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パパとサニー






「きゃあー!!!大作君!!!!」

そのとき自分でもなにがどうなったのかってわからなかったの。
すっごく頭が熱くなって目の前が赤くなって・・・・

ドーンって大きな音がして・・・登ってた木が・・・

私が・・・サニーがしたの・・・・


ただ落ちそうになった大作君の手をつかんであげようって思ったのに
助けてあげようって思っただけなのに・・・・・・・・


「おい!救護班こっちだ!!サニー様を!小僧などどうでもいいっ」

「うわっだめだ、まだトランス状態で近寄れない!!」

「仕方ないっセルバンテス様をお呼びしろ早く!」

どうしたの?・・・どうしてみんな・・・・頭がいたい・・・いたい・・・パパぁ・・・

大作君・・・頭から血が・・・サニーが・・・サニーがしたの・・・・

「申し訳ございませんセルバンテス様!!少し目を離した隙にっ」

「こ、これはいかん!!サニー!!」

「セルバンテス様近づくと危険です!!」

「どけ!お前たちは下がっていろ!!」

おじ様・・・サニーどうしたの?

「こんなことになるとは・・・サニー!私の目を見なさいっ」

目・・・?おじ様・・・の?
おじ様の目・・・色が・・・・・・・・・・・・・

「そうだ私の目だけ見ていなさい、さあ大丈夫だから目だけを・・・」

なんだか身体が・・・
頭が・・・・軽く・・・・

「さあ早く運べっ、いいかレベル5の遮蔽治療室を使いVS03=Y型を5ml血液注射しろ。後で私もすぐに行く!・・・おい!何をやっている大作君も怪我をしているじゃないか!早く運ぶんだっ!!!」


だいさくくん・・・ごめんね・・・・・・・・・









サニー、夢をみたの



パパ・・・赤ちゃん抱きかかえて走ってる・・・・

まわりはこわれたたてものばっかりで

明かりがなくってまっくらで、火事なのかな、燃えてる火だけが明るいの

車も、電車もこわれてうごいてないの

人も・・・うごいてない人が多くって・・・・

たくさんたくさんうごいてない人がいて・・・

パパはその中を・・・サニーを抱きかかえて走ってるの・・・・










「サニーちゃん、気がついたかい?」

パ・・・・おじ様・・・うん・・・ここはどこ?病院?

「そうだよ、サニーちゃんちょっと熱がでただけなんだ。寝ていれば治るから」

・・・・・・そう・・・なの・・・うん、頭がとってもいたかったのにもうなんともなくなってる・・・・あ、おじ様大作君は?大作君ケガしたの、サニーの、サニーのせいでケガしたの!どうしよう!どうしようおじ様!

「違うよ、サニーちゃんのせいじゃあないから安心したまえ」

ううん、サニーがやったの。サニーが大作君にケガさせちゃったの。ほんとうにごめんなさい・・・・ごめんな・・・・さい。

「サニーちゃん・・・・」

おじ様、どうしてうつむくの?




それからサニーは大作君がいる「基地」の病院からいつもくらしている「本部」の「メディカルセンター」っていうところに運ばれたの。


樊瑞のおじ様が泣きそうな顔しておみまいにきてくれた・・・しんぱいかけてごめんなさいおじ様。ううん、もう頭はいたくないの。サニーもう大丈夫お熱下がったみたい。でももう少し寝てなさいってセルバンテスのおじ様が言ったから・・・はい。ありがとうございます樊瑞のおじ様。


それからサニーはひとりでいっぱい考えたの、大作君にあやまらなくっちゃ、血が・・・出てたもん・・・いたいよね・・・サニーをゆるしてくれるかな・・・。またいっしょに遊んでくれるかな・・・。こんど会ったとき大作君に「ごめんね」ってあやまって・・・そうだ、クッキーを持っていこう。チョコがついたクッキーなら大作君も大好きだよね?2人で食べてまたお絵かきしたいな。


「寝ていないのか」

「パパ!」

パパ来てくれたんだ、しんぱいかけてごめんなさい・・・。

「まったく・・・セルバンテスがなにやらコソコソしているかと思ったら・・・お前と、どこぞの子どもとを・・・こうなる可能性もあるのをわかっていながら何を考えているのだあの男はっ!」

パパ、セルバンテスのおじ様を怒らないで。サニーがわがまま言ってお願いしたの、おともだちが欲しいって。それで・・・それでセルバンテスのおじ様が・・・・。サニーが悪いの、ごめんなさい・・・。

「その子どもとどうなったのかは頭に直接見えたからな・・・わかった・・・・わかっている・・・セルバンテスは悪くない、ましてやサニーお前も何も悪くは・・・ない。謝る必要などどこにもない、謝らなくて・・・いい・・・」

パパ?どうしたの?

「本当に悪いのは・・・私だ」

どうして?

「私の子であり血を受け継ぐばかりに・・・」

???
どうして?パパが悪くってあやまるの??

「こんなことになるのなら・・・・・ずっと独りでいればよかったのだ・・・・・」

パパはサニーの横に座ってセルバンテスのおじ様みたいにうつむいたの。
サニーはパパの言葉がわからなかったけどとっても悲しくっなって

悲しくなって・・・


「あのねサニーパパの夢を見たの、パパが赤ちゃんのサニーを抱いて走ってたのよ?」

「夢・・・?・・・私が?」

「パパ、サニーを落とさないようにしっかり抱いてくれてたの、わかったの」

「そ、それは・・・まさか・・・」

「だからサニーは・・・・パパの子で良かったって、思ったの・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

パパ変な顔になっちゃった。でも本当にそう思ったんだもん。
ね、パパ、パパ?・・・まだ変な顔になってる、うふふおかしいの。

あ、そうだあれをパパにわたさなきゃ・・・どこへ・・・あ、机の上にあった。
ねぇパパあれ使ってみて?


