おじさんとボク (4)
ユウジ君を忘れて
セルバンテスのおじさんと仲良くなって
お父さんが三つ目のロボを作り始めて
・・・そしてボクはここに来たときよりも大きくなった。
相変わらずボクの生活は『ふくめんの人』がお世話してくれてて食事もふくめんの担当の人が作ってくれて、服も用意してくれるんだ。あ、でも最近ボクは洗濯機の使い方おぼえたから自分で洗えるよ。干すのは・・・背がとどかないからやっぱりふくめんの人がやってくれてるけど。
それにいつもはふくめんの人だけどセルバンテスのおじさんもたまにボクに勉強を教えてくれるんだ。おじさんは学校の先生よりもずっとていねいに教えてくれるからボクは苦手だった算数が得意になった。だってロボットつくる人になるためには算数もできないといけないもんね。九九だって何も見ずにちゃんと言えるようになったもん。
ボクはこの生活は嫌いじゃないけど・・・うん、嫌いじゃないんだ、でもおじさんがいない間はずっとボクひとりだ。お世話してくれるふくめんの人はなんだか必要なことだけしかしゃべってくれないし遊んでくれないんだ。ゲームはあるけど毎日じゃあきちゃうしさ。おじさんがいるとすっごく楽しいのに、ボクひとりでいるのがなんだかとっても・・・さびしく感じるようになった。
「おじさん・・・ボク・・・ともだちが・・・」
ほしいって・・・言ってみようかな・・・。どうしようおじさん困らないかな。でもおじさん『大丈夫じゃないときはおじさんに言ってくれたまえ』って笑ってたから・・・言ってもいいんだよね?
「お友達が欲しいのかい?」
「・・・うん・・・・」
「おじさんだけじゃあダメかなぁ」
「え?・・・おじさんもボクのともだちだけど・・・」
「いやいや、ははは!冗談だよ大作君。近い年の子じゃないとね。うん、そうだねぇよし、毎日遊ぶことはできなくってもたまにで良ければ・・・なんとかしてあげよう」
「本当!?やったあ!」
「やっぱり独りじゃあ寂しいものね、おじさんもわかるよ」
ボクはうれしくって飛びはねちゃったよ。だってダメだと思ってたから。おじさんに言ってみてよかった・・・。
それから一週間してまたセルバンテスのおじさんがひょっこりボクに会いに来てくれた。
おじさんはいつもよりニコニコ笑っててうれしそうにしてるんだ。
「大作君、君とお友達になりたいって子を連れてきたよ・・・ふふふ、女の子なんだけど会ってくれるかい?」
え・・・えええ!えー!女の子ぉ・・・ボク、男の子だと思ってたのに・・・。べ、べつに嫌じゃないけどさ、ボクがまだ学校に行ってた時は女の子と遊んだことなんか無いんだもん。だって女の子とどうやって遊んでいいのかわかんないし・・・・。
「とっても可愛いんだよ?大作君に会えるのを楽しみにしてくれてたんだよ?」
・・・どうしようなんだかとってもきんちょうしてきた・・・。
「うん・・・・いいよ・・・」
そう言ったらおじさんがニッコリ笑って頭からかぶってるクフィーヤってやつを広げたら中から・・・女の子が出てきた。
「・・・こん・・・にちは・・・・サニー・・・です」
うっわー・・・・すっごく・・・その・・・かわいい・・・。お人形さんみたいな女の子だぁ・・・学校でもこんなにかわいい子いなかったよ?外国の人みたいに髪がふわっふわで色がキラキラしてて、目が大きくって・・・ボク初めて見たけど赤い色してる、ふしぎだなぁ。
「ようし、じゃああっちで遊んでおいで、もちろん仲良くだ」
「ボク・・・大作って言うんだ」
「・・・・・」
サニー・・・ちゃん、さっきからとってもはずかしそうにモジモジしてる。ボクもとってもはずかしいんだけど・・・どうしよう何しゃべっていいのかわかんないや。女の子だからゲームとかやんないだろうし、どうやって遊べばいいんだろ・・・。
「あ・・・あれさ・・・ボクが描いた絵なんだ」
たまたま目に付いた去年描いたボクの「かぞくの絵」を見せてあげたんだ。
「このすみっこの・・・セルバンテスのおじさまね?」
「うん!」
ゴーグルかけて真っ白い布かぶってて、長くてへんなヒゲだからすぐにわかるよね。サニーちゃんも知ってる人だからうれしそうに笑ってる。サニーちゃんフツーにしてるときもかわいいけど・・・笑ってるともっとかわいいなぁ。
「これなぁに?」
これ?ロボだよ、ボクお父さんが作ってるとってもとっても大きなロボットなんだ。
「ロボットが家族なの?」
そうだよ、おかしい?って聞いたらサニーちゃんは「ううん」って言ってくれた。
それをきっかけにボクはサニーちゃんといろいろお話したんだ、サニーちゃんもボクとおんなじでお母さん小さい頃に死んじゃっていないんだって。そしてお父さんとはなれて暮らしててやっぱりふくめんの人に囲まれてお世話してもらってるんだって。
ボクはなんだかうれしくなった。だってお母さんがいなくって仕事がいそがしいお父さんとあんまし一緒にいられないなんて・・・ボクと・・・似てるよね?
