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うろほろぞ
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キャンドルに火が点けられ、部屋の灯りが消されると、部屋は暖色の薄暗闇に包まれる。だからラルフが浮かべた薄い笑みは、他の誰にも気付かれなかった。
 どこか溜息に似た笑みだ。ラルフにしてはらしくない、と言われる類の笑みだろう。
 この席にも似合わない笑みだった。ラルフの30何度目かの誕生日の祝いの席だ。気の良い傭兵たちが基地の食堂にビールをカートンで持ち込み、肴がわりに軽い料理を並べている。無礼講だ。
 誰だこんな馬鹿でかいの買ってきたのは、とラルフをあきれさせたケーキには、ご丁寧にも歳の数だけキャンドルを突き立っている。並みのサイズだったら針鼠になってしまっていただろう。そう考えると、このサイズで良かったのかもしれない。
 誰かが音頭を取って、ハッピーバースデーの歌が始まる。歌が終わるまでの、1分にも満たない薄暗闇。その闇に隠して、ラルフは薄く笑っていた。
 ケーキの横にはいかにも彼好みのナイフや酒瓶や、冗談めかしたポルノビデオといったプレゼントの山が積まれている。その中に、ちょっと変わった贈り物があった。
 グローブだ。野球のグローブ。いくら草野球がラルフの趣味とは言え、30いくつの男には少々幼すぎるプレゼントだろう。
 昨年は飛行機の玩具だった。ショーウィンドウに誇らしげに並んでいるようなやつ。その前の年は60色の色鉛筆、更にその前の歳は、履くだけで早く走れそうな気がするようなスニーカー。どれもこれも、ラルフが子供の頃にはいくら望んでも手に入らなかったものだ。
 とはいえ、今では別に高価なものではない。価格だけなら酒1本の方が上だろう。ポケットの中の小銭だけで、いつでも買えるようなものばかりだ。
 だがそれを自分で買おうとはラルフは思わない。いや、思えない。
 そういう子供時代の宝物は、手の届くものになった時点で既に輝きを失っているのだ。小さな甥だとか姪でもいれば、自分の子供時代を重ね合わせてその輝きを思い出すこともあるのだろうが、あいにくラルフは天涯孤独である。
 ラルフだけではない。傭兵稼業なんかやっている者は、みんな似たり寄ったりの境遇だ。
 誰がどんなに願っても、四半世紀を越えて子供時代がやり直せるはずもない。だがせめて、あの頃得られなかった宝物を「同じような子供時代を送った誰か」に贈ることで、何かを取り戻せるのではないかと、そんな錯覚に陥るのだろう。傭兵たちの誕生日には、いつもたいていそんな贈り物が混じっている。
 悪くない習慣だと思うし、ラルフは結構それに感謝している。
 だが、溜息のような笑みは自然と湧き出た。これはそういう類の贈り物だった。
 子供の頃のラルフは、こんなものなど欲しくはなかった。いや違う、欲しくなかったのではなくて、こういうものが世の中にあるということさえ知らなかったのだ。知りもしないものを欲しがることはできない。
 昼間は汗が煮えるほど暑く、夜は体の芯まで凍えるような砂漠の国。長年続いた内戦で国は疲弊しきって貧しく、戦死者と餓死者が同数だった。
 そんな国で生まれたラルフの子供の頃の記憶は、乾きと飢えに満ちている。絶えず銃弾が飛び交う空の下、砲撃に怯えながら、銃と空腹を抱えて眠った。義勇軍の少年兵と言えば聞こえは良いが、その実態は1日1杯の薄いスープにありつくためには、銃を持つしか選択肢がなかっただけのことだ。そんな子供時代をラルフは思い出す。
 暖かい毛布。一杯の水。ひとかけらのパン。
 あの頃、ラルフが本当に欲しかったのはそんなものだ。故国がついに滅びて、戦火の中で知り合った傭兵が何を気に入ったのか身寄りのない少年兵を自分の古巣――合衆国に連れて来なければ、ラルフはプラスチックの玩具も、華やかな絵本も、冗談のようなサイズと甘さと色彩の菓子も知りはしなかった。
 そしてそういうものを知る頃には、ラルフはそれを欲しがる歳ではなくなっていた。というよりはそういうものを欲しがっては格好悪いと、無理に大人びようとする年頃になっていたのである。せっかく内戦から抜け出したというのに、また軍隊なんかに入ったせいかもあったかもしれない。だが、ラルフにできることといったら戦争しかなかったのだ。
 それも遠い昔の話だ。ラルフを故国から連れ出したあの傭兵も既に亡く、未だに銃弾の飛び交う下で横になることはあるが、あの頃のような絶望も孤独も飢えもない。戦場から戻れば分厚い肉がいくらでも食えて、スプリングの効いたマットレスに新しいシーツ、柔らかい毛布に包まって眠れる。
 何もかも手に入れた。あの頃欲しかったものは何もかも手に入れた。
 それなのに何が足りない? 何がこんな溜息をつかせる?
