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おじさんとボク (3)






「お父さんのウソつき!!!」

ボクは泣きながら枕を力いっぱいお父さんに投げつけた。

今日はお休みでボクを遊園地に連れて行ってくれるって言ってくれたのに、またお仕事になってダメになっちゃったんだ。もう一ヶ月も前からやくそくしていたんだよ?その前もお仕事でダメになっちゃったからすっごくすっごく楽しみにしていたんだよ?なのにお父さん

「いい子だから我慢しなさい、また今度遊園地に連れて行ってあげるから」

「・・・・・・・・・・」

この前のお絵かきの時間に描いた「かぞくの絵」をボクはくしゃくしゃにしてゴミ箱に投げつけた。ボクとお父さんの2人が描かれた絵、お父さん忙しくってまだ絵を見せてなかったけどもういらないや。

ガマンはいっつもしてるのに、まだガマンするの?もうボク嫌だよ。こんなのならボクはいい子やめちゃうよ?わるい子になってお父さんを困らせるよ?いいの?

そうだ、家出しよ。家出してお父さんを困らせてやるんだ「大作ー」って探させてやるんだ、探したってボクは出てこないから、お父さんが泣いて頼んでもボクは帰らないからね。

テレビで見たことがあるんだ、こうやってかばんにたくさん服とか食べ物つめ込んで家出するの。でもお金が・・・いいや貯金箱の中に1500円ちょっとあったからあれ持って行こう。お腹すいたらポテチ食べればいいし。うん、これなら一週間は家出できるよきっと。

「よいしょっと」

ここをぬけ出して・・・うーんと、どこへ行こう。ここって車か飛行機が無いと町までいけないんだよ・・・そうだ、たまに荷物と一緒にやってくる貨物の車にこっそり乗っちゃおうっと。


ボクはふくらんだカバンをおぶって誰にも見つからないようにこっそり家・・・といってもお父さんが働く工場、おじさんは「基地」って呼んでる中にある部屋から出た。ドキドキしながら『ふくめんの人』に見つからないように基地の入り口まで来ちゃった。

「おや、大作君どこかへ遠足かい?」

貨物の車の後ろに乗り込もうと思ったら、セルバンテスのおじさんがいつからいたのかボクの後ろにいたんだ。シーッ!ビックリさせないでよもう・・・遠足じゃないよ、家出するんだ。おじさんが止めてもムダだからね、ボクは決めたんだから。

「ほう、家出かね。それじゃあおじさんも大作君と一緒に家出しようかな」

え?本気で言ってるの?って言う前におじさんはボクの手を引いて荷物を降ろして何も無くなった車の後ろに乗り込んじゃった。


車のすきまから基地がどんどん遠くなっていくのが見える。
ボクは本当に家出してるんだって思えてきてなんだかワクワクしちゃう。


車に乗ってる間、どうしてボクが家出するのかおじさんに説明してあげた。

「そりゃ家出したくなるねぇ」

そうでしょ?おじさんもそう思うでしょ?お父さんはボクのことなんかどうでもいいんだ、ロボさえいればいいんだよ。もうロボも大嫌いだ、ロボット作る人になんか絶対なんないよ。

ボクは車の中でおじさんにカバンの中身を見せてあげた。こりゃあ家出の準備ばんたんじゃないか、すごいねぇっておじさんがほめてくれた。えへへ、すごいでしょってボクは得意になったんだ。それからポテチはお腹がへってたから・・・車の中で2人で食べちゃった。

しばらく車に乗ってたらおじさんがいきなり「この辺で降りるかな」ってボクをカバンごと抱きかかえて走ってる車から飛び降りたんだ。そこはどこかの町だった。見たことの無い、まったく知らない町。おじさんも「私も初めてで知らないところだよ」って笑って言ってた。

