忍者ブログ
Admin*Write*Comment
うろほろぞ
[5]  [6]  [7]  [8]  [9]  [10]  [11
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。







その日はとても麗らかな休日だった。

「カイさん、“オトコの浪漫”って、何?」

突然の乱入者がそんなことを言い出すまでは。

「……………………はい?」

紅茶を優雅にすすり、かくかくと震える手でカップを落とさないように苦労しながらカイは微笑む。その笑顔は僅かに引き攣っていたが。

「と、とりあえず、ご一緒にお茶でもどうですか? メイさん、ブリジットさん」

開いていた茶器のカタログを片付けつつカイは二人に椅子を勧めた。だが二人は、真剣な顔でカイを見つめ続けている。

「…………………事の経緯を、教えていただけますか…?」

あまり乗り気ではない、むしろかかわりたくないのだが、カイは目の前で殺気にも似たものを迸らせている少女たち(片方誤)に負けていた。

「あのね、カイさん……。ジョニーがね…」

だとは思っていた。メイが必死すぎるほどに悲壮な決意を宿すのはただ一人の愛しい人のためである。その暴走は確かに傍から見ていれば微笑ましいのだが。

―――今回はこういうことだ。

出かけるジョニーについて行こうとしたところ、彼はどうしても連れて行ってくれなかったのだと。

行き先を問い詰めたところ、『男の浪漫だ』と不思議な一言だけ残されたそうだ。

(傍迷惑な………)