「なんだこれは」

「おともだちの子から貸してもらった接着剤、切っちゃった『おやこのえん』をこれでひっつければいいんだって。すぐつかなくってもセロテープで貼り付けておけばしっかりつくかもって、言ってたの」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

「パパ、これ使ってみてサニー『おやこのえん』ってわかんないから・・・

「・・・・・・・・・・・・そうか」

「ひっつくといいな・・・だってそれが切れてるからサニーはパパといっしょに暮らせないんでしょ?ひっつくとサニーはパパといっしょにいられるもの」

「・・・・・・・・・そう・・・・・・か・・」

パパ?

パパどうしたの?

大作君から借りた接着剤をパパはスーツのポケットにいれて「もう寝ていろ」ってサニーに言って出ていっちゃった。






それから三日たってセルバンテスのおじ様がサニーのおみまいにきてくれたの。もうサニー大丈夫なのに樊瑞のおじ様が「まだ休んでいなさい」って・・・おじ様って心配しすぎなの。

「ふふふ、いいじゃあないかサニーちゃん。でも本当に大丈夫かい?」

はい、セルバンテスのおじ様にも心配かけちゃって・・・

「いやいや、謝らないでくれたまえ。悪かったのはおじ様の方なのだから・・・」

ううん、違うの。パパはおじ様は悪くないって言ってたの。パパがねパパが悪いんだって・・・言ってたの・・・どうして悪いのかな・・・おじ様どうして?

「・・・・・・・・どうして・・・かな、おじ様にもわからない・・・・な・・・」

またおじ様うつむいちゃった・・・。ねぇおじ様大作君は大丈夫?

「ん?あ、ああ大作君は元気にしているよ、ところでね・・・・大作君なんだけど近いうちにお父さんのお仕事の都合で遠くへ引っ越すことになったんだよ・・・・」

「え、大作君が?・・・・そうなの・・・おともだちになれると思ったのに・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・」

あ、そうだ大作君から借りた接着剤返さなきゃ・・・

「ああ、それならね大作君が『あげるよ』って言ってたからサニーちゃん使いたまえ」

「本当?おじ様大作君に『ありがとう』って言ってくれる?」

「もちろんだよ」

「それと・・・『ごめんね』って・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・」













あれから・・・・・



あれからだいぶたつけどサニーはまだパパといっしょに暮らせないでいて

でも

すぐにひっつかなくってもセロテープで止めておけばそのうちひっつくんだって大作君が言ってたからもう少し時間がかかるんだと思うの。




きっとサニーのパパがセロテープで止めてくれてるから、大丈夫よね?大作君。






END







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おじさんとボク (4)






ユウジ君を忘れて
セルバンテスのおじさんと仲良くなって
お父さんが三つ目のロボを作り始めて

・・・そしてボクはここに来たときよりも大きくなった。




相変わらずボクの生活は『ふくめんの人』がお世話してくれてて食事もふくめんの担当の人が作ってくれて、服も用意してくれるんだ。あ、でも最近ボクは洗濯機の使い方おぼえたから自分で洗えるよ。干すのは・・・背がとどかないからやっぱりふくめんの人がやってくれてるけど。

それにいつもはふくめんの人だけどセルバンテスのおじさんもたまにボクに勉強を教えてくれるんだ。おじさんは学校の先生よりもずっとていねいに教えてくれるからボクは苦手だった算数が得意になった。だってロボットつくる人になるためには算数もできないといけないもんね。九九だって何も見ずにちゃんと言えるようになったもん。

ボクはこの生活は嫌いじゃないけど・・・うん、嫌いじゃないんだ、でもおじさんがいない間はずっとボクひとりだ。お世話してくれるふくめんの人はなんだか必要なことだけしかしゃべってくれないし遊んでくれないんだ。ゲームはあるけど毎日じゃあきちゃうしさ。おじさんがいるとすっごく楽しいのに、ボクひとりでいるのがなんだかとっても・・・さびしく感じるようになった。

「おじさん・・・ボク・・・ともだちが・・・」

ほしいって・・・言ってみようかな・・・。どうしようおじさん困らないかな。でもおじさん『大丈夫じゃないときはおじさんに言ってくれたまえ』って笑ってたから・・・言ってもいいんだよね?


「お友達が欲しいのかい?」

「・・・うん・・・・」

「おじさんだけじゃあダメかなぁ」

「え?・・・おじさんもボクのともだちだけど・・・」

「いやいや、ははは!冗談だよ大作君。近い年の子じゃないとね。うん、そうだねぇよし、毎日遊ぶことはできなくってもたまにで良ければ・・・なんとかしてあげよう」

「本当!?やったあ!」

「やっぱり独りじゃあ寂しいものね、おじさんもわかるよ」

ボクはうれしくって飛びはねちゃったよ。だってダメだと思ってたから。おじさんに言ってみてよかった・・・。





それから一週間してまたセルバンテスのおじさんがひょっこりボクに会いに来てくれた。
おじさんはいつもよりニコニコ笑っててうれしそうにしてるんだ。

「大作君、君とお友達になりたいって子を連れてきたよ・・・ふふふ、女の子なんだけど会ってくれるかい?」

え・・・えええ!えー!女の子ぉ・・・ボク、男の子だと思ってたのに・・・。べ、べつに嫌じゃないけどさ、ボクがまだ学校に行ってた時は女の子と遊んだことなんか無いんだもん。だって女の子とどうやって遊んでいいのかわかんないし・・・・。