 ラルフは小さく首を振った。もうすぐハッピーバースデーの歌が終わる。深呼吸してキャンドルの火を吹き消せば、この優しい薄暗闇は消える。
 だからラルフは、薄笑いを別の笑顔の裏に押し込んだ。
 
 
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 キャンドルに火が点けられ、部屋の灯りが消されると、部屋は暖色の薄暗闇に包まれる。
 馬鹿でかいケーキも、刺されるキャンドルが39本にもなるとさすがに異様な針鼠になりつつあって、年齢の10の桁は上がる来年にはケーキのサイズも上げるかという話も出ていた。
 誰かが音頭を取って、ハッピーバースデーの歌が始まる。歌が終わるまでの、1分にも満たない薄暗闇。
 ケーキの横にはいかにも彼好みのナイフや酒瓶などの、プレゼントの山が積まれている。昨年辺りまではそれに混じっていたはずの、卑猥な写真集や冗談めかしたポルノビデオがないのは、同席している18歳の少女への遠慮だろうか。もはや毎年恒例となった年齢不相応の贈り物は、今年は日本製の携帯ゲーム機とそのソフトだった。
 それに目を留めた時、ラルフはあの薄い、溜息のような笑みが出ないことに気付いて驚いた。驚きが顔に出ていたのだろう、青い髪の少女がキャンドルの火超しに、不思議そうな顔をしてこちらを見ている。
 鼻の奥辺りが一瞬傷んだ。もしかしたら泣きたかったのかもしれない。
 子供時代に手に入れられなかった宝物。飢えにも乾きにも怯えることのない暮らし。暖かい毛布に包まって眠れる家。そして、たぶんあの頃本当に欲しかったもの。
 ラルフは小さく首を振った。もうすぐハッピーバースデーの歌が終わる。深呼吸してキャンドルの火を吹き消せば、この優しい薄暗闇は消える。
 だからラルフは低い声で呟いた。誰にも気付かれないように。
 あの頃、傍にいて欲しかった「誰か」をようやく俺は手に入れたのか、
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 誰かが基地の食堂に黄色いカボチャを飾り、その翌日には他の誰かがナイフを持ってきてそれを器用にくり抜いた。それを見た誰かがそろそろハロウィンだっけと呟き、それじゃあ菓子を用意しなきゃと誰かが頷く。
 10月の半ばのことだった。

「ヘソ出し魔女とか、ミニスカ吸血鬼ってのも定番でいいんだけどな。リアル路線なら幽霊館のメイドさんとか似合いそうだし……あ、これどうだ。殺人赤ずきんちゃん」
「……別に何でもいい」
「なんだなんだ。せっかくのハロウィンだってのに嫌そうじゃねえか。ほらレオナ、お前どれ着たいよ」
「だから、どれでもいい」
「……あー、俺やっぱり一緒に来て良かったわ」
 ショッピングモールで絶賛売出し中のハロウィンの衣装の前で、ラルフは掛け値なしの本音を吐いた。レオナのテンションの低さはいつものことだが、これはどん底レベルだ。本気でやる気がない、あるいは本気で嫌がっている。これを1人で来させていたら、きっとまともな買い物にはならなかっただろう。
 だからといって、適当に選んで押し付けるのでは意味がない。せっかくのイベントだ。楽しめないなら意味がない、と思っているラルフとしては、当然レオナの説得に取り掛かる。
「いやさ、お前がこういう馬鹿騒ぎが好きじゃないってのはわかってんだよ。わかってんだけどさ、ハロウィンのお化け役なんて若いやつがやらなきゃ絵にならねえだろうが。俺が狼男なんかやったって、誰も菓子くれてやろうなんて気分にゃならねえぞ」
「わかってるわ。だから昨年だってちゃんとやったじゃない」
「シーツかぶって「幽霊です」って、ありゃちゃんとやったうちには入らねえぞ」
 ラルフは昨年のことを思い出して苦笑した。小さな子供ならともかく、長身のレオナが普通のシーツをかぶっても丈が足りるはずもない。長い足がほとんどはみ出してしまった幽霊を見て、ラルフは頭を抱えたのだ(その後、急いでラルフとクラークのシーツを繋いでやったのも、今ではいい思い出かもしれない)。
「まあ、お前1人にしちゃ良くやったよ。準備を手伝ってやらなかった俺が悪かった。だから今年はこうやって、一緒に買い物に来たんじゃねえか。ほら、どれでも買ってやるから好きなの選べ」
「どれでもいいって言ってるじゃない」
 レオナはひたすら不機嫌だ。それどころか、あまり豊かとは言えない表情をフルに使ってまで「嫌」と主張している。珍しく口元まで尖らせているのを見て、ラルフはつい吹き出しそうになった。レオナとの付き合いは短くも浅くもないラルフだが、こんなレオナは滅多に見たためしがない。歳相応と言えばそれまでなのではあるのだが、普段とのギャップが凄くて妙に笑いを誘う。
