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回想

思えば、あれから数年たってしまった。今まで大勢の孤児を引き取ってきたが、まだ幼さ残る少女メイに出会ったときのことはよく覚えている。

まだ五月だというのに酷い土砂降りだった。食料燃料調達のためにおりた小さな街で、人通りの比較的多い場所を何気なく彷徨っていた。
突然、何かにぶつかった。下をみると小さな少女が立っていた。赤い服に短めのスカート、手にはくまの縫いぐるみを抱えている。どこかの金持ちの子が迷いこんだのだろうと、目線を少女に合わせた。
うつむいていた少女の眼をみた瞬間、身体に何かがとおりすぎた。

かつて父親を失い孤独に蝕まれた自分が、今再び目の前に立ってこちらをみていたのだ。少女の目は虚ろながらこちらをじっと見つめ続けている。
この子は自分自身なのか…孤独から抜け出したのは嘘だったのだろうか…。いや、この子は自分じゃない…そう言い聞かせ、いつもの調子で声を掛けてみる。
「よぅリトルレディ。何か探し物かい?」
虚ろな瞳が少し動いた。そしてゆっくりと口を開きだす。
「とうさま…かあさま…さがしているの…」
「ほう…そうかい、迷子になったのか。よーし、俺が一緒に探してやるよ」
そう言ってさんざん歩き回ったが、それらしい人物に会うことはなかった。後から聞いた話だがその街はコロニーから脱走した日本人が密かに暮らす街で、その日大掛かりの捜査で数人の日本人が捕まり、数人は戦闘で死んだという。その中に確かに少女がいたらしいと証言する者がいたそうだが、行方を知るものは少ない…。


















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 028「抱擁

 ― ところかわればしなかわる。 ― 」




たとえ心と身体に消えない傷を持とうとも
その細腕で刀を操ろうとも
本質はひとりの娘にすぎない・・・―――








 とはいいつつも梅喧にも苦手なものはある。

 たしかに何度も手合わせをしている関係がてら顔見知りも増えた。

 友人とは彼女自身が認めようとしないがそれに近い存在もたくさんできたように思える。

 ただ"普通の友人"とちがうのは決してなぁなぁな間柄ではないこと。今でもこうして時折剣を交えること。そういったことだろうか。





 ただ、ジャパニーズである梅喧にとって日本文化は馴染みがあるのだが、どうしてもこの外国の慣習だけは苦手なのだった。



「あーっ梅喧さんだ~!わ~いっ!!」

 と、久々に会ったメイが顔見知りの側にかけよってきた。

「・・・おう、ちんくしゃ・・・」

「ひっさしぶり~っ!!」

 と言うが早いが再会の抱擁。

思い切り抱きしめられて「ぐえ」と梅喧が変な声を上げた。

 それから両頬の近くでキスをするのだ。言われるまでもなく西洋流友人同士の挨拶。

「・・・わわっ!?あのなぁ、それやめろといってるだろうが!」

「え~?だって久しぶりに会ったんだからいいじゃない~!?」

 とは口で言っているもののまだメイはいい。

 まだ女同士抱きつかれても所詮はお遊戯のようなもの。気安いものである。

 



 問題はそれ以外だった。





「こまんたれぶ、まどもあぜる?」

 例えばスカしたフレンチとか。

「ないすつーみーちゅー、まいきてぃ?」

 例えばお調子モノのイングリッシュとか。

「はうづゆどぅー、ぷりんせす?」

 例えば能天気なアメリカンとか。

「う・・・うわぁっ・・・!!?」

 しかも揃いも揃って<見た目"だけ"なら>(強調)イイオトコ揃いである。

 そんなのが満面の笑みをたたえて両腕を広げて迫ってくるのだ。

「来るんじゃねぇー・・・っ!!」

 その上こちらが悲鳴を上げているにも関わらず思い切り抱き寄せて頬、耳の側で口付けのような音をたててくれるのだ。

「きゃぁぁっ!?」

 お、本邦初公開的女性らしい悲鳴!!

