忍者ブログ
Admin*Write*Comment
うろほろぞ
[911]  [910]  [909]  [908]  [907]  [906]  [905]  [904]  [903]  [902]  [901
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

vvv







こんな夢を見た。









自分は歩いていた。
ここがどこだか判らない。 どこへ行くのかも判らない。

只、歩いて行く先に≪あいつ≫が居る。
弟が、居る。
其れだけが確かな事だ。
弟の気配に向けて、自分は歩いているのだ。




果たして、そこに弟は居た。


話に聞いたとおり、明るい筈だった頭髪は黒くなっている。
あの町で≪兄弟≫が変貌するのをまのあたりにした時よりも心が痛むかと思ったが、
何故かそう云うことはなかった。
只、自分よりも更に症状が進んでいることに驚きを感じた。

あいつは身体が変化していた。
羽に似た身体。 刃のような自分の身体とは違う。
他の≪産み出す者≫と同じ造りの。
その羽の中で、黒いものが見え隠れしている。


人間の。

女だった。




女はゆらゆらと羽の中で蠢く。
弟の羽の中で。
動きに合わせて白い頸や肩が顕わになった。
弟は其れを凝と観ていたが、
ふと。
此方を見返した。
眼が、あった。




――待っていたよ――
其の口が動いた。
声は届かなくてもそう云っているのだと判った。


ごらん、彼女を。
僕達はいずれこんな風になって逝くんだ。
僕もお前もいつか真黒に染まる。


そう云いながら弟は女を抱く。
眉根を寄せていた女の両の眼が朦朧と開けられた。
其の水晶には何も映されずにまた閉じられる。
白い貌に浮かぶのは紛れもない
愉悦だった。




――おいで――
弟は呼ぶ。
――来たいんだろう?――
肯定も否定もしなかったが其の刹那、自分は≪そこ≫に居た。
夢だからだ。 そう思った。
弟は満足げに自分を観ている。
唇が笑みの形につり上がる。
そして。
羽が四肢を絡め取った。



――何を見ているんだい?――
誰も。 貴様以外は誰も。
――そんな筈は無いだろう?――
羽に被われた眼の前に、
女が現れる。


夢見るような表情で女が口を開く。
お前は僕を見てはいない。
弟の声で告発する。
彼女の事を視ているんだ。
女の手が自分に触れる。 鳥肌が立った。
――違うよ――
告発は続く。
何が違うものか。
――嘘吐き――
声が嘲笑う。



手は熱を持った中心を探り当てた。




そして。


目が醒めた。



PR
vv * HOME * vvv
  • ABOUT
うろほらぞ
Copyright © うろほろぞ All Rights Reserved.*Powered by NinjaBlog
Graphics By R-C free web graphics*material by 工房たま素材館*Template by Kaie
忍者ブログ [PR]