 だが、レオナがさらに嫌な顔をするのを見て、さすがにラルフも笑いを引っ込めた。目が真剣に怒っている。
「悪い悪い、今のは俺が悪かった。でもな、いい加減に諦めろ。気の早いやつなんか、もう部屋に菓子用意してんだぞ」
「甘いものはそんなに好きじゃない」
「そんなのその場で受け取るだけ受け取って、あとで休憩室にでも積んどけば誰かが食うって! それも気が引けるなら俺が食うし、頼むから今年も手伝ってやってくれよ。部隊最年少の務めだと思ってさ」
「やらないなんて言ってないわ。ただ……」
「ただ、つまらねえんだろ」
 突然、ずばりと切り込んむような言葉だった。レオナの表情が変わる。図星だったらしい。
「つまらねえんだろ。理由を当ててやろうか? お前、誰かの代わりにされるのがつまらねえんだろ?」
 ラルフはそのまま、ずかずかとレオナの本音に足を踏み込む。
「そうだよ。傭兵なんかやってるやつはみんな、家族とかそういうもんに縁が薄いからな。だから生き別れの弟妹だとか子供だとか甥っ子姪っ子だとか、下手すりゃ親父だお袋だとか、そういうもんと他人を無意識に重ねちまう。お前を誰かの代わりに見立てて、ことあるごとに馬鹿騒ぎして、それで自分の隙間を埋めたがっちまう。それは否定しねえよ」
 容赦ないラルフの物言いに、レオナが拳を握り締める気配があった。だが、それに気付かぬふりでラルフは続ける。
「そりゃ嫌だよなあ。言いたかないが、そりゃお前の一番の痛むとこだ」
 妻子を亡くした孤独な男が、父母を亡くした孤独な少女を引き取り、娘として育てた。そこにある感傷に気付かぬ者はいない。
 現在はどうであれ、きっかけは「なくしたものの代わり」だった。それは否定しようがない。そのことが、時々レオナをひどく苦しめる。
 もう10年も過ぎればそのわだかまりも消えるのだろう。だが今は、ちょうど難しい時期だった。そんな時に、ことあるごとに「誰かの代わり」と見られるのは、それはつらいことだろう。不機嫌にだってなるはずだ。それはラルフも良くわかっている。わかっていて踏み込んだのだ。
 無言でうつむいてしまったレオナの肩を、ラルフはそっと抱きしめる。別に嫌味を言いたくて踏み込んだわけじゃない。
「けどな、レオナ。お前だってそう思っていいんだぞ。自分には兄貴だ叔父貴が山程いる。それじゃ嫌か?」
「…………」
「だいたいお前にゃ、親父からして2人いるんだぞ? きっかけはそりゃアレだが、お前のことを愛してる父親が2人もいるんだ。少なくとも、それは嫌じゃないんだろ?」
「……嫌じゃない」
「だったら兄貴が10人、叔父貴が20人いたっていいじゃねえか。人よりちょっと家族が多くて大変だ、ぐらいに思って甘えちまえ。向こうだってそう思われたら本望だ」
「それはわかってるわ。でも……」
「心配するな。俺は何も重ねちゃいないから」
 はっとして、レオナが顔を上げる。
 わかっている。どんなきっかけがあったにしろ、レオナは自分が愛されていることをちゃんとわかっている。わかっていても、時々ひどく寂しい。
 それをラルフはわかっている。わかっているから、レオナが今、一番欲しがっている言葉を囁いてやる。
「俺にはお前に重ねる姉も妹もいないし、恋人をママ代わりにするほどガキでもないさ。俺にとって、お前はお前でしかねえよ」
 その言葉に、レオナはもう一度うつむく。顔を上げられず、衣装の裾あたりばかり見ているのは、たぶんどうしようもない照れ隠しだ。見れば横顔が少し赤い。
 しばらくして、やっとラルフの顔をまともに見上げたレオナがぽつりと切り出した。
「……衣装、どれでもいいから」
 その言葉はさっきと同じ投げやりな単語でしかなかったが、さっきとはまるで違って柔らかい。尖らせていた口元もおさまって、すっかりいつもの一見無表情に戻っているが、ラルフにはわかる。ずいぶん穏やかな顔だ。
 そしてその表情にふさわしい、穏やかな声で、レオナはラルフに小さな願いを告げた。
「どれでもいいけれど……似合いそうなのを選んでくれる?」
 任せとけ、とラルフは胸を叩いて衣装の山に向き直る。なにしろラルフも、まだ少年時代に片足を突っ込んでいたような若い頃には、何度もその役をやらされたクチだ。「兄貴」や「叔父貴」の好みは心得ているし、レオナが相手なら間違いなく一番似合うのを見つけてやれる自信があった。
 腕まくりまでして衣装の棚に向かうラルフを、レオナが穏やかな目で見つめている。それは10月半ばの、穏やかな午後のことだった。
