誰もサニーにそれを告げなかった。
サニーも何ひとつ尋ねなかった。
その時を見ていた訳ではない。それでも分かったのだ―――
日の光が眩しくて、サニーは俯いた。
足元の草原に咲く花もどこかで歌う小鳥の声にも、何も感じない。
晴れ渡る空を吹く穏やかな風も―――全てが遠いもののように感じられるのだった。
覚束ない足取りで木陰に辿り着き、ぼんやりと佇む。
どれぐらいそうしていたのか分からない。
「サニー」
深くて静かな声がした。
「おじ様」
振り返ったサニーは樊瑞の表情を見て、上手く笑うのに失敗したと悟る。
「…泣いていたのか」
「いいえ」
サニーは顔を上げた。
「泣いてはおりませんわ、おじ様」
だからそんな傷ましいものを見る目でみられるのは辛い、とサニーは思う。
「そうか…」
「はい」
悲しいのだろうか。悲しむべきなのだろうかとサニーは躊躇う。
―――父は笑っていたのに?
「サニー」
「何でしょう、おじ様」
サニーには自分が今どんな顔をしているのかが分からない。
「…良いのだぞ」
樊瑞は見詰めるサニーの前で片膝をついた。
「儂の前では―――泣いても良いのだぞ」
大きくて温かい手が頬に触れ、その余りの変わりなさにサニーは思わず微笑んでいた。
「サニー」
ゆっくりと抱き締められて、サニーは目を見開いた。少し息苦しい程の力。拒むでもなく、応えるでもなく、立ち尽くしながら肩越しの空を見詰める。綺麗だと思った―――他人事のように。
「…泣きません」
声は震えなかった。
「…そうか」
「はい」
この人は優しい。この広い胸は温かくて、まるで―――
思いがけない唐突さで、サニーの視界が滲んだ。
ああ、と樊瑞は溜息をつく。
「悲しい…空だな」
サニーは答えなかった。
晴れ渡る空に吹く穏やかな風。それのどこが悲しいのだろうか。
そう思うのに涙が零れるのがなぜなのか、それだけが分からなかった。
サニーも何ひとつ尋ねなかった。
その時を見ていた訳ではない。それでも分かったのだ―――
日の光が眩しくて、サニーは俯いた。
足元の草原に咲く花もどこかで歌う小鳥の声にも、何も感じない。
晴れ渡る空を吹く穏やかな風も―――全てが遠いもののように感じられるのだった。
覚束ない足取りで木陰に辿り着き、ぼんやりと佇む。
どれぐらいそうしていたのか分からない。
「サニー」
深くて静かな声がした。
「おじ様」
振り返ったサニーは樊瑞の表情を見て、上手く笑うのに失敗したと悟る。
「…泣いていたのか」
「いいえ」
サニーは顔を上げた。
「泣いてはおりませんわ、おじ様」
だからそんな傷ましいものを見る目でみられるのは辛い、とサニーは思う。
「そうか…」
「はい」
悲しいのだろうか。悲しむべきなのだろうかとサニーは躊躇う。
―――父は笑っていたのに?
「サニー」
「何でしょう、おじ様」
サニーには自分が今どんな顔をしているのかが分からない。
「…良いのだぞ」
樊瑞は見詰めるサニーの前で片膝をついた。
「儂の前では―――泣いても良いのだぞ」
大きくて温かい手が頬に触れ、その余りの変わりなさにサニーは思わず微笑んでいた。
「サニー」
ゆっくりと抱き締められて、サニーは目を見開いた。少し息苦しい程の力。拒むでもなく、応えるでもなく、立ち尽くしながら肩越しの空を見詰める。綺麗だと思った―――他人事のように。
「…泣きません」
声は震えなかった。
「…そうか」
「はい」
この人は優しい。この広い胸は温かくて、まるで―――
思いがけない唐突さで、サニーの視界が滲んだ。
ああ、と樊瑞は溜息をつく。
「悲しい…空だな」
サニーは答えなかった。
晴れ渡る空に吹く穏やかな風。それのどこが悲しいのだろうか。
そう思うのに涙が零れるのがなぜなのか、それだけが分からなかった。
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