Leave only me rather than me.
たった一度、作戦を共にしただけなのに。
あれから彼とはちゃんと顔を合わせてはいない。
数度、建物内で遠くでその姿を見た事があるだけだ。いつしか自分の方から彼
の姿を追っていたのかもしれない。
見掛ける度にどこか、自分が自分でなくなりそうな気がする程、不思議な感
覚になる。もちろん、人を好きになった事は初めてではない。今は仕事の方が
楽しくて特定の人はいないが、付き合った人もいる。
その頃には無い感覚だった。
『ただの憧れ?』
それが恋とも付かない不思議な感覚の始まり。
誰しも遂行するのは困難だと思われた厳しいあの任務から無事に帰って来た
と聞いて、本当はすぐさまその胸に飛び込みたかった。その頃はまだ同じ部隊
の仲間としてだったが…
だが、立場的にそういう訳には行かなかった。仕事をこなさなければならな
い。無事とは言え、命に別状はないとは言え、一生その目には光が戻る事はな
い程の重症だった。理由を問うても彼は答えようとはしなかった。頑に口を閉
ざす程、何か深い訳があるのだと思った。それ以上は深く追求する事は諦めた。
初めて会ってから、何日も経たないのに自分の中ではその存在が止められな
い程に大きくなっていく。だが、彼の心には違う誰かがいる。作戦中に痛い程、
思い知らされた。自分など到底叶うはずの無い女性。
その事に気付いてから、自分の気持ちを抑えるしかなかった。彼に取っては
ただの同僚にしか過ぎないのだ。
◆
「パラメディック!」
不意に聞き覚えのある声に呼び止められた。振り返るとそこにはゼロ少佐が
立っていた。
「あ、ゼロ少佐」
「新しい部署はどうだ?」
「ええ、何とかやっていますから安心して下さい。自分の資格も生かせるし、
やりがいもありますから」
「それは良かった」
ゼロ少佐は現場にいる時とは打って変わって、柔らかい表情で微笑んでいた。
顔の大きな傷が似合わない程、紳士的でふっと全てを包み込まれる様な気がす
る。上司としてはこれ以上のない人だった。だが、もう彼は自分の上司ではな
い。元上司だ。
「それに……免許を賭ける必要もないし……」
もぞもぞと言いにくそうにそうにする。自分でもあまりにも後先を考えず勢
いだけの行動が今となっては恥ずかしい。スネークを少しでもバックアップし
たいそれだけだった。
「まあ……そのおかげで、スネークが無事に還って来る事が出来たんだから
あまり自分を責めなくてもいいと私は思うんだが……」
今回の作戦でパラメディックは医師免許こそは剥奪されないまでも、スネー
クを救う為とは言え、その資格を賭けるというあまりにも感情的で計画性の無
い行動について、FOXにいるには相応しくないと他の部署へ移されたのだっ
た。だが、それは表向きの理由で、今後も今回の『スネークイーター作戦』の
様な極限を伴う任務に就く事もあろうFOXに彼女を置くには危険過ぎるとス
ネークはゼロ少佐に進言した。あまりにも唐突の事だったが、少なからず同じ
気持ちを抱いていたゼロ少佐は即彼女を異動させた。
最初は頑として聞かなかったパラメディックだったが、最後にようやくスネ
ークが自分の身を案じて望んだ事だと説得して、その異動を飲んだのだった。
本当はスネークは自分がそう言った事は伏せて欲しいと頼んでいたのだ。
彼女が自分に取っていらない存在だと勘ぐられたくなかった。本当は彼女が
大切だからこそ、自分から遠ざけたかった。今回の作戦が成功した事によって、
FOXにはこれから、ますます危険な任務が増えて来るだろう。彼女の様な純
粋な人間を置いておく事はしたくなかったのだ。彼女にはもっと相応しい場所
があるそう思うからこそ、ゼロ少佐に強く進言した。
彼自身、何となくながらパラメディックのスネークに対する視線が変わった
事に気付いていた。日増しにその温度は上がって行く。
だから、スネークが唐突に彼女の異動を申し出た際、それを驚きながらも飲
む事にした。同じ部隊での恋愛は良い結果を齎さない。いつしか、命を落とす
引き金になる。どこでもそうだ。FOXだから、という訳ではない。
それなら一層の事、スネークから距離を置かせてやる方が彼女の為になると
ゼロ少佐は考えた。どちらに出ても、あのまま同じ部隊にいるよりはいい。ス
ネークの事を思い続けるにしても忘れるにしてもだ
たった一度、作戦を共にしただけなのに。
あれから彼とはちゃんと顔を合わせてはいない。
数度、建物内で遠くでその姿を見た事があるだけだ。いつしか自分の方から彼
の姿を追っていたのかもしれない。
見掛ける度にどこか、自分が自分でなくなりそうな気がする程、不思議な感
覚になる。もちろん、人を好きになった事は初めてではない。今は仕事の方が
楽しくて特定の人はいないが、付き合った人もいる。
その頃には無い感覚だった。
『ただの憧れ?』
それが恋とも付かない不思議な感覚の始まり。
誰しも遂行するのは困難だと思われた厳しいあの任務から無事に帰って来た
と聞いて、本当はすぐさまその胸に飛び込みたかった。その頃はまだ同じ部隊
の仲間としてだったが…
だが、立場的にそういう訳には行かなかった。仕事をこなさなければならな
い。無事とは言え、命に別状はないとは言え、一生その目には光が戻る事はな
い程の重症だった。理由を問うても彼は答えようとはしなかった。頑に口を閉
ざす程、何か深い訳があるのだと思った。それ以上は深く追求する事は諦めた。