「やめろってんだ、この変態!!」

 軽やかな音が青空に響いた。





「・・・いたた・・・だからって張り手はないんじゃないですか、張り手は?」

「そうだよ、再会を祝してハグしてほっぺにビンタなんてワリにあわねぇぜ?」

「右に同じだ。もうすこし歓迎してくれても撥は当たらないと思うがな?」

 と、殴られた男共ことカイ、アクセル、ジョニーが頬を押さえながら文句を言っていた。

「やかましい!てめぇら日本語話せ、日本語!!」

 そういえばなぜかひらがな発音で話してたな。

 しかもこちらの動悸がおさまらないうちに。

「ま、そりゃともかく。そんじゃ、はじめようか。」

 なんて試合開始になられたって。「ちょっと待て!」

「ん?だってそのつもりなんだろ?」

「この状況で集中できるか!!」

これじゃぁ実力が出せるようになる前に時間もかかるというものだ。







 というわけで。





「やっぱ貴様が一番組みやすいな!」

 と梅喧が珍しく笑いかけた。「さ、はじめようぜ?」

「あ゛?」

 ソルが不満と不可解といった表情でたずねかえした。

「どういう意味だ、おい?」

「そのまんまの意味さ。」








 再会しても挨拶もロクに返さない男。

 抱擁されないぶん気が楽だ。




 001「存在理由

― 50物語はじまるよ! ―」




「あ、ミリアさんだ、やっほー!」

 春の訪れを感じながらパリの中心街近くにあるオープンカフェでカフェラテを飲んでいると声を掛けられた。

 眼を転じると茶色の髪と茶色の瞳を持ったよく知る少女だ。

「あら、メイじゃないの、久しぶりね?えっと隣の子はエイプリルだったかしら?それからそちらは・・・」

「こっちはこの前新しく友達になったデイジーだよ!」

 紹介された友達二人が会釈をする。

「そう、よろしくねデイジー?それから・・・・」

 少女たちのなかで頭ひとつ以上背の高い彼の存在はひときわ眼を引く。「あなたもいるなんて、どういう風の吹き回し?」

「・・・どうも、お久しぶりです・・・。」

 名乗られなくても知っている。カイとか言う有名人とは先日戦ったばかりだし、それからの顔見知りでもある。

 快賊団のメンバーについて歩く警察関係者。ということは私も彼に対してここでは友人として振舞った方がいいのだろう、と判断してにこりと微笑むことにした。 

「ん?お知り合いなの?」

 メイが私とカイの顔を見比べて尋ねた。

「ええ、ちょっと以前にふとしたことで。ね?」

 まぁ現在の私は晴れて自由の身なのだから警察だろうとなかろうとこそこそする必要もないのだが、かといって少なくても現時点では仲良しとはいえない。

「そうですね、あの時はどうも。」

 軽く一礼するあたりが謙虚な彼らしいと、思う。

「あ、ねぇねぇ、ミリアさん!ここ座っていい?」

「ええ、勿論よ。」

 メイは「わーい」と言いながら近くのテーブルや椅子を友人たちと動かして5人掛けのテーブルを作り出した。

 早速店内からボーイがやってきてメニューを渡す。デイジーが隣のエイプリルという子に飲み物の種類と意味を尋ねている。

「ココアって何?」「甘くて美味しいもの」という会話が聞こえた。

「ミリアさんは何を飲んでるの?」

「カフェラテよ?」

「ふーん・・・よーし、じゃぁ私もそれにしよ!カイさんはやっぱり紅茶だよね?」

「そうですね、それにします。」

「よーし決まり!ねぇねぇそっちは?え?ココアとカプチーノで迷ってる?どっちでもいいじゃん、そんなの!」

 あいかわらずにぎやかな子だと思う。その明るさが微笑ましくて少しうらやましい。

 そう思いながら眺めていると彼と目があう。

「・・・何・・・?」

「あ、いえ。お気を悪くされたのなら謝ります。先日お会いしたときにはロクに喋れなかったので貴方という方がどんな方なのかとおもいまして。」

 先日ザトーの件でやりあった。親しく言葉を交わすのも偶然会った今日が初めてだ。

「そうね、私も同じ気持ちよ。貴方の噂はよく耳にしたけどどんな人かを知らないもの。」

「あれ?ミリアさんカイさんとお知り合いじゃなかったの?」

 メイが耳ざとく聞きつけた。

「ええ、本当にすれ違い同然の間柄だったの。」

 戦ったという事実まで口にする必要はないはず。

「ふーん・・・?あ、えっとね、カイさんってカップを集めるのが大好きで遊びに行くとね、家に棚があってねひとつずつちゃんと飾ってるんだよ?すごいの!もー、さっすがセレブってかんじなの!」

「ティーカップコレクター?」

 意外な趣味と快賊である彼女を家に招き入れるという事実の不可解さを混ぜて尋ねるとはにかみながら頷いた。

「・・・あ、ええ。まぁ・・・」

「マイセンとか、ウェッジウッドとか?」

「・・・他にもリモージュとか、シルヴィー・コケ、アピルコ、ロイヤルコペンハーゲンやリチャード・ジノリとか・・・あとはヘレンドとかありますが、ガラが気に入ったものならブランドはそれほど拘らないんですよ。」

 ほとんど知らないブランド名を出されたが、陶器にかぎらず基本的にブランドには正直興味がなかったので「ふーん」とだけ返しておく。彼もそれはわかっているのか格別気分を害したようにはみえなかった。

「ミリアさんはねー、ネコが大好きなんだよね~?」

「へぇ、ネコですか。飼っていらっしゃるんですか?」

「いいえ、近所の野良猫を追い掛け回すのが趣味なの。」

 その言葉をどう捕らえたのかはしらないがよほど微笑ましく解釈したらしい。「それはそれは」と言って眼を細めている。

 無理してこの和やかなムードを壊すこともないだろう、と思いあえて訂正はしないようにする。

「でも意外ね。メイにこんなお友達がいたなんて。いつも彼の家ではどんなことを話しているの?」

「え~?たいしたことは話していないよ?近くに寄ったから遊びに来たとか、珍しいものを見たからその話をしてあげにきたとか?」

「では今日もお土産話をしにいっていたの?」

「ううん、ちがうよ。今日はギルドにきた私たちが道を歩いていたらたまたまカイさんが買い物に来ていたの。で、このあたりでお茶できるとこといったらここかあっちしかないでしょ?だから・・・」

 それで私に出くわしたというわけね、納得。

 デイジーとエイプリルは私がいるから遠慮しているのかあまり喋ろうとしないようだ。

 そろそろ話を振ってあげた方がよいのだろうか?

「そうそう、それでカイさんが先日魔の森に行ったときにへんなロボットに追いかけられたっていう話を聞いたんだよ、ねー?」

「へんなロボット?」

「ええ、私と同じような服を着た、同じ雷系の法術を得意とするロボットで、『みつけたぞ、我輩のレゾンデートル』とか何とか言っていました?」

「・・・れぞんでーとる・・・ねぇ・・・?」

「ええ。何のことやらさっぱりで・・・。」

「心当たりないの?」

「さっぱり」と言うカイの声と重なる用にデイジーが「あ、ソルさん。」と呟き、同時にカイが立ち上がった。

「ですがあの男の存在意義ならわかってます。『私と勝負すること』!!失礼!」

 といいながら音速を超えるスピードで私たちの視線の先にいる男のところにダッシュしていった。

「ソル!今日こそ本気で戦ってもらうぞ!」「どっから沸いてきやがった!?」という声が聞こえてくる。

「・・・・????」

 呆然としている私の側でメイが苦笑しながら教えてくれる。

「カイさん、ソルさんに本気で戦ってもらって勝利することが人生最大の目標なんだって。ずっとあんな感じで挑戦してるの。」

「・・・・すごいわね・・・」

 見た目お坊ちゃんなくせにあんなに熱いとは思わなかったけど・・・。

「ちなみに、メイの存在意義は?」

「私?とーぜんジョニーのお嫁さんよ!」

「そう。ふたりは?」

 眼を向けると二人とも困ったように笑う。

「えーっと・・・存在意義ってなんですか?」

「・・・考えたことないなぁ・・・」

 そうか、そうよね。存在意義といわれても普通意識して考えることでもないのかもしれない。

「ねぇねぇ、ちなみにミリアさんの存在意義ってなに?」

「わたし?」

 そんなの、問われるまでもなく決まってるわ。



「あの男・・・エディとかいう男を殺すことに決まっているじゃない。」



「・・・・・」

「・・・・・」





 ね?明白も明白。

 だから、どうしてみんな沈黙するの?