「とっても可愛いんだよ?大作君に会えるのを楽しみにしてくれてたんだよ?」

・・・どうしようなんだかとってもきんちょうしてきた・・・。

「うん・・・・いいよ・・・」

そう言ったらおじさんがニッコリ笑って頭からかぶってるクフィーヤってやつを広げたら中から・・・女の子が出てきた。

「・・・こん・・・にちは・・・・サニー・・・です」

うっわー・・・・すっごく・・・その・・・かわいい・・・。お人形さんみたいな女の子だぁ・・・学校でもこんなにかわいい子いなかったよ?外国の人みたいに髪がふわっふわで色がキラキラしてて、目が大きくって・・・ボク初めて見たけど赤い色してる、ふしぎだなぁ。

「ようし、じゃああっちで遊んでおいで、もちろん仲良くだ」









「ボク・・・大作って言うんだ」

「・・・・・」

サニー・・・ちゃん、さっきからとってもはずかしそうにモジモジしてる。ボクもとってもはずかしいんだけど・・・どうしよう何しゃべっていいのかわかんないや。女の子だからゲームとかやんないだろうし、どうやって遊べばいいんだろ・・・。

「あ・・・あれさ・・・ボクが描いた絵なんだ」

たまたま目に付いた去年描いたボクの「かぞくの絵」を見せてあげたんだ。

「このすみっこの・・・セルバンテスのおじさまね?」

「うん!」

ゴーグルかけて真っ白い布かぶってて、長くてへんなヒゲだからすぐにわかるよね。サニーちゃんも知ってる人だからうれしそうに笑ってる。サニーちゃんフツーにしてるときもかわいいけど・・・笑ってるともっとかわいいなぁ。

「これなぁに?」

これ?ロボだよ、ボクお父さんが作ってるとってもとっても大きなロボットなんだ。

「ロボットが家族なの?」

そうだよ、おかしい?って聞いたらサニーちゃんは「ううん」って言ってくれた。


それをきっかけにボクはサニーちゃんといろいろお話したんだ、サニーちゃんもボクとおんなじでお母さん小さい頃に死んじゃっていないんだって。そしてお父さんとはなれて暮らしててやっぱりふくめんの人に囲まれてお世話してもらってるんだって。

ボクはなんだかうれしくなった。だってお母さんがいなくって仕事がいそがしいお父さんとあんまし一緒にいられないなんて・・・ボクと・・・似てるよね?

「サニーちゃんも何か描く?」

ボクはサニーちゃんとお絵かきして遊ぶことにした。この前セルバンテスのおじさんに買ってもらった36色もあるとっておきの色鉛筆をはじめて使ったんだよ。ボクは画用紙いっぱいにロボを描いてたんだけどサニーちゃんはたくさん人を描いてた、これだれ?ってきいたら「サニーのおじ様たちよ」って言うんだ。

セルバンテスのおじさんはすぐにわかったけど・・・他はわかんない、だれなんだろう。

「これはカワラザキのおじい様に幽鬼様、そしてこっちが怒鬼様に十常寺様に・・・」

すごい・・・サニーちゃんてこんなにおじさんがいるんだ・・・。ねぇこのピンク色の人はだれ?かみがすっごく長いの。

「樊瑞のおじ様よ、とってもおやさしくってサニーは大好きなの」

へぇ・・・いいなぁサニーちゃんこんなにたくさんおじさんがいて。ボクのおじさんはセルバンテスのおじさんしかいないもん。うらやましいなぁ・・・

「でも・・・サニーは大作君がいいなぁって思うの。だってパパといっしょに暮らしてるんでしょ?サニーは樊瑞のおじ様と一緒に暮らしてるけど・・・パパとは一緒に暮らしてないの」

なんで?やっぱりお仕事がとってもいそがしいから?

「たぶんそうだと思うんだけど・・・・サニーよく・・・わかんない・・・『おやこのえん』を切ってるからだろってレッド様が言ってたけど・・・ねぇ大作君、おやこのえんってなぁに?」

わかんない、なんだろう・・・。それ切ってるからサニーちゃんと暮らせないんだったら切ったのひっつければいいんじゃないかなぁ。ボクが持ってる工作用の接着剤でひっつくんだったら貸してあげてもいいよ?

ボクは机の引き出しから黄色いチューブに入った接着剤を取り出してサニーちゃんに貸してあげた。すぐにひっつかないんだったらセロテープで止めておけばいいんだ、しばらくすればたぶんしっかりひっつくよ。

「そうなんだ・・・サニーパパにお願いしてみるわ、ありがとう大作君」

「ひっつくといいね」

「うん」

ボクたちは絵を描きながらもっとお話をした。サニーちゃんはたくさんいるおじさんたちのことやちょっとこわいけど大好きなお父さんのこと。ボクは去年やった家出のこと話したらサニーちゃんすっごくおどろいてた、えへへ、家出やったからねサニーちゃんよりちょっと大人だよボクは。そうだ、サニーちゃんも家出やってみるといいよ?だってお父さんがきっと心配してサニーちゃんを探してくれるよきっと。

サニーちゃんまたわらった。

ボクはサニーちゃんはわらってるのがぜったいにいいと思う。


それから天気がいいから外に出て遊ぶことになってボクはサニーちゃんとふたりで原っぱへ行ったんだ。原っぱって言ってもボクの家、おじさんが「基地」って呼ぶ建物のすぐそばにあるんだ。でもそこで遊ぶときはいっつもふくめんの人が2、3人付いてきちゃうんだよ、なんでだろ。

