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 セルバンテスに言葉巧みに乗せられたような感はあるが、数日後、二人は彼が紹介してくれた店を訪れることにした。
「まるでおじさまとデートしているみたいですわね」
 少々語弊があるが、嬉しそうな彼女を訂正するにも忍びない。
「いらっしゃいませ。セルバンテスさまからお話は伺っております」
 待ち構えていた女性店員が、彼らを店舗内へと案内する。
「目移りしてしまいそうです……」
 並べられた色とりどりの洋服を見回すサニーに、女性の店員が笑いかけた。
「お嬢さま。どうぞ好きなだけ試着なさってください」
 サニーはとっかえひっかえ服をその身に当て、時折何事かを考え込む。それを幾度か繰り返し、その中である一点を手に取った彼女は顔を輝かせた。
「これがいいですわ。お願いできますか?」
「では、こちらへ」
 サニーは店員に連れられ、ドアの向こうに消えた。一方、樊瑞は別室で彼女が着替えるのを待つ。
 ソファに座ると、それを見計らったように別の店員が茶器を彼の前に置いた。
 あぁ、いい茶葉を使った中国茶だ。
 彼はそんなことを思いながら喉を潤す。
「まぁ、お嬢さま。とても愛らしい」
 隣の部屋からそんな店員の賛辞が聞こえてきた。
「こちらでしたら、靴はロングブーツを合わせるといっそう可愛らしいですよ。持ってまいりますね」
 そして、ドアの開く音がし、
「どうでしょうか、おじさまっ」
 華やいだ声に彼は視線を向ける。
 至極嬉しそうなサニーとは対照的に、樊瑞は啜っていた茶を噴出しかけた。
 確かにとても愛らしい。その点に関して異論はない。
 だが、問題はそのスカートの短さだ。
「サ、サニーっ! はしたないっ! もう少し裾の長い服を……っ」
「でも、おじさま。セルバンテスおじさまは絶対領域は必須だと」
 それに、短いほうが絶対かわいい、と仰っていて。
 サニーの台詞に、彼は訝って眉を寄せる。
「……なんだ、それは」
「さぁ……よくわかりませんが、ここのことだそうですけど……」
 彼女も首を傾げながら、スカートとロングブーツの狭間を指でさししめした。
 同僚に殺意を抱くことは滅多にない。頻繁にあっても困るが、しかし、このときほど殺意が湧いたことはない。
 覚えていろ、セルバンテス。
 樊瑞は胸のうちで呪詛を呟く。
「でも、おじさまっ。私、これが気に入りました」
 これがいいですわ。
 笑みを浮かべた少女は樊瑞の目の前でくるくると回る。そのたびにスカートの裾が揺れ、なかなか危うい。
 サニーはまだ子供だ……うむ。まだ幼い。
 動き回るには長い裾は邪魔になるだろう。
 樊瑞は無理矢理己に言い聞かせる。
 わしがいるときは、マントで覆い隠してやればいいからな。だが、成長したら、絶対にもう少し慎みのある服を着せる。誰がなんと言おうと……特にセルバンテスがなんと言おうが着せてやる。
 彼は心中で密かに握りこぶしを固めた。


 しかし……樊瑞の決意も虚しく、絶対領域は彼女のトレードマークとなる。
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