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Er
*FOR ME LOVER*


最近おかしい。
自分の心の中を占める栄吉の割合が日に日に増してくるような気がする・・・
何でだろう、何なんだろうこの切なさは・・・
・・・・・・つーかどうして私が栄吉の事なんかで悩まなきゃなんないの!
第一私には達哉っていうステキな情人が・・・
「情人かあ」

ついさっき仲間達と解散したリサは、ひとりで夢崎区のピースダイナーに来ていた。
家へ帰るにはまだ少し早かったし、だからといって友達と遊び歩く気にもなれない。
むしろずいぶん前の事になるが、MUSESの件であさっちとみーぽを失ったリサには、心を許せる友人が誰もいなかった。
「私の本当の情人って誰なんだろう・・・」
「情人がどうかしたのかい?」
突然油断している所に背後から声をかけられたリサは、普段からの癖か振り返りざまに思わず身がまえた。
「リッリサ、僕だって」
聞き覚えのある声に反応しよく見てみると、そこにはすっかり逃げ腰の淳がいる。
「淳!?」
ほんの数十分前に別れたはずの、思いがけない人物の登場にリサは驚いた。
「ふう、殴られるのかと思ったよ、あっ、隣いい?」
「いいけどねえ、急に声かけないでいるんならいるっていいなさいよ!」
「ご、ごめん、だってリサってば真っ赤な顔しながら考え込んでるみたいで声かけにくくて・・・」
(真っ赤な顔!?私が!?
 達哉の事考えてたんなら分かるけど、今私が考えてたのは・・・栄吉?)
「リサ?」
「え、あ、うん、大丈夫、そっそれよりもさぁ、淳は何でこんなとこに来たの? 寄り道なんてめずらしいじゃん」
自分の顔が再び赤く染まり始めるのを感じたリサは、カンのいい淳に気付かれる前に話をうまくそらした。
(末期症状なのかな・・・あいつの事思い出しただけで顔が赤くなるなんて・・・)
「あっ、そうだ!実は舞耶姉さんからの伝言を伝えるためにリサを探してたんだよ
 『今すぐ青葉公園に集合!!』だって」
「今すぐ!?あっ、でも・・・それってさぁ、もしかして達哉と栄吉も来るの?」
「うん、来ると思うよ、何でもけっこう大切な用事らしいからね」
(やっぱり自分の気持ちを確かめたい、でもそのためには今日じゃなきゃダメな気がする・・・
きっと、あいつに会えばすべてが分かる)
「分かった!じゃあ淳、急いで公園に行こ!」
「そうだね、みんなもう待ってるかもしれないし」
午後5時、リサはそろそろ暗くなり始める街へ、不安と期待を抱きながら飛び出した。

 
「よーし、みんな集まったわね~。
 わざわざこんなに遅くなってから集まってもらったのにはちゃんとワケがあるのよ。
 ユッキー達からの連絡でね、近頃夜になるとこの公園でラストバタリオンに襲われる人が急激に増えてるらしいの。
 そ・こ・で!今から私達が見回り係と連絡係に分かれてユッキー達のお手伝いをしたいと思いま~す!」
「ハイ!舞耶ちゃん、しつもーん!」
「何、リサ?」
「それってぇ、何人ずつに分かれてやるの?」
「そうねえ・・・、見回り係は二人組を二組、連絡係は一人で十分でしょ」
(二人組か、達哉はやっぱり・・・やっぱり舞耶ちゃんの方見てる
 でもそうだよね、達哉はきっと舞耶ちゃんの事が好き。
 こんな光景、今まで何回見たんだろう・・・。なのに、今日は不思議とそんなにつらくない)
「舞耶姉、俺と・・・」
「え?達哉クンはリサと一緒じゃなくていいの?」
「えっ、あっ、いいのいいの!舞耶ちゃんは達哉と行ってきなよ。
 わ、私は・・・うん、栄吉と行くからさあ。ほ、ほら、行くよ、栄吉!」
「は!?お、おい待てよ、おいっ!」
リサは答えも聞かないうちに、栄吉の腕をつかんで全速力で公園の奥へと走り出した。
あの状況の中で、自分が達哉にとって邪魔者なのは明らかであったし、これ以上舞耶に変な気を使われる事に耐えられなかったからだ。