真ん中におおきな木があってボクはそれにのぼれるんだよ?すごいでしょ・・・って・・・ええ!サニーちゃんすごい・・・のぼっちゃった・・・。

ボクはびっくりした、だって女の子って木登りしないって思ってたから。

「大作君もはやく!」

「うん、ちょっとまってて!」

いつものようにボクは木に足をかけてしがみつくように登っていったんだ

サニーちゃんが手を伸ばしてくれて、ボクはその手をにぎろうとした

その時、ボクは足をすべらせちゃって・・・

空にあるおおきな太陽が・・・・見えた



「きゃあー!!大作君!!!!」



サニーちゃんがボクの名前をよんでさけんでるのが聞こえて

その時目の前が・・・ピカーってまっかっかになったんだ・・・



いたい・・・・・・・

足が・・・いたい・・・・いたいよぉ・・・お父さぁん・・・・

「貴様ぁ!サニー様に何をした!!!サニー様!おい救護班を呼べ!」

頭もいたい・・・・おじさぁん・・・・いたいよぉ・・・

「大・・・君・・・」

「サニー様!おい早くしろっそんな小僧はどうでもいい!!」

「だいさく・・・くん・・・ごめんなさい・・・」



サニーちゃん・・・・・・・・・












ボクが気づいたとき空に太陽は無くって・・・上は真っ白いてんじょうだった。

「大丈夫かい?大作君・・・」

おじさんだ、セルバンテスのおじさんだ。
おじさん、ボクどうしたの?サニーちゃんは?

「木から落ちちゃって足の骨を折っちゃったんだよ、まだ痛むかい?」

ほんとだ、ボクの左足がほうたいでグルグル巻きになってる。ううん、もう痛くないよ。それよりオデコがなんだかヒリヒリするんだ・・・ぶつけちゃったのかなぁ。でもおじさん、サニーちゃんは大丈夫?だって・・・ふくめんの人がすっごく・・・さけんでて・・・ボク・・・。

怖かった・・・

赤い光がピカーって光って・・・それになにかとんでも無い事をしちゃったのかなって、ふくめんの人がボクのことどうでもいい!ってさけんでる声聞いててすごく怖かったんだ。怖かったんだおじさん・・・。

「どうでもよくないから、大作君が謝ることはないんだよ、おじさんが・・・一番悪かったんだ・・・済まなかったね」

ボクは初めておじさんがためいきするの見た・・・どうしておじさんが悪いんだろう、悪いのボクなのに、足をすべらせて・・・きっとサニーちゃんも落ちちゃったんだ・・・そうだ、サニーちゃんは?ケガしてない?

「・・・・・大丈夫だよ、ちょっとお熱が・・・出てね、先にお家に帰ったんだよ。大作君のことをとても心配してて『ごめんね』って言ってたよ・・・・」

どうして・・・・どうしてサニーちゃんがあやまるの?おじさんがあやまるの?ボクもあやまって・・・なんだか変だよ。みんながあやまって変だよ。

「そうだね、変だね・・・」

絶対に・・・変だよ・・・・。





それから・・・二日たってセルバンテスのおじさんがボクがいる病室にやってきた。

「大作君、実はサニーちゃん、お父さんの仕事の都合で遠くへお引越しすることになったんだよ」

「・・・・そっか・・・・サニーちゃん・・・おともだちになれるって思ってたのに」

「・・・・・・・・・・・・・」

そうだ、ねぇおじさんこの前サニーちゃんに貸した接着剤、あげるよって言っといて欲しいんだけど。ボクはもう一個持ってるし。

「接着剤??」

うん、サニーちゃんがさ、切った『おやこのえん』っていうのをくっつけるのに使うから貸してあげたんだ。うまくひっつくといいんだけど・・・あれ紙と木の接着剤だから、プラモデル用のやつにすれば良かったかなぁ。ねぇおじさんはどう思う?

「いや、それでひっつくと思うよ・・・・」

おじさん、ボクを抱きよせてくれた。

そうだよ、ひっついてサニーちゃんはお父さんと一緒に暮らせるようになるといいんだ。

だよね、サニーちゃん。


バイバイ・・・サニーちゃん・・・。


バイバイ・・・・・・・・・・・。









ボクの左足についてた白いかたまりがとれて・・・

ボクは歩けるようになってからあの原っぱに行ってみた。



原っぱにあったはずの大きな木が無くなってた。

ううん、無くなってはなかったんだ。

上半分が無くなって根元がボロボロになって

雷が・・・落ちたいみたいに・・・なってた・・・。

オデコのヒリヒリはもう無くなったのに、またヒリヒリしだして・・・

あの赤い光を思い出した。

怖い、って思ってボクはもうその原っぱに行かなくなったんだ。










END





「パパとサニー」へ



おじさんとボク (3)






「お父さんのウソつき!!!」

ボクは泣きながら枕を力いっぱいお父さんに投げつけた。

今日はお休みでボクを遊園地に連れて行ってくれるって言ってくれたのに、またお仕事になってダメになっちゃったんだ。もう一ヶ月も前からやくそくしていたんだよ?その前もお仕事でダメになっちゃったからすっごくすっごく楽しみにしていたんだよ?なのにお父さん

「いい子だから我慢しなさい、また今度遊園地に連れて行ってあげるから」

「・・・・・・・・・・」

この前のお絵かきの時間に描いた「かぞくの絵」をボクはくしゃくしゃにしてゴミ箱に投げつけた。ボクとお父さんの2人が描かれた絵、お父さん忙しくってまだ絵を見せてなかったけどもういらないや。

ガマンはいっつもしてるのに、まだガマンするの?もうボク嫌だよ。こんなのならボクはいい子やめちゃうよ?わるい子になってお父さんを困らせるよ?いいの?

