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回想

思えば、あれから数年たってしまった。今まで大勢の孤児を引き取ってきたが、まだ幼さ残る少女メイに出会ったときのことはよく覚えている。

まだ五月だというのに酷い土砂降りだった。食料燃料調達のためにおりた小さな街で、人通りの比較的多い場所を何気なく彷徨っていた。
突然、何かにぶつかった。下をみると小さな少女が立っていた。赤い服に短めのスカート、手にはくまの縫いぐるみを抱えている。どこかの金持ちの子が迷いこんだのだろうと、目線を少女に合わせた。
うつむいていた少女の眼をみた瞬間、身体に何かがとおりすぎた。

かつて父親を失い孤独に蝕まれた自分が、今再び目の前に立ってこちらをみていたのだ。少女の目は虚ろながらこちらをじっと見つめ続けている。
この子は自分自身なのか…孤独から抜け出したのは嘘だったのだろうか…。いや、この子は自分じゃない…そう言い聞かせ、いつもの調子で声を掛けてみる。
「よぅリトルレディ。何か探し物かい?」
虚ろな瞳が少し動いた。そしてゆっくりと口を開きだす。
「とうさま…かあさま…さがしているの…」
「ほう…そうかい、迷子になったのか。よーし、俺が一緒に探してやるよ」
そう言ってさんざん歩き回ったが、それらしい人物に会うことはなかった。後から聞いた話だがその街はコロニーから脱走した日本人が密かに暮らす街で、その日大掛かりの捜査で数人の日本人が捕まり、数人は戦闘で死んだという。その中に確かに少女がいたらしいと証言する者がいたそうだが、行方を知るものは少ない…。


















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