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うろほろぞ
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「自宅療養中にしては真面目に摂生しているみたいね。元気そうじゃない」
何度もしつこく鳴る煩いチャイムの音に眠りを妨げられ玄関まで歩いていくと、ガラスの張られたドアの向こうにはパラメディックがいた。俺は邪魔な松葉杖を壁に立てかけ、ドアを開けて彼女を部屋へと入れた。
「うんうん、顔色もいいし、食事もきちんと摂っているみたいね」
笑顔を見せながら手を伸ばし、俺の頬を撫でて触診する。医者のする事なのでそのままやりたいようにやらせていたが、頭を撫でられ結局腹が立って振り払う事になった。子供扱いされたようで気に入らない。
「何しに来たんだ。怪我ならもうすぐ治りそうだし、医者の出番はそろそろ終わりだぞ?」
学会の予定が重なっていたとはいえ入院中もろくに顔を見せなかったつれない主治医には嫌味のひとつでも言ってやりたくなる。苛立ちながらさっきまで寝ていたソファーに腰を下ろし、よくよく彼女の格好を見て驚いた。
「……珍しい格好だな」
「年甲斐もなくって、思ってる?」
グレーの地に大きな緑のグラデーションカラーの花の模様が散ったワンピースの裾は短く、柔らかそうなシフォン生地の奥には小さな膝頭と弾力のありそうな太ももが惜しげもなく覗いていた。
「いや、似合ってるさ。いつものパッとしない服よりよっぽどいい」
「……それは褒められているのか微妙な感想ね」
俺の気が利かない言葉にふくれながら裾をくしゃりと握った。座っている俺の視線は目の前にある肉感的な太ももにいとも容易く釘付けになってしまう。
「何しに来たか、知りたい?」
言いながら俺の首にするりと腕を絡め、コーラルピンクで艶やかに染められた形のいい唇が俺のそれへと重なった。唇を割って入ってきた柔らかい舌が俺の口腔をじっくりと犯していく。清楚な外見には似つかわしくない大胆で淫靡なキスに鼓動が高鳴り、少し気が遠くなる気がした。
「先週に予約入れてた診察をすっぽかしたから、出張で様子を見に来てくれてんだと勝手に思っていたんだが……」
「それもあるけど……あの約束、忘れたの?」
言いながら唾液で濡れた唇を手の甲で軽く拭う仕草がやけにいやらしく感じた。俺は記憶を辿り、ある事を思い出して頭を抱えた。
「あれはそのままの意味で言ったんだがな」
「慰めてくれるんでしょう?」
スネークとEVAの再会後、微妙な空気を纏うようになった彼女に俺は確かに「泣きたい気分なら胸ぐらい貸すぞ」とは言ったが……。
「忘れさせてよ、好きにしていいから……ダメ?」
こういう女の口説き文句に何回俺は引っかかるんだろう。罠だと知りつつも好んではまってしまう自分を恨みつつ、俺は彼女の手を取った。


「ね、気持ちいい?」
気持ちよくないわけがない。彼女の上下に動く手の中で硬くそそり起っているそれは、もう既に限界を感じ始めていた。細い指が先端のふくらみと窪みへ滑り、俺を愛撫する。
「……いつまであんたは服着てるつもりなんだ、そろそろ脱げよ」
俺だけが下半身を剥かれ弄ばれているのはやっぱり面白くない。ワンピースの裾から手を入れ太ももの外側から尻を触ると、そこはしっかりと張りがあって滑らかだった。
「や……だめよ、擽ったいじゃない」
諌めるにしては甘い声を出して身をよじる。触られると弱い場所なのかもしれない。俺は調子に乗って下着の裾からさらに奥へと指を進めた。
「んっ……あっ……」
そこは既にびっしょりと濡れていた。キスと軽い触りあいしかしていないのにこんな状態になっている事を考えると、やけに興奮してしまう。
「もうっ……やめてったら……」
指の腹でふっくらと充血した入り口をなぞると、彼女は俺から逃れるようにソファーのクッションへと倒れこんだ。力が抜けて開いた脚の間から白いレースの下着がちらりと見え、余計に扇情的な眺めになってしまっている。
「脚、上げろよ」
俺に言われるまま脚を上げる。白いレースの下着を脱がせて左右に大きく開かせると、彼女は恥ずかしそうに片手で顔を覆った。
もう我慢ができなかった。深さもあり気持ちが良さそうなそこに硬くなったものを押し入れると、驚くほどスムーズに滑り込んでいった。
若干狭いと感じるものの柔らかく熱い。中をかき回すように動くと、彼女の腰も俺の動きに合わせて吸い付くように蠢く。すぐにでも達してしまいそうな快感に、俺は呻いた。
「ね……構わないからそのまま、出して」
火照った顔で俺を見上げ、甘い言葉を囁く。挿入してからまだいくらも経っていないというのに、俺は言われるまま彼女の中で達した。
「あなたって意外と素直なのね、可愛い……」
満足そうな笑顔で言って。外見に似つかわしくない貪るようなキスをする。濡れた舌が俺の唇を撫で、俺の舌を彼女の中へと誘った。
どくどくと脈打つ俺を彼女の粘膜が断続的に締め付け、再び高めさせようとする。感じやすい両方の粘膜を同時に弄ばれ、俺は二度目の快楽に身を任せる事にした。