 「 母 ~mere ~

― 主人公はこんな奴じゃ・・― 」




―――・・・あの時感じた暖かい気。

「待て、ソル!今日こそ勝負してもらうからなっ!!」

―――・・・間違いない。たしかにあの人だ。

「手前なぁ、坊や!?いい加減にしろ!つってるだろうが!!」

「黙れ!これ以上子ども扱いさせないためにも、今日こそ認めさせてやる!!」

―――・・・ずっと探していた。

「お、今日もやってるねー、御両人?」

「あ、闇慈さん!あれほど不法入国はダメだと・・・!」

「あ、やべ。」

―――・・・あの時から決して忘れたことはなかった。夢にまでみた暖かい存在。

「あそこだ、あそこにいる・・・!」

「え?何が?って、あ・・・!?」

―――・・・行かなければ。会いに行かなくては。

「キ・・・キャーッ・・メイ、たいへんだよーっ!!」

「どうしたの、エイプリル!?」

「デイジーがっ、デイジーが急に飛び下りて・・・!」

「えーっ!?」





―――・・・あの時感じた懐かしい気がすぐ手に届くところにある。・・・―――





 捜し求めていたあの感覚の持ち主。

 直感的に相手を呼びながらその胸元に飛び込んだ。





「お母さん・・・っ!!」




「え゛・・・?」





 我らが主人公、『ソル・バッドガイ』の胸(なぜか強調)に。



 突然のカタストロフに世界が凍結した。

『・・・・・・・』





 しばらくお待ちください。





「・・・おい・・・何の真似だ、コレは・・・?」

 流石主人公。復活が一番早かった。

「え?だって、貴方がわたしのお母さんなんでしょう?」

 デイジーが本気で不思議そうに首をかしげた。

 己の胸に美少女が顔を埋めるという全世界男性陣垂涎モノのシチュエーションのはずなのだが何かがちがう。

「・・・だから、誰がおかあさんだ・・・?」

「え、アンタその子のお母さんだったのかい!?」

 闇慈が思い切り本気にした。

「ちがうっ!!」

「ちがいませんっ!!」

 デイジーが思い切り本人を否定した。

 ガランと重い音がした。

「・・・?」

「・・・"おかあさん"・・・?」

良く見るとカイの手から封雷剣が落ちていた。

「・・・ソルが・・・?実は女性・・・?」

 呆然とカイも呟いている。

「・・・つまり、私は今まで女性に負け続けて・・・・」

「おい、手前も何ボケてやがんだ!!」

 「俺のハダカなら騎士団時代に風呂場で腐るほど見やがっただろうが!」という抗議は全然彼の耳に届いていない。

「カイ殿~?」

「・・・な、情けない・・・仮にも女性に負けるなんて自分が情けない・・・」

「逝っちゃってるね。」

「・・・・。」

 びったりと抱きついてくるデイジーは離れようとしない。

「あの時暴走しかけた私を止めてくれたあの暖かい気・・・たしかに貴方でした!」

「くだらねぇ、証拠でもあるのかよ?」

「私が間違えるわけありません!」

「あ、いた!デイジーっ!」

 友人である少女ふたりがこちらに走ってきた。

「突然飛び下りたから心配したんだよ!」

「どうしたの!?」

 と、口々に説明をもとめる友人にやや頬を染めながらデイジーがソルを紹介した。

「私のお母さんなんです!」



『!?』




 再びカタストロフが起きた。





 しばらくお待ちください。





「お母さん?」

「この人が?」


「はい。」

 少女二人早速たしかめ始める。

「・・・おい、手前らなにしてやがんだ・・・?」

 べたべたと体中をまさぐら・・・訂正、さわりまくられてソルが静かに怒り始めた。

「確かめてるに決まってるじゃない。」

 胸の辺りを重点的に。

「セクハラで訴えるぞ」

「男には適用されないのよ?」

 否、適用されますから。

「だって、あの時エイプリルが教えてくれたんです。わたしが暴走しかけたその時に止めてくれたひと・・・!あの時の懐かしい気を持った人・・それがきっと私の" お母さんだ"。って・・・!」

「あ、あはは・・・」

 エイプリル固まった。

「・・・手前か・・・」

「えーっ!?でもその後で"お父さんかもしれないね"!?って言ったんだよ!?」

「あ、でもそういうことはデイジーのお父さんかお母さんがソルさんってコト?」

 "お父さんかお母さん"というのも何だが、メイが口を挟む。

「絶対そうです!」

「あのな・・・」

 ソルが抗議を続けようとするところで復活したらしいカイが声をかけた。

「何だ、おまえ結婚してたのか?」

「してない。」

 きっぱりと言った。

「だから、例の女性とか?」

 なおもソルが抗議を続けようとするところで闇慈が声をかけた。

「ん?アンタ結婚してないの?」

「してない、つっとるだろうが。」

 すっぱりきっぱりと言った。

「ってことは独りで産んだのかい?」

「何でそうなる!?」

「いや~あんたのことだから口から卵でも出して、そこから彼女が産まれたのかなーっと思ってさ・・・」

「誰がナメ●ク星人だ!」

・・・ド●ゴン●ールって知ってる?

「・・・ってことは・・・?」

「あ、だったら離婚したとか?だから"今、結婚していない"んだな?それで離婚した相手の方がお独りで産んだとか・・・!」

と、顎に手をやる。「だってあのひとじゃないとすると相手の女性は誰なんだ?」

真面目神教徒なカイはあくまでも真面目路線に質問する。

「あの人って?」とメイに「昔の亡くなったとかいう恋人・・・?」と答えている。

「それって何年前?」

「あ、そうか。・・・そういえばデイジーって何歳でしたっけ・・・?」

「くどいぞ!知らねぇ、つってるだろうが!」

 闇慈がぽんっと手を打った。

「なんだ!つまりそのヘンでひっかけた女とゴムもつけずにヤって失敗した、ってわけか。うっわ、ダッセ・・・」

「墜ちろ!!」
 闇慈をぶちのめして少しすっきりしたのかソルは改めてデイジーに向き直った。

「とにかく、人違いだ。俺はお前の父親じゃねぇよ、悪かったな。」

 仮に真実の親子だとしても名乗るつもりはない。真偽は別として。

「・・・じゃぁお母さん・・・?」


「もっとちがう。」


 つっこみが素早かった。



「・・・そうですか・・・・・・私のお母さんでも、お父さんでもないのですか・・・」

 さびしそうに言われて少し心が痛んだ。





「・・・"ぱぱ"って言いたかったのにな・・・」



 それを聞いた瞬間。

「・・・ぱぱ・・・」

 ソルの身体を電撃が走り抜けた。

「・・・"パパ"・・・」

 しかも繰り返していた。

「・・・ど、どうしたんだ、いきなり・・・?」

「何かスイッチ入ってるよ・・・?」

 ふるふると感動している我らが主人公に怪訝な視線が集まった。

「・・おい、なってやってもいいぜ"父親"に。」

「え、本当ですか?」

「・・・"なってやる"・・・?」

 突然の宗旨変えに友人たちの怪訝な顔をものともせずにデイジーの顔がほころんだ。

「嬉しいです!」

「じゃぁまずは食事にでも行くか。」

 髪を掻き揚げて偉そうに言いながらソルが彼女の肩に手を回す。

「で、それから一緒に風呂に入って背中を流しあってだな・・・」



『テメーは援交のオヤジかっ!!』


 その場にいたほぼ全員のどつきつっこみが入った。











 その後しばらくソルがゼリーフィッシュ団に出入禁止になったのはまた別の話ということで。





 「 夏 ~ete~

― 泳ぎに行きたい・・・(涙) ― 」




花の都巴里の中心部、ギルド近くのオープンカフェ。

 今日も華やかな笑いが広がっていた。



「あーっ、このタンキニ可愛いアル!」

「そうね、でもやっぱり貴方の場合はこっちの大人っぽいデザインの方が似合うと思うわ?」

 と、今月発売した雑誌の今年流行の水着紹介ページを広げている美女ふたり。

「寧ろ、こういったタンキニのほうは彼女の方がイメージとしてもぴったりなのじゃないかしら?」

 その声に呼応するかのように横手からもう少し幼い声があがる。

「えーっ?どれどれ、見せてよ!」

 と覗き込んだ少女が「きゃーっかわいーっ!!」と歓声を上げて友人ふたりにも見せる。



 ミリア、紗夢、メイ、デイジー、エイプリル。



 このような美女と美少女たちが5人も集まっているのだ。当然道行く人間たちの視線を集めないわけがない。

 だが、本人たちは気にも留めずに今年の水着の形や柄、色などを銘銘批評し合っている。

 机の上、ジュースの入ったグラスの水滴がなんとも涼やかである。

「あ、ほんとだ。これだったらビキニ初心者なデイジーにもいいかもね?」

 これはエイプリルだ。

「え?あ・・で、でも・・・」

 とデイジーが躊躇する。

「だってこれ以上大人しいのにすると絶対地味になっちゃうよ、ねぇメイ?」

「そうそう。海なんだからハデなくらいがちょーどいいんだって!あ、でもこんなのじゃ絶対ジョニーを振り向かせられないよね・・・やっぱりもっとオトナっぽいのにしたほうがいいのかなー・・・?」

