グスグスと泣きべそをかきながら歩いていたサニーの前に現われたのは、ちょうど任務を終えて戻ってきた幽鬼だった。
「おや、お嬢ちゃん。なにを泣いているのかな」
サニーは少ししゃくりながら、事の次第を話す。
「どれ、ちょっと見せてごらん」
幽鬼は差し出されたお人形をしばらく弄繰り回していたが、そこは手先の器用な彼のこと、お人形の手と足を元通りにしてやった。
「ほら直った」
「…でも…」
サニーはお人形が話さなくなったのは、レッドがお人形を死なせてしまったからと考えているらしい。
「ふむ…」
ややあってから幽鬼はしゃがみこんでサニーに目線を合わせて言った。
「お嬢ちゃん、どうやら十常侍はお人形に命を吹き込むのを忘れたようだ…きっと忙しかったんだろうな」
「ほんとう?」
「ああ、あとで十常侍に聞いてみるといい」
サニーはようやく笑顔になった。
「ありがとうございます幽鬼さま」
サニーが去ったあと、幽鬼は少し考えていたがレッドを探すべく中庭へと向かった。
厄介事はあまり好きではないが、フェミニストの彼としてはいたいけな少女を泣かせるような男は許せない。
「おいレッド」
「なんだ幽鬼か」
いつものように薄笑いを浮かべているが、レッドの心中にかすかな動揺があることを幽鬼は見逃さない。
「貴様、お嬢ちゃんを泣かせただろう」
「さてなんのことかな」
「さっきひどく泣きながら歩いていたぞ」
とぼけてみせたが幽鬼の言葉に引っかかり、一瞬たじろいだ。
「フ、フン。私の知ったことではない」
「たったひとり、心を許せる人形を壊されてしまったのだ、さぞかし悲しんでいることだろうな」
レッドの心にくないが刺さる。
さらに幽鬼は追い討ちをかけた。
「お嬢ちゃんを悲しませたとあっては、十常侍、樊瑞は元より、眩惑や衝撃も黙ってはいないだろうな…おっと白昼の、もか」
いつまでも幽鬼と話していては分が悪いと感じたのか、レッドは素早く姿を消した。
数日後のこと。
樊瑞の執務室がノックされた。
あいにく樊瑞がいないため代わりにサニーが出、ノックの主を見て表情をこわばらせた。
レッドが立っている。
レッドは黙ったままで、愛らしい日本人形を突き出した。
おずおずとサニーが受け取る。
「フン」
「おや、お嬢ちゃん。なにを泣いているのかな」
サニーは少ししゃくりながら、事の次第を話す。
「どれ、ちょっと見せてごらん」
幽鬼は差し出されたお人形をしばらく弄繰り回していたが、そこは手先の器用な彼のこと、お人形の手と足を元通りにしてやった。
「ほら直った」
「…でも…」
サニーはお人形が話さなくなったのは、レッドがお人形を死なせてしまったからと考えているらしい。
「ふむ…」
ややあってから幽鬼はしゃがみこんでサニーに目線を合わせて言った。
「お嬢ちゃん、どうやら十常侍はお人形に命を吹き込むのを忘れたようだ…きっと忙しかったんだろうな」
「ほんとう?」
「ああ、あとで十常侍に聞いてみるといい」
サニーはようやく笑顔になった。
「ありがとうございます幽鬼さま」
サニーが去ったあと、幽鬼は少し考えていたがレッドを探すべく中庭へと向かった。
厄介事はあまり好きではないが、フェミニストの彼としてはいたいけな少女を泣かせるような男は許せない。
「おいレッド」
「なんだ幽鬼か」
いつものように薄笑いを浮かべているが、レッドの心中にかすかな動揺があることを幽鬼は見逃さない。
「貴様、お嬢ちゃんを泣かせただろう」
「さてなんのことかな」
「さっきひどく泣きながら歩いていたぞ」
とぼけてみせたが幽鬼の言葉に引っかかり、一瞬たじろいだ。
「フ、フン。私の知ったことではない」
「たったひとり、心を許せる人形を壊されてしまったのだ、さぞかし悲しんでいることだろうな」
レッドの心にくないが刺さる。
さらに幽鬼は追い討ちをかけた。
「お嬢ちゃんを悲しませたとあっては、十常侍、樊瑞は元より、眩惑や衝撃も黙ってはいないだろうな…おっと白昼の、もか」
いつまでも幽鬼と話していては分が悪いと感じたのか、レッドは素早く姿を消した。
数日後のこと。
樊瑞の執務室がノックされた。
あいにく樊瑞がいないため代わりにサニーが出、ノックの主を見て表情をこわばらせた。
レッドが立っている。
レッドは黙ったままで、愛らしい日本人形を突き出した。
おずおずとサニーが受け取る。
「フン」
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