ワンピースと下着を脱がせると、白くて大きな乳房が目の前に現れた。弾力があり、つんと上向きに張っている。
「見てるだけ?……触らないの?」
悪戯っぽい笑みを見せ、俺の手を取って誘う。そのまま手を這わせると俺の手で覆っても少し覆いきれないくらいの十分な質量があった。心地よさにたまらず顔を埋めると微かな香水の香りが鼻腔を擽った。
充血してふっくらと起っている先端に舌を這わせる。それだけで過敏に反応する彼女を困らせたくなり、俺はそこを重点的に愛撫する事にした。
おざなりになっているもう片方のそこを指で転がし嬲りながら夢中で吸い付くと、彼女の唇から焦れるような声が漏れた。
「あ、そこ……ダメ…っ…」
顔を見上げると伏せられた目は潤んでいた。見られている事に気付いたのか恥ずかしそうに俺から視線を外し、瞼を閉じる。
羞恥心に苛まれている彼女の姿は、俺を興奮させるには十分すぎた。滑らかなストッキングで包まれたままの脚を左右に開かせ、俺は二度目の挿入を試みた。
しっとりと濡れそぼったそこに押入れるとコーラルピンクの唇から鼻にかかったような声が漏れたが、俺は構わず突き上げた。
先ほどよりも乱暴に扱っているのに、彼女は悦んでさえいる様子だった。俺の名を時折呼びながら小さな手で俺の二の腕を掴み、胸に顔を埋める。
恥らっているようなその素振りとは裏腹に、俺の腰へと脚を絡める。より深くなった結合に俺は身震いした。
「ねえ……もう、私……っ」
「……まだ早いだろ、先生」
抱きつかれ軽く爪を立てられた背中の痛みが今まで眠っていた嗜虐心を呼び覚ましたようだった。小刻みに震える脚の位置がずれ、履いたままのパンプスのヒールがひやりと俺の尻へと触れた。

こんな事なら、勢いでも構わないから適当な理由をつけてあの時に手をつけておくべきだったのかもしれない。あの頃好んで持ち歩いていた雑誌のグラビアガールより、よっぽど魅力的だ。
試してみたのはこれが初めてだったが、口での奉仕の快楽はなかなかのものだった。
俺の起ちあがったそれに丁寧に舌を這わせ、時折俺の様子を見る彼女の姿は可愛らしく思えた。手を使っての愛撫と違い刺激は少ないが、扇情的な奉仕中の光景に、俺は心を躍らせた。
「なんでも飲み込みが早いんだな、先生は……さっき教えたばかりだってのに」
素直すぎる態度に、つい辱めるような事を言ってしまった。パラメディックは言葉を聞いてちらりと俺の様子を伺うように見たが、特に気にする風でもなくそのまま奉仕を続けた。
深く飲み込むと、座っている俺の膝に彼女の胸が押し付けられ、そのまま柔らかく形を変えた。本当に下らない事だが、怪我を負ったばかりのせいで足の感覚がいまいち鈍いのが悔やまれた。本来なら暖かい彼女の体温が伝わってくるはずだ。
「要領の悪い女の方が好みなの?」
俺が教えた事を応用し、咥え込んだままじっくりと吸い上げるようにして根元から先端へと唇を滑らせ、辿りついた場所を舌先でねぶりながら訊く。生意気な口を利く気力はすでに失われていた。
「強いて言えばどちらも好み、かな……」
溜息を吐くように力ない声しか出せない。何度も乱暴に扱ったせいでくしゃくしゃに乱れてしまった赤い髪を手で梳いてやると、彼女は俺自身から手を放し、気持ち良さそうにふっと吐息を漏らした。
そのまま指の甲で柔らかい頬を撫でると、目を閉じた。まるで猫が主人に懐いているようで、つい口元がにやけてしまう。
「それは良かったわ」
どこか恍惚とした顔のまま立ち上がり、俺の肩に両手をついてそのまま体重をかけた。自然とソファーに組み敷かれる体勢になる。
「怪我、つらいでしょう?……まかせて」
俺の体に跨り、治りかけの胸の傷跡にキスをした。彼女の配慮にまかせ、俺は眼を閉じて全身から力を抜いた。
目を閉じると嫌でも他の感覚が研ぎ澄まされる。硬くなったそこに彼女が触れ、導かれて暖かい場所へ辿りつくまでの感触は今までの経験と比べても生々しい感覚として俺の中に残った。
目を開けると、動かない俺の上でゆっくりと揺れる女のシルエットが映った。蠢く腰に手を沿え、滑らかな曲線を描くボディーラインを辿ると微かな嬌声が部屋に響いた。
もう夕暮れだ。レースのカーテンで遮られた柔らかい日差しも夕闇に飲まれつつある。薄暗い部屋のせいなのかはよく分からないが、彼女の行動は次第に大胆になっていった。
唇を引き結び殺していた声を開放し、体を動かして繋がったままのそれを自らの体から引き抜き、腰を落として再び中へと誘う。
普段は冷静な彼女の乱れた息遣いを聞きながら、俺は幾度目かの絶頂を迎えた。

