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おじさんとボク






「あしたまたあそぼーねー」

「うん!買ってもらったゲームソフトもって行くからさ、あしたいっしょにやろっ」




ってともだちのユウジ君と約束したのに。


電子レンジでチンしてさ、ばんごはんのカラアゲ弁当食べようとおもったらいつも帰りがおそいお父さんが帰ってきていきなり言ったんだ。

「大作、すぐに服をかばんに詰めなさい。お引越しだ」

わけがわかんなかったけどお父さんが「急ぎなさい」って言うから・・・とりあえずパンツとかくつしたもボクの服といっしょにつめこんだ。

「ランドセルは置いていきなさい」

えーどうやって学校にいくの?

「いいから」

お父さんがそう言うからいいのかな。明日別のかばんにノートときょうかしょを入れてくことになるのかな、やだなぁはずかしいよ。ぜったいクラスのやつにばかにされちゃうよ。

「さあ、もう行くよ」

え、もう?だってお引越しでしょ?テレビとかれいぞうこは?あれ?後でひっこしやさんにたのむのかな?じゃあボクのゲーム機もだよね?買ってくれたゲームソフトはボクが持っていこうっと。




車の外見てもまっくらでお父さん今からどこへおひっこしするんだろ。
おなか空いたなぁ・・・せっかくあっためたカラアゲべんとうも「そんなものはいいからとにかく急ぎなさい」って言ってお父さんがすてちゃった。

今夜見たいアニメがあったのになぁ・・・。
あしたどのかばんで学校に行こうかな・・・・・・・。
給食とうばんだからマスク忘れないようにしなきゃ・・・・・・・・。
ユウジ君・・・どうしよう・・・・やくそくしたのにな・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
いいや、あした学校で会うし・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。








「大作、着いたよ、起きなさい」

う・・・ん・・・ここどこだろ・・・・。もう朝?

「まだ夜だよ、さあ車からおりて」

あれ?大きな飛行機・・・車がこれに乗ってたのかな?それにあたらしいおうち?・・・・・でもなんかちがうよね、だって家って感じしないもん、工場みたい。中はまっくろい服を頭から着た人がいっぱいいるし、お父さんみたいな白衣をきた人もいっぱいいるし。いっぱいいっぱいロボットがいるもん。すっごく広くって、すっごく高い。

「さ、お父さんの後ろについてきなさい」

お父さんボクお腹すいたなー。
ねぇお父さんってば・・・・・・・。
・・・・・・・・・。

なんかオイルのにおいがいっぱいしててきもちわるいや。あ、あのまっくろい服の人がこっち見てる、なんであんなかっこうしてんだろ。変なの。ねぇお父さん変だよね。あれ?お父さん?

お父さんなんか変わった格好の人とお話してる。あ、こっち見た。

「大作、お世話になる人だよご挨拶しなさい」

おせわになるひと?
この人が?

「やあこんにちは、大作君」

「・・・・・・こ、こんにちわ・・・・」

「うん、きちんと挨拶できるなんてたいしたもんだ」

まっしろい布を頭からかぶって変なの、なんでこの人もこんなかっこうしてんだろ。
それにかわったメガネしてる、アニメの悪い奴でこんなメガネしてるのいたなぁ・・・あ、けっきょくアニメ見れなかったな、せっかく続きが見たかったのに・・・・。あれ見ておかないと休み時間でクラスのみんなの会話についていけなくなっちゃうよ。

「あの・・・息子は・・・」

「ああ、安心したまえどうもしやしないよ。それより着いたばかりだが・・・早速奥の部屋で他の技術者たちと打ち合わせをしてもらおう」

「わかりました」

あ、お父さんもういっちゃうの?

「大作君、お腹が空いてるのだろう?お父さんはお仕事で忙しいからおじさんと一緒に御飯を食べるかね?」

「おじ・・・さん?」

なにそれ。おじさんって何?おじいさんは知ってるけど。

「そうだよ、私はセルバンテスって言うんだ、だから『セルバンテスのおじさん』って呼んでくれていいよ?」

「せるばん・・・てすのおじさん?」

「ははははは、結構結構」

けっこうけっこうって何だろ。よくわかんないけどこのおじ・・・さんはもっとよくわかんない。変なかっこうとメガネしてるしさ。ヒゲも・・・やっぱり変かも。

「じゃあ大作君、何か食べたいものはあるかね?お寿司でも焼肉でも何でもいいよ?」

いいの?ほんと?じゃあ・・・・・


「カラアゲべんとう!!」









カラアゲべんとう知らないんだ・・・このおじさん。おいしいのに。ボクがすきなのはチンしなきゃ食べられないコンビニのより最初っからあったかいポカポカ屋のなんだ。

「へぇーそうなのかね、じゃあ今度はその『ポカポカ屋のカラアゲ弁当』ってやつにしようか」

いいよべつに、いつも食べてるとあきちゃうしさ。それに今食べてるよくわかんない方がなんかおいしいかも。テーブルいっぱいに料理が並んでるのってはじめてみたよボク。それにテレビで見たことがあるけど鳥の丸焼きがあるよすっごいなぁ、鳥がこんなんなってお皿に乗っかってるんだおいしそうだけどちょっと気持ちわるいや。

「ははははは」

おじさんまた笑った。よく笑うね。ボクそんなに面白いこと言ったかな。

あ、そうだ、あした学校までどうやって行こう。ここがどこかわかんないし歩いていけるのかな・・・お父さんが・・・ううん・・・このおじさんが車で乗せてってくれるのかな。

「学校かい?ああ大丈夫。おじさんから先生と校長先生にお話しておくよ、大作君は明日からずっとお休みしまーすってね」

「ええーお休みするの?ずっと?」

「お父さんのお仕事が終わるまでだ、それまでずっとここで暮らすんだよ」

どうして?ボク風邪ひいてないのにズル休みになっちゃうよ?

