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「これ奇麗ですね」
「そんなことはございませんよ、控えめな物を使っておりますから」
 側仕えの女官の簪(かんざし)を眺めて泰麒は、目をわずかに輝かせて見つめた。
「……着ないのかな」
「どうなされましたか?」
「ううん、気にしないで」
 笑って答え、泰麒は駆け出す、主の部屋へと。
「主上」
「どうした」
 筆を止め振り返る。笑んで腕を広げた。嬉しくて泰麒は胸の中に飛び込んだ。無二の主、抱かれれば嬉しくて仕方がない。
「あのですね」
 耳元で小声で伝える。その言葉に一瞬唖然として、驍宗は笑い出した。
「武人だからな、着るかどうかはわからんぞ」
「そうですよね……でも、奇麗だと思うんです」
「それは同意しよう、ならば策を練らないか?」
「でもお忙しいのに」
「なに」
 微笑んで背を軽く叩く。
「私も見たいだけだからな、気にするな」



 突然使者がやってきて、運ばれたのは朱色の箱。個人的に贈った品だと認められた書状、仕方なく自室まで運び開ければ驚愕した。
「これをどうしろと……」
 一介の将軍に、美しい襦裙と簪、他にも飾が多く入っていた。
「刀ならばわかるが……主上」
 はあとため息をつき振り返る。忍び込む術を心得ているようで、李斎はただ嘆息を繰り返すばかりだった。
「何をなされますか、台輔と」
「嵩里が見たいと言ってな。同意したまでのこと」
 当たり前のように椅子に腰掛けて、襦裙を手に取る李斎を見つめた。

「着てはもらえないのか?」
「着る機会がございませんよ。御前でも鎧ですし……」
「個人的にはどうだ?」
「そうは言われましても」
「私が着せようか」  

 主上、と頬を赤らめて李斎は襦裙をしまいこんだ。

「戯れを申されますな。すでに私は」
「私は?」
「……この関係が戯れに思えてしまうのですから」

 暗い表情で床に視線を落とす。どうしてこんな関係になってしまったのだろう。主従であったはずなのに。

「戯れで付き合うほど酔狂な男ではないが」
「ですが」
「お前が信じ切れないのは私のせいだろうな」

 腕を組む。

「私が王でなければいいのだろうか」
「そんなことをおっしゃってはいけません!」

 感情に任せて委細は叫ぶ。王登極は戴国の悲願だった。

「ならば」

 立ち上がり抱きしめる手は太く、頑丈で、それでいて暖かかった。

「戯れではない、それは信じて欲しい」
「しかし……おやめくだ……」

 濡れた感触、首筋をなぞる動きに李斎は声を漏らした。誰がいるかもわからない、それなのに。

「……あの夜を忘れられない……」

 甘く囁かれた言葉に仰け反る。まだ昼間だというのに。

「しゅじょ……」
 腕をつまかれ、なす術もなく蹂躙されていく。体が覚えはじめている、自覚はしていた。
 主の愛撫に心地よさを感じてしまっている。その心を読み取ったように、驍宗は囁く。



「――私が着せよう、嵩里には奇麗だったと伝えておく」

 

 そう言うと床に李斎の身につけた布地が、床にはらりと落ちて、何かが始まることを告げた……。






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