「それで、ブリジットくんの趣味が“陰で男らしく努めること”だったから、知ってるかなって聞きに来たんだけど………」

可愛らしい少女……の服装をした美少年は、幼さを残す顔に真剣な表情を浮かべてカイをじっと見つめていた。

「お願いです、カイさん! ウチに、“オトコの浪漫”を教えてください!!」

深く頭を下げられ、カイは面食らう。

「……お、男の、浪漫…ですか………?」

幼い頃から今までの自分の生き方を回想し、そのほとんどが戦場で生き抜くことだけに必死になってきたと気付いたカイは困ったように眉を寄せる。

「………どういうものなのでしょう…?」

考え込むカイを前にして、少女(誤)二人はがっくりとため息をついた。

「あ。確か、“一国を獲る”とかいうのも男の浪漫ですよね?」

ちなみにこの男の浪漫、ゲームになる前の初期考のソルの抱いたものだそうだ。

「………一国…」

これ以上ないくらい真剣に顔を見合わせるブリジットとメイに不穏なものを感じ、カイは慌てて取り繕った。

「でも! ヒトそれぞれに浪漫はあるはずですからっ!!」

このままではどこかの国にクジラとクマが進撃しそうだからである。

「「ヒトそれぞれの浪漫……」」

何とか話を逸らしたことにホッと胸を撫で下ろしたカイは、両腕を二人に掴まれてきょとんとした顔をした。

「カイさんも行こうよ♪」

メイがにっこりと笑う。

「オトコの浪漫を探しに☆」

もう片腕はロジャーだ。ブリジットがその後ろで笑んでいる。

そして、ソル一人分の重さがある錨を片手で持ち上げる少女と、巨大なクマさんをカイの細腕で振りほどけるはずもなく。

「私の休日がぁぁぁ~~~~~~」

地面に足をつけることさえままならないままに引っ張っていかれるカイの絶叫のみが響き渡ったのであった。







「………で、何でオレから聞きに来るんだ?」

かなり複雑な顔をして、『オトコの浪漫』なるものを聞かれた女性は固まっていた。

「やっぱりストーリーモードのイメージから言って梅喧さんが一番男らし――――むぐむぐ…」

命知らずなことを言い放とうとしたブリジットの口を手で覆い、カイは青ざめつつ苦笑する。この子達と一緒にいると生命が幾つあっても足りないようだ。

「………浪漫、ねぇ…」

幸い、彼女は聞いていないようだったが。

「まぁ、何だ。“オレより強い奴に会いに行く”ってのも浪漫じゃねぇか?」

やはり一番男らしい意見が返ってきた。

「じゃ、ジョニーは、誰かと戦いに行ったのかな…………」

どうもピンと来ないらしく、メイは眉を寄せる。

「ま、オレの意見だけじゃなく、他のやつらを回ったほうが確実だろうよ」

一献どうだい?とカイに杯を差し出し、梅喧はにやりと笑う。

「いえ。保護者をしなければなりませんので」

丁重に断り、次の人の元へ行こうとするメイとブリジットを慌てて追いかけるカイを見送りつつ、苦労性な生真面目くんの背中に苦笑して彼女は軽く杯を煽った。







「浪漫か………。幸せな家庭と家族があれば他に望むものはないと思うのだが…」

「それ、わかります。独りは寂しいですからね」

テスタメントとディズィーが微笑む。彼女はどうやらこちらに遊びに来ていたようだ。

「浪漫! それは爆破!」

「はい?」

とても犯罪めいた言葉を聞いた気がして、カイは絶句する。

「浪漫! それはアフロ!!」

どなたが言った言葉かとてもわかる気がするが。

「アフロ復活~~!!!!」

なおも楽しげに叫んでいる医師を無視し、三人はその傍らを通り過ぎた。

「アイヤァー♪ 浪漫、つまり夢あるネ☆ 夢ならたくさんアルよ! お店大きくして、いい男もゲットするアル♪ カイ様、ボゥイやらないアルカ?」

“男の浪漫”というか、“夢”よりも、“野望”に近い気がするのだが。

「………お断りさせていただきます」

「残念アル~」

冷や汗を拭ったカイは、次の二人が言おうとしていることに気がつき、慌ててメイの元に走っていく。

「「嫁っっ!!!!」」

お分かりだろう。ザッパとロボカイである。

「………嫁…?」

ちゃきっとメイの手の中で錨が鳴った。

「…ジョニーを殺してボクも死ぬ………」

「――――待って下さい!!!!」

瞳に不穏な光を宿し、唇に微笑みなど浮かべながら呟いたメイを羽交い絞めして必死に止め、カイはこのままでは心中事件に発展しそうな状況を何とか回避しようとする。

「(多分)違いますからっ! そんな相手が居るなら、一番近くに居る貴方が気付かないはずないでしょう?! メイさんっ!!」

パチパチと瞬きをして、何とかメイは正気に戻ってくれたようだった。

「そ、そうだよね……。嫁はその二人の男の浪漫だもんね………」

「ムシロ漢ノ浪漫ト言ウガナ」

その違いはどうもわからないが、とりあえず意図的に無視してカイはおそらく興味ないのだろうソルに視線を向ける。

「………あ?」

怪訝そうに睨まれ、カイは肩を竦めた。

「いい。お前に男の浪漫を求めた私が悪い」

ソルの大きな手がカイの肩を掴む。

「………海は、却下か?」

何を言われたか一瞬わからなかった。

「……海?」

「船着場で、船を係留するあれに足を乗せて、潮風に吹かれつつ夕陽を……」

「…………………………お前の、浪漫か?」

こく、と真顔で頷かれ、反応を返せないままにカイは考え込む。

「多分、方向性が間違っていると思うが」

「そうか」

「……一応、考えてくれたことは感謝する」

思いもしなかったソルの“浪漫”に引き攣った笑顔を浮かべるカイは、不意に肩を叩かれて振り返った。

「カイちゃん、漢の浪漫探してるんだって?」

どこで噂を聞きつけたのか、アクセル、闇慈、チップがいつの間にか参加していた。

「俺様たちも交ぜて~」

楽しげに笑い、何故か三人はポーズを決める。

「時空の異邦人アクセル=ロウ!」

「松籟(しょうらい)の舞師御津闇慈!」

「カラクリニンジャ(?)チップ=ザナフ!」

最後、かなり違ったような気がするのだが。多分、ロボカイに対抗したかったのだろう。

ちなみに松籟、確か松に吹く風のこと、雅な様子のことだったと思う。

「「「三人合わせて、ボンクラーズ!!!」」」

画面の外(?)に向かってそんなことを叫ぶ三人の背後で煙幕が破裂する。

「「「誰がボンクラーズやねん!!!」」」

「どうでもいいから、どこかで見たようなネタをやってないで帰ってきてください。読者がびっくりします」

自分でボケて自分で突っ込まれても見ているほうは困惑するしかない。冷静なとどめのツッコミを入れ、カイはため息をついた。

「カイちゃん、漢の浪漫はね、ナンパだよ、ナンパ☆」

逆ナンパの経験はあるものの、ナンパなどしたことのないカイは苦笑する。

「ちなみに、カイちゃんがディズィーちゃんをデートに誘ったのもそれに入るから」

Xplusストーリーモード参照。

「あ、あれはですね…!」

顔を真っ赤になるカイの肩を掴み、アクセルは真剣な顔で彼を見つめた。

「で、どこまで行ったの?」

「買い物です」

「そうでなく。………キスした?」

カイの顔がこれ以上ないくらい真っ赤になった。

「すっ、するはずないでしょう! 手すら握ってません!!」

「勿体無いよ、それ」

「馬鹿なこと言わないでください……。私のことは兄のように思っているだけですよ、彼女は」

うろたえるカイの前でち、ち、ちと指を振り、アクセルは真剣に言う。

「“おにいちゃん”もまた萌え。ちなみに、“お義兄ちゃん”でないと犯罪ね」

漢の浪漫がわからなくなってきたカイは、混乱のままに叫ぶ。

「か、彼女は…っ、まだ三歳ですよ!」

「カイちゃん、ディズィーちゃん見てそう言えるのは成人男性としてどうよ?」

言葉を詰まらせたカイの頭を撫で、闇慈が救いの手を差し伸べる。

「ま、それがカイ殿のいいところだな。無意識に漢の浪漫は全てキャンセルする」

「……男の、ロマンキャンセル?」

男のロマキャン、何か嫌な響きである。

「ちなみに俺の浪漫はメイドさんかな? カイ殿も似合いそうだが」

本気か冗談かわからない口調でそう言って笑う闇慈にどう反応を返したものかとカイは眉を寄せる。その表情はまるで小動物だ。

「―――で、チップは?」

これ以上苛めるのも可哀想だと思ったのか、それでもカイの頭を撫でたまま闇慈はチップに話を振る。

「そりゃ勿論! 帯をくるくる~~っっ?!」

――――げしぃっっ

「こ、子供の前で何てこと口にしてるんですかっっ!!!」

顔を真っ赤にしたカイによりチップは黒焦げのまま地面に沈んだ。

昔聞いた話では、あれの正式名称は『生娘独楽回し』らしい(何で知ってんだ、こんなこと)。

「よいではないか、から言わなきゃな……。とりあえず、カイ殿は何で知ってるんだ?」

カイはそういう情報には疎そうな気がするのに。

「え、あ、あの……っ」

頬を染めたままカイは泣きそうな顔で視線だけをソルに向ける。それだけで元凶を察したのか、アクセルと闇慈は肩を竦めた。

そして、彼らの言う“浪漫”をメモしていたブリジットとメイは、難しそうな顔をして互いに視線を合わせる。

「つまり……」

「オトコのロマンって言うのは……」

「「メイドさんをナンパしてゲットして、お嫁さんにして幸せな家庭を築いて爆破で『れっつアフロ』ってこと?」」

「どんな犯罪ですか、それ……」

少しも乱れずに一息で言い切った二人にカイは絶句したものの、かなり不穏な空気を感じてツッコミを入れる。

「やだなぁ、カイさん。これこそがロ・マ・ン☆なんですよ!」

「ブリジットさん、メイさん、別にまとめなくてもいいんです」

れっつアフロをロマンにされても困るのだ。

というか、みんなの中の浪漫とは一体どういったものなのだろう?

「スレイヤーさんの浪漫は何ですか?」

ブリジットの無邪気な質問に苦笑し、長き時を生きてきた貴種は僅かに考える仕種を見せて顎に手を当てる。

「やはり愛しい者との運命的な出会いだろうね? 二度と離れられなくなるような」

ちらりとソルとカイに意味深な視線を送る。

「でも“不倫は文化だ”って言ったヒトもいますよね?」

「ふむ、それも一理――――っいや、シャロン。例えばの話だ!」

今回はカイの静止も間に合わなかったらしい。一組の夫婦が危機に陥っている間、カイは今まで挙げられた浪漫の数々を思い出し、額を押さえていた。

(まともな物がない……)