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数日前から滞在しているホテルの一室で、気心を知り尽くした長年の相棒同士がバドワイザーを片手にラフなやりとりをすれば、今日の報告と明日の予定は10分もかからずまとまった。
 それをクラークがメールにして、本隊に送信するのにかかった時間がもう5分。朝から晩まであくせく働いて、時には命懸けの綱渡りまでした1日が、たかがそれだけの時間で片付いちまうんだなと2人して苦笑いして、それで今日の任務は全て完了だった。
 時計の針は22時を指している。クラークはバドワイザーの缶をくずかごに放り込むと、ノートパソコンの電源を落としもせず、「もう少し飲みたいからバーにいますよ」とだけ言い残して出て行った。
 気を使いやがって、とラルフは1人になった部屋で思う。
 今日はラルフの誕生日だ。だが2人は任務の都合で、本隊から遠く離れた異国に出向している。2人だけでだ。
 少し寂しいな、とは思っていた。レオナはバックアップに回っていて、本隊と一緒に待機中だ。誕生日に、恋人が傍にいない。傍にいることができない。それはこの歳になったラルフでも、やはり少し寂しい。
 だがそれは、こういう仕事をしていれば仕方のないことだ。むしろ戦場でドンパチやらかしている最中よりはマシ。それは良くわかっている。
 それじゃあせめて、メールのやりとりぐらいしたらどうですか――クラークはそのつもりで出て行ったのだろう。点けっぱなしのパソコンを見てもそれに気付かないほど、ラルフは鈍感ではない。
 ラルフは素直に、その好意に甘えることにした。あの感情表現が苦手な若い恋人が、気の効いたメッセージなんか送ってきているとは思えないが、こちらから他愛のない一言二言を送るのも悪くない、と思った。
 ブラウザを立ち上げ、フリーメールのログイン画面を呼び出す。任務に関わるメールは何重にもセキュリティをかけた専用のアドレスを使うが、プライベートなら話は別だ。もちろん送信する内容には細心の注意を払うことになるが。
 スパムが何件かと、見覚えのあるメールアドレスからのメッセージが1件届いていた。
 レオナからだ。添付ファイルが付いている。拡張子を見ると動画らしかった。
 ダウンロードして、ファイルをダブルクリックする。プレイヤーが画面いっぱいに立ち上がって、その真ん中に小さく動画が開いた。メールで送信するために、解像度を小さくしたのだろう。
 動画には何も映っていない。声だけが聞こえる。「ほら、こっちに来てください!」とか「これを見るんです、これを」とか……ああ、こりゃウィップの声だな。
 ややあって、いきなりオリーブ色の何かが画面に大写しになった。「そうじゃなくて、もう3歩下がって」。その声に従って、オリーブ色の塊が、画面から遠くなっていく。これはうちの戦闘服か?、とラルフが気付いたのと、画面の中に見間違えようもない青色が映り込んだのが同じ頃。レオナの髪だった。
 なんとか画面の中に上半身を収めたレオナが、困った顔でこちらを見上げている。が、目線がいまいち合っていない。ウィップもそれに気付いたようだ。

「目線はここですからね。カメラちゃんと見てくださいよ――はい、OKですね。それじゃあ、どうぞ」
「どうぞ……って何を……?」
「何言ってんですか! 大佐への誕生日祝いに決まってるでしょう? メッセージの一言ぐらいないんですか?」
「え……その……誕生日おめでとう……?」
「なんで疑問系なんですか! だいたい、もうちょっと何とかあるでしょう? 名前を呼ぶとか、愛してるって言うとか!」
「……ラルフ大佐。お誕生日おめでとうございます……これでいい?」
「だからなんで私に訊くんですか!? それにまさか先任、普段も階級つけて呼んでるんじゃないでしょう? もっといつも通りに! 硬くならずに!」

「何やってんだお前ら、ぐだぐだじゃねえかよ……!」
 このあたりで、ラルフはたまらず突っ伏した。笑いが止まらない。
 たぶんウィップが気を利かせたつもりで、動画をメールに添付しようと言い出したのだろう。ファイルの作成時刻を見てみると、現地時間の今朝早くだ。ブラジルと、この国の時差は14時間。現地時間の25日朝に撮影すれば、14時間早く日付が変わるこの国にいても、25日のうちにメッセージを受け取ることができる。
 と、そこまで計算してるとしたら、クラークも一枚噛んでるな。何やってんだ、と繰り返してラルフは腹を抱える。そこまで手を回しているなら、もう少しスマートに撮影しろよ、スマートに。