初めて会ってから、何日も経たないのに自分の中ではその存在が止められな
い程に大きくなっていく。だが、彼の心には違う誰かがいる。作戦中に痛い程、
思い知らされた。自分など到底叶うはずの無い女性。
その事に気付いてから、自分の気持ちを抑えるしかなかった。彼に取っては
ただの同僚にしか過ぎないのだ。
◆
「パラメディック!」
不意に聞き覚えのある声に呼び止められた。振り返るとそこにはゼロ少佐が
立っていた。
「あ、ゼロ少佐」
「新しい部署はどうだ?」
「ええ、何とかやっていますから安心して下さい。自分の資格も生かせるし、
やりがいもありますから」
「それは良かった」
ゼロ少佐は現場にいる時とは打って変わって、柔らかい表情で微笑んでいた。
顔の大きな傷が似合わない程、紳士的でふっと全てを包み込まれる様な気がす
る。上司としてはこれ以上のない人だった。だが、もう彼は自分の上司ではな
い。元上司だ。
「それに……免許を賭ける必要もないし……」
もぞもぞと言いにくそうにそうにする。自分でもあまりにも後先を考えず勢
いだけの行動が今となっては恥ずかしい。スネークを少しでもバックアップし
たいそれだけだった。
「まあ……そのおかげで、スネークが無事に還って来る事が出来たんだから
あまり自分を責めなくてもいいと私は思うんだが……」
今回の作戦でパラメディックは医師免許こそは剥奪されないまでも、スネー
クを救う為とは言え、その資格を賭けるというあまりにも感情的で計画性の無
い行動について、FOXにいるには相応しくないと他の部署へ移されたのだっ
た。だが、それは表向きの理由で、今後も今回の『スネークイーター作戦』の
様な極限を伴う任務に就く事もあろうFOXに彼女を置くには危険過ぎるとス
ネークはゼロ少佐に進言した。あまりにも唐突の事だったが、少なからず同じ
気持ちを抱いていたゼロ少佐は即彼女を異動させた。
最初は頑として聞かなかったパラメディックだったが、最後にようやくスネ
ークが自分の身を案じて望んだ事だと説得して、その異動を飲んだのだった。
本当はスネークは自分がそう言った事は伏せて欲しいと頼んでいたのだ。
彼女が自分に取っていらない存在だと勘ぐられたくなかった。本当は彼女が
大切だからこそ、自分から遠ざけたかった。今回の作戦が成功した事によって、
FOXにはこれから、ますます危険な任務が増えて来るだろう。彼女の様な純
粋な人間を置いておく事はしたくなかったのだ。彼女にはもっと相応しい場所
があるそう思うからこそ、ゼロ少佐に強く進言した。
彼自身、何となくながらパラメディックのスネークに対する視線が変わった
事に気付いていた。日増しにその温度は上がって行く。
だから、スネークが唐突に彼女の異動を申し出た際、それを驚きながらも飲
む事にした。同じ部隊での恋愛は良い結果を齎さない。いつしか、命を落とす
引き金になる。どこでもそうだ。FOXだから、という訳ではない。
それなら一層の事、スネークから距離を置かせてやる方が彼女の為になると
ゼロ少佐は考えた。どちらに出ても、あのまま同じ部隊にいるよりはいい。ス
ネークの事を思い続けるにしても忘れるにしてもだ
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男は空腹であった。
現任務中にサバイバルに目覚め、今や三大欲求の中で食欲にそのパワーのほとんどをつぎ込んでいる筋金入りの食欲魔人である男は、空腹であった。
最早生き物という生き物は彼の気配だけで姿を消し、植物までもが結託しているかの如く全く見あたらない。
先ほど哀れな蛙を一匹捕食したものの、彼の腹は満たされなかった。
最早最後の手段かと頭を抱えた彼の耳に響いたのはぴりりと鋭い電子音、そして空腹とは無縁そうな元気な女の声。
スネーク、どうしたの?さっきからずっとそこにいるみたいだけど
いや、腹が減ったんだが、食べるものがなくてな
レーションがあったじゃない。あれを食べたらどうかし
いやだ
即答したわね
一応、最後の手段としては、考えている。考えているが俺はこれを食べるくらいなら毒茸の方がましだ!
任務を優先しなさい!…そのあたりには鳥類が多いはずよ。しばらくじっとしていれば確認できるんじゃないかしら
それはありがたい情報だな
…………ねえスネーク、ちょっと聞いてもいいかしら
どうしたパラメディック。改まって。愛でも告白してみるのか?
あなたに告白しなきゃならないのは愛じゃなくて懺悔よ
何に対して!?
あなた、ザ・ボスのもとにいたのよね?
ああ、そうだが…?
どんなもの食べてたの
は?
だから、どんなもの食べてたのかって聞いてたのよ。ヘビだって美味しく食べちゃうあなただから、やっぱりカエルだってミミズだってアメンボだって食べてたの?
…パラメディック…俺はこの任務で初めて狩りをしたし、初めて食べたんだぞ、ナマモノ全般は。
えっそうなの!?
だから初めて聞く生き物の時は毎回君に聞いてるだろう。うま
美味いかって?
…そうだ
だってあまりにも慣れてるからてっきりザ・ボスの教育方針かと思ったわ
…まあ、それはないことは、ない
あっやっぱり山に一人放りこまれて一週間暮らせとか無人島に放り出されて一週間暮らせとかそういう
違う
何だつまらないのね
パラメディック、料理は得意か?
どうしたの急に。まあ、人並みには出来るわよ
ボスは、凄かった
す、凄い?
たまに、俺が訓練から帰って来たときに夕飯を作ってくれることがあった。が…あれは…
美味しかったの?
