悪魔な君
「あ"~~!!!やっと書類書き終わった・・・!!!」
バタンと倒れるダルタニャン。
「ハハッ。お疲れさん!ダルタニャン」
ダルタニャンとアラミスは夜遅くまで仕事をしていた。
今日中に書き終えなければならない書類をしていた。
それがギリギリで今終えたのだ。
「もう腕がシビれるよ~・・・もうペン持てない・・・」
「何を言ってるんだ。大の男が・・・」
疲れているダルタニャンにクスッと笑うアラミス。
ブーと脹れるダルタニャン。
「さッ、ダルタニャン早く帰らないと・・・コンスタンス殿も待ってるんじゃないか?」
「うん。そうするよ!」
ダルタニャンは帰る支度をし始める。
「アラミスはまだ帰らないの??」
「うん。僕はこの書類を隊長に渡してから帰るよ・・・」
「アラミス、大丈夫かい??顔色少し悪そうだけど・・・」
「え?そうかな。最近忙しいし・・・その疲労が溜まったのかな」
「僕が隊長に書類届けるからアラミス、先帰ったら??」
アラミスが持ってた書類をダルタニャンが持つ。
「いいよ!ダルタニャンだって早く帰ってあげろよ。今頃コンスタンスが眠そうな顔して待ってるよ!」
「えッ・・・えッ・・・で、でも~」
「いいから!それに僕が家に帰っても独りなんだし、待ってくれてる人もいないから!」
アラミスはダルタニャンの背中を押して無理矢理帰らせた。
「フゥー・・・ダルタニャンも余計な世話を・・・ゴホッ」
セキを1回してトレビィルの部屋に書類を届けるために向かった。
ちょっとフラつきモードだった。
朝・・・――
「ウィーース!!おはよう!!」
「ポルトス、おはよう。」
今日も元気にポルトスがやってきた。
「なんだなんだ。ダルタニャン眠そうだな」
「うん・・・昨日残業だったしね・・・」
「そういや、アラミスも夜遅くまで残ってたんだよな」
「うん。それになんか顔色悪かったし・・・大丈夫かなって思うんだけど・・・」
「まぁ、アラミスのことだ!!大丈夫だって!そんなやわじゃねーよ☆☆」
ポルトスがダルタニャンの背中をバシバシ叩く。
「痛いって・・・!!」
「お~わりわり☆」
ポルトスが言う。
「ダルタニャン、ポルトスおはよう!」
「あ、アトスおはよう☆」
「おっす!!!」
「なんだ。アラミスはまだなのか・・・」
「そうみたいだね」
しばらくするとようやくアラミスも出勤してきた。
「おはよう・・・・・」
「ウィー・・・ってアラミスお前、大丈夫か?顔色悪いぞ!」
ポルトスがアラミスに言い寄る。
「・・・大丈夫だよ!ちょっと風邪気味だけどね・・・ゴホッ」
「今日休めばよかったのに・・・!!」
ダルタニャンも心配になってアラミスに言い寄る。
「今日、非番以外の奴が休んだらダメな日だろ・・・・コホッ」
「けど、体調壊してるなら別だろ??」
アラミスがそう言うと、ポルトスが言い返す。
「全然・・・大丈夫・・・だって・・・!!さっきだって風邪薬飲んだし・・・!!」
「でも・・・顔真っ赤だよ・・・??」
「う、うるさい!」
ダルタニャンのツッコミに動じないアラミス。
「とにかく!!!大丈夫だと言ったらだい・・・・じょう・・・」
「わ!!アラミス!!!」
アラミスはポルトスの腕の中で倒れた。
「ど、どうしよう!!ア、アトス!!」
「ダルタニャン落ち着け。ただ気を失っただけだ。とりあえず、寝かそう」
ポルトスがアラミスを抱っこしてベットに寝かした。
「とりあえず、トレビィル隊長に報告だな」
3人はトレビィルに報告しにいった。
「・・・・んッ」
数時間後、アラミスは目が覚めた。
最初に目が入ったのは天井だった。
まだ頭がぼんやりしていた。
やはり風邪だったみたいだ。
「お、起きたか。」
「アトス・・・。あれ・・・??僕は・・・ケホッ」
「なんだ。覚えてないのか?お前倒れたんだぞ。風邪で・・・」
「あッ・・・ああ。そうか・・・みんなは??」
「今日はみんな出て行った。陛下のお供にな☆」
「そっか・・・・・・・ってなんでアトスはいるのさ?」
「一人で寝かしてみんながはい行きましたって言ったらお前の面倒を誰が見るんだ?」
「別に独りでも大丈夫だよ!!ふん!・・・ゴホン」
またセキをしてふて寝してそっぽを向くアラミス。
「つれないな・・・今ここにいるのは俺とお前、2人っきりなのにな・・・」
アトスはそう言ってアラミスの頬に軽いキスをする。
そしてアラミスの服を脱がそうとする。
「なッ!?なにするんだ!!アトス!!や、やめろ!!」
アトスは何も聞かず、ただ無言で続ける。
「ちょ!ア、アトス!!誰か来たらどうするんだ!?それに僕は病人だぞ!!」
「好都合ではないか。ここには誰も来ないし、アラミスは風邪で動けないからな」
悪魔のように微笑むアトスがそこにいた。
そして口と口が重なった。
「んッ!!んんんッ・・・!!」
アラミスは両手でアトスの胸をドンドン叩いたが効果はない。
「・・・観念するんだな・・・アラミス」
小声でアラミスの耳からささやくアトスの声。
「ん・・・やめ・・・ろ・・・」
アトスはアラミスの上に乗っかった。
そして服のボタンを開けていく。
ゆっくりゆっくりと・・・
さらしもはずした。
アラミスの胸が乳首があらわになった。
片方の胸をアトスがゆっくりと舐める。
アトスの舌がアラミスの乳首をコロコロ転がすように舐める。
「んあ・・・はぁ!やだぁ!」
アラミスがアトスをどかそうとしたが男の力で勝てるはずがなく離してくれなかった。
それに2人きりだからって一応ここは銃士が集まる部屋だ。