 ラルフが笑っているうちに短い動画は終わり、また最初からループし始めた。動画を画面いっぱいに広げると、解像度の荒い画像の中で、レオナが戸惑いながら囁く。あ、良く見たらちょっと顔が赤いでやんの。「誕生日おめでとう」。巻き戻す。「誕生日おめでとう」。何度も、何度もラルフはそれを繰り返す。
 繰り返すうちに、ラルフの笑いが止まった。
「はは……遠い……遠いよなあ……」
 画面の中ではレオナが戸惑いながら、でも僅かに微笑んでいて。何日かぶりで声もこうして聞くことができて。例えば今、何でもいいから理由をつけて国際電話を掛ければ、もっと自然な声を聞くこともできるだろうし、ビデオチャットなんてものを使えば、この瞬間の表情だって見ることができる。時代は世界の距離をそんなにも近くした。
 だが、それだけだ。手を伸ばしても触れられない。ひんやりと肌の感触も、稼業の割には痛みが少ない髪のなめらかさも、吐息の意外な熱さも、画面越しには伝わらない。触れることもできなければ、抱きしめることもできない。
 急に2人の間の本当の距離を思い知らされて、ラルフは突っ伏したまま頭を振った。ったく、俺はどれだけあいつにベタ惚れしてるんだ。たかが数日、離れているということが寂しくて堪らないだなんて。
 10代のガキじゃねえんだぞ。こちとら来年には40だ。それなのに、締め付けられるような寂しさで胸が苦しいなんて思ってる。それをこんな形で、こんな日に思い知らせるなんて、とんだプレゼントだ。
「ばーか、これじゃちっとも祝ってることにならねえよ」
 ラルフはそう言って、画面の斜め上あたり、たぶんウィップがその辺りに立っているのだろうという辺りを指を軽く弾いてやった。帰ったら見てやがれ。
 ぶつくさ言いながら、ラルフは短い返信のメールを送った。サンキュー、嬉しかった。でも帰ったらもう一度、今度は目の前で言ってくれ――「抱き返すこともできない距離からじゃ寂しすぎる」とは、さすがに照れ臭いし、万が一ウィップに読まれたらと思うと付け加えられなかったが。
 それが終わると、ラルフはパソコンの電源を落として部屋を出た。バーでクラークが待っている。
 エレベーターを待ちながら、ラルフは1人呟く。
「片棒担いだんだ、1杯奢れよ。誕生日祝いも兼用だ」
 「1杯じゃ済まないでしょうに」と、笑いながらクラークが答える声が聞こえた気がする。
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傭兵部隊にとっては、クリスマスも正月もあってないようなものだ。365日どんな日でも世界のどこかで紛争は続いているし、テロもどこかで起きている。いつどこで何が起きるか分からないから待機。これが部隊の基本スタンスだ。
 だが、家族の元に戻って祭日を祝う連中もいないわけではない。だからそういう日は、いつもより少しだけ基地の中が普段より静かで、居残り組みはしみじみと今日が祭日であることを思うのだ。
 さてこの居残り組だが、大別すると2種類に分けられる。ひとつは新年をそれほど重視しない連中、つまり1月1日よりも、感謝祭やクリスマス、あるいはこの先の春節に休める方が嬉しいという者たち。そしてもうひとつは、そういうものを共に祝う家族を持たない者たちだ。
 そう言うとひどく寂しい身の上のようだが、その筆頭であるラルフは少なくとも、そう考えてはいない。例えば基地にいたって、感謝祭には七面鳥、クリスマスにはプティング、春節には中華菓子と、ささやかな祝いの料理が並ぶ。厨房からのちょっとした気遣いだ。それを仲間と共に突付くのは悪くない祭日だと思う。
 今年の新年もそんな料理が振舞われた。
 肉である。豪快にして豪勢。茹でた肉の塊だ。
 メインは牛だが、鶏や豚、ソーセージもあった。その回りにはマスタードやら岩塩やらイタリア風の緑のサルサソースやら、ガーリック風味のソイソースやら、中華風の赤いタレやら、とにかくありとあらゆる味付け用のアイテムが添えられている。
「ボッリートって言うんだ」
 それを作ったイタリア人が胸を張った。いつも厨房を預かっている炊事手が、今年は新年の休みを選んだのである。それで元々料理好きのイタリア人が調理役を買って出て、それが許可された。さすがに年明けからAレーションでは侘しい。
「肉を水から茹でるだけなんだけどな、薄く切って好きな味を付けて食べると美味いんだ」
 その説明に、わっと喜びの声が上がった。
 部隊は基本的に男所帯で、男というのはえてして肉が好きなものである。肉食を崇拝してるんじゃないかとさえ思うこともある。その定義に当てはまる男どもにとっては、これ以上ないご馳走だった。