黒一色だったな
うわあ
それを食べて10数年生きてきたんだ、今更ナマモノくらいどうってことない。むしろ火が通っていないだけご馳走だろう
なんだか泣けてきたわ
笑いを堪えながら言わないでくれ
スネーク、あなたが無事帰ってきたら腕によりを奮ってご馳走するわね
…楽しみにしてるよ
焼き加減はミディアムでよろしいかしら?という楽しげな声と共に通信は途切れ、男は再び静寂に包まれた。脳裏に思い出されたあの食べ物未満の黒い物体。親代わりであった完璧であった女の唯一とも思える綻びを想い、彼は少しだけ微笑んだ。ああ、あれを食べて生きていたのだから、戦闘糧食の一つや二つどうだというのだ。
辺りは相変わらず生きる物の気配ひとつせず、途方に暮れたように男は空を見上げる。
そして、今すぐ少佐に連絡して、あのやかましい女医の料理の腕を確認すべきか否か、を考えた。
スネーク「パラメディック」
パラメディック「どうかしたの?スネーク」
スネーク「精子が噴き出してきた!」
パラメディック「なっ!ちょ・・・ちょっと何してるのよ!任務中よ!」
スネーク「おおおおおおお」
パラメディック「ちょっとスネーク、聞いてるの?」
スネーク「・・・ふぅ、どうやらおさまったみたいだ・・・ハァ・・」
パラメディック「スネーク、あなたもしかして任務中いつも・・・」
スネーク「ああ、そうだ。暇があればいつも性欲を持て余す」
パラメディック「呆れた。よくそんなんで任務が務まるわね。ただの変態よ」
スネーク「やらないか?」
パラメディック「スネーク、あなたの頭の中はそればっかなのね?」
スネーク「違う!それだけじゃない!」
パラメディック「他に何があるっていうの?」
スネーク「食べる事もだ!」
パラメディック「そんなこと知ってるわ」
スネーク「本能を満たして何が悪い。なにせ今回はこのジャングルでの単独潜入だ。いつもよりも性欲を持て余す」
パラメディック「あなたらしい言い分ね。本当に野生化しちゃったのかしら?」
スネーク「ああ、そうかもな。文字通り蛇になった気分だ」
パラメディック「いいわねそれ」
スネーク「何がだ?どうせまた「戦慄!妖怪蛇人間」なんて映画を見たんじゃないだろうな?」
パラメディック「そんな映画あるわけないでしょ?フフフ」
スネーク「そんな事よりパラメディック」
パラメディック「なによ」
スネーク「精子って飲めるか?」
パラメディック「ちょっとあんた馬鹿じゃないの?」
スネーク「馬鹿とはなんだ。俺は真剣に聞いてるんだ」
パラメディック「そんなもの資料には---」
スネーク「飲んだ事ないのか?」
パラメディック「はぁ?そんなもの飲むわけないでしょ」
スネーク「で、味は?」
パラメディック「だから飲んだことないって言ってるでしょ!」
スネーク「ハハッ、その歳でザーメンも飲んだ事ないとはな」
パラメディック「ザーメン??何の話よ?」
スネーク「いや、なんでもない。任務にもどる」
パラメディック「あ、ちょっと待ってスネーク」
スネーク「なんだ」
パラメディック「ザーメン・・・じゃなかった。ラーメンを見つけたら必ず持ち帰ってね」
スネーク「ラーメン?例の即席ラーメンか?」
パラメディック「そう。それそれ」
スネーク「それならついさっき食糧庫で見つけたな」
パラメディック「え?本当に?」
スネーク「ああ、だが食ってしまった。かなり美味かった」
パラメディック「あれだけ念を押したのにあなたって人は・・・見損なったわ」
スネーク「大丈夫だ。またどこかで見つかるさ。心配するな」
パラメディック「きっとよ」
スネーク「ああ。俺の可愛いパイナップル。お前にザーメン顔射してやるさ」
パラメディック「何か言った?」
スネーク「いや、なんでもない。任務にもどる」 ピッ!
スネーク「どころでパラメディック?」
パラメディック「また変なこと聞くんじゃないでしょうね?」
スネーク「いや、ここはどこだ?」
パラメディック「・・・あなた忘れたの?」
スネーク「ああ、オナニーのしすぎで記憶を失ってしまった。」
パラメディック「どこから?」
スネーク「そうだな・・確か・・ブリーフィングからだ。」
パラメディック「たく・・・しょうがないわね。ここは情報局よ。」
スネーク「情報局!?情報局は解体されたはずだ。」
パラメディック「確かに。6月末にね。yoshiの率いる武装集団が要塞として復活させたの。」
スネーク「で任務は?」
パラメディック「武装集団を全員始末し、ウイルスの撤去よ。」
スネーク「簡単に言うがこれは単身侵入なんだぞ!」
パラメディック「スネーク。これは任務なのよ。やるしかないの。」
スネーク「・・・・わかった。ただ一つ条件だ。」
パラメディック「条件?」
スネーク「君の体だ。」
パラメディック「スネーク、あなたの頭の中はそればっかなのね?」
スネーク「さっき見つけた。即席ラーメン・・・最後の一個だ。」
パラメディック「あ!?」
スネーク「どうする?」
パラメディック「・・・・・わかったわ・・・1回だけよ。」
スネーク「約束だぞ。」
パラメディック「こっちの約束もね。」
スネーク「ああ、わかってる。心配するな。」
パラメディック「きっとよ。」
スネーク「ああ。俺の可愛いパイナップル。お前にザーメン顔射してやるさ」
パラメディック「なにか言った?」
スネーク「いや、なんでもない。任務にもどる」 ピッ!
その時!向こうから人影が!
スネーク「性欲を持て余す!」
スネークはその謎の人物に飛び掛った。次回につづく
パラメディック「どうかしたの?スネーク」
スネーク「精子が噴き出してきた!」
パラメディック「なっ!ちょ・・・ちょっと何してるのよ!任務中よ!」
スネーク「おおおおおおお」
パラメディック「ちょっとスネーク、聞いてるの?」
スネーク「・・・ふぅ、どうやらおさまったみたいだ・・・ハァ・・」
パラメディック「スネーク、あなたもしかして任務中いつも・・・」
スネーク「ああ、そうだ。暇があればいつも性欲を持て余す」
パラメディック「呆れた。よくそんなんで任務が務まるわね。ただの変態よ」
スネーク「やらないか?」
パラメディック「スネーク、あなたの頭の中はそればっかなのね?」
スネーク「違う!それだけじゃない!」
パラメディック「他に何があるっていうの?」
スネーク「食べる事もだ!」
パラメディック「そんなこと知ってるわ」
スネーク「本能を満たして何が悪い。なにせ今回はこのジャングルでの単独潜入だ。いつもよりも性欲を持て余す」
パラメディック「あなたらしい言い分ね。本当に野生化しちゃったのかしら?」
スネーク「ああ、そうかもな。文字通り蛇になった気分だ」
パラメディック「いいわねそれ」
スネーク「何がだ?どうせまた「戦慄!妖怪蛇人間」なんて映画を見たんじゃないだろうな?」
パラメディック「そんな映画あるわけないでしょ?フフフ」
スネーク「そんな事よりパラメディック」
パラメディック「なによ」
スネーク「精子って飲めるか?」
パラメディック「ちょっとあんた馬鹿じゃないの?」
スネーク「馬鹿とはなんだ。俺は真剣に聞いてるんだ」
パラメディック「そんなもの資料には---」
スネーク「飲んだ事ないのか?」
パラメディック「はぁ?そんなもの飲むわけないでしょ」
スネーク「で、味は?」
パラメディック「だから飲んだことないって言ってるでしょ!」
スネーク「ハハッ、その歳でザーメンも飲んだ事ないとはな」
パラメディック「ザーメン??何の話よ?」
スネーク「いや、なんでもない。任務にもどる」
パラメディック「あ、ちょっと待ってスネーク」
スネーク「なんだ」
パラメディック「ザーメン・・・じゃなかった。ラーメンを見つけたら必ず持ち帰ってね」
スネーク「ラーメン?例の即席ラーメンか?」
パラメディック「そう。それそれ」
スネーク「それならついさっき食糧庫で見つけたな」
パラメディック「え?本当に?」
スネーク「ああ、だが食ってしまった。かなり美味かった」
パラメディック「あれだけ念を押したのにあなたって人は・・・見損なったわ」
スネーク「大丈夫だ。またどこかで見つかるさ。心配するな」
パラメディック「きっとよ」
スネーク「ああ。俺の可愛いパイナップル。お前にザーメン顔射してやるさ」
パラメディック「何か言った?」
スネーク「いや、なんでもない。任務にもどる」 ピッ!