そうだ、家出しよ。家出してお父さんを困らせてやるんだ「大作ー」って探させてやるんだ、探したってボクは出てこないから、お父さんが泣いて頼んでもボクは帰らないからね。

テレビで見たことがあるんだ、こうやってかばんにたくさん服とか食べ物つめ込んで家出するの。でもお金が・・・いいや貯金箱の中に1500円ちょっとあったからあれ持って行こう。お腹すいたらポテチ食べればいいし。うん、これなら一週間は家出できるよきっと。

「よいしょっと」

ここをぬけ出して・・・うーんと、どこへ行こう。ここって車か飛行機が無いと町までいけないんだよ・・・そうだ、たまに荷物と一緒にやってくる貨物の車にこっそり乗っちゃおうっと。


ボクはふくらんだカバンをおぶって誰にも見つからないようにこっそり家・・・といってもお父さんが働く工場、おじさんは「基地」って呼んでる中にある部屋から出た。ドキドキしながら『ふくめんの人』に見つからないように基地の入り口まで来ちゃった。

「おや、大作君どこかへ遠足かい?」

貨物の車の後ろに乗り込もうと思ったら、セルバンテスのおじさんがいつからいたのかボクの後ろにいたんだ。シーッ!ビックリさせないでよもう・・・遠足じゃないよ、家出するんだ。おじさんが止めてもムダだからね、ボクは決めたんだから。

「ほう、家出かね。それじゃあおじさんも大作君と一緒に家出しようかな」

え?本気で言ってるの?って言う前におじさんはボクの手を引いて荷物を降ろして何も無くなった車の後ろに乗り込んじゃった。


車のすきまから基地がどんどん遠くなっていくのが見える。
ボクは本当に家出してるんだって思えてきてなんだかワクワクしちゃう。


車に乗ってる間、どうしてボクが家出するのかおじさんに説明してあげた。

「そりゃ家出したくなるねぇ」

そうでしょ?おじさんもそう思うでしょ?お父さんはボクのことなんかどうでもいいんだ、ロボさえいればいいんだよ。もうロボも大嫌いだ、ロボット作る人になんか絶対なんないよ。

ボクは車の中でおじさんにカバンの中身を見せてあげた。こりゃあ家出の準備ばんたんじゃないか、すごいねぇっておじさんがほめてくれた。えへへ、すごいでしょってボクは得意になったんだ。それからポテチはお腹がへってたから・・・車の中で2人で食べちゃった。

しばらく車に乗ってたらおじさんがいきなり「この辺で降りるかな」ってボクをカバンごと抱きかかえて走ってる車から飛び降りたんだ。そこはどこかの町だった。見たことの無い、まったく知らない町。おじさんも「私も初めてで知らないところだよ」って笑って言ってた。

「でもどうせ家出するなら知らない所の方が気分が盛り上がるだろう?」

「おじさんボクみたいな小さいころに家出したことがあるの?」

「ふふふ、あるよ」

すごいやおじさん、ボクの家出のセンパイだね。
プロと言いたまえって、あはは胸をはって得意になってるよおじさん。

おじさんはどうして家出なんかしたんだろ、ボクと一緒な理由だったのかな。
ボクはおじさんと歩きながらちょっときいてみた。

「さあ・・・どうだったんだろうね、もしかしたら大作君と一緒の理由だったのかもしれないけれど・・・もう昔のことだから・・・・・・・忘れちゃったよ・・・・」

じゃあ、じゃあさ!おじさんが家出した時おじさんのお父さんもお母さんも、そして兄弟の人もきっとみんな大慌てでおじさんを探したんだろうね。

「・・・・私が家出したことに・・・・・・・・・・誰も気づかなかったんだよ」

「・・・・・・・・・・・」

ボクが見たのは先を歩くおじさんの背中で、真っ白いクフィーヤっていう被り物がヒラヒラ風になびいてただけだった。そう言うおじさんの顔は・・・ボクには見えなかった。

「ははは!『ボク家出しまーす』って宣言すれば良かったのにねぇ。でも・・・大作君は内緒で家出してもきっとお父さんがすぐに気づいて必死になって探してくれているよ?「大作ー」ってね、いいじゃあないかたまには心配させてあげるのも必要だと思うけど。うん」

振り向いたおじさんはいつものおじさんでニッコリ笑ってて・・・



「おじさんが家出したら・・・ボクはおじさんを探すよ?」




ボクはおじさんの目を見てそう言った。

だって、本当に探すもの。

おじさんが家出していなくなったらすぐに気づいてボクは探すもの。

見つかるまでずっとずっと探すもの。



おじさんは、ボクの目をしばらく見つめて


「ありがとう」


そう言った。





それからボクとおじさんは知らない町でたくさん遊んだ。
知らない公園でボクはブランコで立ちこぎして、ジャングルジムのてっぺんまで登って、それから持ってた1500円でクレープ買って2人で半分こしながら食べ歩きして、本屋でマンガを立ち読みして、自動はんばいきでコーラ買って、あ、たんさんはお父さんに「歯が溶けるから飲んじゃ駄目」って言われてるけどおじさんが「内緒にしてあげるから」って言うから買って飲んじゃった、うん、ゲップがたくさん出たけどおいしかったよ。そして海まで小石をけりながら歩いて砂浜で貝を拾ったりカピカピにかんそうしたワカメみたいなのをおじさんの頭に乗っけて遊んでそれから、それから・・・

