紅い世界。
たいして広くもない部屋。
漂うは死の香。
ただ1人立ち尽くすのは、全身が紅く染まった少年だった。
昔の夢を見た。
初めて人を殺した時の…。
どうしてそうなったのか、覚えてはいない。
それでも記憶に残った。
紅と鉄臭い血。
床に転がった死体。
自分にもともとあった衝動なのか、ひどい有様だった。
最初は殴った。
それでも満足出来ずに殴り続け、足も出た。
殴り過ぎたのか、血を流し出すのを無視し、ただひたすら加える暴力。
顔の形が変わり、骨の砕ける音。
あちこちが変形していく、人の身体。
信じられない光景だった。
まだ少年の男の子とは思えない力。
冷めた瞳。
少年は口元だけに、薄く笑みを浮かべた。
子供とは思えない、残酷な冷笑だった…。
恐怖に引きつる顔をした相手を殴り続けながら…。
どこまでも冷酷な顔で…。
少年は暴力を振るい続ける。
殴られ蹴られ続け、血塗れになっていく身体。
骨が折れ、変な方向に曲がる腕。
それでも足りないと言わんばかりに続けられる行為。
加え続けた暴行は、すでに相手から抵抗する気力を奪う。
一旦は止まった少年の手。
しかし希望はない。
何故なら少年の手には、包丁が握られていたからだ。
カオス
□※※狂気
3ページ/5ページ
--------------------------------------------------------------------------------
そして少年は切り付ける。
持ち出した包丁で、滅多刺しにする。
何故こんな状況になったのか…。
すでに覚えていない。
少年にはすでに理由など、どうでもよかった。
少年が今捕らえているのは、目の前の獲物だけだ。
だから加える暴力は止まらない。
包丁で刺し切り刻むことで、辺りは更に鮮血に染まる。
呻き声さえ上げなくなったが、それでも少年は止めなかった。
肩を突き刺し。
頬を突き刺し、そのまま上に押し上げる。
腹を突き刺し、抉る。
そして内蔵…、腸を引き摺り出す。
太股を突き刺し、そのまま捻る。
瞳に刄を突き刺し、潰し。
あるいるは、瞳を指で抉り出し。
その眼球を舐める。
切り付けたあとに、指で肉を剥ぎ。
指は1本づつ切り落とす。
切り落とした指から滴る血を、まだ辛うじて長さのあった指を口に含み、血の味を楽しむ。
肩は脇のところの皮一枚で繋がっているのか、切れてはいるがまだ繋がり、垂れ下がっている。
ところどころ皮膚が無く、肉が見えている。
あるいるは、その肉さえ無く骨が出ていた。
包丁で首を切り付け。
でたらめに刺して、骨を断つ。
ドンっ!という音がした。
そして少年の足元に転がる、人の頭部。
吹き上げた血を頭から被り、全身が紅く濡れていた。
そしてようやく止めた時は、部屋は血の海だった。
興味を無くし、見下げた視線の先には、原型を留めていない人の身体。
首から下がない頭が2つあるそれは、男と女のもの。
身体に加えられた行為に違いはあるが、2人ともに首は切り落とされていた。
只の肉塊となったその犠牲者は、少年の両親だった。
壁一面に紅く広がる血痕。
ドス黒く変色している血。
存在するのは血の海と、立ち尽くす少年だけ。
『そのまんま飛び出して、親父に拾われたんやったっけ。』
まるでたいした思い出でもないように、吾朗は昔を懐かしむ。
血塗れの少年を見て、嶋野は何を思ったのか…。
吾朗は嶋野に拾われた。
嶋野はきっと、知っていたのだ。
出会ったあの瞬間、吾朗の中に眠る獣の存在を…。
だからこそ手元に置き、極道の世界に身を置かせた。
その時から吾朗は、自分の狂気を抑えることはしなくなった。
もっとも最初から抑えることなどしていなかった。
そのおかげで彼の両親は、その餌食になったのだ。
だからこそ、吾朗はこの世界で有名になった。
たとえ仲間や舎弟だろうが、気に入らなければ殴る。
やり過ぎて死なせた仲間は数知れず。
それでも何故か舎弟は吾朗に付いた。
そして吾朗の狂気を満たしてくれる龍は、彼にとって唯一の楽しみ。
思いきりやり合える相手。
本気で命のやり取りが出来る相手。
吾朗の中に眠る存在が、唯一歓喜する相手。
『ほんま、楽しいわ。』
『俺がこない楽しめるんわ、桐生ちゃんだけやで。』
龍はこれからも、吾朗を満たす存在。
『これからも、俺を楽しませたってくれや。』
『そやないと、退屈でしゃーないわ。』
『なぁ?桐生ちゃん。』
知らず、吾朗は口元に笑みを浮かべた。
そしてこれからも変わらない。
吾朗の狂気は絶えることなく、彼の中に存在し続ける。
狂犬と呼ばれる、男の中に…。
end