考えてみれば女と一緒にシャワーを浴びるのも久しぶりだった。何度も抱き合ってすっかり汚れた体を清め、濡れたままシーツの間に潜り込むと、パラメディックは俺の髪をくしゃくしゃと撫でた。
「おい、やめろよ」
「短い髪もなかなか似合うわね。玄関で見たとき、見違えちゃった」
コロンビアでの監禁生活で伸びきっていた髪と髭は、退院した後すぐに整えた。彼女に見せるのは確かに今日が初めてだった。
「休暇中とはいえ、いつまでもだらしない格好だと女性にも呆れられそうだしな」
「休暇中なら、きちんと通院しなさい」
検査と診察をサボった事を思い出したようだ。俺は内心、舌打ちした。
「明日の昼過ぎに予約を入れておくわ。必ず来るように」
「了解」
どうせ買い物に行こうと思っていた。ついでに寄ればいいだろう。返事をして抱き寄せると彼女のうなじからシャワーの後に使ったタルカムパウダーの柔らかい香りがして、なんとも言いがたい満足感が俺の体を満たしていった。
昼間あんなに眠ったのに急に睡魔が襲ってきた。うとうとし始めた俺の髪に彼女がキス落としてくれた気もするが、確かではない。
目覚めると横に彼女はいなかった。

コロンビアで囚われて尋問を受けていた最中、考えていた事はいくつもある。
私的で本当に下らない望みだが、生きて帰れたら好みの女と飽きるほどしようと思っていた事もあった。
神はどこかにいるのかもしれない。一応望みはかなったようだ。
買い物を終えて病院に着いたのは12時すぎだった。大きな総合病院なのでどこに行けばいいのかいつも迷ってしまう。
館内図を見て辿りつくとすぐに看護婦が俺の名を呼んでくれた。通された診察室には見慣れた姿があった。
「こんにちは、キャンベルさん」
「こんにちは、よろしくお願いします」
笑顔を見せてくれたが昨日とは随分態度が違う。冷ややかな視線をレントゲンに向け、俺の脚を触った。
「体の調子はどうですか?」
調子がいいか悪いかなんて、昨夜さんざん確かめたくせに。
「いいですよ。ただ少し、今日に限って体がだるい気がします。腰とか」
「……腎臓の検査結果も正常値なので問題ないと思いますよ。なにか無理でもしたんじゃないですか?不摂生はしないように十分気をつけて下さい」
僅かな沈黙がやけに痛い。彼女の冷静なコメントに、横で準備をしていた看護婦が噴出した。笑いたければ笑えばいいと思いつつも少し恥ずかしくなった。あんたが来いと言ったから来たんじゃないか。つれない態度が憎らしい。
「完治してますね。定期健診が必要なので次は二ヵ月後にでも来てください。忙しいお仕事でしょうから都合のいい時にでも予約を入れて下さい」
さらさらとカルテにペンを走らせ、メモに病院の連絡先番号を書いて俺に渡してくれた。どうやら診察予約を入れる時の番号のようだ。完治していると言われたのは嬉しいが、次に会えるのが二ヵ月後というのは寂しい。
「怪我をきれいに治す為のお薬も後で出しますから、毎日忘れないで飲んで下さいね」
笑顔で話す彼女に、俺は持ってきた書類を渡した。ぎりぎりで思い出してよかった。
「これ、保険と労災の申請に使うのでよろしくお願いします」
渡した書類に目を通し、彼女は頷いた。
「では早めにお渡しした方がいいですね。今日はもう時間がありませんけれど数日中に用意しましょう」
机の引き出しを開け、小さな紙にメモし、俺に手渡した。紙の正体は名刺だった。先ほどの番号とは違う番号が書かれている。
「私の自宅の番号です。病院にはいない事が多いので、書類を取りに来られる日が決まったらこちらに連絡をして下さい」
看護婦が診察室からいなくなったのを確認し、俺は小声で訊いてみた。
「先生、この番号は私事でも連絡してかまいませんか?」
「どうぞ。ただし時々兄が出ると思いますけれど、それでも宜しいですか?」
どうやら一人暮らしではないようだ。少し落胆しつつもそのまま胸ポケットにしまった。なくさないようにしなければ。
「ではまた後日」
「お大事に」
決まりきった挨拶を交わし受付で薬と領収書をもらって外に出ると、もう日が傾き始めていた。でかい病院の手続きは面倒で困る。
駐車場に停めていた車に乗り、貰った名刺を手にとって眺めた。しっかりと彼女の本名の書かれたそれが、今はやけに愛しく感じた。

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mmz
Leave only me rather than me.