これだけ個性の強い方々(イロモノ含む)がテンションMaxのまま集まれば仕方ないとも思える。彼はがっくりと肩を落とし、不意に視線をずらした。

「ぅわ」

そこでは、偶然会ってしまったがためにバトルしていたのだろうミリアが、エディの全身を髪で締め上げていたのである。

「…………み、ミリアさん…」

「何?」

一頻り必殺技の嵐だったからなのか、彼女だけテンションが下がっている。

「あの………オトコの浪漫って、わかります?」

まともな説明をくれそうな様子にホッとして、カイは質問を投げかけてみる。

この際、後ろでもがいている影は無視しよう。

その後ろに、一緒に締め上げられている銀髪の人も見えるのだが、こうして一緒にいられるだけで彼には浪漫なのかもしれないと温かく見守ってみる。

「…………そうね、男の浪漫はわからないけど…」

しばらく考え、彼女は納得したように軽く頷いた。

「漢の浪漫は、女にとってのセクハラよ」

今日一番の爆弾発言であった。







「ジョニー、何を見てるの?」

新聞を後ろから覗き込み、エイプリルは少し笑った。

「宝くじ?」

「男の浪漫だろ?」

一枚の紙をひらひらと振る。

「30W$、大当たりだ」

子供を見る母親のような顔で苦笑し、彼女は腰に手を当てる。

「で、何枚買ったの?」

「10枚」

「±ゼロ」

「当たるかどうかのハラハラを楽しめただけプラスだな」

楽しそうに笑い、ジョニーはその宝くじを仕舞った。

新聞を片付けつつ部屋の入り口を見ると、開け放たれたドアの外にオレンジ色の服を纏った少女が俯いている。

「メイ? どうした?」

「ジョニーの……っ」

どうやら、今来たらしい彼女には、ジョニーの考えていた“男の浪漫”は届いていないらしい。

「馬鹿あぁぁぁぁっっっっ!!!!!!!」

ピンク色の物体が部屋の中に炸裂する。

勘違いととばっちりの果てに、今回の犠牲者(全治三日)ジョニーは床に沈んだのであった(合掌)。



おわり

PR































「メイさんは、物知りですね。」


「へっへーん!もっと色々聞いてもいいよ?」


「では・・・。」





などという微笑ましい光景が繰り広げられているのを、特に思う事は無く、ジョニーは甲板の手摺にもたれかかったまま、ぼんやりと眺める。


どういう話題になっているのかを聞くのはそれこそ野暮というもの。彼の主義に反するからやらないが、


質問しているのは最近新しく入った団員のディズィー、そして何やら威張っているのがメイだ、という事は見るだけでわかる。





ディズィーもいい笑顔が出るようになったな、と思う。魔の森から初めて連れて出た時の翳りのある様子はもう見られない。


そんな事を、上空の爽やかな風に吹かれながら思っていると、メイとディズィーがこちらにとてとてと向かってくるのが見えた。



・・・どうしたのやら。





「ねーぇ!ジョニー?」


「どうした?メイ。」


「あ、いや、正確にはボクじゃないんだけどね。」





困ったような笑みが来て、その後に、ディズィーが、これさえあればおそらく世界だって征服してしまうであろうもう半ば神がかった邪気のない天使の笑みを向ける。




・・・・・・う~ん。デンジャ~な。





「あの、ジョニーさん?」


「コラ、ジョニー!何見とれてんの!」


「ん?あ、ああ。すまんすまん。・・・・・・・で、何の用だい?」


「ええと、ジョニーさん、聞きたい事があるのですが・・・メイさんに聞いたら解らなかったそうで・・・。」


「そうかぃ?じゃあ遠慮なく質問していいぞ?」


「ありがとうございます!・・・ええと、じゃあ・・・・・」





一言区切りを置き、先ほどと全く同じ笑顔が・・・・・・



















「子供って、どうやって作るんですか?」














弾けた。
















なんだかわからんがとにかく、弾けた。













「お前、本気で・・・・・・・(SLASH)」


「ジョニー!!(大汗)」


「えっと・・・・・・ご存知なかったですか?」






勿論知っている。知らないわけがない。・・・・・・ の だ が 。



・・・よく見ると、メイが「憐れみ」・・・というよりは同情の視線を送ってきているのに気付いた。








(メイやっぱお前もこの質問を・・・・・・?)


(ま、まぁね・・・・・・)


(で、答えられなかったから俺に押し付けた、と。)


(ち、違うよ違うよ!知ってたけど、ボクみたいなおしとやかな淑女(レィディ―)の口からはとてもとても。)


(知ってるのか!?・・・・・・ああ、俺の教育が悪かったのか・・・・・・)


(ちょっ!?何ソレ!ジョニー!?ジョニーとの将来を考えたら当然でしょ!?)






その言葉(いや、眼だけで会話してるが)に、男として喜ぶべきか、それとも彼の父親としての常識を優先させるべきか、

板挟みで悩んでいるジョニーを、何やら羨ましそうに眺めるディズィー。





アイコンタクトだけで会話する事もできる、ツーカーという感じのジョニー&メイ。こんな2人が最近は羨ましくて仕方がないのだ。




・・・もっとも、ディズィーの質問にはまだ返答がないので、彼女の容赦ない爆弾投下は続く。








「あ、えっと、結局どうなんでしょうか。さっきの質問は。」


(ガンバレ、ジョニー。男らしく真面目に答えてね。)


「(・・・・・・)まあそもそもお前さんは普通の人間と生態が違うからな・・・まずはその前に、人間の常識が通用するかどうか、だな。」


(コラ!ジョニー!言い逃れ!?)


「そ、そうなんですか・・・・・・。」







ちゃんとした答えが得られず、やや、しゅんとなるディズィー。


その様子に、一瞬悪かったと思ったものの、









「では、人間同士ではどうやって作るんですか?」









再度、弾ける









この世界一難題な状況にジョニーがうんうん唸っていると、メイからのアイコンタクトが来た。









(へっへーん!ジョニーって、結構オバカさん?)


(お前人に勝手に押し付けといてだな・・・・・・!)


(そりゃあボクだってできないけど、何とかなるでしょ?ジョニーなら!)


(なるか!)


「へぇ~。こんな男に惚れたボクが間違いだったのかなぁ~。」


「いきなり普通の会話に戻すな!」


「だってそんな事も知らないのぉジョニー?男として致命傷だね☆」


「いや知ってる!(←漢の叫び)知ってるんだがな・・・・・・。」


「知って・・・・・・おられるんですか?ジョニーさん。」








やっべぇ地雷踏んだよ



しかもギアに例えるならメガデス級。












「あ、いや、それはだな・・・・・・。」


「やっぱりわかんないんだね?ジョニー?」


「ぐ・・・・・・ぅ・・・・・・。」


「う~ん・・・残念ですね・・・。」


「ホラホラ、ディズィー!今度はまたボクに質問してもいいよ?さっきの質問は答えられなかったけど。」


「そ、そうですか?」


「そうだよ!ボク、ジョニーと違って色々知ってるんだから!」







えっへん、と、メイがない胸を張った刹那。

















「船長!地上から熱源が急速に接近!」







快賊団のメンバーの誰かの焦った声が響いた。


そう。『地上から』。先ほどまでの「甲板」などの描写でわかった人も多いと思うが、ここは上空を飛ぶメイシップ。

そしてその熱源は、そのメイシップに向かってきているというのだ。

地上からの砲撃というのは、機械文明が捨て去られている今では殆どありえない。


ツェップが唯一の例外だが、ツェップもメイシップと同じく空中に浮かんでいるものだ。


なのに何故・・・・・・!?














「どうなってる!?」


「あ、駄目!間に合わな・・・・・・・い、いや、直撃はしません!微妙にズレてます!!」


「ん?」


















それに対する答えは、地上から上がってきた「それ」が、空中を飛ぶメイシップのすぐ近くに現れた事で判明した。



「それ」は、人の形をしていた。






体の各所はしっかりと伸びているが、しかしその伸びている姿勢は随分と嘘くさい。というか無理くさい。


そんな姿勢のまま、拳をしっかりと上に突き上げ、溢れんばかりの炎を拳どころか全身から湧き立たせ、空へと舞い上がる。






そしてその挙動には、叫びが付属していた。














すなわち、「ヴォルカニックヴァイパァァァァァァァァァァァァァ」・・・・・・・と。

















声が大きくなり、そして再び小さくなっているのは、その男がそのままメイシップの横を通り過ぎ、そしてそれでもそのまま止まらず上昇し続けているから。







そんな事を呆然とした頭を働かせてなんとか考えて、ふと視線に気付き横を向くと、同じような顔をしたメイと目線が合った。


メイはしばらく餌を食す弐式二シキゴイのように口をパクパクとさせた後、ようやく声が出るようになったか、しかしそれでもやや掠れた声が出てくる。












「ジョ、ジョニー!!ボク、ジョニーと一緒でなにがなんだか全くわかんないよ!!」






全くだ。







溜め息をつき、しかしジョニーはさすがに状況を冷静に理解する。







「ヤツか。何かあったんだろうな・・・まあ、そろそろ落ちてくるだろうから、もうちょっとだけ動いて拾ってやれ。」


「わ、わかりました・・・。」










しばらくして、ジョニーの言葉通り、メイシップの飛んでいるただでさえ高高度の、更に上空から何かが落下してきて、






ぼとっ、と音を立てて甲板に転がった。








そうして甲板に転がった男に、ディズィーがゆっくりと近づき、そして確認してから、驚きに目を見開く。












「ソルさん・・・・・・なんですか?」









答えとして、むっつりとした無言の肯定が帰ってきたのだった。













~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~















ドラゴンインストールの余韻でフラフラしていたソルが語るには、彼は最初は、適当な野っ原で寝ていただけだった。











・・・だったのだが。



























う~む、珍しくソルが無防備な姿を・・・。








― ・・・眠い・・・なんだ・・・・・・?







でもなんだ、やっぱりアレだな。ソルという男の表情は、睨んで見下して、ばっさり切り落とされてこそだな!







― ・・・ごちゃごちゃとうるせぇ・・・・・・なんだ・・・・・・?







うん、やっぱりそれでこそソル!そして睨まれても怯まない私萌え!







― ・・・・・・??








・・・・・・し、しかし・・・・・・こういう、全く動かずに可愛いらしい顔で寝ているソルというのも・・・・・・・・・イイ。









― ・・・なんだ・・・・・・どこかで聞いたような声だが・・・・・・










・・・・・・周りには誰もいないな・・・・・・・よし。











― ・・・・・・(寝汗)










よし!これからめでたく新ジャンル開拓だ!では、カイ・キスク団長、参る!!










