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 姿に驚いて起き上がろうとしたところを、静止されて李斎は上半身だけを起き上がらせた。
「女性の臥室に失礼かと思ったが」
「お気になさらず……なぜ、主上が」
「嵩里に頼まれてな」
 簡素な官服に身を包んだ主、驍宗は困った表情を浮かべながら椅子に腰掛けた。
「訓練中に怪我をしたらしいな」
「軽い切り傷です、大したことはございません」
「……浅くもないようだな」
 右腕に巻かれた包帯から、わずかに血が滲み出ていた。治癒は早いだろうが、念のためにと寝かされたらしい。
「ひどく心配していたぞ。嵩里は血に弱い、見舞いに行けず悲しんでいたな」
「それは仕方のないことです、麒麟ですので」
 麒麟は血に酔う。そういう生き物なのだ。
「だから私が来た。見舞の品もある」
「それは勿体無い……一介の将軍には」
「あやつにとっては親しい者は家族に等しい。恐れ多いと思うな、それが嵩里の良いところでもある」
 そうですね、と李斎は微笑んで頷いた。
「明日の訓練には差し支えはなさそうだな」
「はい、今日は養生しておりますの……しゅ……!?」
 手が伸びて、指で髪を絡めとられた。
「私も心配だったがな」
「どちらも真意でございましょう」
「そうだ」
 顔を近づけ、口づけを交わす。人払いは当たり前、邪魔をされることもない。
 されるとすれば、扉の向こうから呼ばれる声だけだ。滅多に呼ばれることはない、急用以外は。
「無理をするな、とは言わん。だが無茶だけはするな」
「それは約束しかねます」
 王ではなく、男としての忠告の言葉を受け止め、けれど同意はできないと言い退けた。
「私は……愛しております。ですが自らに課せられた仕事を放棄はできません。私にとっては将軍職を失うことは、主上との離別です。世界が違いすぎます。私は……」
「それ以上はいい。すまないな……一方的な……」
「いいえ」
 驍宗を困らせるつもりではない、落ち着かせるように李斎から口づけた。
「主であると同時にお慕いしております、女として。ですが同列であって、どちらが上とは答えかねます」
「そうか」
 正直な気持ちを聞かされて、驍宗は腕を伸ばして抱きしめた。
「私は今の関係を崩す気はございません」
「それは私もだ。手に届く場所にある……」
 付き合い、愛し合う時間が長ければ長いほど欲は深まる。

 けれど欲は抑えなければならない。

 今この時の付き合い、幸せな時間を永遠に紡ぐために。



 必要なのは進展ではなく、継続――。


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