 たった一度、作戦を共にしただけなのに。

 あれから彼とはちゃんと顔を合わせてはいない。
数度、建物内で遠くでその姿を見た事があるだけだ。いつしか自分の方から彼
の姿を追っていたのかもしれない。
 見掛ける度にどこか、自分が自分でなくなりそうな気がする程、不思議な感
覚になる。もちろん、人を好きになった事は初めてではない。今は仕事の方が
楽しくて特定の人はいないが、付き合った人もいる。
 その頃には無い感覚だった。

『ただの憧れ?』
 それが恋とも付かない不思議な感覚の始まり。





 誰しも遂行するのは困難だと思われた厳しいあの任務から無事に帰って来た
と聞いて、本当はすぐさまその胸に飛び込みたかった。その頃はまだ同じ部隊
の仲間としてだったが…
 だが、立場的にそういう訳には行かなかった。仕事をこなさなければならな
い。無事とは言え、命に別状はないとは言え、一生その目には光が戻る事はな
い程の重症だった。理由を問うても彼は答えようとはしなかった。頑に口を閉
ざす程、何か深い訳があるのだと思った。それ以上は深く追求する事は諦めた。

 初めて会ってから、何日も経たないのに自分の中ではその存在が止められな
い程に大きくなっていく。だが、彼の心には違う誰かがいる。作戦中に痛い程、

思い知らされた。自分など到底叶うはずの無い女性。
 その事に気付いてから、自分の気持ちを抑えるしかなかった。彼に取っては
ただの同僚にしか過ぎないのだ。





「パラメディック!」
 不意に聞き覚えのある声に呼び止められた。振り返るとそこにはゼロ少佐が
立っていた。
「あ、ゼロ少佐」
「新しい部署はどうだ?」
「ええ、何とかやっていますから安心して下さい。自分の資格も生かせるし、
やりがいもありますから」
「それは良かった」
 ゼロ少佐は現場にいる時とは打って変わって、柔らかい表情で微笑んでいた。
顔の大きな傷が似合わない程、紳士的でふっと全てを包み込まれる様な気がす
る。上司としてはこれ以上のない人だった。だが、もう彼は自分の上司ではな
い。元上司だ。

「それに……免許を賭ける必要もないし……」
 もぞもぞと言いにくそうにそうにする。自分でもあまりにも後先を考えず勢
いだけの行動が今となっては恥ずかしい。スネークを少しでもバックアップし
たいそれだけだった。
 「まあ……そのおかげで、スネークが無事に還って来る事が出来たんだから
あまり自分を責めなくてもいいと私は思うんだが……」





 今回の作戦でパラメディックは医師免許こそは剥奪されないまでも、スネー
クを救う為とは言え、その資格を賭けるというあまりにも感情的で計画性の無
い行動について、FOXにいるには相応しくないと他の部署へ移されたのだっ
た。だが、それは表向きの理由で、今後も今回の『スネークイーター作戦』の
様な極限を伴う任務に就く事もあろうFOXに彼女を置くには危険過ぎるとス
ネークはゼロ少佐に進言した。あまりにも唐突の事だったが、少なからず同じ
気持ちを抱いていたゼロ少佐は即彼女を異動させた。
 最初は頑として聞かなかったパラメディックだったが、最後にようやくスネ
ークが自分の身を案じて望んだ事だと説得して、その異動を飲んだのだった。
本当はスネークは自分がそう言った事は伏せて欲しいと頼んでいたのだ。

 彼女が自分に取っていらない存在だと勘ぐられたくなかった。本当は彼女が
大切だからこそ、自分から遠ざけたかった。今回の作戦が成功した事によって、
FOXにはこれから、ますます危険な任務が増えて来るだろう。彼女の様な純
粋な人間を置いておく事はしたくなかったのだ。彼女にはもっと相応しい場所
があるそう思うからこそ、ゼロ少佐に強く進言した。
 彼自身、何となくながらパラメディックのスネークに対する視線が変わった
事に気付いていた。日増しにその温度は上がって行く。
 だから、スネークが唐突に彼女の異動を申し出た際、それを驚きながらも飲
む事にした。同じ部隊での恋愛は良い結果を齎さない。いつしか、命を落とす
引き金になる。どこでもそうだ。FOXだから、という訳ではない。
 それなら一層の事、スネークから距離を置かせてやる方が彼女の為になると
ゼロ少佐は考えた。どちらに出ても、あのまま同じ部隊にいるよりはいい。ス
ネークの事を思い続けるにしても忘れるにしてもだ
mmc

男は空腹であった。
現任務中にサバイバルに目覚め、今や三大欲求の中で食欲にそのパワーのほとんどをつぎ込んでいる筋金入りの食欲魔人である男は、空腹であった。
最早生き物という生き物は彼の気配だけで姿を消し、植物までもが結託しているかの如く全く見あたらない。
先ほど哀れな蛙を一匹捕食したものの、彼の腹は満たされなかった。



最早最後の手段かと頭を抱えた彼の耳に響いたのはぴりりと鋭い電子音、そして空腹とは無縁そうな元気な女の声。






スネーク、どうしたの?さっきからずっとそこにいるみたいだけど

いや、腹が減ったんだが、食べるものがなくてな

レーションがあったじゃない。あれを食べたらどうかし

いやだ

即答したわね

一応、最後の手段としては、考えている。考えているが俺はこれを食べるくらいなら毒茸の方がましだ!