「露出プレイかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

























「・・・・・・。」


「途中でぶっちぎれてるが、その後お前さんはカイを吹ッ飛ばして、そのままここに来たって事か?」


「一瞬でテンションゲージ、50%まで溜めたんだねぇ・・・。ドラゴンインストールって事は。もう一丁オイッス以上のゲージ蓄積・・・」


「・・・・・・何の話だ。まぁそうだ。吹っ飛ばしている途中で落としたが。」


「だ、駄目だよソル!そんな途中で落としちゃったら、壁際でのヴェイパーループ確定だよ!?」









だから何の話だ、という全員のツッコミが入り、それから間を置いて、ディズィーが笑顔でソルに告げる。










「カイさんとソルさんは、とても仲がよろしいんですね。」












・・・それは激しく誤解している上に、二重に(そのまんまの意味と、男同士である事)勘違いしてる、


と、言いたい場の全員であったが、ディズィーの純真無垢な笑顔に対して、今の発言で一番動転したソルですら怒鳴ってやる気力も湧かず、


違うと訂正しただけで終わる。恐るべし清純パワー。













「あ、でも、最近知ったんですけど、こうも言いますよね?―嫌よ嫌よも好きのうち。」










・・・助けてくれ、というかなり切実な、むしろ哀願に近い救難信号がソルから送られてくるが、


ジョニーとメイは、この清純爆撃の対象が自分達から切り替わった事実だけで安心しており、今更巻き込まれたくないね、というあからさまな顔をしていた。











「違う!俺と奴に限ってそんな事はねぇ!そんな事はねぇそんな事はねぇそんな事はねぇ・・・。」


「んと、何を呪詛のように繰り返してるの?ソル。」


「パ~フェクトな自信がないんじゃないのか?」


「ふざけんな・・・・・・ッ!!誰があんな腐れ野郎と!」


「まあ確かに腐ってるよね!カイって。男関係が。」


「テメェそれどういう意味だ。」


「そんなのヴェノムさんだけで充分ですよね!」


「的確だがデェンジャーなスメルのする発言だな・・・・・・。」









ヴェノム本人がいたら、怒りで八つ裂きだったかもしれない・・・最も、ディズィーの天然系というかむしろ天使系な笑顔ならどうだか・・・とか思ったが、

この発言を行ったのがそのディズィー自身である事にジョニーは遅ればせながら気付き、ちょっとディズィーの内側を疑う。








・・・そして、「倦怠」という以外の表情を読み取り難いソルという男が珍しいことに「諦め」という表情を見せているのに気付く。










「・・・いつもこうか?」


「まぁな。」







苦笑し、きゃぁきゃぁと騒ぐメイとディズィーの2人をメイシップの内部に追い払ってから、ジョニーはソルに向かって振り向く。

これから言う事に関して、ソルの心象を考慮しての事だ。









「・・・元気でやっているよ。ディズィーは。」


「・・・・・・はン。」


「本人はあまり意識してないみたいだが、お前さんの話題がかなり出て来るんだぞ?ソルさんは今どこにいるんでしょう?とかな。」


「だからどうした。」


「好かれてるねぇ。お前さん。あの子に。」


「・・・下らねぇ。」






だがその顔の、よく見たら凛々しいとも思える眉がひくっと動き、口の端が歪められたのは、






「嬉しいかい?」


「まずお前を炭にして、その熱で剣は溶かして食器にでも再加工してやろうか?ちなみに犬用だ。」


「無駄なく再利用する気かッ・・・・・・・いかにもお前さんらしい、モノが溢れていた前時代的な発想だよ。」


「・・・どこかズレてるな。」






肩をすくめる。ソルはからかうと面白いが、あまりやり過ぎても相手の心象を悪くする。

賭け事は好きだが、ジョーク程度で命までは賭けたいとは思わない。何よりダンディ~な男は、女性だけに限らず、あまりしつこくしないのが信条。

・・・・・・だが、フィナーレをきちんと締めるのは忘れない。肩をポンと叩いてにやけた笑顔で、















「お前さんとディズィーなら、似合ってると思ったんだがな?」














次の瞬間。













「なんだとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」





普通にしていれば―あくまで、「普通に」だが、端正とも言える声が、だがそのまんま拡大されて野太くなったような恐ろしい音律の声が響く。

なんとなく二重に聞こえるダミ声、という感じもあるかもしれない。

そしてその声の主が現れたのは甲板の手摺にもたれかかっているソル達の背後から。



・・・背後すなわち、「お空」なのに。









「ディズ」







・・・その声色で、再び何か声が聞こえた気がするが、それはソルが封炎剣を振った「びゅん」という音によって遮られる。

突然湧いた殺気にさっとしゃがみ込み、そしてジョニーは確認する。


さっきまで、彼の頭があった位置を封炎剣が通過していくのを、







もっともその剣戟が、彼に向けられたものではない、という事が解ったのは、ドガッ、という、骨を切断する時の鈍音が背後から響いてから。


そしてジョニーは再び確認する。









おそらく「ディズィー」という単語を発しようとしていた魔の森の番人の、怒り顔が宙に舞っているのを。







くるくると空中を回転しながら、威嚇するように怒り顔を振りまくテスタメントの首からは、血が吹き出ている。

そしてその血も、回転する首に合わせてくるくると楕円軌道を描く。








ジョニーはふいに、そうやって描かれる紅い円が、一体何個描かれるのか数えたくなるという現実逃避にとらわれた。







そして、首が離れた胴体が、そのまま後ろにのめり、地上へと落下する首の後を追いかけるように落ちていくのを見て、ようやくジョニーは我に帰る。













「・・・・・・・お前さん、今何をした?」


「キモいから、斬った。」







んな直球勝負な・・・・・・


同意できるだけに反論の余地もない。


だからまあ、弁護もしないけど(酷)






「手首を切ってすぐに再生するぐらいだから(ゼイネスト)、首ぐらいワケないだろう。」


「それで納得しろというのも無理があるというか、論理立てに致命的な欠陥があるように思うが。ていうかアイツどうやって昇ってきた?」


「・・・俺に聞くんじゃねぇ。」


「・・・まあそれはいいとして、さて、これからお前さんはどうする?」


「・・・そろそろ退散させてもらう。何やら色々とうやむやになっちまったが。」


「ああ、ディズィーの事か?」


「・・・船ごと燃やすぞ。」


「それは洒落にならないから、俺も本気でやらんとな?」


「・・・けっ。行くぜ。カイの野郎が飛空挺を持ち出したりしてきても困るしな。」


「そんな職権濫用な真似をアイツがすると思・・・・・・。」







言いかけて、考え直してみる。


(3秒後)うん。彼ならやるかもしれない。







「あばよ。」







はっと我に帰ると既にソルの姿はない。気付いて、下を見ると、特徴のある付け髪が風になびいているのが遥か地上の方向に、微かに見える。







「・・・相変わらず人外なヤツだな。」






苦笑して、船内に振り向くと、








「船長!大型の熱源が西方より接近!」


「・・・今度は何だ?」


「船です!ええと・・・・・・この大きさは・・・国際警察機構のモノですが・・・逃げますか?」


「・・・いや、燃料が勿体無いから無理して逃げなくてもいい。」


「最近の看守は男に代わったそうですよ?」


「なっ!?そんな馬鹿な・・・・・・って違う!知り合いが乗ってるんだ。あの船には。」


「そ、そうなんですか・・・・・・。」







そうして、クルーに船の停止を命じ、ジョニーは、段々と接近してくる飛空挺に正面から向かい合う。


そしてその飛空挺の窓から見える紅茶をすすっている男は・・・・・・ああやっぱり(汗)






ま、いいか。俺みたいな楽してる人間ってのも中々いないし、時々はソルの尻拭いくらいしてやるのも悪くないさ ―














そう、穏かな気分になるジョニー。そして彼がその思考をすぐに後悔する事になるのは遅くはない(笑)



