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アルベルトの不在を狙うように、時折セルバンテスは彼の屋敷を訪ねる。
目当ては無論、盟友の娘であるサニーとの他愛なく罪のない会話と、彼女手ずから淹れる紅茶。
しかし、訪問を知った際のアルベルトが見せる、この上ない不愉快をいかにも我慢している表情が楽しいからこそ、こうして通ってしまうのだとセルバンテスは思う。
あの男を限界まで苛立たせるのは、とても楽しい。
怒りを踏み越える一線を探っていく駆け引きはまるで恋にも似て、上等のスーツとクフィーヤをいくつ衝撃波に晒しても惜しいとは思えなかった。
駆け引きをすること自体、いつでも恋に似ている。
そういう意味ではアルベルトに恋をしているかもしれない、とセルバンテスは思う。
「あら、では国際警察機構とBF団の構成そのものはよく似ているんですのね」
昨晩捕らえられた女エキスパート銀鈴の話をちらりと聞かされ、サニーは言った。
清潔な白いテーブルクロスにマイセンの可憐な花模様のティーカップ、注がれた琥珀色の紅茶。乳白色をした大理石のバルコニーには木々の緑と薔薇の色が映える。
こんな美しい世界の中でなら、夕日が沈みきる直前の色を映したようなグラデーションの彼女の服はもう少し軽やかで華やかなものでもいいはずだとセルバンテスは思った。
アルベルトは嫌がるだろうが、今度来る時にはふわふわで淡い色ののワンピースを買ってきてあげよう。
「…我々と国警と、何が違うかわかるかい?サニー」
「…目的でしょうか?」
一生懸命に考える素振りで、不思議そうにセルバンテスを見つめ返す瞳の色は澄んでいる。
ジャイアントロボを連れ去った大作くんも、こんな目をしていたなとセルバンテスはふと思った。
周囲の大人を、父親を、無条件に信じる目。
愚かな子供は、同じように愚かなままの大人に振り回されざるを得ない。
それが幸か不幸かは別として。
「我々は奴らと違って、欲深なのさ」
あと金があるか無いかかなあ、とセルバンテスは笑った。
「…欲深い、のですか?」
ぱちぱちと瞬きをして、少女はセルバンテスを見つめ返す。
富も名声も、何もかもを手にしたような目の前の人は、まだ何か求めるものがあるのかしら?
サニーは頬に人差し指をあてて首を傾げた。
その様子にセルバンテスは小さく笑う。
「そう、だからこそ君がここにいるわけだ」
国警のエキスパートの娘として生まれたならば、我々BF団の手の及ばぬ場所で安全に、大切に、かつ国警とはほぼ無関係に、普通の子供として育てられたはずだ。
だが、サニーはどうだ。
盟友たるアルベルトは彼女を手放さぬ代償に親子の縁を切った。傍に置きたいがために、彼女の親であることを放棄したのだ。
矛盾しているように見えて、自己中心的な行動原理は潔いほど一貫しているのが我が盟友の素晴らしいところであり、そうまでしても彼女に父上と呼ぶ事を許してしまう甘さこそが愛すべきところでもある、とセルバンテスは思う。
「…よく、わかりませんわ」
困ったように笑う少女は、幸せに育った子供の顔でしかない。
「それでいいのさ」
それが無知から来るものだとしても、疑問の余地無く幸せならば他はさしたる問題でもあるまい。
セルバンテスはにやりと笑った。
「明日から私は欧州へ行くんだよ。お土産は何がいいかな、サニー」
今日の紅茶のお礼にねとセルバンテスが言い足すと、「では、甘いお菓子を」とサニーは笑った。



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