任務を優先しなさい!…そのあたりには鳥類が多いはずよ。しばらくじっとしていれば確認できるんじゃないかしら

それはありがたい情報だな

…………ねえスネーク、ちょっと聞いてもいいかしら

どうしたパラメディック。改まって。愛でも告白してみるのか?

あなたに告白しなきゃならないのは愛じゃなくて懺悔よ

何に対して!?

あなた、ザ・ボスのもとにいたのよね?

ああ、そうだが…?

どんなもの食べてたの

は?

だから、どんなもの食べてたのかって聞いてたのよ。ヘビだって美味しく食べちゃうあなただから、やっぱりカエルだってミミズだってアメンボだって食べてたの?

…パラメディック…俺はこの任務で初めて狩りをしたし、初めて食べたんだぞ、ナマモノ全般は。

えっそうなの!?

だから初めて聞く生き物の時は毎回君に聞いてるだろう。うま

美味いかって?

…そうだ

だってあまりにも慣れてるからてっきりザ・ボスの教育方針かと思ったわ

…まあ、それはないことは、ない

あっやっぱり山に一人放りこまれて一週間暮らせとか無人島に放り出されて一週間暮らせとかそういう

違う

何だつまらないのね

パラメディック、料理は得意か?

どうしたの急に。まあ、人並みには出来るわよ

ボスは、凄かった

す、凄い?

たまに、俺が訓練から帰って来たときに夕飯を作ってくれることがあった。が…あれは…

美味しかったの?

黒一色だったな

うわあ

それを食べて10数年生きてきたんだ、今更ナマモノくらいどうってことない。むしろ火が通っていないだけご馳走だろう

なんだか泣けてきたわ

笑いを堪えながら言わないでくれ

スネーク、あなたが無事帰ってきたら腕によりを奮ってご馳走するわね

…楽しみにしてるよ






焼き加減はミディアムでよろしいかしら?という楽しげな声と共に通信は途切れ、男は再び静寂に包まれた。脳裏に思い出されたあの食べ物未満の黒い物体。親代わりであった完璧であった女の唯一とも思える綻びを想い、彼は少しだけ微笑んだ。ああ、あれを食べて生きていたのだから、戦闘糧食の一つや二つどうだというのだ。



辺りは相変わらず生きる物の気配ひとつせず、途方に暮れたように男は空を見上げる。
そして、今すぐ少佐に連絡して、あのやかましい女医の料理の腕を確認すべきか否か、を考えた。

mm2
スネーク「パラメディック」
パラメディック「どうかしたの?スネーク」
スネーク「精子が噴き出してきた!」
パラメディック「なっ!ちょ・・・ちょっと何してるのよ!任務中よ!」
スネーク「おおおおおおお」
パラメディック「ちょっとスネーク、聞いてるの?」
スネーク「・・・ふぅ、どうやらおさまったみたいだ・・・ハァ・・」
パラメディック「スネーク、あなたもしかして任務中いつも・・・」
スネーク「ああ、そうだ。暇があればいつも性欲を持て余す」
パラメディック「呆れた。よくそんなんで任務が務まるわね。ただの変態よ」
スネーク「やらないか?」
パラメディック「スネーク、あなたの頭の中はそればっかなのね?」
スネーク「違う!それだけじゃない!」
パラメディック「他に何があるっていうの?」
スネーク「食べる事もだ!」
パラメディック「そんなこと知ってるわ」
スネーク「本能を満たして何が悪い。なにせ今回はこのジャングルでの単独潜入だ。いつもよりも性欲を持て余す」
パラメディック「あなたらしい言い分ね。本当に野生化しちゃったのかしら?」
スネーク「ああ、そうかもな。文字通り蛇になった気分だ」
パラメディック「いいわねそれ」
スネーク「何がだ?どうせまた「戦慄!妖怪蛇人間」なんて映画を見たんじゃないだろうな?」
パラメディック「そんな映画あるわけないでしょ?フフフ」
スネーク「そんな事よりパラメディック」
パラメディック「なによ」
スネーク「精子って飲めるか?」
パラメディック「ちょっとあんた馬鹿じゃないの?」
スネーク「馬鹿とはなんだ。俺は真剣に聞いてるんだ」
パラメディック「そんなもの資料には---」
スネーク「飲んだ事ないのか?」
パラメディック「はぁ?そんなもの飲むわけないでしょ」
スネーク「で、味は?」
パラメディック「だから飲んだことないって言ってるでしょ!」
スネーク「ハハッ、その歳でザーメンも飲んだ事ないとはな」
パラメディック「ザーメン??何の話よ?」
スネーク「いや、なんでもない。任務にもどる」
パラメディック「あ、ちょっと待ってスネーク」
スネーク「なんだ」
パラメディック「ザーメン・・・じゃなかった。ラーメンを見つけたら必ず持ち帰ってね」
スネーク「ラーメン?例の即席ラーメンか?」
パラメディック「そう。それそれ」
スネーク「それならついさっき食糧庫で見つけたな」
パラメディック「え?本当に?」
スネーク「ああ、だが食ってしまった。かなり美味かった」
パラメディック「あれだけ念を押したのにあなたって人は・・・見損なったわ」
スネーク「大丈夫だ。またどこかで見つかるさ。心配するな」
パラメディック「きっとよ」
スネーク「ああ。俺の可愛いパイナップル。お前にザーメン顔射してやるさ」
パラメディック「何か言った?」
スネーク「いや、なんでもない。任務にもどる」 ピッ!