いつ誰が入ってくるかわからない空間でこんなことをしているなんて・・・
もし入ってきたらもう誰とも顔を合わせられない・・・
そんなことばかりアラミスの頭の中をよぎる。
「アラミス、何を考えている?」
「あッ!!!」
ヘンなことを考えていたらいつの間にかアトスの手はアラミスの下にまでいっていた。
ズボンも脱がされている。
もう何も着ずに全裸だった。
アトスの指がアラミスの中をかき混ぜる・・・
「は・・・ッ!!あッ・・・んッ!おね・・・が・・・い!やめ・・・はあ!」
「何を言ってるか全然わからないな。ん??」
今日のアトスは悪魔だ・・・
「お前が風邪のせいか濡れ方が異常だな。たくさんの液が俺の手を濡らす。」
アトスはアラミスの中から指を出し、その濡れた指を自分の口へ持って行き舐める。
もうアラミスには自分で動く力が残っていなかった。
「はぁはぁ・・・」
「なんだ?もう限界なのか・・・??だがしかし、まだまだお楽しみはこれからだ・・・
俺をさらに楽しませてほしいものだな・・・なぁアラミス」
片方の手がアラミスの胸を・・・もう片方の手がアラミスの中をメチャクチャにする。
「はあ!・・・んッ!!あッ!んんッ!ふぁッあ!」
「乱れる姿もまたキレイだな・・・」
「え・・・?あ!」
アトスはアラミスの腕を引っ張った。
急にアトスの顔が近くにきたのでドキリとするアラミス。
アトスの上にアラミスが乗っかっている。
「あッ!!ア、アトス・・・きゅ、急に・・・入れる・・・の・・やめて・・・くれ・・・ない・・・?はッ!あ・・・」
アラミスの中にはアトスのモノが入っていった。
「いいじゃないか・・・☆」
絶対に楽しんでる・・・アラミスはそう思った。
「あああ!はッ!!んッ!・・・あ・・・はッ!」
アトスの動きがだんだんと早くなる。
「くッ・・・!今日のアラミスはよくしめつけてくるな・・・」
「ち、ちが・・・あッ!やぁッ!!はぁ・・・!んん!ああんッ!!」
「まだ簡単にはイかせない・・・アラミスッ!」
「・・・・・やッ・・・!!あッ・・・!ふぅ・・・・ッん!ちょ、アトス!離せよ!!」
アラミスが巻いていたさらしを手に取り、アラミスの腕を上に上げてベットに手を縛り付けた。
「もがくお前もいいな・・・」
ズンッ!!
「あッ!!い、いたッ!!・・・あ!!」
「手がなければ何もできないだろ・・・?もがきながらイくお前を見たい・・・」
「フ、フザ・・・・け・・・ハァッ!んあッ!!る・・・なぁ・・・あ!」
「そろそろ・・・限界・・・・かな・・・?かわいいお嬢さん♪」
「今日・・・・・・の・・・はぁ!・・・お前は・・・あッ!・・・悪・・・・魔だな・・・んッ!」
「悪魔でも天使でもそちらでもかまわん・・・俺の今日の飯はお前だ・・・」
アトスは笑って言う。
「あッ・・・ぁ!・・・も、も・・・!!あッはぁ!!」
「先にイくなよ・・・アラミス・・・!」
「んんッ!!ああああ!!はぁん!!!!・・・・はぁッ!!!」
同時に果てた・・・
しばらくの間2人は横になっていた。
アラミスの手に巻いていたさらしをはずす。
「そーいえば・・・」
「何?アトス、どうかした?」
「アラミス、風邪治ったんじゃないか・・・??」
「あ、そーいえば・・・そう・・・かも・・・」
Hのせいで忘れていたのを思い出した。
「俺のおかげだな☆」
「(やられた・・・)」
アトスはアラミスにむかってウィンクする。
アラミスはちょっとアトスの計算にのせられてるのではと思った。
「さて、そろそろ着替えるか・・・みんなも戻ってくるころだしな・・・もうちょっとこうしていたいが・・・」
「悪魔みたいなお前とは勘弁してくれよ」
2人は服を着はじめる。
アトスはアラミスの液とか2人の汗とかでべっとりだったシーツを外し、新しいシーツをつける。
数分後ダルタニャンとポルトスが戻ってきた。
「お!アラミス。風邪治ったかな?」
「うん。寝てたらだいぶよくなった。迷惑をかけてすまない」
ポルトスはアラミスの髪をなでる。
やめろといわんばかりに微笑むアラミス。
「私のおかげなんだがな。なッ!アラミス。」
「うるさい!!!」
アトスがにこやかにアラミスに微笑んだが一発殴られた。
そして部屋を出て行った。
ダルタニャンとポルトスはやれやれと思った。
「たしかに風邪が治ったのはあいつのおかげだけどダルタニャンとポルトスの前では
ああゆう言い方はやめてもらいたいものだな・・・恥ずかしい・・・!!」
アラミスは顔を真っ赤にして言った。
でもちょっとだけアトスに感謝している・・・
翌日、次はアトスが風邪になったみたいだ。
風邪のときにヤるからだよアトス・・・
ダルタニャンとポルトスはそう思った。
「悪魔だったお前に天罰だな。アトス」
「今日はお前が悪魔か・・・?アラミス」
―――FIN―――
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感じていたいから
「はぁ~・・・チクショウー!!」
この時ローシュフォールはキレ気味だった。
それも無理はない。
最近このパリでは鉄仮面が現れ、街で暴れる。
でも、すぐに護衛隊たちも倒れてしまう。
そんな自分でもそうなのだが・・・
しかも銃士達にもバカにされ、さんざんだった。
本当についていない・・・
リシュリューにも怒られる・・・
自分でも情けないと思う。
回想シーン・・・――
『待て~~~~!!!』
ローシュフォールと護衛隊が鉄仮面を追いかけている。