「でもどうせ家出するなら知らない所の方が気分が盛り上がるだろう?」

「おじさんボクみたいな小さいころに家出したことがあるの?」

「ふふふ、あるよ」

すごいやおじさん、ボクの家出のセンパイだね。
プロと言いたまえって、あはは胸をはって得意になってるよおじさん。

おじさんはどうして家出なんかしたんだろ、ボクと一緒な理由だったのかな。
ボクはおじさんと歩きながらちょっときいてみた。

「さあ・・・どうだったんだろうね、もしかしたら大作君と一緒の理由だったのかもしれないけれど・・・もう昔のことだから・・・・・・・忘れちゃったよ・・・・」

じゃあ、じゃあさ!おじさんが家出した時おじさんのお父さんもお母さんも、そして兄弟の人もきっとみんな大慌てでおじさんを探したんだろうね。

「・・・・私が家出したことに・・・・・・・・・・誰も気づかなかったんだよ」

「・・・・・・・・・・・」

ボクが見たのは先を歩くおじさんの背中で、真っ白いクフィーヤっていう被り物がヒラヒラ風になびいてただけだった。そう言うおじさんの顔は・・・ボクには見えなかった。

「ははは!『ボク家出しまーす』って宣言すれば良かったのにねぇ。でも・・・大作君は内緒で家出してもきっとお父さんがすぐに気づいて必死になって探してくれているよ?「大作ー」ってね、いいじゃあないかたまには心配させてあげるのも必要だと思うけど。うん」

振り向いたおじさんはいつものおじさんでニッコリ笑ってて・・・



「おじさんが家出したら・・・ボクはおじさんを探すよ?」




ボクはおじさんの目を見てそう言った。

だって、本当に探すもの。

おじさんが家出していなくなったらすぐに気づいてボクは探すもの。

見つかるまでずっとずっと探すもの。



おじさんは、ボクの目をしばらく見つめて


「ありがとう」


そう言った。





それからボクとおじさんは知らない町でたくさん遊んだ。
知らない公園でボクはブランコで立ちこぎして、ジャングルジムのてっぺんまで登って、それから持ってた1500円でクレープ買って2人で半分こしながら食べ歩きして、本屋でマンガを立ち読みして、自動はんばいきでコーラ買って、あ、たんさんはお父さんに「歯が溶けるから飲んじゃ駄目」って言われてるけどおじさんが「内緒にしてあげるから」って言うから買って飲んじゃった、うん、ゲップがたくさん出たけどおいしかったよ。そして海まで小石をけりながら歩いて砂浜で貝を拾ったりカピカピにかんそうしたワカメみたいなのをおじさんの頭に乗っけて遊んでそれから、それから・・・

おじさんと夕日を見た。



「じゃあ、帰ろうか」

「うん」



おじさんはスーツのふところから何か取り出して何かしゃべってた。
そしてらすぐに大きなヘリコプターがやってきてそれに2人で乗り込んだんだ。



こうしてボクの最初で最後の家出が終わった。








お父さんは帰ってきたボクを見るなり力いっぱい抱きしめてくれた。
仕事そっちのけでボクを探してたんだって。
それにお父さん、泣いてた。
家出して悪かったなぁって思ったけど、して良かったって・・・思った。





次の日お父さんはとつぜん休みになった。

セルバンテスのおじさんがそうしてくれたんだって。

そしてお父さんはボクを遊園地に連れて行ってくれた。

BF団の人も何人か一緒だったけど、その人は遠くでボクたちを見てるだけだった。

遊園地はすっごく楽しかった、お父さんもすっごく楽しそうで笑ってて、そんなお父さんと2人で一緒に楽しんでるんだって思うとボクは本当に本当にうれしかった。




遊園地から家に帰ったらくしゃくしゃに丸めてのゴミ箱に投げ捨てたはずの「かぞくの絵」が・・・誰かが取り出したのかボクの机の上にあった。

ていねいに広げられたその絵のボクとお父さんはやっぱり笑ってて、ボクはその絵のすみっこにロボを描き加えてみた。


そしてセルバンテスのおじさんも、笑った顔で描き加えたんだ。






END






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