ザ・・・

メイ
「ジョニー…」

ジョニー
「メ…メイ…」

メイ
「今 行くよ!」

カイ
「サセマセン!」
「あなたがジョニーに手をだせば 人質の快賊どもは皆殺しです!!」

メイ
「なら… キミの息の根をとめるまでだよ!」

カイ
「フハハ 小娘!!」


ジョニー
「くるな!!」
「くるんじゃあねぇ 俺様はこの聖碑を積まなきゃあならねぇ」
「この石は 百人のメンバーの命 そして共に戦うべき人類の乱れを防げなかった俺様の痛み…!!」
「ぬん!!」

 ギシギシ・・・

 グワァッ

  ドスウウン

カイ
「どこまでもおろかな人です 聖戦に責を感じているだなんて」

 タタッ…

ジョニー
「!!」

  ガチャッ
      ガチャッ…

テスタメント
「イヒッ イヒヒヒ」

 ササッ

ジョニー
「フ… 坊ちゃんよ この石をかかえたまま この場で俺に死ねってか?」

カイ
「そのとおりです(ニヤリ)」

ジョニー
「いいだろうカイ 散っていった仲間たちのためにせめて聖碑を積もう!!」
「だが この迅雷十字陵はいずれ崩れ去る」
「幻影博文派燕月剣伝承者によって!!」
「ぬおお!! それが迅雷の宿命 迅雷は天帝の星として輝かず!!」

   ドカカッ…!

ジョニー
「ぐはっ!!」

エイプリル
「きゃ~~!! ジョニーーー!!」


メイ
「!!」


  スチャッ…


カイ
「フッフフ」
「積んだだけでは完成しません! 誇り高き血が漆喰となってこそ 十字陵はより堅固なものとなるのです!!」

ジョニー
  
  グラ…


メイ
  ダダーッ



ジョニー
「メ…メイ…………」
「ど…どうやら俺の命もおしめぇみてぇだ!!」
「ひ…一目…一目 見たかった…」
「おまえの成長した姿を!!」


カイ
「フハハハ!!」


メイ
「ジョニー!!」


カイ
「とどめだ!! ライジング・ジャベリン!!」
  ドォン…

メイ
 ダダーッ
「!!」

ジョニー
「!!」
     クワッ

メイ
「ジョニー!!」



エイプリル・フェービィ・ジャニス他
「っ……」


ポチョムキン
「…」

ヴェノム
「…」

カイ
「(ニヤリ)」




メイ
「………ジョニー…」
「はっ!こっ…これって…!」

ジョニー
 スゥ・・・
「な…なぁんでお前さんがここにいんの…メェィ…おまえが…」


メイ
「ジ…ジョニー…」
「死なないよねっ、死…死ぬわけないよね!!」

ジョニー
「…なぁんてこったい…、神様が最期にひとつだけ願いをかなえてくれちまいやがった!!」
「よ…よく見りゃおめぇさん…他の誰よりビューティフルじゃあないの…」


ポチョムキン・ヴェノム
「……」

ヴェノム
「ジョニーよ………」

ジョニー
「も…もはや悔いはねぇぜ」
「俺様の…俺様の夢はまちがっちゃいなかった!!」



ジョニー
「いけ、メぇイ…そして時代をひらくんだ!!」

メイ
「ジョニー…」

ジョニー
「俺は…いつもお前さんを見て…いるぜ…」
「…さ、まぁ…あば…よ…」

メイ
「ジョニー!!」



 ズ ズ ウ ウ ン …



メイ
 ガク…
「っ…、…ジッ…」

「ジョニーーーーーーっ!!」


ポチョムキン
「みごとだ ジョニー!!」

メイ
 ドクン… ドクン…
    ドクン…   ドクン…
ドクン…


メイ
「ジョニーは、ボクたちの中で生きてる!」

「カイ=キスク、キミの髪の毛一本もこの世には残さないよ!!」


カイ
「フ… その遠吠えがアナタの最後の遺言となるのです!!」
  バサァッ…

テスタメント
「あっ!!」
「おお!!」
「聖帝様みずから!!」


カイ
「フフ…聖戦始まる時 燕月現ると聞く……」
「それならばアナタと闘うのが私の宿命」
「人質などいりません!今こそ迅雷と燕月の決着をつける時です!!」

「賊員たちより先に この墓に果てるがいい!!」


メイ
「この石段はジョニーの悲しみ…」
「そしてキミが今まで積み重ねてきた罪の重さ!」
「一歩一歩かみしめてのぼってくるんだね…」

カイ
「フ…」
「そうではありません、この石段は幻影博文派燕月剣終焉への秒よみ!!」

カイ
 ガッ…

メイ
 ザッ…


マーチ
「じょにぃ…」
 ギュッ…

  ドカッ!

カイ
「!?」
「ん!?」

マーチ
「…っ!」


ノーベル
「はあっ!! ああ なんてことを!!」



ポチョムキン・ヴェノム
「…」


テスタメント
「むっ!ガキが!!」
  ガシャッ!


マーチ
「…ううっ、あぁーん、うぇーん!」

カイ
  ギロッ…!

マーチ
「あ…う…わ」

リープさん
「ああ…マーチちゃん…」


カイ
「……」
「見てごらんなさい この子供を」
「ジョニーへの思いが こんな子供すら狂わす!!」
  
  ……愛ゆえに……


 …こ…こんなに…
    こんなに悲しいのなら 苦しいのなら……


  愛などいりません!!

カイ
「私は愛を捨てました、いいえ、迅雷の星がめざめたのです!!」
「帝王に愛などいりません!! はむかう者には死あるのみです!!」


メイ
「それなら…」
「ボクは愛のために闘うよ!!」
ギルティギア~メイの野望~ 第一話

作:奈須野雪葉

『第一話 金色の友情』


とある海賊団に、メイと言う少女がいた。
彼女は『ジョニー』という男性が大好きで、その行動パターンの殆どが、彼に対する求愛行動で出来ている。

というわけで、今回突如としてジョニーを惑わす(と言っても半分はジョニー自身の所為だが)女性達を倒そうと考えた。

候補としては


オカマなブリジット
綺麗な足を持つジャム
大きな胸を持つバイケン
自由な髪型なミリア
そして際どいコスチュームなディズィー
(全てメイ談)


の5人が当てられる。
いくらなんでも一人で5人を倒すのは辛いという事で、メイは明鏡止水にでも目覚めたかのようにゴールドキャラに変化している。
本人曰く『これでボクもお高い女』とか言ってたらしいが…。


『というわけで勝負よディズィー!』
メイは早速、一番近い所(というか同じ所)に住んでいるディズィーに、戦闘を仕掛ける。
『……展開早くないですか?』
『そんな事はどうでも良いの!』
『良くないです!
……でも、たまには悪くないですね…』
何故か乗り気のディズィー。
最もメイもディズィーも遊びのつもりで、ウォーミングアップのつもりだった。


海賊船の中で、メイとディズィーは激戦を繰り広げた。
ディズィーの魚を取る時に使うアレにかなり苦戦しながらも、メイは何とか隙を作る

『今だよ!!メーイ・ダイナミーック!!』

メイが上空に舞い上がる。
不意を付いた攻撃だが、ディズィーは咄嗟に見切った。
元々普段から一緒に住んでいるだけあり、彼女の行動パターンはかなり把握していた。
『このタイミングだと…、後ろに飛べば!!』
衝撃波による刺激が少しだけあるが、直撃よりは遥かにマシ…。
ディズィーはそう判断し、バックステップを踏んだ。
『あー、当たるかと思ったのに~!』
メイが空中で叫ぶ。
この時点で、メイはこの技の失敗を確信した。
この後どう立ち回るか思考している内に、メイが地面に激突する。

そして、衝撃波がディズィーを襲う。

ディズィーはそれを、ネクロを使ってガードする。
その後はメイが大っ嫌いな『魚を取る時に使っていた』氷で追い討ちをかけるつもりだった。

衝撃波に、何か小さな針が突き刺さるような感触を、ディズィーは感じていた。
だが、ディズィーは気にしなかった。

ディズィーが、例の氷のスタンバイを始めようと、手を動かそうとした時だった。

(……手が動かない?)
手だけでは無い。ディズィーの体全体の動きが、封じられている。
(…どうして?)
どうにかして今のポーズを解除しようと、四肢を動かそうと試みるも
体は自分の物では無いみたいに、行動してくれない。

そしてディズィーは、気付いた。
…いや、気付いてしまったと言った方が正しいか?