『お前らごときに私を捕まえられるかな?』
『何~!?フザけるな!追うんだ~!』
『フハハハハハ~』
『あッ!!』
鉄仮面は夜の闇へと消えていった・・・
そして毎度のことリシュリューに怒鳴られ、あげくの果てには銃士達にも笑われた。
回想終了・・・――
この回想を思い出すとよけいにため息が出てくる。
「明日もこんな生活か・・・鉄仮面め!!明日こそは!!!」
また思い出し、怒りが出てきた。
大声で叫んだ。
次の日の夜・・・――
またしても鉄仮面が現れた。
今日もローシュフォールと護衛隊は追いかける。
激しくイラだっていたローシュフォール。
しかし、おしいところで銃士隊を辞めさせられたダルタニャンが現れ邪魔される。
「ダルタニャン!!毎回邪魔するんだ!?きぃぃ~!!」
悔しくて悔しくて・・・
たまに思ってしまう。
こーゆー仕事は実はむいていないんじゃないか?と・・・
けれどリシュリューを裏切れない自分がそこにいる。
「ローシュフォール様・・・。」
さすがに護衛隊隊長のジュサックも心配していた。
そしてまたしても夜の街をトボトボと歩くローシュフォール。
その時ローシュフォールを叩いた奴がいた。
「イタッ!!誰だ!?・・・・・ってアラミスか・・・。」
それは銃士隊で働いている三銃士の一人アラミスだった。
「帰ろうと思ったら前にお前がいてな☆」
「またバカにしにきたのか?」
「とんでもない。いつもご苦労さんと思ってるよ。」
とニッコリするアラミス。
今日はもう怒る気もしないローシュフォール。
そして歩く。
「ちょ!ちょっと!」
アラミスはローシュフォールを呼び止める。
だが、聞こえないフリをして家に帰るローシュフォール。
「(あいつ大丈夫かな~?)」
なんかほっておけないアラミスはローシュフォールとついていった。
「な、何ついてくるんだ!?」
「だって危なっかしいんだ!あんたが・・・!!」
「な!あのなぁ~!!」
ローシュフォールの言葉もなしにアラミスはついていく。
ローシュフォールの家・・・――
「はい!」
「・・・・・・ハッ!?」
アラミスがテーブルの上においたのはワインだった。
「ポルトスから貰ったんだけどのも☆一人じゃ飲みきれないし」
「なッ。。。」
「働きすぎもよくないし、たまにはパーッとやろう♪」
アラミスに後押しされた。
仕方なく飲むローシュフォール。
「おいしい?」
「悪くはない」
いつもケンカばかりしている奴と飲むのは何か変な感じだ
と思うローシュフォール。
やけになって飲み始めるローシュフォール。
アラミスも飲む。
そして時間が過ぎる。
酔っ払うローシュフォール。
「だ、大丈夫か?ローシュフォール・・・。」
「うるさい!んなもん知るか~!」
「・・・・・・・」
「なんで私だけがこんな・・・くぅ~!!」
次は泣き始めた。
アラミスはローシュフォールに歩み寄った。
「ったく・・・世話のやける奴・・・・」
くすッと笑うアラミス。
すると突然ローシュフォールはアラミスを押し倒した。
「わ!!な、何をする!?離せ!!」
だが離そうとしないローシュフォール。
「やッ・・・・!!」
アラミスの腰のベルトを外し、チャックをあける。
そしてアラミスの中にローシュフォールの指が入ってくる。
「や・・・やめ・・・・んッ!はぁ・!」
「ん?やめてもいいのか?お前の中はもうこんなんだぞ。」
「あッ・・・・」
「それにずいぶんと濡れてるな。溜まってたのか。」
「あ~・・・・誰かさんのせいでずいぶんとご無沙汰だったからな。」
「そうか。悪いことをしたな」
「ローシュフォール・・・本当に酔ってるのか??」
「さぁな。お前にまかす。」
「んッ!」
アラミスにキスをするローシュフォール。
アラミスの口の中にロシュフォールの舌が入ってくる。
「んんんッ!」
長いキス、やっと離してくれた。
すぐにローシュフォールは自分の指をアラミスの中に入れる。
「あッ!・・・・ッ!ああ!」
出したり入れたりする。
イクという寸前でローシュフォールは手の動きをとめる。
「ロ・・・ローシュ・・・・フォール・・・・!限・・・界!!」
「ん?どうした?何がほしいんだ?」
赤くなるアラミス。
「んなこと言えるか・・・・・!!」
「ならば別にいいんだ。でもこのままで大丈夫かな。」
「・・・・・しい」
「ん??」
「ロ、ローシュ・・・フォールのが・・・・ほ、ほし・・・い」
赤くなりながらもアラミスはローシュフォールに言った。
「よく言えたな」
「あッッッ!!!!!」
いきなりローシュフォールのモノがアラミスの中に入ってきた。
「やッ!ああ・・・・はぁ!・・・ッ!やんッ!!」
「アラミス・・・今日は・・・やけに締めつけるな。」
「んんんッ!はぁん・・・!!ああ!!」
アラミスは大声で叫んだように声を出す。
そのせいかローシュフォールはさらに動きを早めた。
「あああ!!ッ・・・!あッ・・・ああッん!」
「いいか?」
「イ・・・イイ!!ああッ・・・・んッ!!あんッ・・・ひゃ!」
「そうか・・・そろそろ私も限界・・・だ。一緒に・・・」
「あ・・・イキそう!も・・・もう・・・ああああ!!!んッ!」
「クッ・・・・ウッ」
同時にイッた2人。
「はぁはぁ!やッ!」
「すまん・・アラミス。1度では足りん。」
「ちょ・・・明日だって仕事だろ?続けたら明日がもたないぞ!」
「かまわん。」
アラミスの耳元でローシュフォールが言った。
「え・・・・!」
『お前を感じていたいんだ・・・・』
アラミスはドキッとし、また濡れたのを感じた。
グチュ