 ラルフも塊肉を少しナイフで切り取って、塩を付けて食べてみた。確かに美味い。良く煮込まれた肉は口の中でほろりと崩れるし、脂身もとろけるようだ。
 問題は、ラルフの部下にはその肉が大の苦手という少女がいることだ。見れば案の定、レオナは皿の前で戸惑っている。
 野菜はある。これを作ったイタリア人もレオナが肉が苦手なことは知っているし、皆だって肉ばかりではさすがに飽きるということぐらいは考えていた。だから鍋には大ぶりに切られたにんじんや、皮を剥いて丸ごとのじゃがいもや玉葱も放り込まれ、それらも美味そうに煮えて皿の上に並んでいる。
 いや実際美味いだろう。これだけの肉の滋味が溢れたスープで、ことことじっくり煮られた野菜だ。
 だが残念ながら、レオナにはその肉の味がキツい。野菜にたっぷり絡んだ肉の脂が苦しい。どうもそこまでの配慮は、イタリア人には思いつかなかったようだ。
「おい大丈夫かレオナ。食えそうになかったら無理せずに、いつものレーション貰って来い」
 ラルフが言うのは、ベジタリアン向けのレーションのことである。レオナはほとんどいつも、それの世話になっていた。
 だが、レオナはいいえと首を振る。
「大丈夫よ」
 金色に煮えた玉葱を、レオナは小さく切って口に運ぶ。そしておろおろと見守るラルフに、レオナは小さく微笑みながらこう言った。
「美味しい」
 ほっと胸を撫で下ろすラルフの前で、レオナはまた一口、玉葱を口に運んだ。

 それから1時間ほど後のことである。
 ラルフは廊下の向こうから歩いてくるレオナを見かけて足を止めた。向こう側は医療部のあるフロアで、レオナには特に用はないはずだ。
 ラルフがちょっと不思議に思うのと、レオナが手にしていた小さな何かを後ろに隠すのが同時だった。
「お前今、何隠した?」
「……なんでもないわ」
「何でもないなら見せてみろよ」
 口にかけても百戦錬磨のラルフにそう言われて、上手く誤魔化せるほどレオナは世慣れていない。
 レオナが諦め顔でラルフに差し出したそれは、医療部の薬袋だった。但書は胃薬である。
「やっぱりもたれたか。俺ですら脂っこいと思ったもんなあ」
 どうやら肉そのものは食べなくても、その脂だけで充分レオナには苦しかったようだ。
「だから無理して食うな、って言ったのに」
「いいの、覚悟の上だったし」
「覚悟って、そこまでして食うか普通」
「普通なら食べない」
「ならどうして」
「今日はお祝いだから」
 あ、なるほど、とラルフはそこで合点した。
 皆が喜んで食べている中、自分だけがレーションを抱えていては周りが興醒めする。それを気にして、レオナは苦手な肉の脂と格闘していたのだ。
 そんな気配りを、この少女はいつの間にか覚えていたらしい。
「お前にしちゃ上出来だ。良くやった」
 お前にしては、のところでレオナが反応した。
「満点ではないのね。改善すべき点は?」
「その胃薬だな。それぐらいは自室に置いとけ。そしたら誰にも見られないで済む」
「今回余った分はそうするつもりよ」
「それで満点だ」
 ラルフはレオナの頭をよしよしと撫ぜてやる。幼い子供相手のようだが、これが何となく癖になってしまった。レオナの方もされるがままになっているから、いつまでもその癖は抜けそうにない。
 だがレオナも少しずつ、だが確かに成長している。笑顔を覚え、仲間への気配りを覚え、そしていずれは頭を撫でるラルフの手を振り払うだろう。子供じゃないんだから、とか何とか抗議して。
 ……それはちょっと寂しいな、とラルフは思う。願わくばそんな日はもっと後に――って、それは普通なら父親辺りが考えることだよな、とラルフは苦笑した。俺は確かにこいつの上官だが、保護者になったつもりはねえぞ、と。
 そんなラルフの様子を見ていたレオナが首を傾げた。
「何を1人で百面相してるの?」
 こんなことも、きっと昔のレオナなら気付かなかった。畜生、余計なことまで気が付くようになりやがって。ラルフは照れ隠しに、つい乱暴な調子になる。
「何でもねえよ。ほら、他のヤツに見付かる前に部屋に戻れ!」
 ラルフはレオナの肩を掴んで、強引に回れ右させると背中をどんと押した。レオナはその勢いで一瞬つんのめりかけて、だが上手くバランスを取り直して歩き出した。無茶な上官に文句も言わないあたりがレオナらしい。
 それを見送りながらラルフは思う。基地に居残りだって、共に祝う家族がいなくたって、ほら今年も悪くない正月だ、と。