たいして広くもない部屋。
漂うは死の香。
ただ1人立ち尽くすのは、全身が紅く染まった少年だった。
昔の夢を見た。
初めて人を殺した時の…。
どうしてそうなったのか、覚えてはいない。
それでも記憶に残った。
紅と鉄臭い血。
床に転がった死体。
自分にもともとあった衝動なのか、ひどい有様だった。
最初は殴った。
それでも満足出来ずに殴り続け、足も出た。
殴り過ぎたのか、血を流し出すのを無視し、ただひたすら加える暴力。
顔の形が変わり、骨の砕ける音。
あちこちが変形していく、人の身体。
信じられない光景だった。
まだ少年の男の子とは思えない力。
冷めた瞳。
少年は口元だけに、薄く笑みを浮かべた。
子供とは思えない、残酷な冷笑だった…。
恐怖に引きつる顔をした相手を殴り続けながら…。
どこまでも冷酷な顔で…。
少年は暴力を振るい続ける。
殴られ蹴られ続け、血塗れになっていく身体。
骨が折れ、変な方向に曲がる腕。
それでも足りないと言わんばかりに続けられる行為。
加え続けた暴行は、すでに相手から抵抗する気力を奪う。
一旦は止まった少年の手。
しかし希望はない。
何故なら少年の手には、包丁が握られていたからだ。
カオス
□※※狂気
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そして少年は切り付ける。
持ち出した包丁で、滅多刺しにする。
何故こんな状況になったのか…。
すでに覚えていない。
少年にはすでに理由など、どうでもよかった。
少年が今捕らえているのは、目の前の獲物だけだ。
だから加える暴力は止まらない。
包丁で刺し切り刻むことで、辺りは更に鮮血に染まる。
呻き声さえ上げなくなったが、それでも少年は止めなかった。
肩を突き刺し。
頬を突き刺し、そのまま上に押し上げる。
腹を突き刺し、抉る。
そして内蔵…、腸を引き摺り出す。
太股を突き刺し、そのまま捻る。
瞳に刄を突き刺し、潰し。
あるいるは、瞳を指で抉り出し。
その眼球を舐める。
切り付けたあとに、指で肉を剥ぎ。
指は1本づつ切り落とす。
切り落とした指から滴る血を、まだ辛うじて長さのあった指を口に含み、血の味を楽しむ。
肩は脇のところの皮一枚で繋がっているのか、切れてはいるがまだ繋がり、垂れ下がっている。
ところどころ皮膚が無く、肉が見えている。
あるいるは、その肉さえ無く骨が出ていた。
包丁で首を切り付け。
でたらめに刺して、骨を断つ。
ドンっ!という音がした。
そして少年の足元に転がる、人の頭部。
吹き上げた血を頭から被り、全身が紅く濡れていた。
そしてようやく止めた時は、部屋は血の海だった。
興味を無くし、見下げた視線の先には、原型を留めていない人の身体。
首から下がない頭が2つあるそれは、男と女のもの。
身体に加えられた行為に違いはあるが、2人ともに首は切り落とされていた。
只の肉塊となったその犠牲者は、少年の両親だった。
壁一面に紅く広がる血痕。
ドス黒く変色している血。
存在するのは血の海と、立ち尽くす少年だけ。
『そのまんま飛び出して、親父に拾われたんやったっけ。』
まるでたいした思い出でもないように、吾朗は昔を懐かしむ。
血塗れの少年を見て、嶋野は何を思ったのか…。
吾朗は嶋野に拾われた。
嶋野はきっと、知っていたのだ。
出会ったあの瞬間、吾朗の中に眠る獣の存在を…。
だからこそ手元に置き、極道の世界に身を置かせた。
その時から吾朗は、自分の狂気を抑えることはしなくなった。
もっとも最初から抑えることなどしていなかった。
そのおかげで彼の両親は、その餌食になったのだ。
だからこそ、吾朗はこの世界で有名になった。
たとえ仲間や舎弟だろうが、気に入らなければ殴る。
やり過ぎて死なせた仲間は数知れず。
それでも何故か舎弟は吾朗に付いた。
そして吾朗の狂気を満たしてくれる龍は、彼にとって唯一の楽しみ。
思いきりやり合える相手。
本気で命のやり取りが出来る相手。
吾朗の中に眠る存在が、唯一歓喜する相手。
『ほんま、楽しいわ。』
『俺がこない楽しめるんわ、桐生ちゃんだけやで。』
龍はこれからも、吾朗を満たす存在。
『これからも、俺を楽しませたってくれや。』
『そやないと、退屈でしゃーないわ。』
『なぁ?桐生ちゃん。』
知らず、吾朗は口元に笑みを浮かべた。
そしてこれからも変わらない。
吾朗の狂気は絶えることなく、彼の中に存在し続ける。
狂犬と呼ばれる、男の中に…。
end
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