アラミスの中にまたローシュフォールの指が入った。
「ちょ・・・あッ!・・・やめ・・・はあ!」
「あと1回・・・・」
そう言い、ローシュフォールはまたアラミスを攻めてゆく。
「ちょ!!ちょっと待て!!後ろは・・・嫌だ!!」
バックで後ろは初めてなアラミスだがローシュフォールはゆっくりと自分のものを入れる。
「い!!痛いッ!!あッ・・・!!」
「私に任せろ。愛してる・・・・・」
「やッ・・・・!ああ!イタッ・・・!!!」
動きも早くなってきた。
「アラミス・・・今夜は寝かせない・・・!」
「あ!ッ・・・・!!ああん!」
Hは夜遅くまで続いた。
朝2人は一緒に出勤した。
アラミスは誰かの腕を借りないと歩けない状態だった。
夜のせいで腰が痛いらしい・・・
「まったく・・・・情けないなぁ~銃士隊のくせに・・・」
「誰のせいだ・・・・・誰の・・・」
フッと笑うローシュフォール。
「もうここでいい!」
アラミスは無理矢理ローシュフォールから離れ、走って出勤場所に行った。
だが、ちょっと痛そうだった。
でもアラミスは振り返り、ローシュフォールを見た。
「・・・・ありがと。がんばれよ!・・・それと、す・・・・・・・」
アラミスの言葉は風でかき消された。
「は!?なんて言ったんだ!?」
「聞こえなかったらいい!じゃ!」
アラミスは走っていってしまった。
「あいかわらずだ・・・」
ローシュフォールも出勤場所へ向かった。
途中でジュサックが来た。
「ローシュフォール様~!!!」
「なんだ?ジュサック。」
「なんだ。じゃないですよ~遅いですよ!鉄仮面が現れたんですよ!!」
「な~に~!?よ~しジュサック!行くぞ~!!!」
ローシュフォールはジュサックとともに鉄仮面が現れた場所へ走って向かっていったのだった。
そしてアラミスはダルタニャン達に首すじに赤いものを発見されからかわれたのは言うまでもない・・・
―――FIN―――
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傷
アトスとアラミスが銃士の仕事をしていた時。
「あ・・・」
「ん?どうかしたか?アラミス」
アトスの体から少し見えた傷――
「この傷・・・やっぱり残ったんだ。」
「ああ、けれど別に後悔していない。」
しかしアラミスはつらかった。
それは自分が作ったのには変わりはなかったのだから・・・――
少し前のこと・・・――――
ダルタニャン、アトス、ポルトス、アラミスはトレヴィル隊長に仕事を任されたのだ。
その途中どこかわからない賊はアラミスに銃を向けて撃ってきたのだ。
『アラミス!!危ない!』
その時アトスがかばったのだ。
『ぐあッ・・・・・・・!!』
『『『アトス!!』』』
3人が声を上げた。
そしてポルトスとダルタニャンが賊を追い払った。
『アトス!大丈夫か?』
ダルタニャンが声をかけた。
しかしアトスは危険な状態だった。
3人は急いで次の町を目指し、宿をとった。
医者が言うには急所は外れたが跡が残るかもしれないと言われたのだ。
3人は少し黙り込んでしまった。
アトスの体にある傷はその時のものだった。
「ごめん・・・」
アラミスは謝った。
「なぜお前が謝る?お前のせいじゃない。あの時の賊が悪いんだ。気にするな。」
「だけど・・・!!」
アラミスが話そうとした時アトスがアラミスに抱きついた。
「ア、アトスッ・・・」
「だからお前が気にすることじゃない。それにこれはお前を守った証だ。」
アトスが笑った。
そしてアラミスにキスをする。
深く長いキス・・・――
「んッ・・・・・」
そしてそのままアラミスを押し倒す。
「ア、アトス待って!今仕事中だろ?!それに誰かに見られたら!」
ジタバタしてアトスをどかそうとする。
しかし男の力だけあって無理だった。
「お前のその顔、瞳を見たら、いてもたってもいられない。見られても私はかまわない。」
アトスの目はもう違った。
「私が困る・・・。」
アラミスの言葉もなしにアトスはアラミスのボタンをひとつひとつ外していく。
「あッ・・・・」
アラミスの上半身はもう裸になってしまった。
「アラミス・・・きれいだ」
「・・・・・アトス。傷が見えて少しセクシーかな。」
「そうか・・・」
「あッ!」
アラミスの中にアトスの手が入ってきた。
「もう濡れてる。早いな。。。」
「だ、誰のせいだ・・・んッ!」
アラミスがよがる。
しかしアトスはいろいろなところを攻める。
「あッ・・・もう・・・ダ・・・メ・・・」
「早いなアラミス。」
アトスはアラミスの中に自分のモノを入れた。
「あッやッ・・・ん・・・はぁ」
アラミスの瞳に涙が・・・――
「もうちょ、ちょっとだ・・・くッ」
「あ!も、もうダメッ!イッイク!」
「いっしょに・・・・はッ」
「あ、ああああああ!!」
アラミスとアトスはいっしょにイった。
そしてその10分後ダルタニャンとポルトスが仕事から帰ってきた。
「ただいま。仕事終わった?」
「って・・・ダルタニャンまだみたいだな^^;」
「みたい。行く前より少し減っただけ・・・」
「うるさい!アトスのせいなんだよ!」
ダルタニャンとポルトスの言葉にアラミスが怒鳴った。
「わかったよ。アラミス。あ、アトス、その傷。」
「やっぱ残ったのか・・・」
ダルタニャンとポルトスもしみじみあのことを思い出した。
「だからもう気にするな!」
「でも2人とも仕事どうするの?」
ダルタニャンの問いにアトスが答える。