 ついでになかなか姦しいです。

「じゃ、じゃぁエイプリルも同じようなの着てくれる?」

 デイジーがおずおずと切り出してエイプリルが快諾する。

「同じってタンキニってこと?いいよ?じゃぁタンキニでおそろにしようよ!で、メイは?」

「んーじゃぁこれ!」

「・・・これはちょっと早いよ~・・・」

「えー?」

「どれアル?あー・・・たしかにちょっと早い気するネ。」

「あなたならその隣のもう少しスポーディなデザインにしたほうが似合うんじゃないかしら?」

 ミリアと紗夢も覗き込んでエイプリルに同調する。

「・・・う゛-・・・どーせ私は幼児体型よ~っ・・!」

 拗ねてしまったメイをとりなしていると側で自転車のブレーキ音が聞こえた。

「こんにちは、皆さんお揃いでどこか行く相談ですか?」

 今日も愛機(と書いてママチャリと読む)"ソル"にまたがって町内巡回をしていたカイが声をかけた。

 ちなみに<ママチャリ"ソル">さん、友情出演です。有難う御座います。

「あっ、カイさ~んっ・・・!!」

 紗夢が早速きゃぴきゃぴモードで反応した。つまり声のトーンが高いというアレだ。

 デイジーとエイプリルが「こんにちは」と挨拶を返しそれにカイが「こんにちは」と律儀に応える。

「うん!みんなで海にいくんだよ!」

「それで、どんな水着を着ていくか選んでいたのよ。」

 メイの返答にミリアが補足説明をする。

「へー、良いですね。今年の流行りというと・・・白とか、花柄とかそんな感じですか?」

「そうね、やっぱり今年もセパレートタイプが主流かしら?ビキニとかタンキニとか人気があるわ?」

「へぇ?」

 たんきにって何だろ?とは思ったが『そんなことも知らないの?』と言われるのは眼に見えているのであえて尋ねない。あとで同僚にでも訊いてみよう。

「そ、それでカイさんの好きな水着てどんなのアルか?」

「はい?」

 紗夢の質問は間違いなくカイ好みの水着を自分が着るという乙女心から発せられる質問なのだが、彼女にとって不幸なのは相手が鈍すぎることではある。

 つまりこの質問の主旨は当然"紗夢に着て欲しい水着はどんなのがよいか?"、だが。

「えーっと、そうですね・・・その人に似合う水着ならどんなのでも良いと思うのですが・・・」

 彼女の想いにも女性のファッションもわかっていない典型的なセリフであった。

 このセリフに女性陣が一斉に溜息をついた。

「・・・・え゛・・・・?」

 これみよがしに溜息をつかれて本気で戸惑っている野暮な男がひとりいる。

「・・・どんなのでも・・・てのが一番困るアル・・・」

「・・・これだから男ってのは・・・」

「ほんっと女心をわかってないよね~・・・」

「ゲンメツ~・・・!」

「・・・カイさん冷たいです・・。」

「・・・・う゛・・・っ・・・」

 それぞれ独りずつコメントしてもらいました。

「だ、だってそんなの男が見たってわからないですよ!?どう違うのか良くわからないし」

「貴方の好みでいい、って言ってるじゃない?色とかガラとかそういうので良いのよ?」

 ミリアがとりなしたがカイのピンチは変わらない。

「ほら、紗夢ならこんな色が似合うっていうあなたの持ってるイメージがあるでしょ?たとえばそういうものでもいいのよ?」

 実際女の水着に詳しい男のほうが珍しいのだ。詳しすぎる男なぞ場合によっては変態である。が、そんな言い分を聞く彼女たちではない!

「・・・え・・・えっと・・・・」

 かつての聖戦にてギアの集団に囲まれたときよりも、ジャスティス譲と対峙したときよりも、一度三途の川の側で花畑に囲まれたときよりも(*某ドラマCD参照)ロボカイくんに執拗に勝負しろコールされたときよりも、びらびらソルさんにギアを食わされかけたときよりも(*拙作『食』参照)・・・ぜぇぜぇ(息切れ)・・・苦境に立たされているかつての英雄殿。

―――・・・・・・し・・・しかたない・・・!!

 と、覚悟を決めると徐に手を上げてびしりと雑誌の一部を適当に指した。

「では、それで・・・!!」

 一斉に指先の雑誌モデルに視線があつまった。

「・・・・あ・・・・」

 女性陣が写真とカイの顔を何度か見比べて何故か驚嘆の顔をした。

「・・・そういう趣味とは・・・」

「・・・隅に置けないね・・・」

「え゛?」

 雑誌の記事が角度的にほとんど見えないカイはなにがなんだかよくわかっていない。

 ちなみに的確に指示したものが実は・・・というのはよくあるお約束でもある。

「・・・わ、わかたアル。がんばて着てくるアルよ・・・!」

「えらいな、紗夢さん・・・愛の力は偉大だね~・・・」

 何故か顔を赤くして決意を固めている紗夢としみじみ語るメイ。

 ―――・・・一体どんな水着なんだ!?

とカイがかなり本気で焦り始めたのだが女性陣は教えるつもりはないらしい。

「あ、そういえばカイさんって次のお休みいつなの?」

 ふとエイプリルが声をかけた。

「休み、ですか?」

「夏休みとかないの?」

「夏休みっていうと長期休暇ですか?あ、えっと再来週あたりに一週間ほどまとまった休みが取れる予定ですが・・・?」

「じゃぁさ、じゃぁ私たちと一緒に海いかない!?」

 メイの提案はおそらく殆どの男性陣にとっては魅惑的なものだったに違いない。

 何せ美女たちに囲まれて海に泳ぎに行くのだ。しかも旧知の仲だから気の置けない関係でもある。これ以上ないくらい美味しい状況ではないか。

「え?否その・・・」

 だが彼女たちの意に反してカイの返答は煮え切らなかった。

「すみません、たいへん素晴らしい御提案だとは思うのですが、私はちょっと遠慮させていただきます。」

「えーっ!?」

「どうしてですかぁっ!?」

 少女たちの悲鳴じみた抗議に「すみません」ともう一度謝るとカイは早速逃げの体勢に入った。

「ちょっと、海は遠慮します。それよりも勤務中なのでそろそろこの辺りで。」

 一見さりげに優雅っぽい動きだがどうみてもこの立ち去り方は慌てている。

「本当に申し訳ありません、お話のつづきはまたいずれ!!」

 と言うが早いがペダルに足をかけて漕ぎ出し始めた。気持ち立ち漕ぎだ。が。

「・・・早っ・・・・」

エイプリルの感想は正しい。

 1秒後には数メートル先にいるあたり人間の出すスピードではない。何故そこまで焦っているのだ、カイ・キスク?

