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バンダナを巻いた、ショートカットの娘がきょろきょろと街中を歩き、こう言う。
「あの、海賊みたいな帽子かぶって、錨持った女の子見ませんでしたか?」
知らない、と横に顔を振られ、娘は消沈していた。
ありがとう、といって笑って通行人と別れ公園に入る。
はあ、と溜息を一つ。
『…全く。メイどこ行っちゃったのかしら』

彼女、ジェリーフィッシュ団のエイプリルはとりわけメイと仲がいい。
皆家族のような仲だが、それでも年の差や性格から差は多少でる。
その一つの形だった。
そういう理由といつもエイプリルがいう(自称、なのだが…)情報通をもう一つの理由にして、航海士のエイプリルが家出のメイを探すハメとなった。

『もぉ……そりゃあんたがジョニーに首っ丈ってのは解るけどさぁ』
近頃その件の男はクルーのスカウトやら何やらで出回ってばかりだ。
おまけにメイはいつもタイミング悪く帰船しないものだから入れ替わりで数日顔も見ていない。
そういうわけで恋する乙女はジョニーに会うまでは船に戻らない、と言い出した。
当然もう一人の保護者は猛反対だ。
メイはだからといって止める子じゃない。
『かえってジョニーが心配するって、なんでわかんないかな、あの子はぁ…!!』
心配するジョニーを見てて心配なのはこっちなんだから。
それだけ皆あんたのことも、ジョニーのことも心配なのに。
「貴女だったのね」
エイプリルが声の主を見るとそこにいたのは美しい金髪の女性であった。
「あ、ミリア、さんですよね?」
何度かメイに紹介してもらった覚えがあった。
あの大会で話すようになって、エイプリルにも会わせたかったの、とか言っていたっけ。
「丁度良かった!!」
エイプリルはポンと手をたたいた。
何を言いたかったか直ぐにわかったらしくミリアは(微かにだけ)微笑んで草叢を態度で示す。
まさか…と草叢を見る。
そして案の定気持ちよさそうに眠るメイの姿が…。
「ちょ…メ…!!」
「もう少し、このまま眠らせてあげてもらえるかしら…。さんざ泣いてさっき寝たばっかりだから」
そしてミリアはポツリポツリと、押し黙ったエイプリルに告げた。
「…此処でね、彼女に引き止められたの……『どうしたら、好きだって伝えられるの』ってね」
エイプリルはそっと自分の髪を撫でた。
「…」
「私には解らなかったの、なんて答えるべきか。そうしたら急に泣き出して。男も見つからないし、皆怒ってるから今船に戻れないって言い出したわ」
急に、ミリアは悲しげになった。
エイプリルはミリアの過去は知らないが、きっと辛いことがあったんじゃないか、と思う。
いつか、話せるようになる日は来るのかしら、とも。
「でもメイは幸せだわ…まだ子供で、気づけていないけれど」
何も返せない。
「…貴女、朝から、夕方今の今までずーっと探していたでしょう?」
自分の顔が赤くなるのを感じる。
必死になって気づかなかったが確かにエイプリルは昼食もとっていなかった。
「う…でも、なんで」
もしかして必死なところ見られてたとか?
それじゃかえって恥ずかしいかもしれない。
「本当は、メイも気づいていたみたいよ」
ミリアはふわりと立ち上がった。
「だから泣いてた。自分でどうしたらいいかわからなくなってしまったのね」
エイプリルはポリポリと頬を引っかいた。
「二人とも、その気持ち忘れないでいて欲しいわ………私には、もう、持てない気持ちだから」







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