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うろほろぞ
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江戸城に入った遥は、朝食後庭に出た。どうもお付きの人がいる生活には慣れない。
家族と暮らしていたときも、祇園にいたときも、遥は自分の事は自分でするよう躾けられていた。だから人にやってもらいたいと思わないし、いつも付いて歩かれると肩がこる。
庭に出て、ふっと息を吐くと白くなった。もう季節は冬だ。
遥は袂から組紐を出すと、たすきがけにした。それから、縁の下に隠しておいた棒を取り出す。そして、見よう見まねではあったが、それを正眼に構え、振り下ろした。
「えいっ!」
きちっと掛け声を入れて、力の限り振りぬく。おじさんの、あの宮本武蔵の動きを、遥は鶴屋の窓からよく見ていた。あの動きを思い出しながら、一生懸命練習する。
その時、砂利がなる音がした。振り返ると、そこには前髪を落とし、涼やかな貫禄を持った佐々木小次郎・・・柳生宗矩が立っていた。
「遥さまは、剣の稽古ですか?」
問われる声は静かだが、以前のように怖いと思わない。遥は笑顔で頷いた。
「はい。今度は、自分の身ぐらい守れるようになりたくて・・・」
「そうですか。ですが、何方かに剣の道を学びましたか?」
遥は首を左右に振った。
「いいえ。これはおじさんの真似をしてるだけです」
言って、遥は恥ずかしくなった。宗矩から見れば、遥のやっている事はチャンバラ以下だろう。
だが、宗矩は静かに微笑んだ。それは、遥がはじめて見る、優しいものだった。
「そうでしたか。さすが遥さまですね。確かに、二天一流のようだ」
「本当ですか?」
遥は嬉しくなって、宗矩を見上げた。
「確かに。ですが、遥さまでも、二天一流を極める事は出来ますまい」
「それはどういうことですか?私が、おじさんに稽古してもらってないからですか?」
すると、宗矩は天を見上げた。つられて遥も空を見上げる。真っ青な空に、たった一つ白い雲が浮かんでいた。
「遥さま。二天一流は、宮本殿以外に、使えるものは現れないでしょう。あれは、あの方だから出来たのです。天分に恵まれた、あの方だけが」
「そうですか・・・」
遥は視線を地面に移した。少しガッカリしていると、宗矩は遥に視線を戻した。
「ですが、この宗矩の新陰流なら、遥さまにお教えすることが出来ます」
「え?」
「遥さまさえ良ければ、大殿にご相談申し上げ、私が手ほどきして差し上げます。遥さまが望まれるまで」
「本当ですか?ありがとうございます!」
遥は丁寧に頭を下げた。宗矩は腕を組むと遥を見つめた。
「ですが、二天一流がそうであるように新陰流も厳しいですぞ。覚悟は宜しいか?」
「はい!」
遥は笑顔になった。そして宗矩も笑顔になった。
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桐生じゃないか。久しぶりだな。

伊達さんじゃねえか。こっち出てきたのか?

引退したってぇのになんやかんや引っ張りまわされてんだよ。

日本の警察ってのは働き過ぎってのは本当だな。

違いない。ところで桐生、小耳に挟んだんだが、お前東京と大阪のキャバクラを荒らしまわってたそうじゃないか。

…そんなこと誰から聞いたんだ。

誰だか言わなくても分かるだろ。

ユウヤか。あいつあとで覚えてろよ。

お前ぇな、遊びたい気持ちは分かるがあんまり遥に心配かけるなよ。

遥には言わないでくれよ。

言えるかそんなこと!バレたら遥に散々罵倒されるぞ。

叫ぶだろうなぁ。

おじさんの馬鹿!女たらし!おじさんみたいな女性の敵はおうちに帰ってこなくていいです!とかな。

…想像しただけで泣けてきた。

お前の無駄に豊かな想像力に俺は泣けてくるよ。

俺の後喜んでついてまわる遥にそんなこと言われたらなあ…。

遥だって今はおじさんおじさんとお前のあとついてまわるがよ、そのうち離れてくんだぜ?今のうちに色々決着つけてねえと「おじさんの洗濯物と一緒に洗わないで!」とか言われるようになるんだぜ?