「あ、徹夜してでもアラミスと片付けるからダルタニャンとポルトスは帰っていいぞ」
「そう?じゃあがんばってね!」
そしてダルタニャンとポルトスは帰っていった。
「なんで帰らすのさ!?手伝ってもらえばいいじゃないか?!」
「なんで?そしたら仕事終わった後なにもできないじゃないか?」
「はぁ~!?フザけるな!!!」
「うッ!傷に響く」
アラミスの怒鳴りにアトスが胸をあてる。
「うそつけ!」
アトスに蹴りを入れる。
長い夜がまた続く・・・
仕事で徹夜という名のものが・・・・
初めての夜
――ノワージ・ル・セック村――
「あ・・・」
フランソワの部屋にルネとフランソワがいた。「やッ!ん・・・」
「ルネ・・・愛してる。」
「フランソワ・・・あたしも・・・!あ・・・」
ルネは16歳、フランソワは32歳。
しかし、この2人は心の底から愛し合っていたのだ。
「あいかわらず、ここが弱いな。」
フランソワはルネの弱い部分、胸を触る。
「ち・・・違うもん。ハァ、フランソワだから感じるの・・・」
「そうか・・・かわいいな。」
「あ!ハァ、、、あ・・・ん」
フランソワはルネを攻めまくる。
「だいぶ、濡れてきたな。そろそろいいか?」
「ん・・・あ、、、ちょっと怖いけど。。。いいよ。」
フランソワのものをルネの中に入れる。
「あ!痛ッ・・・痛い!・・・・!!くッ」
「まぁ初めてだからな。けれどすぐに良くなる」
「あ・・・う・・・ん、あ・・・ああ!!!」
フランソワはゆっくりと動いた。
「あ!あ・・・やッああ!つッ!!やだぁ・・・!!」
「くッ・・・・・・」
「・・・・・あ!イ、イく!!んッ・・・」
ルネはフランソワとともにイった。
初めての夜だった。
優しく抱きしめるフランソワ。
2人は笑いあった。
「・・・・・・ミス」
「・・・・・・・・・」
「アラミス!!」
「・・・・ん。。。あ、アトス」
実はセックスの最中にアラミスは眠っていたらしい。
「大丈夫か?疲れてるのか?もしかして。」
「あ、大丈夫。ごめん。眠ってしまって・・・」
「いいや。気にしてないよ。疲れてるみたいだしな。なんか夢見てたのか?笑ってたけど・・・」
「うん。ちょっとね。」
「そうか。。。フランソワのことか?」
「え?!ん、まぁね・・・」
「フッ。ちょっと妬けるなぁ・・・」
「クスクス、妬いてくれるなんて・・・アトスじゃないみたい。」
アトスが少しムッとした。
「続き・・・いいか?」
「ん?かまわないさ」
アラミスのおでこ、口にキスをするアトス。
そしてセックスの続きをする。
長い夜がまた続く。
今のアラミスは幸せだった。
大切な人がそばにいてくれるから・・・・
フランソワも許してくれるかな・・・――
クシャナは自分の部下を、大事に扱うよう心掛けていた。 以前、自分が育て上げた部隊を、父や兄達が
湯水のように使って犬死させた時、そのような無体な仕打ちは決してしないと誓ったのである。 それ故、
クロトワの人権を無視していると己の良心に指摘され、衝撃を受けた。
“私は、いったい… 奴の気持ちに気付かなかったのも、クロトワを一人の人間として認識していないから
だろうか? …だとすれば辻褄が付く。 クロトワはそれを知っていたから… ああする以外、想いを伝える
事ができなかったのか。 想いを寄せている事に気付いてももらえず、辛かったのであろう。 死にたくなる
程、苦しかったのかも知れない…”
部屋に着いた頃にはクシャナの憤りは治まり、反省すると同時に、クロトワの行動の責任を大部分、自分に
負わせていた。 廊下から居間に入り、護衛兵達を外に残して戸を閉めると、一日の疲れが溜息として
零れた。 その素顔は別人のように沈んでいた。
“とにかく、寝よう。”
奥にある別室の寝室に向かって歩き出すと、暖炉際の長椅子から影が起きた。
「姫様、晩かったのですね。 御髪を梳きましょうか?」
「ログダ! まだいたのか。 晩くなるから下がって良いと言った筈だ。」
「ですから尚更に心配で、眠れなかったのです。 平民兵と宴会だと伺いましたので… 姫様の御身に何か
あってはと、ハラハラしておりましたのですよ!」
クシャナはまた溜息をついた。 幼い頃から乳母を務めたログダを手放す事もできず、身の回りの事を
任せていたが、どれほど月日が経とうとも、自分を非力な少女のように扱う彼女の心配性は、時には重荷
でしかなかった。
「ログダ… もういい加減その呼び方は止めてくれ。 私はもう、子供ではない。」
「それは承知しております! 時には姫様ご自身よりも、意識しているのではないかと、それが何より心配
なのです!」
後を追って寝室に入って来たログダに、抵抗する方が疲れると諦めて、クシャナは化粧台の前の椅子に
腰を下ろした。 結い上げられたその髪を慣れた手付きで解くと、優しく梳かしながらログダは続けた。
「姫様はもう何年も、兵士として戦場にまで出向かれていらっしゃるので、ご自分を男同然とお思いになって
おられるのではありませんか? それは、戦法においても、誰にも勝っておいでなのは分かっております。
しかし姫様は女として、ご自分がどれ程お美しく、周囲の男どもにとって魅力的でいらっしゃるかを、お忘れ
がちです。」
目を伏せていたクシャナは、鏡の自分と視線を合わせ、小声で呟いた。
「ログダ… クロトワと同じ事を言うのだな。」
「え? 何ですか、姫様?」
「今日、な… クロトワが同じ事を言っていた。」
「クロトワ、ですか? あぁ、あの薄汚い平民の参謀ですね。 随分とでしゃばった事を言いますんですね!