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突如、赤く変化する毛髪と瞳と、それと同時に発現する凶暴性。単に暴れると言うだけなら何とでもなるが、身体能力の向上も見られ、その破壊力は歴戦の傭兵2人を苦しめるほどのものだ。しかもレオナ本人は、その時の記憶を一切持っていない。
 そして、それは過去2回とも格闘大会KOFで起こっている。そう決めるには材料が少なすぎるが、因果関係を考えないわけにはいかない。
「今回はレオナを外す」
 司令官たるハイデルンがそう決めたのは、当然の話だった。

 当然の話だった。
 当然ではあるが、クラーク・ステイルは頭が痛かった。これから数週間、ラルフとウィップの口喧嘩を聞き続けなければならないのかと思うと。
 2人ともプロだから、いざ任務となればきっちりコンビネーションは合わせてくる。少なくとも自分の役割は確実に果たすだろう。
 だが、KOFは長丁場だ。各国での対戦と対戦の合間には、半ば余暇のような移動時間だとか、宿泊だとかがついてくる。
 そういうちょっとした空白の度に何かとぶつかり合う2人の姿が、想像するまでもなく脳裏に浮かんでクラークはため息を吐いた。
 なんだか今から胃が痛い気がする。

 なんがか胃が痛い気がする。
 そうレオナが自覚したのは、KOF不参加と、その間の後方支援に就くことが決まった翌日の朝だった。
 それを除けば、すこぶる体調は良い。一応計ってみた体温は平常の範囲内だし、朝のトレーニングのジョギングもいつもと同じタイムだ。ただ、胃だけが痛い。
 朝食のトレイを前に、レオナはちょっとフォークを持つのを躊躇った。

 フォークを持つのを躊躇っていたクラークは、同じように朝食に手をつけようとしないレオナに気付いた。
「どうしたレオナ。食わないのか? 具合でも悪いのか?」
 多国籍な傭兵部隊だ。ベジタリアンだ回教徒だなんだと、個人の食の嗜好や戒律をいちいち聞いていたらキリがない。好きなものを好きだけ食え、と食事はビュッフェ形式で並べられ、それぞれ自分の責任で、好きなものを取って来ることになっている。レオナのトレイにもレオナが食べられるものばかり――野菜や果物や豆類ばかりが乗っている。困る理由はないだろう。
「……胃が痛いの。任務に支障が出るほどではないけど」
「奇遇だな。俺もだ。なんか妙なもの食べたか?」
「いいえ。食堂で出たものしか食べてない」
「二日酔い……はお前に限ってないだろうな。となると神経性の胃炎か?」
「私がどうかはわからないけれど、中尉はそうでしょう?」
 レオナはちらりとビュッフェの方を見る。
 ビュッフェ台の方から、ラルフとウィップが何か言い合う声がする。
 たぶんあれは「朝からそんなにパンに蜂蜜つけるヤツがいるか!見ている方が胸焼けしそうだぜ」とか「あら朝の糖分は脳の働きを活性化させるんですよ?それより大佐の方がそんなに脂ぎったベーコンとか卵ばっかり。コレステロール過多で脳溢血起こすんじゃないですか?もう歳なんだから考えた方がいいですよ」「歳の話はやめろ、歳の話は。だいたいお前はだなあ……」とかなんとか言い争っているのだろう。
 まったくもうあいつらは、とクラークは毎度のことながらため息をついた。ああ、胃が痛い。
「医務室行って、胃薬貰ってくるか」
 ここでうだうだと朝食のトレイを突付きまわしているよりはマシだろう、とクラークは極めて建設的な判断を下した。
「必要なら、私が受け取ってくるわ」
「いや、俺が行ってくる。お前の分も貰ってくるさ。だからお前は」
 ラルフとウィップの言い合いは、少しずつボリュームを上げながら続いている。
「その間にあれをなんとか黙らせてくれ。出来る範囲で構わんから」
 他力本願、責任転嫁、敵前逃亡。何とでも言いやがれ。俺はとにかくあの騒ぎから離れたい。そう思うクラークを、少なくともレオナは責める気はないようだった。
「……努力はするわ」
「ああ、過剰な期待はしないでおくさ」

「過剰な期待はしないでおくれよ。神経性のヤツなら薬なんて気休めだからね」
 そう言いながら、ドクターは胃薬の入ったパウチをクラークに差し出した。
「胃痛の元になるストレスそのものをなんとかしなきゃ、根本的な解決にはならないんだからさ。薬で抑えてもその場しのぎだ。胃に大穴開ける前に何とかしろよ」
「何とかなるなら10年以上前にやってるさ」
「ああ、お前さんのストレスの元はやっぱり大佐かね。あんたも懲りずに良く付き合ってるもんだ」
「それが腐れ縁ってヤツさ」
 そんなもんかと苦笑を浮かべながら、軍医はカルテにあれこれと書き込んでいく。