スネーク「どころでパラメディック?」
パラメディック「また変なこと聞くんじゃないでしょうね?」
スネーク「いや、ここはどこだ?」
パラメディック「・・・あなた忘れたの?」
スネーク「ああ、オナニーのしすぎで記憶を失ってしまった。」
パラメディック「どこから?」
スネーク「そうだな・・確か・・ブリーフィングからだ。」
パラメディック「たく・・・しょうがないわね。ここは情報局よ。」
スネーク「情報局!?情報局は解体されたはずだ。」
パラメディック「確かに。6月末にね。yoshiの率いる武装集団が要塞として復活させたの。」
スネーク「で任務は?」
パラメディック「武装集団を全員始末し、ウイルスの撤去よ。」
スネーク「簡単に言うがこれは単身侵入なんだぞ!」
パラメディック「スネーク。これは任務なのよ。やるしかないの。」
スネーク「・・・・わかった。ただ一つ条件だ。」
パラメディック「条件?」
スネーク「君の体だ。」
パラメディック「スネーク、あなたの頭の中はそればっかなのね?」
スネーク「さっき見つけた。即席ラーメン・・・最後の一個だ。」
パラメディック「あ!?」
スネーク「どうする?」
パラメディック「・・・・・わかったわ・・・1回だけよ。」
スネーク「約束だぞ。」
パラメディック「こっちの約束もね。」
スネーク「ああ、わかってる。心配するな。」
パラメディック「きっとよ。」
スネーク「ああ。俺の可愛いパイナップル。お前にザーメン顔射してやるさ」
パラメディック「なにか言った?」
スネーク「いや、なんでもない。任務にもどる」 ピッ!

その時!向こうから人影が!