「はあ、はあ、はあ、・・・おまえさぁ、急に走り出して何があったか知らねえけど、あれで良かったのかよ?」
「はあ、はあ、はあ、達哉と舞耶ちゃんの事?」
「お、おう、やっぱりさ、何て言ったらいいのかわかんねえけど・・・
 あのタッちゃんの態度は良くないよな、ギンコがいるってのにあんなにストレートに言わなくても・・・
 あ、別にタッちゃんは舞耶ネェが好きなんじゃないかとかそういう事を言ってるんじゃなくて、あの、その・・・」
「いいよ、別に、いくら私でももう分かってるから」
「わりぃ・・・」
二人の間にしばらく沈黙が流れた。栄吉の顔もずっと曇ったままでうつむいていた。
「バーカ、何であんたが悲しそうな顔してんのよ! 私は全然大丈夫なんだからね、ほらこの通り!」
リサは無理に最高の笑顔をつくってみせた。もうこの話題から離れたかったからだ。
こうすれば栄吉もいつもの栄吉に戻る・・・
そう思ったのに、返ってきた言葉はあまりにも予想外のものであった。
「つらかったら泣けばいいじゃん、少なくともオレの前では素直になっとけよ。
 オレならすべて受け入れてやるから・・・」
その言葉を聞いたとたん、リサはまるで時がとまったような感覚におそわれた。
今まで自分を閉じ込めていたオリが解き放たれたかのように、涙が瞳からとめどなく溢れてくる。
そして頭で考えるより先に体が動き、次の瞬間には栄吉の胸に飛び込んでいた。
(どうしよう、私本気で栄吉の事が好きなんだ・・・
 この涙だってつらかったからながれたんじゃない、栄吉の言葉うれしくてうれしくてどうしようもなくて溢れてきたんだ・・・)
初めはリサの突然の行動に驚きを隠せなかった栄吉も、次第に自分の胸で泣きじゃくる弱々しい天使を守り、包み込むかのように優しく背中に手をそえた。

 
「も、もう落ち着いたのかよ?」
「う、うん・・・」
ベンチに並んで座った二人は、ついさっきまできつく抱き合っていた恥ずかしさからか、お互いの顔も見れずにうつむいていた。
「なあ!」「ねえ!」
「・・・栄吉からどうぞ」
「ギンコから言えよ」
(やっぱり言おう、自分の気持ちがやっとはっきりしたんだから、私は栄吉が好き、それだけ分かれば十分じゃん)
リサは高鳴る鼓動をおさえるように深く息をすると、栄吉の目をまっすぐにみつめた。
「私ね、私・・・、実は達哉の事けっこうあきらめついてきてるんだ」
「え、マ、ジで・・・?」」
「うん、いつもいつもつらくて、みじめで、落ち込んでばっかりだった
 達哉に嫌われないようにって本当の私をずっと隠して、自分にウソついて・・・
 その上、舞耶ちゃんにやきもちやいたりしてホントに私って最低だなあって
 でもね、でも・・・」
「でも?」
「そんなふうに暗くなってる私をいつも優しくはげましてくれたり、気使ってくれたり
 私には気付かれてないつもりなんだろうけど実はバレバレで・・
 そんなバカな奴を最近好きになっちゃた!」
「え、誰だよ、そいつって?」
「はあ・・・もう!まだ分かんないの?そんなバカな奴なんてあんたしかいないでしょ!」
「!!!!!」
突然すぎるリサの告白に、白く化粧した顔が桜色に見えるほど栄吉の顔は紅潮した。
そして大きく深呼吸したあとに、決意をしたような面持ちで前に乗り出すと、
リサの肩をしっかりとつかみ、そのまま額に唇を軽くおとした。
「栄吉・・・」
「そ、そのよお・・・実はオレから言うつもりだったんだけど先こされちゃったみたいだから・・・。
 でも、あ、あ、改めて言わせてもらいます。
 オレ、三科栄吉は、ギンコことリサ=シルバーマンにマジで惚れてしまいました。
 付き合ってください!!」
リサの瞳から再び大粒の涙がながれはじめた。
生まれて初めて大好きな人と心から思い合えた事に感激しての涙だった。
「情人、だーいすき!!」
リサと栄吉は時間を忘れて、いつまでもお互いを確認するかのように抱き合っていた・・・。



                                         FIN 


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