「サニーちゃんも何か描く?」
ボクはサニーちゃんとお絵かきして遊ぶことにした。この前セルバンテスのおじさんに買ってもらった36色もあるとっておきの色鉛筆をはじめて使ったんだよ。ボクは画用紙いっぱいにロボを描いてたんだけどサニーちゃんはたくさん人を描いてた、これだれ?ってきいたら「サニーのおじ様たちよ」って言うんだ。
セルバンテスのおじさんはすぐにわかったけど・・・他はわかんない、だれなんだろう。
「これはカワラザキのおじい様に幽鬼様、そしてこっちが怒鬼様に十常寺様に・・・」
すごい・・・サニーちゃんてこんなにおじさんがいるんだ・・・。ねぇこのピンク色の人はだれ?かみがすっごく長いの。
「樊瑞のおじ様よ、とってもおやさしくってサニーは大好きなの」
へぇ・・・いいなぁサニーちゃんこんなにたくさんおじさんがいて。ボクのおじさんはセルバンテスのおじさんしかいないもん。うらやましいなぁ・・・
「でも・・・サニーは大作君がいいなぁって思うの。だってパパといっしょに暮らしてるんでしょ?サニーは樊瑞のおじ様と一緒に暮らしてるけど・・・パパとは一緒に暮らしてないの」
なんで?やっぱりお仕事がとってもいそがしいから?
「たぶんそうだと思うんだけど・・・・サニーよく・・・わかんない・・・『おやこのえん』を切ってるからだろってレッド様が言ってたけど・・・ねぇ大作君、おやこのえんってなぁに?」
わかんない、なんだろう・・・。それ切ってるからサニーちゃんと暮らせないんだったら切ったのひっつければいいんじゃないかなぁ。ボクが持ってる工作用の接着剤でひっつくんだったら貸してあげてもいいよ?
ボクは机の引き出しから黄色いチューブに入った接着剤を取り出してサニーちゃんに貸してあげた。すぐにひっつかないんだったらセロテープで止めておけばいいんだ、しばらくすればたぶんしっかりひっつくよ。
「そうなんだ・・・サニーパパにお願いしてみるわ、ありがとう大作君」
「ひっつくといいね」
「うん」
ボクたちは絵を描きながらもっとお話をした。サニーちゃんはたくさんいるおじさんたちのことやちょっとこわいけど大好きなお父さんのこと。ボクは去年やった家出のこと話したらサニーちゃんすっごくおどろいてた、えへへ、家出やったからねサニーちゃんよりちょっと大人だよボクは。そうだ、サニーちゃんも家出やってみるといいよ?だってお父さんがきっと心配してサニーちゃんを探してくれるよきっと。
サニーちゃんまたわらった。
ボクはサニーちゃんはわらってるのがぜったいにいいと思う。
それから天気がいいから外に出て遊ぶことになってボクはサニーちゃんとふたりで原っぱへ行ったんだ。原っぱって言ってもボクの家、おじさんが「基地」って呼ぶ建物のすぐそばにあるんだ。でもそこで遊ぶときはいっつもふくめんの人が2、3人付いてきちゃうんだよ、なんでだろ。
真ん中におおきな木があってボクはそれにのぼれるんだよ?すごいでしょ・・・って・・・ええ!サニーちゃんすごい・・・のぼっちゃった・・・。
ボクはびっくりした、だって女の子って木登りしないって思ってたから。
「大作君もはやく!」
「うん、ちょっとまってて!」
いつものようにボクは木に足をかけてしがみつくように登っていったんだ
サニーちゃんが手を伸ばしてくれて、ボクはその手をにぎろうとした
その時、ボクは足をすべらせちゃって・・・
空にあるおおきな太陽が・・・・見えた
「きゃあー!!大作君!!!!」
サニーちゃんがボクの名前をよんでさけんでるのが聞こえて
その時目の前が・・・ピカーってまっかっかになったんだ・・・
いたい・・・・・・・
足が・・・いたい・・・・いたいよぉ・・・お父さぁん・・・・
「貴様ぁ!サニー様に何をした!!!サニー様!おい救護班を呼べ!」
頭もいたい・・・・おじさぁん・・・・いたいよぉ・・・
「大・・・君・・・」
「サニー様!おい早くしろっそんな小僧はどうでもいい!!」
「だいさく・・・くん・・・ごめんなさい・・・」
サニーちゃん・・・・・・・・・
ボクが気づいたとき空に太陽は無くって・・・上は真っ白いてんじょうだった。
「大丈夫かい?大作君・・・」
おじさんだ、セルバンテスのおじさんだ。
おじさん、ボクどうしたの?サニーちゃんは?