(…金!?)
それは、今のメイと、同じ色をしていた。
白い服に現れた金色の斑点。
その斑点が…、全身に現れている事を。

『さっきは外したけど…、もう一回メイ・ダイナミーック!』
メイが再び、例の飛び込み技を開始する。
ディズィーが動けないことには気付いていない。


そして、ディズィーに対して、メイの技がダイレクトに命中し
…ディズィーはかなり派手に吹っ飛んだ。

『あぁ~!!やりすぎた~!!!
大丈夫!?、ディズィー!!』
武器であるイカリを放り投げて、ディズィーの方に走るメイ。

ディズィーは足をピンと立てて、ゴミ捨て場に頭から突っ込んでた。
メイはそんなディズィーを見て、少し不安がる
『……金色?』
ディズィーの足が、金色に染まっていた。
『…と、とりあえず
引っこ抜くよ!!』

『……ん~、お…重い……』
イカリを片手で持ち上げるメイがそういうのだから、かなりの重さなのだろう。
『ディズィーってこんなに重かったっけ?』
メイがつい言葉にしてしまう、女性には非常に禁句な言葉。
しかし、足が金色のディズィーは、全く反応しない。

そして、メイがディズィーを引っこ抜いたとき、衝撃の事実が判明した。
『……ん?』
汗を拭ったメイが、気付いた。
『…ディズィー?ゴールドキャラになるのは良いけど、何固まってるの?』
足をゴンゴンと叩きながら、話掛ける。
しかし、反応が無い。
『……、まさか、ボクが本気出しちゃったから怒ってる?』
でも、それだとしたらネクロ辺りが…とメイが考えていた時だった。
先程のディズィー引き抜き時に開いた本の内容が、メイの目に入った。
そこには、こう書かれている。

『エルダ・タルー○』
『…これは違うでしょ』

何が違うのかは不明だが、もう一冊の本も、メイは見る。


『金色の体を手に入れたものは、相手を金にする、ミダスの力を手に入れられる』と。

メイが青ざめる。
うつぶせ状態で、何かに耐えた表情で倒れている、金色の妹分。
『…ミダスって…触った物を全部金にしちゃう手の事?』
メイが、ディズィーの体を恐る恐る触る。
彼女の体は…、金と同じくらい、硬くなっていた……。




『それじゃ、ディズィーを元に戻す方法を探す旅に出かけてきま~す!!』
快賊団の皆に送られて、ディズィーは旅を始めた。
金色の体に、金色のディズィー。
『御免ねディズィー、でも、これからはお詫びとして、愛用のイカリの代わりに武器にしてあげる』
それは逆効果ではと思う事も無いまま、メイは、金化したディズィーを、肩に担いだ。
そのディズィーは純度の高い金の体のまま…、眠っていた……。


メイは元気だった。
ゴールドキャラなメイは、途轍もなく、意味も無く、元気だった。
森の中、左肩に友達の金像を担いで、特徴的な足音を立てながら、メイはとりあえず、元気に歩いている。

『とりあえず、ディズィーはあのハゲ医者に任せるとして……』

メイはハゲを極度に嫌っているが、友達の命には変えられない。
しかし、そのハゲは患者を求めて常に放浪しているので、あえる可能性は非常に低いのだが
メイはそんな事は思っていなかった。
理由は簡単で、しょっちゅう出会っているからだ。

ディズィーの事は一先ず解決した所で、メイは再び歩き出した。
鼻歌をうたいながら。

その歌は、少し下手だったが、別に誰に聞かせるわけでもないので気にしていなかった。


と、そこに、ヨーヨーが飛んでくる。
『……!!』
メイはいつものくせで武器で防御する。
友達の綺麗な顔にヨーヨーが激突したのは、持ち主が『しまったぁ~』と嘆いた後だった。
『御免ディズィー!後でボク愛用のジョニーの写真あげるから!』
咄嗟の事とはいえ、盾代わりにした友達に、メイは謝った。
幸いにも傷は無かったが…。

『そのヨーヨー使いは、ブリジット!!』
『やっほー、メイ~』
『何が『やっほー』かこのおじゃ○丸!オカマ!』

不意打ちをしてきた『見かけは少女、頭脳は少年』な男に、メイが悪口を言う。
彼女と形容したくなる容姿を持つ、彼の名前は、ブリジット。


『そういえば旅の目的はジョニーを誑かす女性とかオカマとかを倒す事だったんだ!
というわけで覚悟しなさいブリジット!!』
メイが斧…じゃなくてディズィーを構えながら、ブリジットに突撃する。
ブリジットはその突撃を見切り、最低限の動きで避けた後。
『隙だらけ♪』
と、喜びながらヨーヨーをメイに飛ばす。
『何の!!』
メイはそのヨーヨーを足で蹴飛ばし、持ち主の元に返す。
『やるじゃない♪』
『全てはジョニーの愛の為よ!!』
メイはそういいながら、ディズィーを振り回す。
大降りながらも当たれば重い。
ブリジットのような小柄な体なら、一発当たるだけでも致命傷だろう。
ブリジットのような技で攻めるタイプにとって、メイの様な猪突猛進力押しタイプはかなり愛称が悪い。

とはいえ、それはメイも同じである。
リーチの短さ(それはディズィーの身長の低さだとか言っているが)と、隙の多さ。
その弱点を、ブリジットは確実に突いてくる。
小技タイプは、力押しタイプが一番の苦手とするタイプだ。


『こうなりゃ…アレしかない!』
メイの目が、光った感じがした。
そして、ディズィーを武器に変えた、あの技を使う。

『メーイ・ダイナミーック!!』
メイが、上空に飛びあがる。
そして、地面に向かって思いっきり突っ込んだ。
その時に生じた衝撃波が、ブリジットを襲う。







森の中。
少女の格好をした少年は、悔しがっていた。
とはいえ、表情は『不意を付かれて驚いている』と言った感じだが。

現地の子供達と動物が、自分を興味深々に見つめている。
中には自分に触れる子供もいる。
イタチのような動物など、自分の首に巻きついてくる。

ブリジットは確かにオカマだが、外見上は『普通の少女』にしか見えない。
少なくとも、子供に指差されて『アレ何~』と言われるほどではない。そういうのはアンジの仕事だ。
しかし、現に今、ブリジットは注目を浴びている。
理由?そんなもの、一言でカタがつく。


ブリジットという少年は、金像になっていた。



あのメイ・ダイナミック(というよりはただの上空からの突撃なのだが)によって生じた衝撃波が、ブリジットを襲う。
ブリジット自身は、衝撃波自体ではどうにもならない、と思ったのだろう。
事実、衝撃波の『ダメージ自体』は無かった。

アレは、後から来る『衝撃波』だった事を、ブリジットは体が動かなくなったときに、感じた。
今の彼は、人間ではない。
子供達と動物達の憩いの場に作られた、金の像である。


糸すらも金に摩り替わったヨーヨー。
もう、表情を変える事の無い、ロジャー。
そして……、金色の肌を持つ、少女のような少年。
ブリジットは悔しさと悲しさをこめて、その場所に突っ立っている。