スネーク「性欲を持て余す!」

スネークはその謎の人物に飛び掛った。次回につづく
 シギントは会場を見回して溜め息をついた。

 新年パーティーに来ているほぼ全員がパートナーを連れていた。勿論シギントも恋人と一緒に参加するはずだったのだが、出かける直前に喧嘩をしてしまったのだ。
 「まぁ、怒るのも無理ないか、、、。」
 売り言葉に買い言葉で、一人で行ってやると出てきてはみたが、この席に一人きりはあまりに惨めだった。
 「さっさと帰って、膝をついて平謝りといくか、、、。」
 出口へ向かおうと踵を返したシギントはテーブルに並んだ数種類のグラスに目を留めた。
 「『ごめんなさい』の前に景気付けといくか、、、。」
 マティーニを手にとって、一口飲んだシギントは嬉しそうに頷く。
 「やあ、シギント。」
 振り返ると、男女4人が立っていた。ドレスアップした可愛らしい女性と、少し気の強そうな目をした女性、そしてタキシード姿の 2人は、職場で見かけたことがあった。
 「やぁ、、、ええっと、、、悪い。名前が出てこないんだけど、、、。」
 どうやら同僚らしい2人にあまり友好的な雰囲気を感じなかったシギントはなるべく表情を変えないよう心がけた。どうも、些細な事で突っかかってくるタイプに見えたのだ。
 「知らなくても仕方ないさ。俺たちは部署も違う。君は有名人だからね。」
 「、、、どうも。」
 先日の新設局への大抜擢を身内や親しい友人達は祝福してくれたが、若者の出世には妬みが付き物だ。そして自分の才能云々は棚に上げて、黒人の彼が自分より出世することが許せない白人は沢山いる。
 「それにしても、奇抜なファッションだな?」
 「まあね。流行の最先端ってとこさ。」
 「アフリカ流だろう?」
 「どうかな。俺はアフリカに行った事ないしね。」
 不快感を顔に出せば相手を喜ばせるだけなのは分かっていたので、シギントは軽い口調で答える。
 「、、、流行り好きはオー少佐譲りかい?」
 「少佐が流行り好きだなんて、初めて聞いたよ。」
 シギントの素直な疑問に同僚もどきはニヤリと笑い、シギントは聞き返したことを少し後悔した。ろくな答えではなさそうだ。
 「だって、そうだろう?黒人を後押ししてやるってのは最近の紳士のファッションなんだろう?」
 隣にいた女性が、男の袖を引っ張りながら「よしなさいよ」と眉間にしわを寄せた。
 馬鹿な男なのに連れはまともだ、とシギントは思う。
 「何かと大推薦なのは時代の先を行っているってアピールなのかと思うけど。良かったな、黒人で。」
 この男も気の毒な人間だが、それを見てニヤついているだけの片割れはもっと哀れだと、ため息が出そうになるのをシギントは何とか押さえ込む。
 「ほんと、ラッキーだよな。流行が廃れなきゃいいけど。まあ、せいぜい少佐に媚を売って捨てられないように、、、」
 「ちょっと良いかしら?」
 聞き慣れた張りのある声。シギントは声の主を見て微笑んだ。
 普段は清楚ではあるが、抑えた服装が常の彼女が、今日は抜群に美しかった。
 光沢のあるベージュのカクテルドレスにビーズで百合の花が刺繍された薄いストールを肩に掛けたパラメディックは彼らの間に割り込むように入ってきた。シギント同様、表情には表れていないが怒りのオーラが漂っている。
 「新年早々、人を妬む事しか出来ないなんて悲しい話ね。情けないわ。」
 「妬む?冗談だろう?俺はミスター・シギントに正装とはどんなものか教えていただけだよ。」
 「なーるほど。物って言い様なのね。その言い訳術を駆使すれば、仕事でどんなミスをしても切り抜けられそう。羨ましいわ。」
 男は黙り込んだ。悪態をつきたい所だが、恋人の手前プライドが許さないようだ。
 「彼に欠点が見付からないから、黒人がどうのって言うしかないのよね。もし彼の肌の色が欠点だなんて思っているのなら、あなた達が立ち直れなくなりそうな身体的欠点をここで披露しようかしら。私ね、健康診断書はきちんと目を通しているし、全部頭に入っているのよ。」
 「い、、、行こうぜ!」
 先ほどまでニヤついていた片割れがすっかり青ざめた顔でそう言うと、何か言い返そうと口を開きかけていた男と、女性たちを追い立てるようにしてその場を離れていった。
 「あなたって最低ね」とか「言われっぱなしでいいの?何か言いなさいよ!」とか、不機嫌な女性の声が遠のいていくのをシギントはポカンと見送っていたが、はっとしてパラメディックに向き直った。
 「よお、パラメディック。凄く似合ってるよ。」
 「、、、ありがとう、シギント。彼らの味方をする気は毛頭無いけれど、その格好はどうかと思うわ。」
 パラメディックは大げさにシギントの頭からつま先まで見回した。
 「ニューウェーブさ。21世紀あたりには流行ると思うぜ。」
 タキシードは辛うじて身に着けていたがシギントだったが、足にはスニーカー、更に頭にはヒューストン・オイラーズのキャップを被っていた。
 「随分先の話ね、、、。少佐が見たら、ショックで寝込みそうな格好よ。」
 「実は、、、出かけるって時にフォーマルな靴がどこにも見付からなくってね。タキシードは準備してたんだけど、、、。仕事で履いてる皮のブーツはボロボロで泥だらけ。仕方なくスニーカーを履いたら彼女が「そんな格好の男とは絶対に出かけない」ってかんかんに怒っちまってさ。」
 「それで、一人で来たわけ?彼女に会ってみたかったわ。そのキャップはシルクハットの代わり?」
 「ああ、スニーカーとバランスを取ろうかと思ったんだけど。」
 「大失敗みたいね、、、。それより、あなたって我慢強いのね。どうして怒らないの?」
 シギントはさあね、と肩をすくめて見せる。彼が子供の頃、白人に売られた喧嘩を買った近所の男がどうなったかとか、白人の女性に罵声を浴びせた母親の友人がその後どんな目に遭ったのかなど、彼女に言うつもりは無い。
 「怒ったり、腹を立てたりするのは好きな相手にするのさ。相手の為を思ってね。どうでもいい奴と言い争うなんて下らないよ。」
 「まあ、私はあなたと喧嘩したことが無いけど?」
 「欠点が無いからさ。」
 パラメディックは美しい笑い声を立てた。
 「欠点の無い女だったら、パーティーに一人で来たりしないわ。」
 「え、、、だって、、、」
 彼女はうんざりと肩を落とす。
 「プライドも恥も捨てて、私から誘ったのよ。まんまとすっぽかされたわ。」
 シギントは困り顔で、言葉を探す。
 「きっと、打ち明けられない仕事があったのさ。教えたらあんたに危険が及ぶような。」
 「あなたって、本当にお人よしね。でも、ありがとう。」
 パラメディックは手にしたグラスを一気に飲み干すと、くすりと笑った。
 「内心ね、ハラハラしていたのよ。」
 「何をだい?」
 「例えばよ?私が彼にここに来ざるを得ないような条件を突き付けるとするわ。パーティーなんて御免だっていつも言ってる彼のことだから、きっと二度と誘われなくて済む方法を考えるんじゃないかしら。」
 「なるほど?」
 「きっと、、、ド派手なフェイスペインティングで登場するんじゃないかしらって、、、。」
 パラメディックが真面目な顔で言うので、つられて真剣に聞いていたシギントは堰を切ったように笑いだした。
 「有り得ないって断言できる?」
 パラメディックも笑いながら尋ねる。
 「多分ワニキャップも被ってくるぜ。」
 「でしょう?だから気持ちの10パーセントはほっとしてるの。」
 「残りは?」
 「がっかり。」
 彼女が微笑む寸前、本当に悲しそうな顔をしたのをシギントは見逃さなかった。
 きっと来てくれると信じていたのだろうか。来るつもりだった彼が事件に巻き込まれたのかも知れないと、心の中では気が気でないのかも知れない。だが、そこまで踏み込んだいらぬ慰めを欲するような彼女では無いことはよく分っている。
 「、、、俺は、帰って彼女に謝ることにするよ。もし良かったら送っていくぜ?」
 そう言わなければ、彼女は平気なふりをしたまま、パーティーが終わるまで彼を待っているような気がした。(きっと、彼は来ないだろうと何故かシギントは確信していた。)
 案の定、パラメディックは自分を納得させるように大きく息を吸い込んだ。
 「そうね、、、ええ、そうね、、、。でも、一曲も踊ってくれないのは、つれな過ぎない?この曲、私のお気に入りなの。」
 「おっと、失礼。この斬新なファッションの俺で良ければ喜んで。」
 シギントは片手を差し出した。

