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おじさんとボク (5)






お父さんはロボットを作るのに今までよりももっといっしょうけんめいになった。


ボクもロボが完成するのが楽しみでいつも「あとどれくらいでできるの?」ってお父さんに聞いてるんだ。そんな時お父さんは「あと少しだよ」って決まって言うんだけど・・・

うん、その日は違ってて

「あと少しだよ・・・・そうだこの『GR1』さえ完成すればようやく・・・あの『言葉』に答えられるんだ・・・」

そう言うお父さんの横顔はボクが見た事が無いお父さんだった。










「それじゃあお父さんは一週間ほどお仕事で留守にするけど・・・もうひとりでも大丈夫か?大作」

お父さんはココとは別の『基地』の人たちとお仕事のお話があるんだって。そっか・・・ロボ作るお仕事って大変だなぁ・・・。大丈夫だよ、だってボクは大きくなったんだし男の子だよ?ひとりでも大丈夫だよお父さん。

「そうか、いつのまにかこんなに頼もしくなっていたんだな大作は・・・。じゃあお父さんは行ってくるから、お土産を持って帰るからね」

「うん!」

それからボクはひとりであそんでおとうさんがいないからひとりでごはん食べてひとりでお風呂にはいってひとりで布団に入って・・・

もう三日もそうしてたから大丈夫だったはずなのに、三日目の夜・・・ひとりまっくらな部屋で布団の中からてんじょう見てたら涙が出ちゃったんだ。どうやっても涙が止まんなくってお父さんも誰もいないから布団にもぐって声出してボクは泣いちゃった。





「目が赤いや・・・」

朝おきて鏡を見たら泣いたボクの目が赤くってなんだか・・・はずかしかった。だってさボクもう大きくなったし男の子だから泣くのははずかしいって思うんだ、かっこわるいよ絶対。だから泣いたの人に知られたくなかったから目をたくさんこすって『目にゴミが入ったから赤い』ってことにしようって決めた。

『ふくめんの人』とのお勉強の時間が終わって、家以外のボクが遊んでいい『B区画』っていうところでおじさんがくれた『ちょうごうきんロボット』を組み立てて遊んでいたら・・・

「やあ、大作君。久しぶりだね元気にしていたかね?」

「セルバンテスのおじさん!」

『たんとうしゃ』さんの交代じゃなかったけど1ヶ月ぶりにおじさんがボクに会いに来てくれたんだ。うん、おじさんボクは元気だよ、風邪だってひいてないんだから。

「うん?そうかい?」

おじさん?どうしたの?目が赤いのはゴミが入ったんだ、本当だよ。
ゴーグル取ってボクの顔をしげしげとのぞきこむんだ、あんまし見ないでよ・・・。

それからおじさんはお仕事先で買って食べたら美味しかったからってお土産の「おさかなの形をしたお菓子」をくれた。おじさん知らないの?これ「タイヤキ」って言うんだよ。ボクお父さんに買ってもらって食べたことあるもん。

「え?そうなのかね?へぇ~タイヤキねぇ・・・ふむ」

おじさんってボクに勉強教えてくれたりいろんなこといっぱい知ってるのに、ときどきボクでも知ってること知らないんだ。面白いよね。そういえばカラアゲ弁当だってボクが教えてあげたんだっけ。

「ふふふ、そうだね」

ボクとおじさんは2人ならんでタイヤキを食べてた。
そしたらおじさんが突然こう言ったんだ。

「大作君、私は明日からお仕事が休みでね・・・おとうさんが帰ってくるまで私の家にお泊りしないかね?」











ボクはビックリした。

だっておじさんのお家ってすっごくすっごく大きくって・・・テレビでしか見たことが無いような「世界のお金もちの家」って感じのお家だったんだ。それに庭が広すぎて玄関まで車で行くんだよ?ボクこんなところはじめてだよ。

中に入ると天井が高くってキラキラ光ってる照明で、あちこちツボとか絵とか・・・なんだかボク目がチカチカしてきた・・・。家じゃないよ、もうお城だよここ。

「彼は私の大切なお客様だから、粗相の無いようにしてくれたまえ」

「かしこまりました旦那様」

おじさんが「めしつかい」って呼ぶたくさんの人たちがズラーって並んで頭下げて出迎えてくれた。ボクは「ふくめんの人」には慣れてるけど・・・きんちょうするなぁ。でもおじさんはやっぱりなれてるのかな、まるで誰もいないように普通にふるまってる。