姫様が甘やかしてらっしゃるから、付け上がるのですよ! あのような男が一番危険です! 粗野で粗暴、
見るからに飢えた狼ではありませんか! 正直申し上げて、なぜあのような者をお側に置かれるのか、
私には理解できかねます。 他に幾らでも優秀な兵士がおりますでしょうに…」
複雑な気持ちでクシャナは聞いていた。 今夜の出来事をログダが知れば、自分の言った事が立証された
と主張するであろう。 いずれは町中、下手をすれば国中に知れ渡る大事件(スキャンダル)。 だがクロトワの
心中を初めて理解したクシャナは、慈悲を持って対処してやりたかった。
「クロトワは、あれでも奇麗好きだぞ。 貧相な雰囲気はしているが、あれは奴の芝居だ。 平民上がり故に
貴族兵の前では腰の低い態度を取らねば、余計敵を作る事になる。 人の心を良く理解している、思慮も
分別もある男だ。 私が側に置いているのも、兵士達の士気を素早く察知できる逸材だからだ。 それに、
もう二度も、私の命を救った…」
「それは私も伺っております。 しかし常日頃、お側近くに置かなくても宜しいのではありません? 姫様の
お美しさを口にするなんて、身の程を弁ていない証拠です! そんな事を考える権利すらない下人の分際
で… 何を想像しているのか考えただけで身の毛が弥立ちますわ。 男など、獣(けだもの)でございますから
ね、姫様!」
「獣だの狼だの言っているが、クロトワは単なる犬だ。 私の飼いならした、番犬だ。 甘える事はあっても、
主に逆らいはしない…。」
「そんな! 姫様、油断してはいけません! 隙を狙って、何をしようとするか――」
ログダが手を止めたので、クシャナは立ち上がり、無造作に服を脱ぎ始めた。
「今日は疲れた。 もう休ませてくれ。」
「…姫様…」
「まぁ、明日になればお前の喜ぶ知らせが聞けるだろう。」
「えっ? 何でございますか?」
ブーツを脱いで振り向きもせず、ベッドの上に敷かれた寝巻きを羽織ながら答えた。
「安心しろ。 もうクロトワは私の側にはいられん。」
「? どういう事です、姫様?」
「…明日になれば分かる。 もう寝る。」
背を向けたままベッドに入ったクシャナに、ログダはしっかりと毛布を掛け直した。 その憂鬱な顔は見え
なかった。
「お休みなさいませ、姫様。」
「…」
そっと扉が閉まると、クシャナは目を瞑り、一日の出来事を忘れようとした。 だが眠ろうとすればする程、
眠れなくなった。
楽な姿勢を探して寝返りを打っていると、ふと生暖かいシーツの端が唇に触れた。 瞬時に蘇る、口付けの
余韻。 毛布に擁かれた温もりも、なぜかクロトワの腕を思い出させた。
“そう言えば… あんな風に抱かれたのは、母上が毒を盛られてから、初めてだな…”
懐かしさと人恋しさに胸を締め付けられ、涙を堪えながら、ようやくクシャナは眠りについた。
その頃、独房の中でクロトワは完全に酔いから醒め、顔の血と涙を袖で拭い、投げ出された床から起き
上がり、ベッド代わりの板の上に座った。
“さて… もうやっちまった事を悔やんでも仕方ねぇや。 問題はこれからどうするか、だ。”
一本の松明に燈された独房を見渡し、溜息を零した。
“もっとも、こうなったら俺のできる事なんざ高が知れてるか… 脱獄できる程チャチには作ってねぇだろう
し、脱走させてくれるような命知らずもいねぇだろうし…。 クシャナがどうするつもりなのかもさっぱり分かん
ねぇや。 本当にこのまま生かしておく気か? でもクレネや将軍連が黙っちゃいねぇだろうな。 どっち道
コルベットが出来あがったら、俺は用無しだ。 遅かれ早かれ、処刑されるだろう。 まぁ、結構長生きした
方だよな… 俺みてぇな陳腐な男にしちゃぁ上出来か。 クシャナの玉の肌にも触れたんだし、もう思い残す
こたぁねぇな!”
クシャナの肌の感触を思い起こし、にんまりと顔が綻んだ。
“ホントにいい女だったなぁ… 滑々してて、ほんの少し香水の匂いがして…。 あ~ぁ… いったい、誰の
女房になるんだか…。 チキショウ! 爵位さえあったら、俺が真っ先に口説いてやったのに! ま、どうせ
突っ撥ねられちまっただろうが、な。 俺より顔も頭もいい奴は、幾らでもいるからな。 でもやっぱり悔しい
ぜ、クシャナ! あんたが他の男のものになるなんて… さっさと処刑されちまう方が、よっぽど楽だ。”
クロトワは、自分の発想に気付き、苦笑した。
“生き延びる事しか考えてなかったこの俺が、『死んだ方がマシだ』なんて、どうかしてるよなぁ。 俺とした
事が、本気でクシャナに惚れちまったらしい…。 馬鹿なもんだなぁ!”
つい、声を出して笑ってしまった。 だが同時に、また涙が頬を濡らしていた。
“情けねぇや… 俺ァなんて無様なんだ! こんな男、クシャナが気に留める筈がねぇよな。 嗚呼、そうさ!
俺なんか、死んじまったら、きっとすぐ忘れちまうだろう。 『あんな馬鹿がいた』って事も、知らねぇ内に忘れ
ちまってるだろう。 チキショウ!”
護衛兵に取り押さえられた時、ベルトにあった銃も剣も没収されたが、クロトワは非常用に、ブーツの踵に
小さな刃を忍ばせていた。 指の長さ程しかないそのナイフの刃を取り出し、初めて自分の手首に当てた。
“せめて、あんたを想って死んで逝った男がいたって事を、覚えててくれよ… 情けねぇけどよぉ、それくらい
しか、俺を思い出してもらえるような事ができねぇんだ。 クシャナ… 戦場であんたを庇って死んだ奴等
みたいに、俺の為にも泣いてくれるか? ほんの二・三滴でも、涙を流してくれるか? それとも、『馬鹿な
奴だ』って、軽蔑するか? …あんたに軽蔑されるのは、やっぱり嫌だなぁ…”
内心、躊躇しながらも、手首には刃を当てたまま、その表面に反射される松明の炎を呆然と見詰めていた。
“もうちょっとマシな覚え方して欲しいもんだよなぁ… なんか、こう、形に残るような… 見る度、俺を思い
出さずにゃぁいられねぇような… チキショウ、どっかに歯型でも付けとくんだったなぁ!”
