」
空のティーポットが傾きそうになった。テスタメントの大声に、近くまで寄って来た鳥たちが慌てて逃げていく。
「はい、それにテスタメントさんからジェリーフィッシュに遊びに来ていただいてもいいんですよ。みんな喜ぶと思います」
「メ、メイもか? 喜んでくれるのか?」
鼻息も荒く、噛み付いてきそうなほど乗り出す彼に、ディズィーは少し距離を取って頷いた。
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