「え、おじさんのお家ってここだけじゃないの?」

「そうだよ、あと30箇所はあったかな?別荘はうーんこの前カナダで購入したのを入れるといくつだっけかなぁ・・・125?いや126?」

ボク・・・ポカーンってしちゃった。
おじさん本当にすっごいお金もちだったんだ・・・。

廊下にあったキンキラにかがやいてる外国のヨロイをながめてたらおじさんが側に来て「欲しかったらあげるよ」って言うんだ。うーん・・・これってかっこいいけどボクの部屋にあったらちょっとこわいかも。

「いらないのかい?全部金だよこれ」

「キラキラしてるのはかっこいいけど・・・これ側にあったらきんちょうして寝れないよぜったい、やっぱりいいやボク」

「ははははは!」

おじさん楽しそうに笑いながらふっかふっかのソファに座ってボクを手まねきして横にすわらせてくれた。

おじさんがパチンって指を鳴らしたら山もりいっぱいのくだものが運ばれて目の前のテーブルに並べられていく。うわぁ・・・すごい!メロンだよメロン。特別な時にしかボク食べたこと無いやつだ。でも・・・メロンもすごいけどおじさんがパチンって指鳴らすのもすごいって思っちゃった。だってボクあれできないもん。

「さあ、大作君好きなだけ召し上が・・・ん?指?」

「うん、おじさんはパチン!ってできるんだ!すっごいね、テレビのドラマで見たことがあるんだよ男の人がパチンって鳴らすとシューてお酒がすべって出てくるの」

ボクは運ばれてきたくだものそっちのけでおじさんに指の鳴らし方聞いてみた。
パチンって鳴らせるのってぜったいかっこいいよね。

「大作君は実に面白い」

「?」

自分でやってみても鳴らなくって頭ひねってたらおじさんまじめな顔して急に言うんだ。そうかな、ボクはおじさんの方が面白いって思うんだけどなぁ。

それから2人でメロンと・・・黄色いフルーツ食べて(後でおじさんに聞いたらまんごーてやつなんだって)せっかく広い庭があるからキャッチボールやろう!っておじさんに言ったら・・・。

「やったことないの?」

「ははは・・・」

ボールとグローブはおじさんがまたパチン!ってするとすぐに用意されたんだけど、おじさんキャッチボールってやたことないんだ・・・。
ボクはお父さんとキャッチボールやったことあるよ。最近は・・・お父さんいそがしくってぜんぜんやってないんだけど・・・。ここに来る前はお父さんがお仕事お休みの日に「かせんしき」ってところでよくやってた。

「おじさんはおじさんのお父さんとキャッチボールやらなかったの?」

「・・・・ああ」

ふうん、おじさんのお父さんもお仕事がいそがしかったのかな?
ボクはグローブはめて思いっきりおじさんにボールを投げた。ちょっとそれちゃったけどおじさん上手くキャッチしてくれたんだ。そしてボクが受け止めやすいようにおじさんが投げてくれたボールを受け止めて、またボクがおじさんに投げてあげる。

うん、ただこれを繰りかえすだけなんだよね

でもボクたちは日が暮れるまでむちゅうになってキャッチボールやったんだ。





夕ご飯はぶあつーいステーキで、ボクはナイフなんかお父さんにレストランに連れて行ってもらった時に一度使っただけだから上手にお肉切れないけど・・・向かい側にすわってるおじさん、上手にナイフでお肉を切ってる・・・。

「大作君、おじさんがお肉を切ってあげようか?」

おじさんにお肉切ってもらっちゃった。

「指も鳴らせるしボール投げるのも受け取るのもうまいし、お肉も上手に切れるなんて、おじさんてやっぱりすごいね」

「ん?・・・ふふふ、そうかい?大作君が言うのだからきっとすごいのかもしれないね」

ボクはおじさんとたくさんおしゃべりしながらごちそうをお腹いっぱい食べた。「じゃあ次は食後のデザートだ」っておじさんが指を鳴らしたらアイスクリームが出てきて・・・アイスクリームっておやつじゃないの?って言ったらまた、おじさん楽しそうに笑ったんだ。