「・・・甘いわね。」

 言うが早いがミリアが席を立った。

 その瞬間彼女の髪が数十メートル先を行くソル(ママチャリ)の後部車輪を捕らえた。

 たった数秒でもう数十メートル先を走っているカイの漕ぎぶりもすごいが後部車輪をジャストミートで捕らえたミリアもなかなかであるといえよう。

「うわっ!?」

 悲鳴を上げてカイが前のめりに投げ出される。

 ミリアがすぐに髪をソル(ママチャリ)から離した。

 いくつかの車の急ブレーキの凄まじい音が巴里の町を賑わした。

「ああ・・・っ・・・"ソル(ママチャリ)"が・・・・!」

 ちなみに悲鳴を上げているカイは受身を取って無傷ではあるが、ソル(ママチャリ)の方は哀れ大型車の餌食になってしまった。

 ・・・って友情出演の自転車を大破させてよかったのだろうか・・・(滝汗)

「殉職したようね?」

 いや、まだ生きてますから。

 とりあえず近くに歩いてきたミリアに抗議する。

「酷いですよ、ミリアさん!あなたのせいで「ソル・40代目(フィエルツィヒスト)(※VIERZIGST)」がダメになってしまったじゃないですか・・・!」

 「馬鹿野郎!」と怒鳴り声をあげていた運転手を黙らせて(をい)なんとか救出して見ると後輪が完全にひちゃげてしまっている。

「40(ふぃえるつぃひすと)?」

「今年に入ってからもう25代目です。それで先日警察庁の経理課のひとから小言をいわれたばかりだっていうのに、また文句言われる・・・。」

 っていうかママチャリ40代目って壊しすぎ。相変わらずソルさん愛されてないな。
(・・・友情出演なのに・・・)

「いいじゃない、ホームセンターで買えば。」

「・・・うわ、消費世代の発言・・・」

「まぁまぁ、形あるものはいつか壊れるわ?」

 いや、タイヤ替えればまだ使えますから。「それよりも先刻の話の続き。」

 ミリアに連れ出され・・・というかほぼ連行に等しい状況で先程のカフェに戻る。

『おっかえり~っ!』

 少女3人のユニゾンに出迎えられ、すっかり後輪が歪んでしまったソル(ママチャリ)を引きながらカイは溜息をついた。

 気分は吊るし上げである。

「待ってたよ~カイさ~んっ!」

「・・・・どうも・・・・。」

 嬉しくない!という反論を飲み込んで力なく挨拶する。

「・・・えっと、勤務中なのであまり御一緒はできないのですが・・・」

「いいじゃない、ちょっと遅めの昼休みってことにしちゃえば?」

 折角の牽制はあっさりミリアに崩される。「それか、この子たちに対しての職務質問という手もある、でしょ?」

 この子たちというのは御存知快賊団の少女たちだ。

 魅惑的に微笑まれてつい苦笑した。大粒の汗もついている。

「よくそんな言い分けが思いつきますね・・・」

「貴方の要領が悪いだけよ。」

「・・・はぁ、すみません・・・・」

「そこがカイさんの良いとこアルよ。」

「・・・紗夢さん・・・」

 「ありがとうございます」と笑顔を向けられて紗夢の瞳が釘付けになっている。

―――・・・やっぱりかっこいいっ!

 と見惚れている彼女の手は乙女御用達な祈りの形になっている。





「ここ、いいですか?」

 と、いきなり声を掛けられて紗夢は視線を上げた。

「え?あ、も、もちろんアル・・・!」

 カイはわざわざ紗夢の真向かいの位置に椅子を持ってきて腰を下ろす。他の少女たちの意味ありげな視線を感じたが気にする様子はない。

「それで、紗夢さんは本当に私のリクエストに応えてあんな水着を着てくださるおつもりなんですか?」

「だ、だってあれが良いって言ったのカイさんアルよ?」

 と、軽い非難を込めて言うとくすくすと笑いながら「冗談なのに」と返してくる。

「え?や、やっぱり冗談だたアル?」

「ええ・・・。本気にしてくれたんですか?可愛いなぁ、紗夢さんは?」

 抗議をすべきか一緒に笑おうか迷っていると不意にカイが紗夢の手をそっと取る。

「・・・阿・・・・」

「でも、嬉しかったですよ?私のために頑張って着てくださるといってくれたこと?」

「た、たいしたことじゃないネ?それより本当に海にいしょに来てくれるカ?」

「勿論。ああ、でも貴方の素敵な水着姿を間近で見られるなんて、私は世界一の幸せ者だな・・・。」

 と、彼女の手をそっと握り締めながらにっこりと微笑んだ。



 ・・・以上紗夢の妄・・・訂正、トリップ内容。





「・・・カイ同士、真好看(ステキ)!我愛・・・!ぶっ・・・」

 無意識的に抱きつこうとした紗夢はなぜかどこからともなく出てきたメイの碇によって阻まれる。

「そうそう、それで先刻の続き!なんで海嫌なの?」

 ちなみに現実世界のカイは少女三人に囲まれるかたちでつるし上げを喰らっている。

「嫌というか、何と言うか先ず水着を持っていませんし・・・・」

「買いにいけばいいじゃん?うんそうだ!今度の休みにでも一緒にいこうよ!?」

「・・・・え・・・えっと・・・」

「ね?決まり!大丈夫、絶対似合うのを選んであげるから!」

「そうそう!!」

 ヤバイ。これ以上いくと押し切られて否応でも海に連れて行かれる。

「すみませんっ・・・!どうしてもその、泳ぎに行くのだけは許してください!!」

「え?」

 さすがにここまで拒絶されるとは思わず女性陣はつい驚愕の眼でカイの顔を見ていた。

「・・・・・・・。」

「・・・どういう・・・こと・・・?」

覚悟を決めて白状することにする。

「その・・・恥ずかしながら、水が怖いんです・・・」

「水が怖い?」

「・・・泳げないってこと・・・?」

「いえ、その・・・昔は泳げたのですが・・・その、何年か前に溺れかけて以来、水が怖くなってしまったんです・・・。」

 衝撃の新事実。

「・・・あれは聖戦が佳境に入りかけた頃でした・・・・」





打ち捨てられているビルと呼ばれていた廃墟の数々。

黒く煤けたコンクリートの壁の合間に見える赤くくすぶる炎

。ここには破壊と死しかない。そんな光景が広がっている。





「このあたりのギアは大方殲滅しましたね、では次のポイントへ移動しましょう?」

「はい。」

 



眼の前は廃墟と呼ばれる世界。

眼の前は炎と瓦礫と屍と流血。

 とくに眼を引くのがギアと呼ばれるクリーチャーの死骸。



 その中で金色の髪と白いコート姿の彼は一際眼を引いた。

 若き指揮官の命令に異存を唱える者はいない。

「先鋒隊がいるのはここ、ドナウ河を渡った辺りです。」

 大勢の"大人"たちに囲まれている彼の姿は傍目には神々しく映りこそすれ決して異様にみえることはない。

 まだ成長期に入りかけた彼は側にいる背の高い茶色の髪の男から地図を受け取って隊員たちに指示してみせた。

 現在、彼、カイに付き従っているのは1小隊10人前後。あとの先鋒隊とは連絡をとりながら合流場所を目指す。

「かろうじて残されている橋がこのあたりにあるとのことですが、当然ギアからも発見されやすくなりますし、橋を落とされたら終わりです。くれぐれも移動は慎重にしてください。」