「木から落ちちゃって足の骨を折っちゃったんだよ、まだ痛むかい?」
ほんとだ、ボクの左足がほうたいでグルグル巻きになってる。ううん、もう痛くないよ。それよりオデコがなんだかヒリヒリするんだ・・・ぶつけちゃったのかなぁ。でもおじさん、サニーちゃんは大丈夫?だって・・・ふくめんの人がすっごく・・・さけんでて・・・ボク・・・。
怖かった・・・
赤い光がピカーって光って・・・それになにかとんでも無い事をしちゃったのかなって、ふくめんの人がボクのことどうでもいい!ってさけんでる声聞いててすごく怖かったんだ。怖かったんだおじさん・・・。
「どうでもよくないから、大作君が謝ることはないんだよ、おじさんが・・・一番悪かったんだ・・・済まなかったね」
ボクは初めておじさんがためいきするの見た・・・どうしておじさんが悪いんだろう、悪いのボクなのに、足をすべらせて・・・きっとサニーちゃんも落ちちゃったんだ・・・そうだ、サニーちゃんは?ケガしてない?
「・・・・・大丈夫だよ、ちょっとお熱が・・・出てね、先にお家に帰ったんだよ。大作君のことをとても心配してて『ごめんね』って言ってたよ・・・・」
どうして・・・・どうしてサニーちゃんがあやまるの?おじさんがあやまるの?ボクもあやまって・・・なんだか変だよ。みんながあやまって変だよ。
「そうだね、変だね・・・」
絶対に・・・変だよ・・・・。
それから・・・二日たってセルバンテスのおじさんがボクがいる病室にやってきた。
「大作君、実はサニーちゃん、お父さんの仕事の都合で遠くへお引越しすることになったんだよ」
「・・・・そっか・・・・サニーちゃん・・・おともだちになれるって思ってたのに」
「・・・・・・・・・・・・・」
そうだ、ねぇおじさんこの前サニーちゃんに貸した接着剤、あげるよって言っといて欲しいんだけど。ボクはもう一個持ってるし。
「接着剤??」
うん、サニーちゃんがさ、切った『おやこのえん』っていうのをくっつけるのに使うから貸してあげたんだ。うまくひっつくといいんだけど・・・あれ紙と木の接着剤だから、プラモデル用のやつにすれば良かったかなぁ。ねぇおじさんはどう思う?