ご飯を食べた後にめしつかいの人に案内されてお風呂に入った。もうさ、お風呂じゃなくってこれプールだよね。だって学校のプールより大きいんだもん。だからボク・・・泳いじゃった。明日はおじさんのゴーグル借りてもぐってみようかな。

お風呂から上がったら真っ白なパジャマが用意されててふかふかだからすっごく気持ちいいんだ。頭をタオルでふきながらまためしつかいの人に案内されておじさんがいる部屋に入った。

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

てんじょうが高くってすごく広い部屋にひとり

おじさんがボクに背中向ける形でソファにすわってた

背が高くって大きいおじさんなのに、なんでか背中が小さく見えてボクは・・・

声を掛けられなかった。



「ん?・・・やあ大作君、迷子にならずよくここに来れたね、ふふふお風呂はどうだったかね?溺れないかと心配していたんだよ」

おじさんボクに気づいて振り向いてニヤーって笑うんだ。もう!ばかにしないでよね。でも・・・すっごく広い家だからめしつかいの人がいなかったらぜったい迷子になったと思う・・・ないしょだけど。お風呂は・・・学校のプールでいっぺんおぼれかけたことあるけどお風呂じゃおぼれなかったもんね。

「さあ、それじゃあそろそろ寝ようか」

手に持ってた・・・お酒かな、赤いのが入ってるグラスを置いてボクの頭をタオルでゴシゴシふいてくれた。となりが寝室でボク一人で寝るには大きすぎるベッドがあって・・・

「大作君、ひとりで寝れるかい?」

「だ、大丈夫だよ!」

「ふふ、頼もしいね、じゃあおやすみ」

「うん・・・おやすみ・・・」

でも

おじさんが明かりを消して部屋から出て行こうとしたら、なんだか急に怖くなったんだ
ボクひとりになっちゃうって・・・
そう思ったら胸がドキーって・・・痛くなって・・・


「お・・・おじさん!」

「なんだい大作君」

「あの・・・さ。ボクが寝るまでなんかお話して欲しいんだけど」

「ん?ああ、いいとも」

おじさんはあのクフィーヤっていう白い布を初めてボクの前で脱いだ。
そしてボクの隣に寝っころがっていろいろお話してくれた。
そのほとんどが遠い「いこく」のお話で空を飛ぶじゅうたんの話とか願い事がかなうランプとか・・・本当にあったことなのかどうなのかわからないけどとてもワクワクするんだ。四つ目のお話が終わって・・・ボクはおじさんにちょっときいてみた。

「おじさんの家族の人ってどこに住んでるの?」

だってここの家にいなかったもん。お父さんとかお母さんとか、兄弟の人とか。
こんなに広い家なのにめしつかいの人と・・・おじさんひとりだけだもん。

「・・・・・・・・・・・・」

おじさん、固まっちゃった。聞いちゃいけなかったのかなぁ。
どうしようなんだか気まずいや。

「ふふ・・・・・・遠い、とっても遠いところに・・・・住んでいるんだよ」

ふうん、じゃあ・・・おじさん、さみしいでしょ?
って聞いたらおじさんちょっと笑って

「そんなことはないさ、私にはちゃんと友達がいるからね」





それにボクもいるじゃないかって・・・

おじさんニッコリ笑って頭を撫でてくれた。

大きな手だけど、その時は本当に「大きいな」って思った。






次の日もおじさんとキャッチボールして
夕ご飯はおっきなお魚で、おじさんに骨をきれいにとるのを教えてもらって
お風呂に入る時はおじさんのゴーグル借りてもぐって
ぬれた頭をおじさんにタオルでゴシゴシしてもらって
おじさんの「いこく」のお話を聞きながらボクはまた眠った。



そうして四日間のおじさんの家のお泊りが終わって、お父さんが帰ってきてくれた。
お父さんのお土産はしっぽまでアンコが入った「タイヤキ」だったんだよ。
まだちょっとだけあったかいそれをお父さんと2人で食べてたら

「大作、お父さんがいない間ひとりで大丈夫だったか?」


「うん!」



ボクはもう、ひとりで寝るのが怖く無くなったから胸をはってうなずいたんだ。











END






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