01 沈む静けさ
見上げた天井。
敷き詰められた碁盤状の石。
きらきら光る、獣の影。
差し込む夜の灯り。
灯籠の灯り。
月は出ていない。
炎の紅に照らされた褐色の肌。
所々に小さな傷が残る、男の身体。
鍛えられた逞しい腕が、闇の中で私を攫った。
触れた先から伝わる熱。熱。熱。
堪らずに男の背に腕を伸ばそうとするけれど、いつも躊躇ってしまう。
行方の定まらない腕は、敷布を掴んだ。
やがて訪れるその時を感じて、強く掴んだ。
吐く息は途切れ途切れに。
凭れ掛かる男は、少しだけ苦しそう。
小さなくちづけを繰り返して、私の胸に顔を埋めた。
身体の芯へと浸み渡る微熱。
二人を抱えて沈む、寝台の音。
それが、世界の全て。
飾り気の無い指が汗の滲んだ額に纏わる銀糸を掻き分けた。
それが私の示す、確かな証し。
ぎこちなく動く指を見て、男は笑った。
男が笑ったのを見て、私も笑った。
それからようやく、男の背に腕を伸ばした。
広い背中を抱き締めて、静かに目を閉じた。
(06.06.15.update)
見上げた天井。
敷き詰められた碁盤状の石。
きらきら光る、獣の影。
差し込む夜の灯り。
灯籠の灯り。
月は出ていない。
炎の紅に照らされた褐色の肌。
所々に小さな傷が残る、男の身体。
鍛えられた逞しい腕が、闇の中で私を攫った。
触れた先から伝わる熱。熱。熱。
堪らずに男の背に腕を伸ばそうとするけれど、いつも躊躇ってしまう。
行方の定まらない腕は、敷布を掴んだ。
やがて訪れるその時を感じて、強く掴んだ。
吐く息は途切れ途切れに。
凭れ掛かる男は、少しだけ苦しそう。
小さなくちづけを繰り返して、私の胸に顔を埋めた。
身体の芯へと浸み渡る微熱。
二人を抱えて沈む、寝台の音。
それが、世界の全て。
飾り気の無い指が汗の滲んだ額に纏わる銀糸を掻き分けた。
それが私の示す、確かな証し。
ぎこちなく動く指を見て、男は笑った。
男が笑ったのを見て、私も笑った。
それからようやく、男の背に腕を伸ばした。
広い背中を抱き締めて、静かに目を閉じた。
(06.06.15.update)
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