忍者ブログ
Admin*Write*Comment
うろほろぞ
[162]  [161]  [160]  [159]  [158]  [157]  [156]  [155]  [154]  [153]  [152
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

6. お姫様だっこ(アルベルトとサニーちゃん)






6. お姫様だっこ(アルベルトとサニーちゃん)

 久しぶりに訪れた実父の屋敷には当の主は不在で、
 それでも幼い少女はその部屋の至る所に最愛の父の影を追う。
 広い屋敷には少ない気もする程度の召使い達が、
 それでも実に鮮やかに客間の準備を整えたのは数時間前の事。
 だが少女は部屋への案内をやんわりと断ると、
 父親譲りのその気丈さで、今日こそは父の帰りを待つのだ、と決意する。
 普段主の命令は絶対である執事は、
 そんな一途な少女を冷たくあしらえるほど非情ではなく、
 軽く咳をした少女の為に応接間の室温を通常より2度ほど上げると、
 少し甘めに作ったバン・ホーテンのココアを準備した。

 そんな暖かさに触れ、気が緩んだ幼子が眠りに勝てるはずも無く。

 深夜に帰宅した主は、普段より暖かい応接間に軽く眉をひそめたが、
 中央に設えてあるソファに埋もれる様に眠る不承の娘の姿を認め、
 テーブルに置かれた飲みかけのココアの冷たさに時間を悟り、
 この馬鹿者が、と溜息をついた。
 それでも少女は子猫のように身体を丸め、
 その表情は至極穏やかだ。
 ほんの少し口元に乾いていたココアのかすを、
 無骨な父にしては珍しく指で拭ってやると、
 僅かに漂った葉巻の香りに、少女の顔が幸せそうにほころぶ。

 そんな少女の眠りを妨げるほど、彼は常識知らずな男ではなく。

 抱え上げた身体は、彼が記憶していたものよりずっと重い。
 自分の知らぬ内に、確実に男の血は少女の成長を促していた。
 かつて愛した女性を抱え上げた時の記憶が一瞬過ぎったが、
 過ぎ去った思い出に重さは無い。
 今、この腕に感じるのは、その忘れ形見の重さだ。
 珍しく…本当にこの男にしては珍しく、感傷にも似た想いが胸を過ぎったが、
 無意識にその襟を掴む少女の寝息に、それはかき消された。

PR
papah * HOME * sanni
  • ABOUT
うろほらぞ
Copyright © うろほろぞ All Rights Reserved.*Powered by NinjaBlog
Graphics By R-C free web graphics*material by 工房たま素材館*Template by Kaie
忍者ブログ [PR]