「はははは大丈夫、大丈夫」

何がだいじょうぶ、なんだろ。どうしよう給食とうばんだってあるのに。うんどうかいだって来週あるのに、ボクがリレーのアンカーやるのに。

「どうしたのかね?」

どうしようユウジ君に『あそべなくなっちゃってごめんね』って言えなくなっちゃった。
どうしよう・・・・・・・・・ぜんぜんだいじょうぶじゃないや・・・・。

「大作君?」

お父さん・・・ボクだいじょうぶじゃないよ・・・・・。
チンするの得意だけどだいじょうぶじゃないよ?

「・・・・・・・うーん困ったな」

どうしておじさんがこまるの?こまってるのボクだよ?

「そうだね、大作君の言うとおりだ」

・・・・もういいよ、ごちそうさま。学校は行かないんだったらしゅくだいやんなくていいよね?父さんに買ってもらったゲームやろっと、今人気のやつでクラスでもはやってるんだ。あーるぴーじーが得意なユウジ君といっしょにこうりゃくしよって思ってたんだけど・・・そうだ・・・おじさん学校に行ったらユウジ君にも『あそべなくなっちゃってごめんね』っていってくれるかな。

「ああ、わかったよ私からユウジ君に言っておこう」

「ぜったいだよ」

「おじさんに任せたまえ」

「やくそくだよ」

「約束しよう」

これなら・・・安心・・・かな。でもボク一人でクリアできるかなぁ・・・あ、でもゲーム機もって来てないから遊べないや、つまんないなぁ。

「ゲーム機かい?おじさんが用意してあげようか」

「ほんとう?」










うっわーうっわーすごーい。だってボクが持ってるのって「ツー」だけど、これこのまえ発売されたばっかりの「スリー」だよ?すっごく高くって手に入らないんだよ?

「大作君にプレゼントだ」

「わぁ!ありがとう、セルバンテスのおじさん!」

おじさんすごいなぁ、変なかっこうしてるけど見直しちゃった。きっとこれ持ってるのクラスでもボクだけだろうな、ユウジ君に見せてあげたいなぁ。

「これはどういうゲームなのかね?」

お父さんに買ってもらったこのソフト?これはねせかいせーふくしようとしている悪のそしきと戦いながらレベルを上げて伝説のロボットといっしょに悪い奴らをやっつけるんだ、ラスボスは悪のそしきの大ボスなんだよ。

「へぇ、面白そうだね、おじさんも大作君と一緒にやってみたいなぁ」

えーおじさんカラアゲべんとう知らないのにゲームできるの?

「大作君に教えてもらうから大丈夫だよ、はははは」

おじさん何にも知らないから大変だ・・・HPはねひっとぽいんとって読むんだ、それでねそれが無くなっちゃうとしんじゃってこうげきは・・・違うよーその敵にはふつうのこうげきはきかなかったじゃないかだからビーム使えばいいと思うんだ、あーだめそのアイテムはとってもきちょうなんだからすてちゃダメだって、もーおじさん笑ってばっかりでボクが言ってること聞いてるのかなぁ。

「ははは、面白いねぇこれ」

クリアできるか不安・・・でもセルバンテスのおじさんって楽しい・・・かも。









お父さんのお仕事は大きなロボットをつくることなんだって。

まっくろい服の人たちがボクの身の回りの世話をしてくれてる。

おべんきょうもやっぱりしなくちゃいけないみたい、ちょっと残念。

セルバンテスのおじさんはたまにボクに会いに来てくれるんだ。

この前ポカポカ屋のカラアゲべんとうをいっしょに食べたら「美味しい」って喜んでた。

ゲームはあいかわらず・・・へたくそだけど・・・・。















そしてボクはあれから一度もともだちのユウジ君に会ってない。

たぶんこれからもずっと会うこと無い気がする。



だってユウジ君の声も顔も、おもいだせなくなっちゃった。


だから・・・もう・・・会えない気がしたんだ。


それに気づいたの、きのうだった。ゲームやってて夢中であそんでたのになんでかとつぜんそう思ったんだ。そしたら急に悲しくなって泣きそうになって、でも恥ずかしいから泣くのがまんしてたんだ。どうしようって思ってたら横でいっしょにあそんでたセルバンテスのおじさんがはじめてあの変なメガネとってボクの顔を覗き込んでこう言ったんだ。

「大作君、大丈夫じゃないときはおじさんにそのことを言っていいんだよ」





ボクはお父さんがいちばん好きだけど

そのいちばんの次のいちばんに好きなのはおじさんなんだ。









END






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