「はい。」

 といった指示をしながらドナウ河の川辺に来た。ドナウ河は歩いて渡ろうと思えば渡れないことはないが何も無理して骨を折る必要もないはずだ。

「・・・そうだな、すみませんが何人か船に戻って乗り物を持ってきてください。」

 そう言いながら手下の6人を選び出すと指示する。

「それから可能ならまだ無傷な橋がどこにあるのかを探索してきてほしい。我々もこの辺りを探していますのでまた端末に連絡してくださいね?」

「わかりました。」

「カイ様もお気をつけて。」

「ありがとう、よろしく頼みます。」

 立ち去る彼らの背を見ながら無事再会できることを祈っていると横手からぶっきらぼううな声が聞こえた。

「・・・今から船に戻るなんて、それこそ日が沈んじまうんじゃねぇか?」

 口をへの字に曲げての抗議だ。

「仕方ないだろ?これだけの大人数だし、橋がどこにあるのか正確な位置まではわからないんだ。歩くよりは車のほうが機動性に富んでいる?」

「だが、奴らに見つかる確立も高いぜ?」

「可能なら怪我人を回収しながら行きたいですし。」

「んなもん団長さんお得意の法術で治してやりゃ一発じゃねぇか?」

「・・・ソル・・・」

 いささかうんざりしたような口調で側の背の高い茶色の髪の男を見上げる。

「では逆に聞くがお前ならどうするつもりだ?徒歩で橋を探すのか?」

「んな面倒くさいことしねぇよ、泳ぎゃいい。」

「・・・・・・・。」

 泳ぐのはかなり厳しい距離かと思われる。

「却下だ。橋を渡った早々戦闘というケースもありうる。いきなり体力を損ねた不利な状況で戦うつもりか?」

「あ?これっくらいの距離を泳いだくらいでバテるのか?ひ弱だな!」

「馬鹿を言うな!しかもこれだけの装備でこの距離を泳ぐのだぞ、お前には常識っていうものがないのか!?」

「うるせぇな!だったら試してみりゃいいじゃねぇか?」

 それこそ馬鹿を言うな、と反論するまでもなくいきなり首根っこを猫つかみされた。

「え゛?」

「ほら行くぜ、坊や?」

「え゛?ちょっと待・・・・」

 あとの隊員たちが止める間もなくソルはカイをひっつかんだまま川岸に足をかけた。

「こういうのはお偉いさんが先にやってみせんとな?」

 そのままふたりでダイブ。

「うわああああ・・・・っ・・・・!!」



 ちなみに今来ているのは水着ではなく厚手のコートです。

 ついでにあちこちプロテクターなんてものが付いてます。



 どぼーん。



 つまり、水中でこの重量は通常レベルの水泳スキルの持ち主の場合ほとんどが沈む。

 「・・・ん、浮いてこねぇな・・・?」

 



当然この団長さんも沈む。







 以上回想終了。







「・・・と、まぁあの男に問答無用で水に投げ込まれて溺れかけて以来すっかり水が怖くなってしまい・・・」

 そりゃぁ嫌われもするわな、ソル・バッドガイ。

 



しゅんとしたその痛々しい様子に聞き手もつい言葉を止めていた。

「・・・可哀想・・・」

 デイジーがもらい泣きをしている。

「努力はしたのですがやはりどうしても水嫌いを克服できず・・・。」

 風呂や浅めのプールなら大丈夫だが海のようなところは砂浜でもキツイ。と結んだ。

「・・・・・。」

 沈黙が漂った。

 この場合は"だったら仕方ない"とか"海をやめてプールにする"といったコメントが返ってきそうなものだが。

 だが、彼女たちはちがった。

「まかせて!カイさんの"きょうふしょ"私が治してみせるネ!!」

「・・・え゛・・・・?」

 紗夢の笑顔にカイの声がひきつった。

「そうですよ、これを機に克服してしまいましょう!私も微力ながらお手伝いさせていただきます!」

 デイジーまでも意味不明な使命感に燃え始めた。

「え?い、いえ別に不便は感じていませんし・・・」

「何を言ってるんです、あなたのような職業の方ならいつ何時飛行機の上から海に放り出されないとは限らないんですよ?」

「・・・えっとその時は法術で飛べば・・・」

 それ以前にそこまでやったら某スパイアクション映画だ。

「没問題(のーぷろぶれむ)!」

「わ!?」

 紗夢がどさくさにカイの腕を取って請け負った。

「そんなの私が手取り足取り腰取りマンツーマンで教えてあげるヨ!」

「え?で、でも・・・」

「没問題、没問題。全然かっこ悪くないネ。」

「じゃぁ、海決定!」

 メイが明るくまとめた。

「え?あのまだ、決めてな・・・」

 ぽんっと肩に手を置かれてカイが振り向くとミリアの青い瞳があった。

「諦めなさい。人間切り替えも大切よ?」

「・・・切り替えって・・・」

 紗夢がにこにこと話しかける。

「まかせるヨロシネ、カイさん?こう見えても私泳ぎ得意ネ!もし溺れてもちゃんと助けてあげるヨ!」

「お、溺れても、って・・・!?あ、そ、その前に紗夢さん、あの、む、胸が・・・」

 腕を絡められるついでに彼女の胸が腕に触れてカイが顔を赤くしている。うーん・・・実にうらやましいキャラだ・・・。(そうか?)

 片や少女三人。

「よーっし、そうと決まれば早速ソルさんにも連絡しちゃお!」

「でも簡単に来てくださるでしょうか?」

「カイさんの水着姿が見れるヨって言えば一発で来るって!」

 相変わらず何かを勘違いしている。

 そんなやりとりを聞きながらミリアはひとり続きを読もうと雑誌をめくり始めた。

「今月の占い・・・11月・・・蠍座の彼の運勢・・・"色々な女の子たちに迫られてピンチの予感。貴女も気をつけて。"・・・」

 何気に雑誌の占いコーナーに眼を通したミリアがカイを眺めやった。





「・・成程、たしかに"女難の相"だわ・・・。」










「TNT」/東紅葉様




戻ります。
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 「 海 ~mer ~

― くどいけど「夏」の続編です。 ― 」




 と、いうことでやってきました夏の海!

 青い水平線に白い砂浜!色とりどりの水着!!

 理想的な海水浴場がここにある!!!