スネーク「どころでパラメディック?」
パラメディック「また変なこと聞くんじゃないでしょうね?」
スネーク「いや、ここはどこだ?」
パラメディック「・・・あなた忘れたの?」
スネーク「ああ、オナニーのしすぎで記憶を失ってしまった。」
パラメディック「どこから?」
スネーク「そうだな・・確か・・ブリーフィングからだ。」
パラメディック「たく・・・しょうがないわね。ここは情報局よ。」
スネーク「情報局!?情報局は解体されたはずだ。」
パラメディック「確かに。6月末にね。yoshiの率いる武装集団が要塞として復活させたの。」
スネーク「で任務は?」
パラメディック「武装集団を全員始末し、ウイルスの撤去よ。」
スネーク「簡単に言うがこれは単身侵入なんだぞ!」
パラメディック「スネーク。これは任務なのよ。やるしかないの。」
スネーク「・・・・わかった。ただ一つ条件だ。」
パラメディック「条件?」
スネーク「君の体だ。」
パラメディック「スネーク、あなたの頭の中はそればっかなのね?」
スネーク「さっき見つけた。即席ラーメン・・・最後の一個だ。」
パラメディック「あ!?」
スネーク「どうする?」
パラメディック「・・・・・わかったわ・・・1回だけよ。」
スネーク「約束だぞ。」
パラメディック「こっちの約束もね。」
スネーク「ああ、わかってる。心配するな。」
パラメディック「きっとよ。」
スネーク「ああ。俺の可愛いパイナップル。お前にザーメン顔射してやるさ」
パラメディック「なにか言った?」
スネーク「いや、なんでもない。任務にもどる」 ピッ!
その時!向こうから人影が!
スネーク「性欲を持て余す!」
スネークはその謎の人物に飛び掛った。次回につづく
シギントは会場を見回して溜め息をついた。
新年パーティーに来ているほぼ全員がパートナーを連れていた。勿論シギントも恋人と一緒に参加するはずだったのだが、出かける直前に喧嘩をしてしまったのだ。
「まぁ、怒るのも無理ないか、、、。」
売り言葉に買い言葉で、一人で行ってやると出てきてはみたが、この席に一人きりはあまりに惨めだった。
「さっさと帰って、膝をついて平謝りといくか、、、。」
出口へ向かおうと踵を返したシギントはテーブルに並んだ数種類のグラスに目を留めた。
「『ごめんなさい』の前に景気付けといくか、、、。」
マティーニを手にとって、一口飲んだシギントは嬉しそうに頷く。
「やあ、シギント。」
振り返ると、男女4人が立っていた。ドレスアップした可愛らしい女性と、少し気の強そうな目をした女性、そしてタキシード姿の 2人は、職場で見かけたことがあった。
「やぁ、、、ええっと、、、悪い。名前が出てこないんだけど、、、。」
どうやら同僚らしい2人にあまり友好的な雰囲気を感じなかったシギントはなるべく表情を変えないよう心がけた。どうも、些細な事で突っかかってくるタイプに見えたのだ。
「知らなくても仕方ないさ。俺たちは部署も違う。君は有名人だからね。」
「、、、どうも。」
先日の新設局への大抜擢を身内や親しい友人達は祝福してくれたが、若者の出世には妬みが付き物だ。そして自分の才能云々は棚に上げて、黒人の彼が自分より出世することが許せない白人は沢山いる。
「それにしても、奇抜なファッションだな?」
「まあね。流行の最先端ってとこさ。」
「アフリカ流だろう?」
「どうかな。俺はアフリカに行った事ないしね。」
不快感を顔に出せば相手を喜ばせるだけなのは分かっていたので、シギントは軽い口調で答える。
「、、、流行り好きはオー少佐譲りかい?」
「少佐が流行り好きだなんて、初めて聞いたよ。」
シギントの素直な疑問に同僚もどきはニヤリと笑い、シギントは聞き返したことを少し後悔した。ろくな答えではなさそうだ。
「だって、そうだろう?黒人を後押ししてやるってのは最近の紳士のファッションなんだろう?」
隣にいた女性が、男の袖を引っ張りながら「よしなさいよ」と眉間にしわを寄せた。
馬鹿な男なのに連れはまともだ、とシギントは思う。
「何かと大推薦なのは時代の先を行っているってアピールなのかと思うけど。良かったな、黒人で。」
この男も気の毒な人間だが、それを見てニヤついているだけの片割れはもっと哀れだと、ため息が出そうになるのをシギントは何とか押さえ込む。
「ほんと、ラッキーだよな。流行が廃れなきゃいいけど。まあ、せいぜい少佐に媚を売って捨てられないように、、、」
「ちょっと良いかしら?」
聞き慣れた張りのある声。シギントは声の主を見て微笑んだ。
普段は清楚ではあるが、抑えた服装が常の彼女が、今日は抜群に美しかった。
光沢のあるベージュのカクテルドレスにビーズで百合の花が刺繍された薄いストールを肩に掛けたパラメディックは彼らの間に割り込むように入ってきた。シギント同様、表情には表れていないが怒りのオーラが漂っている。
「新年早々、人を妬む事しか出来ないなんて悲しい話ね。情けないわ。」
「妬む?冗談だろう?俺はミスター・シギントに正装とはどんなものか教えていただけだよ。」
「なーるほど。物って言い様なのね。その言い訳術を駆使すれば、仕事でどんなミスをしても切り抜けられそう。羨ましいわ。」
男は黙り込んだ。悪態をつきたい所だが、恋人の手前プライドが許さないようだ。
「彼に欠点が見付からないから、黒人がどうのって言うしかないのよね。もし彼の肌の色が欠点だなんて思っているのなら、あなた達が立ち直れなくなりそうな身体的欠点をここで披露しようかしら。私ね、健康診断書はきちんと目を通しているし、全部頭に入っているのよ。」
「い、、、行こうぜ!」
先ほどまでニヤついていた片割れがすっかり青ざめた顔でそう言うと、何か言い返そうと口を開きかけていた男と、女性たちを追い立てるようにしてその場を離れていった。