しかしクシャナの白い肌にくっきりと残る痕を思い浮かべると、さすがのクロトワも良心の呵責を感じた。
“やっぱり、女にンな事してたら、一生恨まれるか。 幾ら男勝りのクシャナだって、女に違いねぇからな…。
そこまで怒らせてたら、コルベットがどうなったって、即座に処刑されただろうな。”
ふと、クロトワは気付いた。 そして刃物を落とす程、驚いた。
“何やってんだ、俺は! コルベットがあるじゃねぇか! 作りかけのあのヤツを目一杯すげぇのにすりゃ、
クシャナも見る度、乗る度、俺の事を思い出すじゃねぇか!”
取り落とした刃を拾い上げ、慌てて元の隠し場所に戻した。
“そうさ! コルベットを完成させる為に、クシャナは俺の処刑を延期したんだ。 あの船は、云わば俺の
忘れ形見になる訳だ。 それを期待して――いや、俺のウデに期待してくれたんじゃねぇか! それに
応えねぇで死んじまったら、男が廃るぜ! こうなったらクシャナの為に、最高の船を拵えてやる! その
後で捨てられたって構やしねぇ。 誰もがアッと驚くような、世界一のコルベットを、あんたの為に作り上げて
見せるぜ!
湯水のように使って犬死させた時、そのような無体な仕打ちは決してしないと誓ったのである。 それ故、
クロトワの人権を無視していると己の良心に指摘され、衝撃を受けた。
“私は、いったい… 奴の気持ちに気付かなかったのも、クロトワを一人の人間として認識していないから
だろうか? …だとすれば辻褄が付く。 クロトワはそれを知っていたから… ああする以外、想いを伝える
事ができなかったのか。 想いを寄せている事に気付いてももらえず、辛かったのであろう。 死にたくなる
程、苦しかったのかも知れない…”
部屋に着いた頃にはクシャナの憤りは治まり、反省すると同時に、クロトワの行動の責任を大部分、自分に
負わせていた。 廊下から居間に入り、護衛兵達を外に残して戸を閉めると、一日の疲れが溜息として
零れた。 その素顔は別人のように沈んでいた。
“とにかく、寝よう。”
奥にある別室の寝室に向かって歩き出すと、暖炉際の長椅子から影が起きた。
「姫様、晩かったのですね。 御髪を梳きましょうか?」
「ログダ! まだいたのか。 晩くなるから下がって良いと言った筈だ。」
「ですから尚更に心配で、眠れなかったのです。 平民兵と宴会だと伺いましたので… 姫様の御身に何か
あってはと、ハラハラしておりましたのですよ!」
クシャナはまた溜息をついた。 幼い頃から乳母を務めたログダを手放す事もできず、身の回りの事を
任せていたが、どれほど月日が経とうとも、自分を非力な少女のように扱う彼女の心配性は、時には重荷
でしかなかった。
「ログダ… もういい加減その呼び方は止めてくれ。 私はもう、子供ではない。」
「それは承知しております! 時には姫様ご自身よりも、意識しているのではないかと、それが何より心配
なのです!」
後を追って寝室に入って来たログダに、抵抗する方が疲れると諦めて、クシャナは化粧台の前の椅子に
腰を下ろした。 結い上げられたその髪を慣れた手付きで解くと、優しく梳かしながらログダは続けた。
「姫様はもう何年も、兵士として戦場にまで出向かれていらっしゃるので、ご自分を男同然とお思いになって
おられるのではありませんか? それは、戦法においても、誰にも勝っておいでなのは分かっております。
しかし姫様は女として、ご自分がどれ程お美しく、周囲の男どもにとって魅力的でいらっしゃるかを、お忘れ
がちです。」
目を伏せていたクシャナは、鏡の自分と視線を合わせ、小声で呟いた。
「ログダ… クロトワと同じ事を言うのだな。」
「え? 何ですか、姫様?」
「今日、な… クロトワが同じ事を言っていた。」
「クロトワ、ですか? あぁ、あの薄汚い平民の参謀ですね。 随分とでしゃばった事を言いますんですね!
姫様が甘やかしてらっしゃるから、付け上がるのですよ! あのような男が一番危険です! 粗野で粗暴、
見るからに飢えた狼ではありませんか! 正直申し上げて、なぜあのような者をお側に置かれるのか、
私には理解できかねます。 他に幾らでも優秀な兵士がおりますでしょうに…」
複雑な気持ちでクシャナは聞いていた。 今夜の出来事をログダが知れば、自分の言った事が立証された
と主張するであろう。 いずれは町中、下手をすれば国中に知れ渡る大事件(スキャンダル)。 だがクロトワの
心中を初めて理解したクシャナは、慈悲を持って対処してやりたかった。
「クロトワは、あれでも奇麗好きだぞ。 貧相な雰囲気はしているが、あれは奴の芝居だ。 平民上がり故に
貴族兵の前では腰の低い態度を取らねば、余計敵を作る事になる。 人の心を良く理解している、思慮も
分別もある男だ。 私が側に置いているのも、兵士達の士気を素早く察知できる逸材だからだ。 それに、
もう二度も、私の命を救った…」
「それは私も伺っております。 しかし常日頃、お側近くに置かなくても宜しいのではありません? 姫様の
お美しさを口にするなんて、身の程を弁ていない証拠です! そんな事を考える権利すらない下人の分際
で… 何を想像しているのか考えただけで身の毛が弥立ちますわ。 男など、獣(けだもの)でございますから
ね、姫様!」
「獣だの狼だの言っているが、クロトワは単なる犬だ。 私の飼いならした、番犬だ。 甘える事はあっても、
主に逆らいはしない…。」
「そんな! 姫様、油断してはいけません! 隙を狙って、何をしようとするか――」