「いや、それでひっつくと思うよ・・・・」
おじさん、ボクを抱きよせてくれた。
そうだよ、ひっついてサニーちゃんはお父さんと一緒に暮らせるようになるといいんだ。
だよね、サニーちゃん。
バイバイ・・・サニーちゃん・・・。
バイバイ・・・・・・・・・・・。
ボクの左足についてた白いかたまりがとれて・・・
ボクは歩けるようになってからあの原っぱに行ってみた。
原っぱにあったはずの大きな木が無くなってた。
ううん、無くなってはなかったんだ。
上半分が無くなって根元がボロボロになって
雷が・・・落ちたいみたいに・・・なってた・・・。
オデコのヒリヒリはもう無くなったのに、またヒリヒリしだして・・・
あの赤い光を思い出した。
怖い、って思ってボクはもうその原っぱに行かなくなったんだ。
END
「パパとサニー」へ
ユウジ君を忘れて
セルバンテスのおじさんと仲良くなって
お父さんが三つ目のロボを作り始めて
・・・そしてボクはここに来たときよりも大きくなった。
相変わらずボクの生活は『ふくめんの人』がお世話してくれてて食事もふくめんの担当の人が作ってくれて、服も用意してくれるんだ。あ、でも最近ボクは洗濯機の使い方おぼえたから自分で洗えるよ。干すのは・・・背がとどかないからやっぱりふくめんの人がやってくれてるけど。
それにいつもはふくめんの人だけどセルバンテスのおじさんもたまにボクに勉強を教えてくれるんだ。おじさんは学校の先生よりもずっとていねいに教えてくれるからボクは苦手だった算数が得意になった。だってロボットつくる人になるためには算数もできないといけないもんね。九九だって何も見ずにちゃんと言えるようになったもん。
ボクはこの生活は嫌いじゃないけど・・・うん、嫌いじゃないんだ、でもおじさんがいない間はずっとボクひとりだ。お世話してくれるふくめんの人はなんだか必要なことだけしかしゃべってくれないし遊んでくれないんだ。ゲームはあるけど毎日じゃあきちゃうしさ。おじさんがいるとすっごく楽しいのに、ボクひとりでいるのがなんだかとっても・・・さびしく感じるようになった。
「おじさん・・・ボク・・・ともだちが・・・」
ほしいって・・・言ってみようかな・・・。どうしようおじさん困らないかな。でもおじさん『大丈夫じゃないときはおじさんに言ってくれたまえ』って笑ってたから・・・言ってもいいんだよね?
「お友達が欲しいのかい?」
「・・・うん・・・・」
「おじさんだけじゃあダメかなぁ」
「え?・・・おじさんもボクのともだちだけど・・・」
「いやいや、ははは!冗談だよ大作君。近い年の子じゃないとね。うん、そうだねぇよし、毎日遊ぶことはできなくってもたまにで良ければ・・・なんとかしてあげよう」
「本当!?やったあ!」
「やっぱり独りじゃあ寂しいものね、おじさんもわかるよ」
ボクはうれしくって飛びはねちゃったよ。だってダメだと思ってたから。おじさんに言ってみてよかった・・・。
それから一週間してまたセルバンテスのおじさんがひょっこりボクに会いに来てくれた。
おじさんはいつもよりニコニコ笑っててうれしそうにしてるんだ。
「大作君、君とお友達になりたいって子を連れてきたよ・・・ふふふ、女の子なんだけど会ってくれるかい?」
え・・・えええ!えー!女の子ぉ・・・ボク、男の子だと思ってたのに・・・。べ、べつに嫌じゃないけどさ、ボクがまだ学校に行ってた時は女の子と遊んだことなんか無いんだもん。だって女の子とどうやって遊んでいいのかわかんないし・・・・。
「とっても可愛いんだよ?大作君に会えるのを楽しみにしてくれてたんだよ?」
・・・どうしようなんだかとってもきんちょうしてきた・・・。
「うん・・・・いいよ・・・」
そう言ったらおじさんがニッコリ笑って頭からかぶってるクフィーヤってやつを広げたら中から・・・女の子が出てきた。
「・・・こん・・・にちは・・・・サニー・・・です」
うっわー・・・・すっごく・・・その・・・かわいい・・・。お人形さんみたいな女の子だぁ・・・学校でもこんなにかわいい子いなかったよ?外国の人みたいに髪がふわっふわで色がキラキラしてて、目が大きくって・・・ボク初めて見たけど赤い色してる、ふしぎだなぁ。
「ようし、じゃああっちで遊んでおいで、もちろん仲良くだ」
「ボク・・・大作って言うんだ」
「・・・・・」
サニー・・・ちゃん、さっきからとってもはずかしそうにモジモジしてる。ボクもとってもはずかしいんだけど・・・どうしよう何しゃべっていいのかわかんないや。女の子だからゲームとかやんないだろうし、どうやって遊べばいいんだろ・・・。
「あ・・・あれさ・・・ボクが描いた絵なんだ」
たまたま目に付いた去年描いたボクの「かぞくの絵」を見せてあげたんだ。
「このすみっこの・・・セルバンテスのおじさまね?」
「うん!」
ゴーグルかけて真っ白い布かぶってて、長くてへんなヒゲだからすぐにわかるよね。サニーちゃんも知ってる人だからうれしそうに笑ってる。サニーちゃんフツーにしてるときもかわいいけど・・・笑ってるともっとかわいいなぁ。
「これなぁに?」
これ?ロボだよ、ボクお父さんが作ってるとってもとっても大きなロボットなんだ。
「ロボットが家族なの?」
そうだよ、おかしい?って聞いたらサニーちゃんは「ううん」って言ってくれた。
それをきっかけにボクはサニーちゃんといろいろお話したんだ、サニーちゃんもボクとおんなじでお母さん小さい頃に死んじゃっていないんだって。そしてお父さんとはなれて暮らしててやっぱりふくめんの人に囲まれてお世話してもらってるんだって。
ボクはなんだかうれしくなった。だってお母さんがいなくって仕事がいそがしいお父さんとあんまし一緒にいられないなんて・・・ボクと・・・似てるよね?