「あなたって最低ね」とか「言われっぱなしでいいの?何か言いなさいよ!」とか、不機嫌な女性の声が遠のいていくのをシギントはポカンと見送っていたが、はっとしてパラメディックに向き直った。
「よお、パラメディック。凄く似合ってるよ。」
「、、、ありがとう、シギント。彼らの味方をする気は毛頭無いけれど、その格好はどうかと思うわ。」
パラメディックは大げさにシギントの頭からつま先まで見回した。
「ニューウェーブさ。21世紀あたりには流行ると思うぜ。」
タキシードは辛うじて身に着けていたがシギントだったが、足にはスニーカー、更に頭にはヒューストン・オイラーズのキャップを被っていた。
「随分先の話ね、、、。少佐が見たら、ショックで寝込みそうな格好よ。」
「実は、、、出かけるって時にフォーマルな靴がどこにも見付からなくってね。タキシードは準備してたんだけど、、、。仕事で履いてる皮のブーツはボロボロで泥だらけ。仕方なくスニーカーを履いたら彼女が「そんな格好の男とは絶対に出かけない」ってかんかんに怒っちまってさ。」
「それで、一人で来たわけ?彼女に会ってみたかったわ。そのキャップはシルクハットの代わり?」
「ああ、スニーカーとバランスを取ろうかと思ったんだけど。」
「大失敗みたいね、、、。それより、あなたって我慢強いのね。どうして怒らないの?」
シギントはさあね、と肩をすくめて見せる。彼が子供の頃、白人に売られた喧嘩を買った近所の男がどうなったかとか、白人の女性に罵声を浴びせた母親の友人がその後どんな目に遭ったのかなど、彼女に言うつもりは無い。
「怒ったり、腹を立てたりするのは好きな相手にするのさ。相手の為を思ってね。どうでもいい奴と言い争うなんて下らないよ。」
「まあ、私はあなたと喧嘩したことが無いけど?」
「欠点が無いからさ。」
パラメディックは美しい笑い声を立てた。
「欠点の無い女だったら、パーティーに一人で来たりしないわ。」
「え、、、だって、、、」
彼女はうんざりと肩を落とす。
「プライドも恥も捨てて、私から誘ったのよ。まんまとすっぽかされたわ。」
シギントは困り顔で、言葉を探す。
「きっと、打ち明けられない仕事があったのさ。教えたらあんたに危険が及ぶような。」
「あなたって、本当にお人よしね。でも、ありがとう。」
パラメディックは手にしたグラスを一気に飲み干すと、くすりと笑った。
「内心ね、ハラハラしていたのよ。」
「何をだい?」
「例えばよ?私が彼にここに来ざるを得ないような条件を突き付けるとするわ。パーティーなんて御免だっていつも言ってる彼のことだから、きっと二度と誘われなくて済む方法を考えるんじゃないかしら。」
「なるほど?」
「きっと、、、ド派手なフェイスペインティングで登場するんじゃないかしらって、、、。」
パラメディックが真面目な顔で言うので、つられて真剣に聞いていたシギントは堰を切ったように笑いだした。
「有り得ないって断言できる?」
パラメディックも笑いながら尋ねる。
「多分ワニキャップも被ってくるぜ。」
「でしょう?だから気持ちの10パーセントはほっとしてるの。」
「残りは?」
「がっかり。」
彼女が微笑む寸前、本当に悲しそうな顔をしたのをシギントは見逃さなかった。
きっと来てくれると信じていたのだろうか。来るつもりだった彼が事件に巻き込まれたのかも知れないと、心の中では気が気でないのかも知れない。だが、そこまで踏み込んだいらぬ慰めを欲するような彼女では無いことはよく分っている。
「、、、俺は、帰って彼女に謝ることにするよ。もし良かったら送っていくぜ?」
そう言わなければ、彼女は平気なふりをしたまま、パーティーが終わるまで彼を待っているような気がした。(きっと、彼は来ないだろうと何故かシギントは確信していた。)
案の定、パラメディックは自分を納得させるように大きく息を吸い込んだ。
「そうね、、、ええ、そうね、、、。でも、一曲も踊ってくれないのは、つれな過ぎない?この曲、私のお気に入りなの。」
「おっと、失礼。この斬新なファッションの俺で良ければ喜んで。」
シギントは片手を差し出した。
「それにしても、さっきは驚いたな。」
フロアーで踊りながら、シギントは言った。
「何が?」
「健康診断書の話さ。あいつの青ざめた顔、写真に撮りたいくらいだったぜ。全員頭に入ってるなんて、凄いよ。」
ダンスの相手は悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「あんなの嘘よ。」
「はあ?」
「全部なんて、無理に決まってるでしょう?はったりよ。でも彼には知られては困る秘密があるみたいね。後で調べてみようかしら?」
「、、、怖いな、、、。」
彼女の、その悪女じみた表情はとんでもなく魅力的で、これほどの女性の誘いを断る男はよほどの「クソ」だ、とシギントは現れない英雄に次回会った時、ゼロ少佐ばりの小言を言ってやろうと思いを巡らせた。
数日後。
食堂で昼食をとっていたシギントの所へ、パラメディックが歩み寄ってきた。
「よお、この間はどうも。」
「私こそ、送ってくれてありがとう。あのね、あなたにこれを渡しに来たの。」
彼女は持っていたバッグから箱を取り出した。
「何だい?」
「開けてみなさいよ。」
シギントはチーズバーガーを皿に置くと、包み紙を破り始める。
箱の中にはぴかぴかのフォーマルシューズが入っていた。
「、、、こりゃ凄いな。高かっただろう?」
「ほら、お誕生日に何も渡さなかったでしょう?気になってたのよ。これでもう彼女に叱られないで済むわね。それに、、、」
パラメディックはシギントの目をしっかりと見つめて続けた。
「あなたは近い将来、このタイプの靴を常に履いている立場になるわ。きっとね。」
「そいつは、、、」
「ミスター・シギント!!」