『これで、ブリジットは撃破…っと』
指を咥えながら、メイが呟いた。
『これで、ジョニーの愛に一歩近づいたわね!』
そして、いきなりハイテンションになり、座っていた岩から飛び跳ねる。








メイは元気だった。
ゴールドキャラなメイは、途轍もなく、意味も無く、元気だった。
森の中、左肩に友達の金像を担いで、特徴的な足音を立てながら、メイはとりあえず、元気に歩いている。








メイはとりあえず、元気に歩いていた。


夏は暑いのは常識である。
いや、確かに夏が寒い地域もあるのだが、ゴールドメイの脳には、夏と言うものは暑いものだとインプットされている。

夏の街中。
ビルが立ち並ぶ街の中を、メイは歩いていた。

『というか暑い』
何が『というか』なのかは不明だが、メイは本日実に73回目となるこの台詞を呟く。
まぁ確かに計算上途轍もなく重くなる元親友現在金像をずっと担いでいるわけで、いくら怪力の持ち主のメイでもこれは辛い。
メイの体力は既に風前の灯。
今は持ち前の根性値で辛うじて持っているという所だ。

ので、出会った敵は一撃必殺もとい、一撃必固を心がけなければならない。
何せ向こうのP一発で死亡しそうな体力だ。
ゲージを見ても、そこに残りがあるのか疑われても反論できない状態である。
『というか暑い』
イルカさんを使えばいいかと思うが、あの水飛沫はデモンストレーションだ。
『でも…、これもジョニーの為……』
汗を垂らしながら、メイは歩いていた。



『おい!』
『げ……、その声は…』
一番最初は声が似ているとか言われたその声。
今でこそ違うが、最初の方は似ていたらしい。
『……ガキ…何してやがる…』
梅喧。
隻眼隻腕の剣士で、とりあえず強い。
ジョニー程じゃ無いが、強い(メイの主観)
『あのー…えーっと…』
暑さと唐突な状況変化の所為で、少々頭が混乱気味のゴールドメイ。
そんなメイが担いでいたのは…、『ギア』と呼ばれる少女だった。
『……』
梅喧がディズィーを見つめる。
そして…
『このギアを使って…何をする気だ!?』
『え?』
『問答無用!ブッ殺す!!』
刀を抜く。
そして、言葉通り問答無用な斬りを見せる。
メイはそれを何とかかわすが、体力は殆ど無い。
必殺じゃなくて必固のメイ・ダイナミック…と考えていたが、恐らく無理だ。



疲れて飛べません。



以上、メイの主張。
この娘…、恐らくサバイバルで生き残るのは無理だと思う。
まぁ今はいつもの武器の数十倍重い得物(金化したディズィー)を武器にしているため、疲労も増えるのだが。

とはいえ、流石にこのままでは殺される。
無理して飛ぶか…?いや、それだと相打ちの可能性が否定できない。
ディズィーを渡せば見逃してもらえるとも一瞬考えたが、仲間を売る事など出来ない。
そして、そんな事を一瞬でも考えてしまった自分を、心の中で責めた。


と、言うわけで、梅喧の容赦も遠慮も無い攻撃を避けながら考える。

とはいえ、メイの戦法は基本的に『力押し』だ。
そんな彼女の考える事も、その戦法に似た感じである。

『当たって砕けろぉ!!』

そう叫びながら、ジョニー愛の少女は、空高く飛びあがる。
メイ・ダイナミック。
その衝撃波に触れたものは、全て金に変えられるという謎の設定を持った、ゴールドメイ必殺技。
『おせぇよ!!』
だが、梅喧は見切っていた。
彼女が後ろに、大ジャンプをする。
『えっ!!』
空中でメイが叫び、そして地面に激突する。
頭から地面に付き刺さったディズィーの、足の上。
メイはそこで、一瞬落ち込んだ。
『おしかったねぇ…、じゃあ褒美と行こうか!』
梅喧がそう叫び、刀を構える。
『…くっ!』
メイは何とかして、それを避ける。
しかし親友の体重と太陽の悪戯によって体力を消耗させていたメイ。
その動きも非常に遅かった。
交わしたと思ったのが、刹那、血が吹き出る。
噴水のように、右手から血が大量に出た。

(……これじゃ、イカリもロクに振るえないじゃない…)
イカリというかディズィーだが。
ディズィーを引き摺りながら走るも…限界に近い。というか限界。
メイの行動を嘲笑うかのように、梅喧が目の前に現れた。
『…とどめと行こうじゃないか
…手前ェが『それ』を渡してくれるのなら話は別だがな』
ディズィーを指差して梅喧が言うが、メイはその質問に高速で答えなおした。
『絶対嫌!』
死ぬかもしれない状況で、メイが叫ぶ。
『これでもくらえ!!』
そして、…最後の抵抗のつもりで、メイはそこにあったドラム缶を投げつけた。







ドラム缶の中に入っていたのは、液体窒素と呼ばれるものだった。
梅喧はそれを知っていた。
その液体を被るだけで、凍りつく。
そのドラム缶を斬った時、彼女は後悔した。
『何…だと……』
動きを止めた。
だが、そのまま梅喧が動く事は無い。
自分の体が凍りつく。
体中が一瞬にして冷やされる感覚を感じながら、梅喧は意識を失った。

そして…、体がカチンコチンに凍り付き、ツララが生まれた。









『ん……』
メイが目を覚ます。
一瞬何が起こったか良く解らないが、意識がハッキリしていくうちに、こんな思考が生まれた。
(ああ…、ボクはジョニーを手に入れる事無く死んじゃったのね…
お父さんお母さん、こんばんはー)
だが、目の前の視界がはっきりしていくうちに、その思考は否定しなければなってくる。
『…アレ?』
惚けた声。

そこに、確かに梅喧がいた。
刀を高々と上げ、今にも斬りかかりそうな表情をした。
その梅喧の姿に一瞬ビクッとするが…、すぐに無駄なことだと解った。

梅喧はそのまま、凍っていたのである。

青白い膜が、彼女の身体を支配していた。
氷が彼女の体を全て拘束している。
その拘束された体を自力で動かすのは、非常に困難なことだろう。
一目で、彼女が冷凍されている事が解った。
体中の至る所から、ツララが垂れ下がっている。
どうやらあのドラム缶の中には、液体窒素が入っていたらしい。


氷漬けの剣士。
その剣士がもたらす冷気と、望まずとも取った休息。

『メイ、復活~!』
先程死にかけていた少女とは思えない声で、彼女は叫んだ。


そしてメイは更に進んでいく。
襲いかかってくる人間を、ミダスパワーで金に変えながら。






余談だが、先程外したメイ・ダイナミック。
それで街の人間が何人か金になっているのだが、今のメイには、余り関係の無いことだった。






相変わらずメイは、金の友達を抱いて歩いていた。
ジョニーを惑わす女性達を殺…もとい、動けなくするために
メイは頑張っていた。

ゴールドキャラという裏技を使ったメイは、今の所負け無しである。
いや、実際のゲームではこれを使っても某牛乳嫌いのギタリスト(ボスモード)に負けたりするのだが
とにかく、今の所は負け無しである。

『さてー、次はあの本当に料理人か疑問な人でもー』
と独り言を呟いきながら歩いている少女。


彼女の前に女っぽい男が現われたのは、その言葉を言ってから余り時間は立っていなかった。

『あーブリジットー!』
メイが少年の名前を大声で叫んだ。
『あ、メイさん!』
向こうも、少女の名前を叫ぶ。
『アレー、でも、ブリジットは確かボクが金にしたはずなんだけどなー』
『ああ、アレですか?アレはうちの偽者ですよ』
『偽者?…そういえば口調が少し違ったような…』
『最近多いらしいですので偽者、気を付けてくださいね』