「サニーちゃんも何か描く?」
ボクはサニーちゃんとお絵かきして遊ぶことにした。この前セルバンテスのおじさんに買ってもらった36色もあるとっておきの色鉛筆をはじめて使ったんだよ。ボクは画用紙いっぱいにロボを描いてたんだけどサニーちゃんはたくさん人を描いてた、これだれ?ってきいたら「サニーのおじ様たちよ」って言うんだ。
セルバンテスのおじさんはすぐにわかったけど・・・他はわかんない、だれなんだろう。
「これはカワラザキのおじい様に幽鬼様、そしてこっちが怒鬼様に十常寺様に・・・」
すごい・・・サニーちゃんてこんなにおじさんがいるんだ・・・。ねぇこのピンク色の人はだれ?かみがすっごく長いの。
「樊瑞のおじ様よ、とってもおやさしくってサニーは大好きなの」
へぇ・・・いいなぁサニーちゃんこんなにたくさんおじさんがいて。ボクのおじさんはセルバンテスのおじさんしかいないもん。うらやましいなぁ・・・
「でも・・・サニーは大作君がいいなぁって思うの。だってパパといっしょに暮らしてるんでしょ?サニーは樊瑞のおじ様と一緒に暮らしてるけど・・・パパとは一緒に暮らしてないの」
なんで?やっぱりお仕事がとってもいそがしいから?
「たぶんそうだと思うんだけど・・・・サニーよく・・・わかんない・・・『おやこのえん』を切ってるからだろってレッド様が言ってたけど・・・ねぇ大作君、おやこのえんってなぁに?」
わかんない、なんだろう・・・。それ切ってるからサニーちゃんと暮らせないんだったら切ったのひっつければいいんじゃないかなぁ。ボクが持ってる工作用の接着剤でひっつくんだったら貸してあげてもいいよ?
ボクは机の引き出しから黄色いチューブに入った接着剤を取り出してサニーちゃんに貸してあげた。すぐにひっつかないんだったらセロテープで止めておけばいいんだ、しばらくすればたぶんしっかりひっつくよ。
「そうなんだ・・・サニーパパにお願いしてみるわ、ありがとう大作君」
「ひっつくといいね」
「うん」
ボクたちは絵を描きながらもっとお話をした。サニーちゃんはたくさんいるおじさんたちのことやちょっとこわいけど大好きなお父さんのこと。ボクは去年やった家出のこと話したらサニーちゃんすっごくおどろいてた、えへへ、家出やったからねサニーちゃんよりちょっと大人だよボクは。そうだ、サニーちゃんも家出やってみるといいよ?だってお父さんがきっと心配してサニーちゃんを探してくれるよきっと。
サニーちゃんまたわらった。
ボクはサニーちゃんはわらってるのがぜったいにいいと思う。
それから天気がいいから外に出て遊ぶことになってボクはサニーちゃんとふたりで原っぱへ行ったんだ。原っぱって言ってもボクの家、おじさんが「基地」って呼ぶ建物のすぐそばにあるんだ。でもそこで遊ぶときはいっつもふくめんの人が2、3人付いてきちゃうんだよ、なんでだろ。
真ん中におおきな木があってボクはそれにのぼれるんだよ?すごいでしょ・・・って・・・ええ!サニーちゃんすごい・・・のぼっちゃった・・・。
ボクはびっくりした、だって女の子って木登りしないって思ってたから。
「大作君もはやく!」
「うん、ちょっとまってて!」
いつものようにボクは木に足をかけてしがみつくように登っていったんだ
サニーちゃんが手を伸ばしてくれて、ボクはその手をにぎろうとした
その時、ボクは足をすべらせちゃって・・・
空にあるおおきな太陽が・・・・見えた
「きゃあー!!大作君!!!!」
サニーちゃんがボクの名前をよんでさけんでるのが聞こえて
その時目の前が・・・ピカーってまっかっかになったんだ・・・
いたい・・・・・・・
足が・・・いたい・・・・いたいよぉ・・・お父さぁん・・・・
「貴様ぁ!サニー様に何をした!!!サニー様!おい救護班を呼べ!」
頭もいたい・・・・おじさぁん・・・・いたいよぉ・・・
「大・・・君・・・」
「サニー様!おい早くしろっそんな小僧はどうでもいい!!」
「だいさく・・・くん・・・ごめんなさい・・・」
サニーちゃん・・・・・・・・・
ボクが気づいたとき空に太陽は無くって・・・上は真っ白いてんじょうだった。
「大丈夫かい?大作君・・・」
おじさんだ、セルバンテスのおじさんだ。
おじさん、ボクどうしたの?サニーちゃんは?