食事中の全員が顔を上げるほどの大声を張り上げながら、ゼロ少佐がこちらへ向かってくる。
「俺、、、何かしたっけ?」
「さあ、、、、?」
テーブルまで早足でやってきた少佐は少し息を上げていた。
「聞いたぞミスター・シギント。パーティーに運動靴を履いていったそうだな。」
「運動靴?」
少佐の後ろでパラメディックが「ゴメン」とジェスチャーしている。どうやら少佐の耳に入れてしまったのは彼女らしい。
「私が母国に帰省している間に、何たる弛みようだ。身だしなみも整えられないような男に出世は無いぞ。」
「いや、、、反省してます。でも、もう大丈夫ですよ。彼女が、、、」
「ほら、これは私からの昇進祝いだ。」
少佐は紙袋を渡してきた。中身の予想はついていた。パラメディックも同様なのか、彼が袋を開けるのをじっと見つめている。
「(やっぱり、、、)」
中身は、これまた仕立ての良さそうな黒のフォーマルシューズ。
「バーバリーだ。上等だぞ。」
少佐は満足そうに言った。パラメディックが可笑しくて堪らないという目をこちらに向けている。
「あの、、、凄く嬉しいです。ありがとうございます。パラメディックも、ありがとう。」
シギントは二人に交互に礼を言いながら、パーティーの翌日に恋人がやはりフォーマルシューズをプレゼントしてくれたことを彼らには内緒にしておくべきだろうかと悩んでいた。
-END-
新年パーティーに来ているほぼ全員がパートナーを連れていた。勿論シギントも恋人と一緒に参加するはずだったのだが、出かける直前に喧嘩をしてしまったのだ。
「まぁ、怒るのも無理ないか、、、。」
売り言葉に買い言葉で、一人で行ってやると出てきてはみたが、この席に一人きりはあまりに惨めだった。
「さっさと帰って、膝をついて平謝りといくか、、、。」
出口へ向かおうと踵を返したシギントはテーブルに並んだ数種類のグラスに目を留めた。
「『ごめんなさい』の前に景気付けといくか、、、。」
マティーニを手にとって、一口飲んだシギントは嬉しそうに頷く。
「やあ、シギント。」
振り返ると、男女4人が立っていた。ドレスアップした可愛らしい女性と、少し気の強そうな目をした女性、そしてタキシード姿の 2人は、職場で見かけたことがあった。
「やぁ、、、ええっと、、、悪い。名前が出てこないんだけど、、、。」
どうやら同僚らしい2人にあまり友好的な雰囲気を感じなかったシギントはなるべく表情を変えないよう心がけた。どうも、些細な事で突っかかってくるタイプに見えたのだ。
「知らなくても仕方ないさ。俺たちは部署も違う。君は有名人だからね。」
「、、、どうも。」
先日の新設局への大抜擢を身内や親しい友人達は祝福してくれたが、若者の出世には妬みが付き物だ。そして自分の才能云々は棚に上げて、黒人の彼が自分より出世することが許せない白人は沢山いる。
「それにしても、奇抜なファッションだな?」
「まあね。流行の最先端ってとこさ。」
「アフリカ流だろう?」
「どうかな。俺はアフリカに行った事ないしね。」
不快感を顔に出せば相手を喜ばせるだけなのは分かっていたので、シギントは軽い口調で答える。
「、、、流行り好きはオー少佐譲りかい?」
「少佐が流行り好きだなんて、初めて聞いたよ。」
シギントの素直な疑問に同僚もどきはニヤリと笑い、シギントは聞き返したことを少し後悔した。ろくな答えではなさそうだ。
「だって、そうだろう?黒人を後押ししてやるってのは最近の紳士のファッションなんだろう?」
隣にいた女性が、男の袖を引っ張りながら「よしなさいよ」と眉間にしわを寄せた。
馬鹿な男なのに連れはまともだ、とシギントは思う。
「何かと大推薦なのは時代の先を行っているってアピールなのかと思うけど。良かったな、黒人で。」
この男も気の毒な人間だが、それを見てニヤついているだけの片割れはもっと哀れだと、ため息が出そうになるのをシギントは何とか押さえ込む。
「ほんと、ラッキーだよな。流行が廃れなきゃいいけど。まあ、せいぜい少佐に媚を売って捨てられないように、、、」
「ちょっと良いかしら?」
聞き慣れた張りのある声。シギントは声の主を見て微笑んだ。
普段は清楚ではあるが、抑えた服装が常の彼女が、今日は抜群に美しかった。
光沢のあるベージュのカクテルドレスにビーズで百合の花が刺繍された薄いストールを肩に掛けたパラメディックは彼らの間に割り込むように入ってきた。シギント同様、表情には表れていないが怒りのオーラが漂っている。
「新年早々、人を妬む事しか出来ないなんて悲しい話ね。情けないわ。」
「妬む?冗談だろう?俺はミスター・シギントに正装とはどんなものか教えていただけだよ。」
「なーるほど。物って言い様なのね。その言い訳術を駆使すれば、仕事でどんなミスをしても切り抜けられそう。羨ましいわ。」
男は黙り込んだ。悪態をつきたい所だが、恋人の手前プライドが許さないようだ。
「彼に欠点が見付からないから、黒人がどうのって言うしかないのよね。もし彼の肌の色が欠点だなんて思っているのなら、あなた達が立ち直れなくなりそうな身体的欠点をここで披露しようかしら。私ね、健康診断書はきちんと目を通しているし、全部頭に入っているのよ。」
「い、、、行こうぜ!」
先ほどまでニヤついていた片割れがすっかり青ざめた顔でそう言うと、何か言い返そうと口を開きかけていた男と、女性たちを追い立てるようにしてその場を離れていった。
「あなたって最低ね」とか「言われっぱなしでいいの?何か言いなさいよ!」とか、不機嫌な女性の声が遠のいていくのをシギントはポカンと見送っていたが、はっとしてパラメディックに向き直った。
「よお、パラメディック。凄く似合ってるよ。」
「、、、ありがとう、シギント。彼らの味方をする気は毛頭無いけれど、その格好はどうかと思うわ。」
