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うろほろぞ
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mmz
Leave only me rather than me.

 たった一度、作戦を共にしただけなのに。

 あれから彼とはちゃんと顔を合わせてはいない。
数度、建物内で遠くでその姿を見た事があるだけだ。いつしか自分の方から彼
の姿を追っていたのかもしれない。
 見掛ける度にどこか、自分が自分でなくなりそうな気がする程、不思議な感
覚になる。もちろん、人を好きになった事は初めてではない。今は仕事の方が
楽しくて特定の人はいないが、付き合った人もいる。
 その頃には無い感覚だった。

『ただの憧れ?』
 それが恋とも付かない不思議な感覚の始まり。





 誰しも遂行するのは困難だと思われた厳しいあの任務から無事に帰って来た
と聞いて、本当はすぐさまその胸に飛び込みたかった。その頃はまだ同じ部隊
の仲間としてだったが…
 だが、立場的にそういう訳には行かなかった。仕事をこなさなければならな
い。無事とは言え、命に別状はないとは言え、一生その目には光が戻る事はな
い程の重症だった。理由を問うても彼は答えようとはしなかった。頑に口を閉
ざす程、何か深い訳があるのだと思った。それ以上は深く追求する事は諦めた。

 初めて会ってから、何日も経たないのに自分の中ではその存在が止められな
い程に大きくなっていく。だが、彼の心には違う誰かがいる。作戦中に痛い程、

思い知らされた。自分など到底叶うはずの無い女性。
 その事に気付いてから、自分の気持ちを抑えるしかなかった。彼に取っては
ただの同僚にしか過ぎないのだ。





「パラメディック!」
 不意に聞き覚えのある声に呼び止められた。振り返るとそこにはゼロ少佐が
立っていた。
「あ、ゼロ少佐」
「新しい部署はどうだ?」
「ええ、何とかやっていますから安心して下さい。自分の資格も生かせるし、
やりがいもありますから」
「それは良かった」
 ゼロ少佐は現場にいる時とは打って変わって、柔らかい表情で微笑んでいた。
顔の大きな傷が似合わない程、紳士的でふっと全てを包み込まれる様な気がす
る。上司としてはこれ以上のない人だった。だが、もう彼は自分の上司ではな
い。元上司だ。

「それに……免許を賭ける必要もないし……」
 もぞもぞと言いにくそうにそうにする。自分でもあまりにも後先を考えず勢
いだけの行動が今となっては恥ずかしい。スネークを少しでもバックアップし
たいそれだけだった。
 「まあ……そのおかげで、スネークが無事に還って来る事が出来たんだから
あまり自分を責めなくてもいいと私は思うんだが……」





 今回の作戦でパラメディックは医師免許こそは剥奪されないまでも、スネー
クを救う為とは言え、その資格を賭けるというあまりにも感情的で計画性の無
い行動について、FOXにいるには相応しくないと他の部署へ移されたのだっ
た。だが、それは表向きの理由で、今後も今回の『スネークイーター作戦』の
様な極限を伴う任務に就く事もあろうFOXに彼女を置くには危険過ぎるとス
ネークはゼロ少佐に進言した。あまりにも唐突の事だったが、少なからず同じ
気持ちを抱いていたゼロ少佐は即彼女を異動させた。
 最初は頑として聞かなかったパラメディックだったが、最後にようやくスネ
ークが自分の身を案じて望んだ事だと説得して、その異動を飲んだのだった。
本当はスネークは自分がそう言った事は伏せて欲しいと頼んでいたのだ。

 彼女が自分に取っていらない存在だと勘ぐられたくなかった。本当は彼女が
大切だからこそ、自分から遠ざけたかった。今回の作戦が成功した事によって、
FOXにはこれから、ますます危険な任務が増えて来るだろう。彼女の様な純
粋な人間を置いておく事はしたくなかったのだ。彼女にはもっと相応しい場所
があるそう思うからこそ、ゼロ少佐に強く進言した。
 彼自身、何となくながらパラメディックのスネークに対する視線が変わった
事に気付いていた。日増しにその温度は上がって行く。
 だから、スネークが唐突に彼女の異動を申し出た際、それを驚きながらも飲
む事にした。同じ部隊での恋愛は良い結果を齎さない。いつしか、命を落とす
引き金になる。どこでもそうだ。FOXだから、という訳ではない。
 それなら一層の事、スネークから距離を置かせてやる方が彼女の為になると
ゼロ少佐は考えた。どちらに出ても、あのまま同じ部隊にいるよりはいい。ス
ネークの事を思い続けるにしても忘れるにしてもだ
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