 「それにしても、さっきは驚いたな。」
 フロアーで踊りながら、シギントは言った。
 「何が?」
 「健康診断書の話さ。あいつの青ざめた顔、写真に撮りたいくらいだったぜ。全員頭に入ってるなんて、凄いよ。」
 ダンスの相手は悪戯っぽい笑みを浮かべる。
 「あんなの嘘よ。」
 「はあ?」
 「全部なんて、無理に決まってるでしょう?はったりよ。でも彼には知られては困る秘密があるみたいね。後で調べてみようかしら?」
 「、、、怖いな、、、。」
 彼女の、その悪女じみた表情はとんでもなく魅力的で、これほどの女性の誘いを断る男はよほどの「クソ」だ、とシギントは現れない英雄に次回会った時、ゼロ少佐ばりの小言を言ってやろうと思いを巡らせた。


 数日後。
 食堂で昼食をとっていたシギントの所へ、パラメディックが歩み寄ってきた。
 「よお、この間はどうも。」
 「私こそ、送ってくれてありがとう。あのね、あなたにこれを渡しに来たの。」
 彼女は持っていたバッグから箱を取り出した。
 「何だい?」
 「開けてみなさいよ。」
 シギントはチーズバーガーを皿に置くと、包み紙を破り始める。
 箱の中にはぴかぴかのフォーマルシューズが入っていた。
 「、、、こりゃ凄いな。高かっただろう?」
 「ほら、お誕生日に何も渡さなかったでしょう?気になってたのよ。これでもう彼女に叱られないで済むわね。それに、、、」
 パラメディックはシギントの目をしっかりと見つめて続けた。
 「あなたは近い将来、このタイプの靴を常に履いている立場になるわ。きっとね。」
 「そいつは、、、」
 「ミスター・シギント!!」
 食事中の全員が顔を上げるほどの大声を張り上げながら、ゼロ少佐がこちらへ向かってくる。
 「俺、、、何かしたっけ?」
 「さあ、、、、?」
 テーブルまで早足でやってきた少佐は少し息を上げていた。
 「聞いたぞミスター・シギント。パーティーに運動靴を履いていったそうだな。」
 「運動靴?」
 少佐の後ろでパラメディックが「ゴメン」とジェスチャーしている。どうやら少佐の耳に入れてしまったのは彼女らしい。
 「私が母国に帰省している間に、何たる弛みようだ。身だしなみも整えられないような男に出世は無いぞ。」
 「いや、、、反省してます。でも、もう大丈夫ですよ。彼女が、、、」
 「ほら、これは私からの昇進祝いだ。」
 少佐は紙袋を渡してきた。中身の予想はついていた。パラメディックも同様なのか、彼が袋を開けるのをじっと見つめている。
 「(やっぱり、、、)」
 中身は、これまた仕立ての良さそうな黒のフォーマルシューズ。
 「バーバリーだ。上等だぞ。」
 少佐は満足そうに言った。パラメディックが可笑しくて堪らないという目をこちらに向けている。
 「あの、、、凄く嬉しいです。ありがとうございます。パラメディックも、ありがとう。」
 シギントは二人に交互に礼を言いながら、パーティーの翌日に恋人がやはりフォーマルシューズをプレゼントしてくれたことを彼らには内緒にしておくべきだろうかと悩んでいた。



-END-



    
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