忍者ブログ
Admin*Write*Comment
うろほろぞ
[491]  [490]  [489]  [488]  [487]  [486]  [485]  [484]  [482]  [481]  [480
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。





冬の月が最も美しい。
冴えた漆黒の闇の中で浮いた白銀の光。


そして、冬の残月もまた最も美しい。




残月




「ああ、残月でございます。」
「ん」


先ほどまで腕の中にいた女は起き上がり、閨の窓を見た。


朝議までまだ程遠い時である。
諸官達もまだ眠っているであろう。

中途半端に目覚めた自分も彼女を抱いて惰眠を貪りたい。


「驍宗様?」
「何だ、李斎…もう少し眠らせろ。」
「…ええ。しかし残月がとても美しいのでございます。」
「そうか…置きだす頃まで月は残っていよう。」


驍宗は李斎を抱き寄せる。
身体は泰の冬の寒さに晒されて、王宮の中ですら、体が冷えている。


「李斎、体が冷たいぞ」
「そうかもしれませぬ…布団の中は暖かい…」
「女官が起こしに来るまで随分と時間はある。」
「では二度寝を致しましょう。」
「ああ、」




冬の朝は辛い。


暖かい布団の中から出る事は実に勇気と忍耐がいることである。
それゆえ、時間が許す限り直前まで寝台の中へもぐりこんでいる。


ふと、李斎が見ていた窓を見る。
薄暗い空に浮かんだ残月。


やがて、山々は暁光を照り返し地平は赤く染まるであろう。
地平の赤に
空の灰蒼色
地平と空の境界に白銀の月。



明けに有る月とはよく言ったものだ。




「共に残月を見よう仲となろうとは。」
「…ん…なんでございます…か…」
「なんでも、ない。」




遠くで鳥の鳴く声がする。


夜明けは近い。



しかし、今しばらくの夜を楽しませてもらおう。










Fin.
PR
gegeege * HOME * ggdsag
  • ABOUT
うろほらぞ
Copyright © うろほろぞ All Rights Reserved.*Powered by NinjaBlog
Graphics By R-C free web graphics*material by 工房たま素材館*Template by Kaie
忍者ブログ [PR]