 とハイテンションなナレーションの幕開けです。

「うみだーっ!!」

「うみだねーっ!!」

 甲高い歓声と水着姿の華やかな集団。

「わーい、海だーっ!泳ごうよ~っ!」

 これはピンク色のスポーディなビキニをつけたメイだ。ワンポイントの胸元リボンが映えている。

「あ、その、わ、私やっぱりこの格好はちょっと・・・」

「大丈夫大丈夫!周りのひとたちより全然地味なくらいなんだから!」

 くすんだ青い色のタンキニ。ちなみにパンツ部分にフリルがついている。

初ビキニなデイジーに明るく請合う。ふたりともビキニ姿が健康的に映えている、

「ねっ、来てよかったでしょ!?」

 こちらはベージュのタンキニ姿。ヒモ飾りのついたブラと飾りのないパンツといった組み合わせが可愛らしいエイプリルがにこにこと横手を見上げると濃群青色のトランクスタイプの水着に白いウインドウブレーカーを羽織ったカイが曖昧に微笑んだ。

「え・・・ええ・・・まぁその・・・」

 砂浜で適当な日陰を作って色とりどりな水着を愛でるには異存はまったくないのだが問題はこの水。波だ。

「わ、私はその辺で荷物番でもやってますよ・・・」

 砂浜に打ち寄せてくるこの波にすら足をつけるのを戸惑ってしまう。

「おいおい、何呆けてるんだ、荷物番も何も海の家に預けてきたばっかりだろ?」

 これはジョニーだ。黒っぽいボクサータイプの水着1枚といつものサングラスである。

「い、いえですがその・・・ほらこうやってビーチボールとか飲み物とかおいておくからには・・・」

「往生際が悪いわよ、カイさん?」

 静かな突込みが聞こえた。

「・・・ミ・・・ミリアさんまで・・・」

 大きな花をあしらったワンピース。ただしかなり角度の高いハイレグ姿。

「そうアル!それより私がちゃんと教えてあげるネ?」

 紗夢の水着はというと白のハイレグビキニ。ちなみにきわどさはこのパーティ1である。

「・・・っ・・・!」

 大胆な水着姿に反射的にカイの頬に朱が差した。

対照的にジョニーがにやにやしている。

「へ~こんな美少女にマンツーマン指導してもらうってか?うらやましいねぇ?」

「どういう意味ですかそれは!?」

「いやいや、対して俺はこっちのお姫様たちのお守りだなって思ってな?」

 たしかに建前や名目はともかく実際的には少女たちの保護者でもある。

「ちょっとジョニー!?お守りってどういう意味よ!?こんなステキなレディに"お守り"はないんじゃない!?」

「いやいや、今のは言葉のあやだ。存分にエスコートさせていただきますよ、お姫様?」

「な~んか真意が感じられないなー!?」

 むくれるメイの横手でデイジーがきょろきょろと誰かを探している仕草をしている。

「どうしたの、デイジー?」

 とミリアが声をかけた。

「あ、ソルさんがいないなって思いまして・・・」

「・・・ソルさん・・・?」

「あ、なんでもないの、なんでも!」

「?そう?」

 エイプリルがあわててとりなす。幸いカイの耳には入っていないようだ。

「もーっ、だめじゃない、デイジー!ソルさんは内緒で呼んだんだから!」

「あ、そうか・・・」

 ちなみにカイさんは眼の前に迫ってくる大胆水着美女の艶姿にすっかり呑み込まれている。相変わらずよく言えば純粋。悪く言えばお子様な青年である。(合掌)

「しかし凄い水着だなあのビキニは?」 

 ジョニーが口笛を吹くとミリアが淡々と答えた。

「カイさんの趣味よ?」

「・・・WHAT?」

「好きな人の望む格好をしてあげたい、なんて乙女心のなせる技、じゃない?」

「・・・あの水着があの坊やの趣味だって・・・?」

 ジョニーはずり落ちかけたサングラスを慌てて直した。

「へー?こいつは認識を改めなきゃいけないねぇ?」

 そのワリにはどことなく反応が可笑しいが。

まぁ彼女たちの水着姿はこちらも眼の保養になる。





「ほら、ここなら足付くヨ!」

「は、はい・・・」

 紗夢に手を引かれながらカイはおそるおそる一歩進んだ。

 格好悪いがへっぴり腰で足を水につけている。まだ水はくるぶしにも届いていない。

「とりあえず腰が付くところまで進むアル!そこで泳ぐ練習するネ?」

「ほ、本気ですか・・・?」

「当然、そのために来たデショ??」

 と、言う紗夢の心中は「嬉しい」の一言が占めている。

一団を離れてのツーショット。しかも惚れている男とこうやって手を繋いでいるのだ。

―――・・・いつまでもこうしていたい・・・!

 に近い感情が流れている。

 こうして波打ち際を彼氏と供に歩く。なんて素敵なシチュエーションだろう!