ログダが手を止めたので、クシャナは立ち上がり、無造作に服を脱ぎ始めた。
「今日は疲れた。 もう休ませてくれ。」
「…姫様…」
「まぁ、明日になればお前の喜ぶ知らせが聞けるだろう。」
「えっ? 何でございますか?」
ブーツを脱いで振り向きもせず、ベッドの上に敷かれた寝巻きを羽織ながら答えた。
「安心しろ。 もうクロトワは私の側にはいられん。」
「? どういう事です、姫様?」
「…明日になれば分かる。 もう寝る。」
背を向けたままベッドに入ったクシャナに、ログダはしっかりと毛布を掛け直した。 その憂鬱な顔は見え
なかった。
「お休みなさいませ、姫様。」
「…」
そっと扉が閉まると、クシャナは目を瞑り、一日の出来事を忘れようとした。 だが眠ろうとすればする程、
眠れなくなった。
楽な姿勢を探して寝返りを打っていると、ふと生暖かいシーツの端が唇に触れた。 瞬時に蘇る、口付けの
余韻。 毛布に擁かれた温もりも、なぜかクロトワの腕を思い出させた。
“そう言えば… あんな風に抱かれたのは、母上が毒を盛られてから、初めてだな…”
懐かしさと人恋しさに胸を締め付けられ、涙を堪えながら、ようやくクシャナは眠りについた。
その頃、独房の中でクロトワは完全に酔いから醒め、顔の血と涙を袖で拭い、投げ出された床から起き
上がり、ベッド代わりの板の上に座った。
“さて… もうやっちまった事を悔やんでも仕方ねぇや。 問題はこれからどうするか、だ。”
一本の松明に燈された独房を見渡し、溜息を零した。
“もっとも、こうなったら俺のできる事なんざ高が知れてるか… 脱獄できる程チャチには作ってねぇだろう
し、脱走させてくれるような命知らずもいねぇだろうし…。 クシャナがどうするつもりなのかもさっぱり分かん
ねぇや。 本当にこのまま生かしておく気か? でもクレネや将軍連が黙っちゃいねぇだろうな。 どっち道
コルベットが出来あがったら、俺は用無しだ。 遅かれ早かれ、処刑されるだろう。 まぁ、結構長生きした
方だよな… 俺みてぇな陳腐な男にしちゃぁ上出来か。 クシャナの玉の肌にも触れたんだし、もう思い残す
こたぁねぇな!”
クシャナの肌の感触を思い起こし、にんまりと顔が綻んだ。
“ホントにいい女だったなぁ… 滑々してて、ほんの少し香水の匂いがして…。 あ~ぁ… いったい、誰の
女房になるんだか…。 チキショウ! 爵位さえあったら、俺が真っ先に口説いてやったのに! ま、どうせ
突っ撥ねられちまっただろうが、な。 俺より顔も頭もいい奴は、幾らでもいるからな。 でもやっぱり悔しい
ぜ、クシャナ! あんたが他の男のものになるなんて… さっさと処刑されちまう方が、よっぽど楽だ。”
クロトワは、自分の発想に気付き、苦笑した。
“生き延びる事しか考えてなかったこの俺が、『死んだ方がマシだ』なんて、どうかしてるよなぁ。 俺とした
事が、本気でクシャナに惚れちまったらしい…。 馬鹿なもんだなぁ!”
つい、声を出して笑ってしまった。 だが同時に、また涙が頬を濡らしていた。
“情けねぇや… 俺ァなんて無様なんだ! こんな男、クシャナが気に留める筈がねぇよな。 嗚呼、そうさ!
俺なんか、死んじまったら、きっとすぐ忘れちまうだろう。 『あんな馬鹿がいた』って事も、知らねぇ内に忘れ
ちまってるだろう。 チキショウ!”
護衛兵に取り押さえられた時、ベルトにあった銃も剣も没収されたが、クロトワは非常用に、ブーツの踵に
小さな刃を忍ばせていた。 指の長さ程しかないそのナイフの刃を取り出し、初めて自分の手首に当てた。
“せめて、あんたを想って死んで逝った男がいたって事を、覚えててくれよ… 情けねぇけどよぉ、それくらい
しか、俺を思い出してもらえるような事ができねぇんだ。 クシャナ… 戦場であんたを庇って死んだ奴等
みたいに、俺の為にも泣いてくれるか? ほんの二・三滴でも、涙を流してくれるか? それとも、『馬鹿な
奴だ』って、軽蔑するか? …あんたに軽蔑されるのは、やっぱり嫌だなぁ…”
内心、躊躇しながらも、手首には刃を当てたまま、その表面に反射される松明の炎を呆然と見詰めていた。
“もうちょっとマシな覚え方して欲しいもんだよなぁ… なんか、こう、形に残るような… 見る度、俺を思い
出さずにゃぁいられねぇような… チキショウ、どっかに歯型でも付けとくんだったなぁ!”
しかしクシャナの白い肌にくっきりと残る痕を思い浮かべると、さすがのクロトワも良心の呵責を感じた。
“やっぱり、女にンな事してたら、一生恨まれるか。 幾ら男勝りのクシャナだって、女に違いねぇからな…。
そこまで怒らせてたら、コルベットがどうなったって、即座に処刑されただろうな。”
ふと、クロトワは気付いた。 そして刃物を落とす程、驚いた。
“何やってんだ、俺は! コルベットがあるじゃねぇか! 作りかけのあのヤツを目一杯すげぇのにすりゃ、
クシャナも見る度、乗る度、俺の事を思い出すじゃねぇか!”
取り落とした刃を拾い上げ、慌てて元の隠し場所に戻した。
“そうさ! コルベットを完成させる為に、クシャナは俺の処刑を延期したんだ。 あの船は、云わば俺の
忘れ形見になる訳だ。 それを期待して――いや、俺のウデに期待してくれたんじゃねぇか! それに
応えねぇで死んじまったら、男が廃るぜ! こうなったらクシャナの為に、最高の船を拵えてやる! その
後で捨てられたって構やしねぇ。 誰もがアッと驚くような、世界一のコルベットを、あんたの為に作り上げて
見せるぜ!