パラメディックは大げさにシギントの頭からつま先まで見回した。
「ニューウェーブさ。21世紀あたりには流行ると思うぜ。」
タキシードは辛うじて身に着けていたがシギントだったが、足にはスニーカー、更に頭にはヒューストン・オイラーズのキャップを被っていた。
「随分先の話ね、、、。少佐が見たら、ショックで寝込みそうな格好よ。」
「実は、、、出かけるって時にフォーマルな靴がどこにも見付からなくってね。タキシードは準備してたんだけど、、、。仕事で履いてる皮のブーツはボロボロで泥だらけ。仕方なくスニーカーを履いたら彼女が「そんな格好の男とは絶対に出かけない」ってかんかんに怒っちまってさ。」
「それで、一人で来たわけ?彼女に会ってみたかったわ。そのキャップはシルクハットの代わり?」
「ああ、スニーカーとバランスを取ろうかと思ったんだけど。」
「大失敗みたいね、、、。それより、あなたって我慢強いのね。どうして怒らないの?」
シギントはさあね、と肩をすくめて見せる。彼が子供の頃、白人に売られた喧嘩を買った近所の男がどうなったかとか、白人の女性に罵声を浴びせた母親の友人がその後どんな目に遭ったのかなど、彼女に言うつもりは無い。
「怒ったり、腹を立てたりするのは好きな相手にするのさ。相手の為を思ってね。どうでもいい奴と言い争うなんて下らないよ。」
「まあ、私はあなたと喧嘩したことが無いけど?」
「欠点が無いからさ。」
パラメディックは美しい笑い声を立てた。
「欠点の無い女だったら、パーティーに一人で来たりしないわ。」
「え、、、だって、、、」
彼女はうんざりと肩を落とす。
「プライドも恥も捨てて、私から誘ったのよ。まんまとすっぽかされたわ。」
シギントは困り顔で、言葉を探す。
「きっと、打ち明けられない仕事があったのさ。教えたらあんたに危険が及ぶような。」
「あなたって、本当にお人よしね。でも、ありがとう。」
パラメディックは手にしたグラスを一気に飲み干すと、くすりと笑った。
「内心ね、ハラハラしていたのよ。」
「何をだい?」
「例えばよ?私が彼にここに来ざるを得ないような条件を突き付けるとするわ。パーティーなんて御免だっていつも言ってる彼のことだから、きっと二度と誘われなくて済む方法を考えるんじゃないかしら。」
「なるほど?」
「きっと、、、ド派手なフェイスペインティングで登場するんじゃないかしらって、、、。」
パラメディックが真面目な顔で言うので、つられて真剣に聞いていたシギントは堰を切ったように笑いだした。
「有り得ないって断言できる?」
パラメディックも笑いながら尋ねる。
「多分ワニキャップも被ってくるぜ。」
「でしょう?だから気持ちの10パーセントはほっとしてるの。」
「残りは?」
「がっかり。」
彼女が微笑む寸前、本当に悲しそうな顔をしたのをシギントは見逃さなかった。
きっと来てくれると信じていたのだろうか。来るつもりだった彼が事件に巻き込まれたのかも知れないと、心の中では気が気でないのかも知れない。だが、そこまで踏み込んだいらぬ慰めを欲するような彼女では無いことはよく分っている。
「、、、俺は、帰って彼女に謝ることにするよ。もし良かったら送っていくぜ?」
そう言わなければ、彼女は平気なふりをしたまま、パーティーが終わるまで彼を待っているような気がした。(きっと、彼は来ないだろうと何故かシギントは確信していた。)
案の定、パラメディックは自分を納得させるように大きく息を吸い込んだ。
「そうね、、、ええ、そうね、、、。でも、一曲も踊ってくれないのは、つれな過ぎない?この曲、私のお気に入りなの。」
「おっと、失礼。この斬新なファッションの俺で良ければ喜んで。」
シギントは片手を差し出した。
「それにしても、さっきは驚いたな。」
フロアーで踊りながら、シギントは言った。
「何が?」
「健康診断書の話さ。あいつの青ざめた顔、写真に撮りたいくらいだったぜ。全員頭に入ってるなんて、凄いよ。」
ダンスの相手は悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「あんなの嘘よ。」
「はあ?」
「全部なんて、無理に決まってるでしょう?はったりよ。でも彼には知られては困る秘密があるみたいね。後で調べてみようかしら?」
「、、、怖いな、、、。」
彼女の、その悪女じみた表情はとんでもなく魅力的で、これほどの女性の誘いを断る男はよほどの「クソ」だ、とシギントは現れない英雄に次回会った時、ゼロ少佐ばりの小言を言ってやろうと思いを巡らせた。
数日後。
食堂で昼食をとっていたシギントの所へ、パラメディックが歩み寄ってきた。
「よお、この間はどうも。」
「私こそ、送ってくれてありがとう。あのね、あなたにこれを渡しに来たの。」
彼女は持っていたバッグから箱を取り出した。
「何だい?」
「開けてみなさいよ。」
シギントはチーズバーガーを皿に置くと、包み紙を破り始める。
箱の中にはぴかぴかのフォーマルシューズが入っていた。
「、、、こりゃ凄いな。高かっただろう?」
「ほら、お誕生日に何も渡さなかったでしょう?気になってたのよ。これでもう彼女に叱られないで済むわね。それに、、、」
パラメディックはシギントの目をしっかりと見つめて続けた。
「あなたは近い将来、このタイプの靴を常に履いている立場になるわ。きっとね。」
「そいつは、、、」
「ミスター・シギント!!」
食事中の全員が顔を上げるほどの大声を張り上げながら、ゼロ少佐がこちらへ向かってくる。
「俺、、、何かしたっけ?」
「さあ、、、、?」
テーブルまで早足でやってきた少佐は少し息を上げていた。
「聞いたぞミスター・シギント。パーティーに運動靴を履いていったそうだな。」
「運動靴?」