おじさんと夕日を見た。



「じゃあ、帰ろうか」

「うん」



おじさんはスーツのふところから何か取り出して何かしゃべってた。
そしてらすぐに大きなヘリコプターがやってきてそれに2人で乗り込んだんだ。



こうしてボクの最初で最後の家出が終わった。








お父さんは帰ってきたボクを見るなり力いっぱい抱きしめてくれた。
仕事そっちのけでボクを探してたんだって。
それにお父さん、泣いてた。
家出して悪かったなぁって思ったけど、して良かったって・・・思った。





次の日お父さんはとつぜん休みになった。

セルバンテスのおじさんがそうしてくれたんだって。

そしてお父さんはボクを遊園地に連れて行ってくれた。

BF団の人も何人か一緒だったけど、その人は遠くでボクたちを見てるだけだった。

遊園地はすっごく楽しかった、お父さんもすっごく楽しそうで笑ってて、そんなお父さんと2人で一緒に楽しんでるんだって思うとボクは本当に本当にうれしかった。




遊園地から家に帰ったらくしゃくしゃに丸めてのゴミ箱に投げ捨てたはずの「かぞくの絵」が・・・誰かが取り出したのかボクの机の上にあった。

ていねいに広げられたその絵のボクとお父さんはやっぱり笑ってて、ボクはその絵のすみっこにロボを描き加えてみた。


そしてセルバンテスのおじさんも、笑った顔で描き加えたんだ。






END






おじさんとボク (2)






ボクはセルバンテスのおじさんと仲良くなった。


おじさんは一ヶ月くらいずっといっしょにいるときもあるけど他の『しごと』で忙しいときがあるみたいでいっしょにいないときもあるんだ。その時は他の『たんとうしゃ』の人に代わってもらってるみたいなんだけど・・・ボクはその他の人と会ったことがない。みんながみんなおじさんみたいな人じゃないってお父さんは言っていたけど・・・。

でもおじさんはたまにひょっこりあらわれてボクに会いに来てくれる。
ボクもおじさんが会いに来てくれるのを楽しみにしてるんだ。

会いに来てくれるときはいっつも『おみやげ』を手にしてる。
この前はふわっふわのシュークリームだったし、その前は発売されたばかりの『ちょうごうきんの合体ロボ』で必ずボクが喜ぶおみやげを持ってきてくれるんだ。

今日はドーナッツ、ボクは一ヶ月ぶりに会いに来てくれたおじさんといっしょに並んでチョコが付いたやつを食べたんだ。目の前にはお父さんが作ってるとってもおおきなロボット、すごいよね、本当にとっても大きいんだ。けんきゅうしせつも大きいけどそれにいっぱいつまってる感じでロボが入ってる。

けんきゅうしせつには本当は入っちゃいけないんだけどおじさんが「私と一緒にいる時は研究施設に入ってもいいよ」って言ってくれたからボクはこのロボットができていくのが見たくってこうやってながめてる。いつもこうして見れたらいいのに・・・。


「大作君は本当にロボが好きなんだねぇ」

おじさん口のはしっこにチョコつけたままにボクにきいてきた。

「うん、だってかっこいいしおっきいし早くロボが動くの見てみたいなぁって。それにボクのお父さんがこれを作ってるんだもんすごいよね!」

「そうだね、大作君のお父さんはとても凄いねぇ」

おじさんはボクの頭を大きな手でなでながらそう言ってくれた。そうだよ、お父さんがはたらくのを初めて見てボクはわかったんだ、本当にお父さんがすごいって。お父さんがこんな大きなロボを作ってるなんてボクはエッヘンって気持ちになるよ。

「ボクね、大きくなったらお父さんみたいにBF団に入ってロボット作る人になるんだ」

そう言ったらおじさんおどろいてた、だって目を丸くしてたんだもん。おじさんがいつもしてる変なメガネってごーぐるって言うらしいんだけどボクといっしょの時はおじさんは・・・なんでかごーぐるをしなくなった。だからおじさんの目が丸くなったのよくわかったんだ。

「大作君はBF団に・・・入るのかい?」

「うん、ロボよりおっきなロボットつくるよ!おじさんも乗せてあげる!」

「・・・・・・・嬉しいんだけど・・・BF団に入ると毎日早起きしないといけないんだよ?大作君お父さんに起こされなくても一人で起きれるかい?」

え、そうなの?

「好き嫌いもできないよ?牛乳も全部飲んで大作君が大嫌いなピーマンも食べなきゃいけないんだよ?」

えええ!そうなの?・・・えーそうなのー・・・・ひとりで早起きもできないし、ピーマン・・・ボクだいっきらいなんだよな。あれぜったい食べられないよすっごくマズイし。

「じゃあ・・・ボクはお父さんが前いたこくさいけ・・・なんとかってとこでロボット作る人になる。だいじょうぶだよBF団のおじさんものせてあげるから!」

「・・・・・・・・・・・・そうかね、でも国際警察機構もBF団と・・・一緒でね・・・早起きしないといけないし、ピーマンも食べなきゃいけないんだよ?」

ボクはちょっと泣きそうになった、だってこれじゃお父さんみたいになれないってことじゃないか。早起きもピーマンを食べるのもどっちもボクはできるじしん無いもの。でも、でも・・・ボクはお父さんみたいになりたいんだ・・・。

「はははは、別にBF団と国際警察機構に入らなくっても大きなロボットは作れるんだよ?そうだな・・・大作君が大きくなったらおじさんが就職先を探してあげよう。うん大丈夫だきっと大作君はお父さんみたいに立派なロボット博士になれるとも」