一通り会話した後、メイとブリジットは別れた。
途中、『ブリジットって本当に男なのかな?』という疑問がメイの頭に浮かんだが
その事実は、歴史の闇に埋葬されていた。

『しかし偽者か…、でも、ボクの偽者になって何をする気だろう』
メイが再び独り言を開始する。
否、本人はもしかしたらディズィーに話しかけているのかもしれないが、残念ながら彼女は意識不明である。
差し詰め彼女は、道端の人形に話しかける少女のようなものだろうか?
そしてそんなロマンチックな少女は加速する。
『はっ!もしかして……』
恋する乙女特有の妄想が始まった。
『ボクに化けてジョニーに近づこうと……そんな事はさせないんだから、ジョニーはボクが守る!!』
ジョニーに近づくならグラマーな20代の女性に化けるのが一番だと思われるのだが
今のメイにそんな考えは存在しなかった。
そしてメイは、ジョニーに近づく悪女を固める作戦から
自分の偽者討伐に、目的を切り替えたのだった。

因みに、既にディズィーの事は頭に無かった。
この時のメイにとって、ディズィーは『ていの良い武器』にしか思われていないだろう。
テスタメントや育ての親が見たら無いていたところだ。
余談だが、某紙忍者の師匠は常に泣いていると思う。


相変わらず個性的…と言うよりは某医者と似ている足音を立てながら
メイは走っていた。
見つけるのは自分の偽者。
『早く倒さないとジョニーが奪われるわ』
という誇張気味の事を思いながら、メイは走っている。


探し続ける事2時間くらいで、ターゲットは発見できた。
それは確かに、メイの偽者だった。
髪の毛は灰色で服は紫だったが、明らかにそれは『メイ』だった。

『見つけたよ!僕の偽者!!』
後ろから錨のつもりで、黄金のディズィーを振り下ろす。
その事をとっさに感じ取った『偽者』は、叫んだ。
『な…何よ!君こそ僕の偽者じゃないの!?
錨じゃないしキンピカだし!』
そしてその台詞の間に回避行動を終了し、そのままこちらの隙を付こうと錨を回す。
金メイはそれに反応し、させまいとミストファイナーを繰り出そうとした。
ミストファイナーと言ってもジョニーのそれとは運泥の差だが、それでも敵の牽制には使える。
偽者…と思われるメイはミストファイナーを防ぐことができずに、ハートの霧をもろに食らってしまった。


この時点で、この偽者の運命は決まった。
金という物質に身体を支配され、意識ですら金色に染まり
動かない金の像になるという運命が。

ミストファイナーで体制を崩した偽者を、本物は見逃さなかった。
メイは上空に舞い上がり、あの技を出す。
かつて、ギアとのハーフであり、全身要塞とまで称されたディズィーを金像に変え
偽者とは言え、ブリジットを金に仕立て上げた技。

メイ・ダイナミック。

その衝撃波に巻き込まれたものはミダスの呪いにより、金と化す。
それは偽者のメイですら、変わりない。




既に、声を上げることはできなかった。
メイがディズィーを一振りし、肩に掲げる。
『へっへ~ん、余裕だね~♪』
嬉しそうに言う少女の下に、泣いている少女がいる。

手を見たら金色。
足を見たら金色。
これは紛れもなく自分の肌だが、その肌は人間の色をしていない。
『な…何よこれ~!』
偽者がそう叫んだつもりになった。
無論、現在は、その口さえも金に包まれている。

『でも、自分で自分を金にしたみたいで複雑だなー』
自分の形をした金の像。
メイはそれを見て、呟いた。


輝いた体は、人々を魅了する事ができる。
金色の体には、その能力は十分備わっていた。

正直に言う。メイは、メイに魅入っていた。
金色のメイは、何故か、金色のメイに魅入っていた。

『……もしかして…』

こんなに綺麗になれたら、ジョニーもボクに……。
少しだけ思ったその思考が…一つの過ちを呼んだ。

メイは深呼吸の後、自分に向けて、ディズィーをぶつけた。
渾身の力を込めたメイダイナミックの如く、自分の腹に。



メイは其処にいた。
メイは自分の船の倉庫に、ディズィーと一緒に居た。
メイは金の眠りに付いたまま、ジョニーを待つ。
既にジョニーに見つけられ、回収されたことも知らずに、ジョニーを待つ。

金色の少女は、待っていた。


この後、某長身の医者に治療されるまで、メイは金である。
愛する男の夢を見ながら、メイは金の眠りを受け入れていた。


なお、メイやブリジットの偽者は…俗に言う『同キャラ対決』という事で処理してもらいたい。

終わり






27 名前:GGX メイ2 投稿日: 2004/11/01(月) 22:44 [ GK8aQoSU ]
1-5 テスタメント

テスタメント「ん……子供か。この森に入るなと言われてないか?」
メイ「ボクは子供じゃないよ!賞金首のギアを探しに来たんだ!」
テスタメント「……年端もいかぬ子が殺しを生業とするとは。人はそこまで腐ったか!」
メイ「ええっと……」 (捕まえるだけのつもりなんだけどな)
テスタメント「この身体では子供とて容赦できん。死にたくなければさっさと帰れ」
メイ「ちょっちょっと待ってよ!」


1-6 ディズィー

メイ「見つけたぞ!」
ディズィー「まぁ可愛いお客様。遊びにいらっしゃったんですか?」
メイ(調子狂うなぁ)
メイ「そうじゃないけど」
ディズィー「それは残念です。外の方が見えられるのは滅多にないんです」
メイ「……さっきのおじさんが追い返してるんじゃないかな」
ディズィー「ええ。あの方は私を護ってくれているのですが……」
メイ「ちょっと、過激な守り方だよね。……あ、いけない。ボク、君を捕まえに来たんだ」
ディズィー「捕まえ、に?」
メイ「恨みはないけどお縄についてね!」


ED1

メイ「ごめん、痛かった?」
ディズィー「私は平気です。少し……悲しいだけです」
メイ(この人全然本気出してないな)
メイ「ゴメン、ボクの誤解だったみたい。賞金首って聞いたからもっと悪い人だと思ってたよ」
ディズィー「私の罪はギアであるということ……人と違うことです」
メイ「そんなのおかしいよ!」
ディズィー「あなたは優しい人ですね。でも人の世界には私の居場所はないようです」
メイ「あるよ!ちょっぴり裏街道で……時々警察に追われたりするけど」
ディズィー「まぁ、楽しそう」
メイ「じゃぁ決まり。新メンバーかぁ……ジョニーのいいプレゼントになるな」
ディズィー「ジョニーさんってどんな方ですか?」
メイ「ジョニー?ジョニーのことならいっぱい、いっぱい説明してあげるよ」


2-5 闇慈

メイ「あぁあ、負けちゃった……」
闇慈「そこをゆく嬢ちゃん!舞を一差しいかがかな?」
メイ「また変なのが出てきた……」


ED2

闇慈「間違いない。アンタ、ジャパニーズだね」
メイ「なぁに?そのジャパニーズって?」
闇慈「ふぅむ!ジャスティス封印時にもジャパニーズがいたとは……うわっちゃ!」
ジョニー「……消えろ!今、すぐにだ。」
メイ「ジョニー!」
ジョニー「よう!うちのお嬢様は元気にしてたか?」
メイ「ねぇジョニー?ボクの親って……」 (そのジャパニーズなの?)
ジョニー「ん?」
メイ「ジョニーとみんなだよね」
ジョニー「ああ。俺なんかで良けりゃな」 (いつか話をしてやらなけりゃな。だが今は……)
メイ「ジョニー大好き!」
  • ABOUT
うろほらぞ
Copyright © うろほろぞ All Rights Reserved.*Powered by NinjaBlog
Graphics By R-C free web graphics*material by 工房たま素材館*Template by Kaie
忍者ブログ [PR]