「木から落ちちゃって足の骨を折っちゃったんだよ、まだ痛むかい?」
ほんとだ、ボクの左足がほうたいでグルグル巻きになってる。ううん、もう痛くないよ。それよりオデコがなんだかヒリヒリするんだ・・・ぶつけちゃったのかなぁ。でもおじさん、サニーちゃんは大丈夫?だって・・・ふくめんの人がすっごく・・・さけんでて・・・ボク・・・。
怖かった・・・
赤い光がピカーって光って・・・それになにかとんでも無い事をしちゃったのかなって、ふくめんの人がボクのことどうでもいい!ってさけんでる声聞いててすごく怖かったんだ。怖かったんだおじさん・・・。
「どうでもよくないから、大作君が謝ることはないんだよ、おじさんが・・・一番悪かったんだ・・・済まなかったね」
ボクは初めておじさんがためいきするの見た・・・どうしておじさんが悪いんだろう、悪いのボクなのに、足をすべらせて・・・きっとサニーちゃんも落ちちゃったんだ・・・そうだ、サニーちゃんは?ケガしてない?
「・・・・・大丈夫だよ、ちょっとお熱が・・・出てね、先にお家に帰ったんだよ。大作君のことをとても心配してて『ごめんね』って言ってたよ・・・・」
どうして・・・・どうしてサニーちゃんがあやまるの?おじさんがあやまるの?ボクもあやまって・・・なんだか変だよ。みんながあやまって変だよ。
「そうだね、変だね・・・」
絶対に・・・変だよ・・・・。
それから・・・二日たってセルバンテスのおじさんがボクがいる病室にやってきた。
「大作君、実はサニーちゃん、お父さんの仕事の都合で遠くへお引越しすることになったんだよ」
「・・・・そっか・・・・サニーちゃん・・・おともだちになれるって思ってたのに」
「・・・・・・・・・・・・・」
そうだ、ねぇおじさんこの前サニーちゃんに貸した接着剤、あげるよって言っといて欲しいんだけど。ボクはもう一個持ってるし。
「接着剤??」
うん、サニーちゃんがさ、切った『おやこのえん』っていうのをくっつけるのに使うから貸してあげたんだ。うまくひっつくといいんだけど・・・あれ紙と木の接着剤だから、プラモデル用のやつにすれば良かったかなぁ。ねぇおじさんはどう思う?
「いや、それでひっつくと思うよ・・・・」
おじさん、ボクを抱きよせてくれた。
そうだよ、ひっついてサニーちゃんはお父さんと一緒に暮らせるようになるといいんだ。
だよね、サニーちゃん。
バイバイ・・・サニーちゃん・・・。
バイバイ・・・・・・・・・・・。
ボクの左足についてた白いかたまりがとれて・・・
ボクは歩けるようになってからあの原っぱに行ってみた。
原っぱにあったはずの大きな木が無くなってた。
ううん、無くなってはなかったんだ。
上半分が無くなって根元がボロボロになって
雷が・・・落ちたいみたいに・・・なってた・・・。
オデコのヒリヒリはもう無くなったのに、またヒリヒリしだして・・・
あの赤い光を思い出した。
怖い、って思ってボクはもうその原っぱに行かなくなったんだ。
END
「パパとサニー」へ
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