「で、もう1人は誰の分だね?」
「うちのレオナの分」
「ほほう、それは珍しい」
「珍しい?」
「ほんの10分ほど前にね、そのレオナ嬢の父親も来てるんだよ、ここに」
「父親って、教官が?」
「ああ、それも胃薬を貰いにね。神経性の胃炎らしいって」
 そう言いながら、軍医はクラークのカルテの下敷きにされていた、もう一枚のカルテを指差して見せた。表紙には確かにハイデルンと書いてある。
「そりゃ珍しい」
 クラークは、この男には珍しく素直に驚いてみせた。
 ハイデルンは精神的にも肉体的にもタフな、まさに軍人向けの資質に恵まれた人間だ。もう少し若いころ、ラルフとクラークが部隊に入って来たあたりには、部隊もまだまだ安定しておらず、何よりハイデルン自身が重く暗い過去を引きずっていたせいもあってストレスを胃薬で誤魔化す日も多かった。
 だが、あれから時は流れ、復讐の完結が過去を少しだけ軽くし、部隊はそれなりに動くようになっている。少なくともこの数年クラークは、ハイデルンがストレスで胃をやられる、などという話を聞いた覚えがない。
 それがまあ親子同じタイミングでとは珍しい。血が繋がっていないとは思えないほどの似た者親子だな、と笑おうとしてクラークはふと思い至った。まさか。

 ふと思い至った。まさか。
 神経性の胃炎など何年ぶりの話で、珍しいこともあるものだと思ったが、まさかアレが原因ではないだろうな。ハイデルンは貰ったばかりの胃薬を飲もうと持ち上げた水差しをそのまま、己の思考にしばし凍った。
 部隊は順調に機能している。世はおおむね平和だがそれなりに騒乱と戦火を孕んでもいて、当面明日の仕事の心配をする必要はなさそうだ。全くもって問題はない。
 KOFがもうすぐ始まるが、参加枠の3名は無事に埋まった。そうでなければレオナを出せない以上、自分が出るしかないかとも思っていたが、ウィップが戻ったお陰でこれもまた問題ない。
 それでは何がストレスになっているのだろうと考えて、ハイデルンはあることに思い至ったのだ――もしかすると自分は、義娘と2人で過ごすことになるのを不安に思っているのではないかと。
 2人で過ごすといっても後方支援の任務中だ。他の部下もいる。やるべきことは多く、時間を持て余すこともない。
 だが、要素はあった。ハイデルンは義娘と8年も暮らしていながら、共有した時間はあまり多くない。多忙さゆえに、家を空けることの方が多かったのだ。実際に共に過ごした時間は短い。
 しかもあの頃とは状況が違っている。人形のようだった義娘は、少しずつではあるが感情を取り戻し始めた。その上、男親がもっとも苦手とする年齢に差し掛かっている。かつて娘を持っていたとは言え、その娘をもっと幼い時期に喪っているハイデルンにとっては年頃の娘というものは未知の生物だ。
 娘と何を話し、どう接すれば良いのかわからない。それがこの胃炎の原因だと思い至ってハイデルンは愕然とした。
 その伝説を謳われた隻眼の傭兵隊長は、その時ただの不器用な父親でしかなかった。

 ただの不器用な父親でしかなかったというわけか、あの人も。医務室から食堂へ戻る廊下を歩きながら、クラークはそう考える。
 無理もない。娘は微妙な年頃で、父は父親である前に師であり上官で、しかも血さえ繋がっていない。
 それでもあの2人はどうしたって父と娘でしかないのだから、もっとシンプルに考えればいいものを、と他人の気楽さでクラークは思う。数年ぶりの親子水入らず。それぐらいに考えればいいものを、と。
 それが揃って悩み込んで、挙句の果てに胃を壊した。しかもおそらく無自覚に、だ。何をやっているのやらと苦笑しながら、と食堂のドアを開けると、一番に目に飛び込んできたのは背を向け合って食事をするラルフとウィップだった。まるで喧嘩の後でおやつをだされた子供を見ているようだ。おやつは美味しくて機嫌も直ったし、本当はもう仲直りをしてもいいかと思っているのだけれど、意地を張って背を向け合う子供同士だ。
 思わず吹き出しながら、クラークはつくづく、レオナは変わったと思う。世界の全てとの関わりを断つように心を閉ざしていた少女が、少しずつ感情を取り戻し、他人を思うということができるようになり、今では不完全ながらも喧嘩の仲裁までするようになった。
 それなら変われるだろう。義父との関係も、少しずつ。
 きっといつかこんなものもいらなくなるのだろうなと思いながら、クラークは困り顔のレオナに胃薬のパウチを投げてやった。
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