セルバンテスのおじさんはそう言って笑うと泣きそうになってるボクを抱きかかえてくれた。

「ほんとう?セルバンテスのおじさん」

「ああ、本当だとも、だからロボットを作ったらおじさんを乗せてくれたまえ」

背のたかいおじさんに抱っこされてロボがもっと良く見えて、ボクはロボを見るのにいちばんの場所をはっけんした。








その日の夜、ボクはお父さんにおじさんに言ったことと同じことを話したんだ。そしたらお父さんもおじさんと同じおどろいた顔になって・・・でもおじさんと違うのは「両方ともやめておきなさい」と言われちゃった。

「どうして?やっぱり早起きしないといけないしピーマンも食べなきゃいけないから?」

お父さんは何も言ってくれなかった。





ボクは大きくなってもやっぱり早起きができなくてピーマンも食べられなかったら、おじさんにおねがいしてロボットを作れるところをさがしてもらうんだ。


そしてそこで大きなロボットをつくってお父さんとおじさんをのせてあげるんだ。







END






おじさんとボク






「あしたまたあそぼーねー」

「うん!買ってもらったゲームソフトもって行くからさ、あしたいっしょにやろっ」




ってともだちのユウジ君と約束したのに。


電子レンジでチンしてさ、ばんごはんのカラアゲ弁当食べようとおもったらいつも帰りがおそいお父さんが帰ってきていきなり言ったんだ。

「大作、すぐに服をかばんに詰めなさい。お引越しだ」

わけがわかんなかったけどお父さんが「急ぎなさい」って言うから・・・とりあえずパンツとかくつしたもボクの服といっしょにつめこんだ。

「ランドセルは置いていきなさい」

えーどうやって学校にいくの?

「いいから」

お父さんがそう言うからいいのかな。明日別のかばんにノートときょうかしょを入れてくことになるのかな、やだなぁはずかしいよ。ぜったいクラスのやつにばかにされちゃうよ。

「さあ、もう行くよ」

え、もう?だってお引越しでしょ?テレビとかれいぞうこは?あれ?後でひっこしやさんにたのむのかな?じゃあボクのゲーム機もだよね?買ってくれたゲームソフトはボクが持っていこうっと。




車の外見てもまっくらでお父さん今からどこへおひっこしするんだろ。
おなか空いたなぁ・・・せっかくあっためたカラアゲべんとうも「そんなものはいいからとにかく急ぎなさい」って言ってお父さんがすてちゃった。

今夜見たいアニメがあったのになぁ・・・。
あしたどのかばんで学校に行こうかな・・・・・・・。
給食とうばんだからマスク忘れないようにしなきゃ・・・・・・・・。
ユウジ君・・・どうしよう・・・・やくそくしたのにな・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
いいや、あした学校で会うし・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。








「大作、着いたよ、起きなさい」

う・・・ん・・・ここどこだろ・・・・。もう朝?

「まだ夜だよ、さあ車からおりて」

あれ?大きな飛行機・・・車がこれに乗ってたのかな?それにあたらしいおうち?・・・・・でもなんかちがうよね、だって家って感じしないもん、工場みたい。中はまっくろい服を頭から着た人がいっぱいいるし、お父さんみたいな白衣をきた人もいっぱいいるし。いっぱいいっぱいロボットがいるもん。すっごく広くって、すっごく高い。

「さ、お父さんの後ろについてきなさい」

お父さんボクお腹すいたなー。
ねぇお父さんってば・・・・・・・。
・・・・・・・・・。

なんかオイルのにおいがいっぱいしててきもちわるいや。あ、あのまっくろい服の人がこっち見てる、なんであんなかっこうしてんだろ。変なの。ねぇお父さん変だよね。あれ?お父さん?

お父さんなんか変わった格好の人とお話してる。あ、こっち見た。

「大作、お世話になる人だよご挨拶しなさい」

おせわになるひと?
この人が?

「やあこんにちは、大作君」

「・・・・・・こ、こんにちわ・・・・」

「うん、きちんと挨拶できるなんてたいしたもんだ」

まっしろい布を頭からかぶって変なの、なんでこの人もこんなかっこうしてんだろ。
それにかわったメガネしてる、アニメの悪い奴でこんなメガネしてるのいたなぁ・・・あ、けっきょくアニメ見れなかったな、せっかく続きが見たかったのに・・・・。あれ見ておかないと休み時間でクラスのみんなの会話についていけなくなっちゃうよ。

「あの・・・息子は・・・」

「ああ、安心したまえどうもしやしないよ。それより着いたばかりだが・・・早速奥の部屋で他の技術者たちと打ち合わせをしてもらおう」

「わかりました」

あ、お父さんもういっちゃうの?

「大作君、お腹が空いてるのだろう?お父さんはお仕事で忙しいからおじさんと一緒に御飯を食べるかね?」

「おじ・・・さん?」

なにそれ。おじさんって何?おじいさんは知ってるけど。

「そうだよ、私はセルバンテスって言うんだ、だから『セルバンテスのおじさん』って呼んでくれていいよ?」

「せるばん・・・てすのおじさん?」

「ははははは、結構結構」

けっこうけっこうって何だろ。よくわかんないけどこのおじ・・・さんはもっとよくわかんない。変なかっこうとメガネしてるしさ。ヒゲも・・・やっぱり変かも。

「じゃあ大作君、何か食べたいものはあるかね?お寿司でも焼肉でも何でもいいよ?」

いいの?ほんと?じゃあ・・・・・


「カラアゲべんとう!!」









カラアゲべんとう知らないんだ・・・このおじさん。おいしいのに。ボクがすきなのはチンしなきゃ食べられないコンビニのより最初っからあったかいポカポカ屋のなんだ。

「へぇーそうなのかね、じゃあ今度はその『ポカポカ屋のカラアゲ弁当』ってやつにしようか」

いいよべつに、いつも食べてるとあきちゃうしさ。それに今食べてるよくわかんない方がなんかおいしいかも。テーブルいっぱいに料理が並んでるのってはじめてみたよボク。それにテレビで見たことがあるけど鳥の丸焼きがあるよすっごいなぁ、鳥がこんなんなってお皿に乗っかってるんだおいしそうだけどちょっと気持ちわるいや。