少佐の後ろでパラメディックが「ゴメン」とジェスチャーしている。どうやら少佐の耳に入れてしまったのは彼女らしい。
「私が母国に帰省している間に、何たる弛みようだ。身だしなみも整えられないような男に出世は無いぞ。」
「いや、、、反省してます。でも、もう大丈夫ですよ。彼女が、、、」
「ほら、これは私からの昇進祝いだ。」
少佐は紙袋を渡してきた。中身の予想はついていた。パラメディックも同様なのか、彼が袋を開けるのをじっと見つめている。
「(やっぱり、、、)」
中身は、これまた仕立ての良さそうな黒のフォーマルシューズ。
「バーバリーだ。上等だぞ。」
少佐は満足そうに言った。パラメディックが可笑しくて堪らないという目をこちらに向けている。
「あの、、、凄く嬉しいです。ありがとうございます。パラメディックも、ありがとう。」
シギントは二人に交互に礼を言いながら、パーティーの翌日に恋人がやはりフォーマルシューズをプレゼントしてくれたことを彼らには内緒にしておくべきだろうかと悩んでいた。
-END-
外に出ればしとしとと雨が降る六月。
部屋の中に静かな時間が流れている今日は日曜日。
遥は本を広げて宿題をしている。
そして机をはさんで桐生は新聞に目を通していた。
目では縦の文字を追いつつ桐生がふいに口を開いた。
「なあ、遥…」
「…ん、何?」
「今日、何日だった…?」
遥はノートに落としていた目線をあげながら答えた。
「おじさん、その新聞に書いてるよ」
「そうか…そうだな…」
桐生が少し慌ててがさごそと新聞を動かした。
「今日は17日だよ」
遥は小さく呟き、再び鉛筆をさらさらと走らせ始めた。
嘘をついた日
ver. 1
しばらくして、雨の音が聞こえるほど静まり返った部屋の中で遥は宿題を前に少し考え込んでいる風だったが、
突然鈴を転がすような笑い声を立て始めた。
「おかしいよ、おじさん」
「何だ遥、急に笑い出して」
「おじさん…なにか私に言いたいことがあったらかくさないで言ったらどう?」
「なんの事だ?」
「うそはだめだよ」
「俺は何も嘘なんかついてないぞ」
「それもうそだよ」
「馬鹿を言うな…」
「だって…おじさんがうそを付く時ってくせがあるの…私、知ってるよ」
桐生は平静を装って新聞をゆっくりとたたみながら心を落ち着かせようとした。
「遥、大人をからかうのはよせ」
「からかってなんかないよ。私はうそを付かないで正直に言っただけだよ」
にこにこ笑いながら言う遥に小馬鹿にされた気になり、桐生は腰をあげながら、
「…もう好きにしろ」
とベランダの方へ向かった。
戸をガラリと開けてベランダに出てみれば、細かい雨が時折風に揺られて屋根の下に体をぽつりと濡らしに来る。
外を眺めて過ごしていたが、濡れたアスファルトの匂いが下から立ちこめ始め、桐生は部屋へ戻ろうと思った。
ふと部屋の方を振り返るとさっきまで座っていた遥の姿がそこになかった。
「遥?」
部屋に入りながら声をかけてみたものの返事はない。
桐生が机の前に再び腰を下ろそうとすると、遥が自分の部屋からドアを開けて出て来た。
「おじさん、本当になにも言いたい事はないの?」
ふぅと桐生はため息をつき、
「遥…いいかげんにしろ」
と腰掛けた。
「そっか…う~ん…どうしようかなぁ…」
一体何がどうしようなんだと少しいらつき始めた桐生に遥はちょこちょこと歩みを寄せて近付いてきた。
そして、
「おじさん、誕生日おめでとう!」
と言ったかと思うと、桐生の頬に軽くキスをした。
桐生の顔があっというまに赤く染まったのは言うまでもない。
完全に固まって微動だにできなくなった桐生の手に遥は照れを隠すように何かを押し付けた。
「ハイ、これプレゼント!」
小さなリボンがついた箱だった。
桐生はまだぼうっと前を向いたままだ。
「自分の誕生日だから気になってたんでしょう? これ以上、うそついたら来年はプレゼントないからね!」
その言葉にようやく我を取り戻した桐生は手元のプレゼントに目をやり、
「あ…あぁ…」
という返事をするのが精一杯だった。
遥はその言葉を聞くとさっさと自分の部屋に戻ってしまった。
後ろ姿を見せる遥に何とか感謝の言葉を告げようとしたが、閉まったドアにさえぎられてしまった。
自分の手のひらにすっぽり収まる程の箱はきれいなブルーの紙で包まれていた。
それを大事に広げて箱を開けるとそこにあらわれたのは小さな鈴のついた紐だった。
「ん?」
桐生は一瞬何か分からなかったがそれが携帯につける‘ストラップ’という物だと気が付いた。
それを取り出してみると箱の底には折りたたまれたメッセージカードが置かれていた。
そこには遥の字でこう書いてあった。
おじさんへ
たんじょう日おめでとう。
けいたい電話によかったらつけて下さい。
遥より
P.S. 私とおそろいだよ。
電話を取り出すたびに控えめに小さくチリンと鳴るその音は、
桐生にあの日の出来事を思い起こさせ、いつまでも幸せな気持ちにさせてくれるものとなった。
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あとがき
桐生ちゃんの誕生日祝いとしては遥が主役なような気がする話ですが、あたふたする桐生ちゃんを見てみたかったので自作しました。
あと念願のごほうび、ほっぺにちゅうが欲しかったんです(笑)。
間に合わなかったけれどももう一つバージョンがあります。
桐生ちゃんは自分の誕生日は絶対忘れる派だと思うのでイメージを崩してます…
でも遥と過ごし始めてから、そんな風にかわってしまう可愛い桐生ちゃんもありだと思うんです。
父の日を気にしてプレゼントをもらえるか少し心配する桐生ちゃんとかもいいですよね。
妄想の産物でしかありませんが、とにかく今日はメデタイ日です。
桐生ちゃん、39歳の誕生日おめでとう!
2007.6.17