6. お姫様だっこ(アルベルトとサニーちゃん)
6. お姫様だっこ(アルベルトとサニーちゃん)
久しぶりに訪れた実父の屋敷には当の主は不在で、
それでも幼い少女はその部屋の至る所に最愛の父の影を追う。
広い屋敷には少ない気もする程度の召使い達が、
それでも実に鮮やかに客間の準備を整えたのは数時間前の事。
だが少女は部屋への案内をやんわりと断ると、
父親譲りのその気丈さで、今日こそは父の帰りを待つのだ、と決意する。
普段主の命令は絶対である執事は、
そんな一途な少女を冷たくあしらえるほど非情ではなく、
軽く咳をした少女の為に応接間の室温を通常より2度ほど上げると、
少し甘めに作ったバン・ホーテンのココアを準備した。
そんな暖かさに触れ、気が緩んだ幼子が眠りに勝てるはずも無く。
深夜に帰宅した主は、普段より暖かい応接間に軽く眉をひそめたが、
中央に設えてあるソファに埋もれる様に眠る不承の娘の姿を認め、
テーブルに置かれた飲みかけのココアの冷たさに時間を悟り、
この馬鹿者が、と溜息をついた。
それでも少女は子猫のように身体を丸め、
その表情は至極穏やかだ。
ほんの少し口元に乾いていたココアのかすを、
無骨な父にしては珍しく指で拭ってやると、
僅かに漂った葉巻の香りに、少女の顔が幸せそうにほころぶ。
そんな少女の眠りを妨げるほど、彼は常識知らずな男ではなく。
抱え上げた身体は、彼が記憶していたものよりずっと重い。
自分の知らぬ内に、確実に男の血は少女の成長を促していた。
かつて愛した女性を抱え上げた時の記憶が一瞬過ぎったが、
過ぎ去った思い出に重さは無い。
今、この腕に感じるのは、その忘れ形見の重さだ。
珍しく…本当にこの男にしては珍しく、感傷にも似た想いが胸を過ぎったが、
無意識にその襟を掴む少女の寝息に、それはかき消された。
6. お姫様だっこ(アルベルトとサニーちゃん)
久しぶりに訪れた実父の屋敷には当の主は不在で、
それでも幼い少女はその部屋の至る所に最愛の父の影を追う。
広い屋敷には少ない気もする程度の召使い達が、
それでも実に鮮やかに客間の準備を整えたのは数時間前の事。
だが少女は部屋への案内をやんわりと断ると、
父親譲りのその気丈さで、今日こそは父の帰りを待つのだ、と決意する。
普段主の命令は絶対である執事は、
そんな一途な少女を冷たくあしらえるほど非情ではなく、
軽く咳をした少女の為に応接間の室温を通常より2度ほど上げると、
少し甘めに作ったバン・ホーテンのココアを準備した。
そんな暖かさに触れ、気が緩んだ幼子が眠りに勝てるはずも無く。
深夜に帰宅した主は、普段より暖かい応接間に軽く眉をひそめたが、
中央に設えてあるソファに埋もれる様に眠る不承の娘の姿を認め、
テーブルに置かれた飲みかけのココアの冷たさに時間を悟り、
この馬鹿者が、と溜息をついた。
それでも少女は子猫のように身体を丸め、
その表情は至極穏やかだ。
ほんの少し口元に乾いていたココアのかすを、
無骨な父にしては珍しく指で拭ってやると、
僅かに漂った葉巻の香りに、少女の顔が幸せそうにほころぶ。
そんな少女の眠りを妨げるほど、彼は常識知らずな男ではなく。
抱え上げた身体は、彼が記憶していたものよりずっと重い。
自分の知らぬ内に、確実に男の血は少女の成長を促していた。
かつて愛した女性を抱え上げた時の記憶が一瞬過ぎったが、
過ぎ去った思い出に重さは無い。
今、この腕に感じるのは、その忘れ形見の重さだ。
珍しく…本当にこの男にしては珍しく、感傷にも似た想いが胸を過ぎったが、
無意識にその襟を掴む少女の寝息に、それはかき消された。
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