「ははははは」

おじさんまた笑った。よく笑うね。ボクそんなに面白いこと言ったかな。

あ、そうだ、あした学校までどうやって行こう。ここがどこかわかんないし歩いていけるのかな・・・お父さんが・・・ううん・・・このおじさんが車で乗せてってくれるのかな。

「学校かい?ああ大丈夫。おじさんから先生と校長先生にお話しておくよ、大作君は明日からずっとお休みしまーすってね」

「ええーお休みするの?ずっと?」

「お父さんのお仕事が終わるまでだ、それまでずっとここで暮らすんだよ」

どうして?ボク風邪ひいてないのにズル休みになっちゃうよ?

「はははは大丈夫、大丈夫」

何がだいじょうぶ、なんだろ。どうしよう給食とうばんだってあるのに。うんどうかいだって来週あるのに、ボクがリレーのアンカーやるのに。

「どうしたのかね?」

どうしようユウジ君に『あそべなくなっちゃってごめんね』って言えなくなっちゃった。
どうしよう・・・・・・・・・ぜんぜんだいじょうぶじゃないや・・・・。

「大作君?」

お父さん・・・ボクだいじょうぶじゃないよ・・・・・。
チンするの得意だけどだいじょうぶじゃないよ?

「・・・・・・・うーん困ったな」

どうしておじさんがこまるの?こまってるのボクだよ?

「そうだね、大作君の言うとおりだ」

・・・・もういいよ、ごちそうさま。学校は行かないんだったらしゅくだいやんなくていいよね?父さんに買ってもらったゲームやろっと、今人気のやつでクラスでもはやってるんだ。あーるぴーじーが得意なユウジ君といっしょにこうりゃくしよって思ってたんだけど・・・そうだ・・・おじさん学校に行ったらユウジ君にも『あそべなくなっちゃってごめんね』っていってくれるかな。

「ああ、わかったよ私からユウジ君に言っておこう」

「ぜったいだよ」

「おじさんに任せたまえ」

「やくそくだよ」

「約束しよう」

これなら・・・安心・・・かな。でもボク一人でクリアできるかなぁ・・・あ、でもゲーム機もって来てないから遊べないや、つまんないなぁ。

「ゲーム機かい?おじさんが用意してあげようか」

「ほんとう?」










うっわーうっわーすごーい。だってボクが持ってるのって「ツー」だけど、これこのまえ発売されたばっかりの「スリー」だよ?すっごく高くって手に入らないんだよ?

「大作君にプレゼントだ」

「わぁ!ありがとう、セルバンテスのおじさん!」

おじさんすごいなぁ、変なかっこうしてるけど見直しちゃった。きっとこれ持ってるのクラスでもボクだけだろうな、ユウジ君に見せてあげたいなぁ。

「これはどういうゲームなのかね?」

お父さんに買ってもらったこのソフト?これはねせかいせーふくしようとしている悪のそしきと戦いながらレベルを上げて伝説のロボットといっしょに悪い奴らをやっつけるんだ、ラスボスは悪のそしきの大ボスなんだよ。

「へぇ、面白そうだね、おじさんも大作君と一緒にやってみたいなぁ」

えーおじさんカラアゲべんとう知らないのにゲームできるの?

「大作君に教えてもらうから大丈夫だよ、はははは」

おじさん何にも知らないから大変だ・・・HPはねひっとぽいんとって読むんだ、それでねそれが無くなっちゃうとしんじゃってこうげきは・・・違うよーその敵にはふつうのこうげきはきかなかったじゃないかだからビーム使えばいいと思うんだ、あーだめそのアイテムはとってもきちょうなんだからすてちゃダメだって、もーおじさん笑ってばっかりでボクが言ってること聞いてるのかなぁ。

「ははは、面白いねぇこれ」

クリアできるか不安・・・でもセルバンテスのおじさんって楽しい・・・かも。









お父さんのお仕事は大きなロボットをつくることなんだって。

まっくろい服の人たちがボクの身の回りの世話をしてくれてる。

おべんきょうもやっぱりしなくちゃいけないみたい、ちょっと残念。

セルバンテスのおじさんはたまにボクに会いに来てくれるんだ。

この前ポカポカ屋のカラアゲべんとうをいっしょに食べたら「美味しい」って喜んでた。

ゲームはあいかわらず・・・へたくそだけど・・・・。















そしてボクはあれから一度もともだちのユウジ君に会ってない。

たぶんこれからもずっと会うこと無い気がする。



だってユウジ君の声も顔も、おもいだせなくなっちゃった。


だから・・・もう・・・会えない気がしたんだ。


それに気づいたの、きのうだった。ゲームやってて夢中であそんでたのになんでかとつぜんそう思ったんだ。そしたら急に悲しくなって泣きそうになって、でも恥ずかしいから泣くのがまんしてたんだ。どうしようって思ってたら横でいっしょにあそんでたセルバンテスのおじさんがはじめてあの変なメガネとってボクの顔を覗き込んでこう言ったんだ。

「大作君、大丈夫じゃないときはおじさんにそのことを言っていいんだよ」





ボクはお父さんがいちばん好きだけど

そのいちばんの次のいちばんに好きなのはおじさんなんだ。









END






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