「わっ!?」

 と、突然波に足を取られたのかカイがバランスを崩した。

「アイヤ・・・っ!?」

 反射的に伸ばした手が紗夢に絡みつくような形になりふたり思い切り転んでしまった。

 小さな波飛沫が波打ち際に上がった。

「わ、っ、すみません、大丈夫ですか・・・!?」

「ア・・・ア,疼~・・・ダ、だいじょぶ・・・」

 慌てて体を起こしながら謝罪するカイに同じく体を起こしながら笑顔で手を振る。

 ふたりの顔は至近距離にあった。

「・・・あ・・・」

「・・・あ・・・」

 どちらともなく動きを止めていた。

 潮騒の音が急に遠くに聞こえた。

「・・・紗夢さ・・・」

「あ・・・あの・・・?」

 小さく「すみません」と声が聞こえた。「え?」と意味を問いただす前に抱きしめられていた。

「あ、あのカイさ・・・!?」

「・・・・。」

 ゆっくりと体重をかけられて波打ち際に横たえられる。わずかに波に洗われる形になっている紗夢の長い艶やかな髪が波間に広がった。

「・・・紗夢さ・・・好きです・・・。」

 まっすぐに見つめてくる翡翠の瞳。切なく耳に聞こえる真摯な告白。

「・・・・カ・・・・カイ・・・さ・・・?」

 夢心地な気持ちのままその告白を聞く。

不安と歓喜の思いに声が震えた。

 手首をやんわりとつかまれてそのまま浜辺に押し付けられて動きを封じられるような形になった。互いの足は絡み合い、胸と胸が触れる。

自分の鼓動が相手に感じられているかのような錯覚を起こした。 

 翡翠色の瞳と茶水晶の瞳が絡み合い互いの姿を映した。

「赦してください、抑えが効きそうにありません、貴女が欲しくて溜まらない・・・・」

「・・・真的・・・?・・・嬉し・・・ヨ・・・」 

 容の良い唇から聞こえる言葉はどれもが待ち望んでいた言葉だ。嬉しさに声が震え視界が涙で曇る。

「・・・紗夢・・・」

「・・・ハイ・・・」

 その瞼が少しずつ閉じられ顔が近づいてくる。紗夢もそのまま瞳を閉じやがてくる瞬間に身体が自然に震えた。





 ・・・以上紗夢の妄・・・訂正、トリップ内容。







「カイ同士、我愛(あいして)・・・ぶっ!?」

「っ!?」

 紗夢がカイに感極まって抱きつこうとしてなぜかメイのシャチに阻まれた。

「メ、メイさん!?」

 慌ててカイが背後を振り返るとビーチボールを持ったメイが手を振って応えた。

「駄目だよカイさ~ん!ちゃんと貞操は護らなきゃ~っ!」

「は?『ていそう』?・・・って"貞操"ですか??」

 「何故?」と、わけがわからないという表情をありありとうかべている。そりゃそうだ。

「・・・那个儿童(あのガキ)・・・」

 紗夢がこっそりと悪態をついたが幸いそれは側の鈍感男には聞こえなかった。





 時を同じくして。

「見ツケタゾ、"かい"・・・」

 彼らの頭上の岩場から見下ろすひとつの影があった。「我輩ノれぞんでーとる・・・」

 金色の髪。メタルの肌。炎天下の最中でも白いコートを身に纏いしかもまったく"体温"が上がっていない様子である。ラジエーター内の水は絶好調らしい。

 見ての通りのロボカイだった。しかも自称が"我輩"の方。

 どうやらまだオリジナルを追いかけまわしていたようですな。

「クックック・・・此処デアッタガ百年目・・・」

 と、今時誰も使わないような言葉を使いびしぃっと指を下方へ突きつけ宣言した。

「かい!!我輩ト勝負シロ!!」

「・・・っ、ロボ・・・!?」

 頭上に見たくない影を見つけて眼に見えてカイの表情がげっそりとしたものになった。

「誰、アレ?」

 紗夢も眼をこらして「あーっ!」と叫んだ。

「あの時私の店焼いた奴ネ!?性懲りもなく現れたカ!?」

「今日コソ本気デ戦ッテモラウカラナ!!」

 と、びしいっと指を突きつけて宣言した。「覚悟シロ、かい!!」

「・・・何てしつこい奴なんだ・・・!」

や、あんた人のこと言えないから。

「正々堂々ト我輩ノ相手ヲシロ!イイカ、逃ゲルコトハ許サンゾ!!」

「何て奴!私のカイさんに手出しさせないアルヨ!?」

 ちゃっかりと自分のもの宣言している。

「問答無用!覚悟!!」

 逆光を煌かせながら「トウッ!」とロボカイが波間に向けてダイブした。

「・・・あ・・・」

「・・・あ・・・」

 沈むんじゃ?という突込みを二人が上げるまもなく遥か沖のほうにそのまま着水した。

 ドボンと水柱が二人の遥か前方で上がり。

「・・・・。」

「・・・・。」

沈黙。

「・・・」とふたりがつい様子を見守っていると再び水柱が上がった。

「!?」と見守っているとロボカイが一度海中から吹き上げられてもう少し横手に再び落ちていくのが見えた。

「・・・な、何アレ?」

 と、紗夢が誰にともなく訊こうとした矢先に何かが沖のほうから競り上がってくるのが見えた。

 それはザザザ・・・と波を書き分ける音を発しながら浜の方、二人に向かってやってくる。

「何アレ・・・!?」

 序序に速度を増しながら二人にむかって迫ってくる何者かにふたりの間に戦慄が走った。

―――・・・速い・・・!?

 紗夢がついカイにしがみつくようなかたちになり、カイは紗夢をかばうために半歩前に足を踏み出した。

 無論最終的にはふたりとも別個に戦うことはできるだろうがそういったことはあくまでも2次的な要素に過ぎない。

 ザバーっとふたりの前に頭ひとつ大きな水柱が立ち上がった。

 水柱がおさまり水が全て流れ落ちた向こうには良く知る顔があった。

「・・・・」

「・・・・」

 再び沈黙。

「・・・何やってんだ、おまえら?」

 茶色の髪に日焼けした肌。均整の取れた筋肉質な体躯。

 カイが呆然と誰何した。

「・・・そ・・・ソル・・・・?」

「応。」

 珍しく黒系プリント柄のトランクスタイプの水着を着ている。

「・・・えっと・・・お前も泳ぎにきてたのか?」

「否?・・・で、隣にいるのは中国娘だよな?そいつだけか?」

 脈絡のない質問に紗夢が口を尖らせる。

「そいつだけ、ってどいう意味ネ!?失礼、思わないカ!?」

「どういう意味って聞きたいのはこっちの方だ。手前が連絡をよこしたんじゃねぇか、果たし状ってな?」

 と、カイのほうを向いた。

「果たし状?」

「白ばっくれるな、すっぽかしたらデイジーたちがどうなるかわからないとか抜かしていたのは手前だろうが?」

 他の人間ならどうなっても構わないが泣き処のデイジーにコトが及ぶとなると話は別だ。

「おい、だから何の話だ?果たし状って、そんなもの書いた覚えはないぞ?」

「それ以前にナゼあんな所に居たネ?」

 紗夢が当然の疑問を呈する。「果たし状って海の中でやるノカ?」

「あ?だからこの場所を指定してきたのはお前らだろうが?で、思ったより早く着いちまったし、クソ暑いからそこで泳いでたんだよ。」

「・・・泳いでた・・・・?」

「どう見ても沈んでたネ・・・?」

 ふたりの突っ込みはスルーされた。

「そうしたらあんなガラクタがいきなり降ってきやがるし、冗談じゃねぇぜ。」

 とぼやいて「で、デイジーたちをどうする気だ?」と尋ねる。

 どうすると訊かれても。

「どうするもなにも、彼女たちならあっちで遊んでるぞ?」

 波打ち際でビーチバレーで遊んでいる姿。なかなか華やかである。

「・・・ちっ、あのクソガキ共が・・・つまりガセってことかよ・・・」

 悪態をつきながらソルはデイジーたちのほうへ歩いていこうとしてカイの水着姿に眼を留めた。

 濃群青色の水着に白いウインドウブレーカー。合わせ目からは細身の体躯が覗いている。

「・・・。」

「?」

 数秒眺めてソルはポンっとカイの肩に手を置いた。

「もっと筋肉つけろ、坊や。」

「―――・・・っ・・!!」

 フッと笑うと改めてデイジーたちのほうに歩いていった。

「馬鹿にするな、この無作法者!!」

「・・・まぁまぁ、人間胸板の厚さじゃないネ・・・」

 後ろから聞こえてくる怒声と紗夢がとりなす笑いを含んだ声。

 しかし胸板の厚い男性に憧れる女性の割合が多いともいふ。(合掌x2)

 歩いていくとほぼ同時に彼女たちも気がついたらしい。

「あ、ソルさんだ、やっほー!」と無邪気に手を振っている。

「・・・お前ら・・・ガセなんか捕まえさせやがって・・・」

「えー?でもカイさんの水着姿が見えたからいいでしょー?」

 あっけらかんというメイの笑顔にソルが意味不明という顔をする。そりゃそうだ。

「野郎の水着姿なんかみても楽しくねぇ。」

 さもありなん。「それよりもおまえらまでそんな格好しやがって・・・」

 そんな格好。最近主流のセパレート型水着。

「えへへ、かわいいでしょ?これはビキニだけど、あのふたりはタンキニなんだよ?」

 これはメイだ。

「たんきに?なんだそりゃ?」

「うわ、オヤジ発言キター・・・」

 これはエイプリルだ。

「おい、お前もだ!」

「は、はい!?」

 まさか視線を向けられるとはおもわずデイジーについ緊張が走る。

 ソルの口から飛び出た言葉はまたえらく時代がかっていた。





「年頃の娘が他人にあまり肌を見せるんじゃねぇ。」

「・・・は・・・はい・・・?」

 



 デイジーがきょとんという顔をつくった。



 ついでにその横でビーチバレーに付き合っているミリアとジョニーの会話を追記。

 ミリアが小首をかしげる。

「・・・ソルさんって時々お父さんな発言するわよね・・・?」

 特にデイジーに対して。

 それに対してジョニーはこともなげに答えた。

「ま、実年齢100数十歳のジジイだもんな。」

 何気に酷いことを言っていた。









 一方、

「解せないわ、人間たちはこんなことのどこがいいのかしら・・・?」

海底で。

「・・・ねぇパラケルス・・・?」

「・・・・・・しくしくしくしく・・・。」



 何故かABAがパラケルスと一緒に沈んでいた。


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