経験者の言葉か。重みがあるじゃねえか。

余計なお世話だ。…まあ可愛がることができるうちに可愛がっておけってことだ。ところでお前、こんなところでなにやってたんだ。大荷物抱えて。

晩飯の買出しだが。そこのスーパーでタイムセールやっててな、遥に2割引のうちに買えるもん買ってこいと言われたんだ。








元刑事の男は一瞬言葉をなくし、膝を打って笑った。あの堂島の龍と呼ばれた男も今や娘に嫌われるのを恐れ買出しに顎でこき使われるのである。元刑事は元龍の男の肩を叩き、お嬢さんによろしくなとその場を後にした。ああいい天気だ。


2度目


狭山が桐生と付き合うようになって数ヶ月が過ぎた。
お互い、多忙の身であり、しかも長距離を行き来する仲はあるが、その交際はおおむね良好だった。
あの神室町ヒルズの大々的な事件が過ぎ去ってから数日はお互い忙殺されたが、今は平和な時間を味わうように逢瀬を繰り返している。
どちらかと言うと、桐生の方が時間に都合をつけて大阪に出向いてくれることが多かった。
狭山も都合さえつけば、東京に出向き、短い時間でも桐生と会うことに時間を惜しまなかった。
会う度に胸がときめき、頬が熱くなる。
それは相手も同じだった、会うたびに笑顔を、抱擁を、そしてかけがえのない時間をくれる。
もうじき付き合いだして初めてのクリスマスを迎える。
その時自分はどんな服を着よう。
彼はどんな台詞を言うだろう。
自分たちはどんな時間を過ごすだろう。
狭山は手帳を見ながらひっそりと微笑んだ。



「今年のクリスマスね、女の子同士で集まってパーティーしようか、って言ってるの?」
「えっ?」
遥の言葉に、桐生は一瞬租借を忘れた。
遥は味噌汁を軽く啜ってから、椀をテーブルに置いた。
「だからね、泊まりがけのパーティーなんだけど、行ってもいいかなあ? おじさん?」
少し甘えるように首を傾げる遥の表情に、桐生は無意識に相好を崩した。
「相手の親御さん、何て?」
「うん。どうぞどうぞって。それに泊まるの私だけじゃないんだよ。みんなで5人! 集まってー、プレゼントの交換してー、それで、朝に皆でマック行くの! ミスドでもいいけど」
「いいな、楽しそうだ」
定職を持ち、住所と一定させてから、遥には友達がぐっと増えた。
そして毎日楽しそうに学校に通っている。
その姿を桐生はとても嬉しく、そして誇らしい気持ちで見つめていた。
今までは孤児院のヒマワリでパーティーを開いていたんだろうが、今年は友達だけのパーティーになる。
もちろん、遥の性格だからヒマワリにも顔を出すのだろうけど。
「じゃあプレゼント買う金がいるな。それに、向うの親ごさんに挨拶もしとかねえと――」
「うん。それは、その日が近くなったら言うね」
「ああ、俺、忘れっぽいからな。しつこく言ってくれよ?」
遥はそこで不意に真顔になった。「うん」
「おじさんは忘れっぽいからね。ちゃんと言う」



桐生は遥が眠ってから、狭山に電話をかけた。
深夜だが、彼女は起きていた。
クリスマスの日を空けておいてくれという電話に、狭山は恥ずかしそうに笑った。
「仕事が入るかも。約束できへんよ」
「終わってから、会えばいい」
泊りがけで大阪に行くことを告げて、桐生は電話を切った。



学校帰りの通学路。
遥は一人の男に声をかけられた。
「遥!」
「伊達のおじさん!」
遥は何人かの友達と一緒に下校している途中だった。
少女達の目に射抜かれて伊達がたじたじと竦む。
「あ、いやあ……怪しいモンじゃねえ……」
おろおろと弁明する伊達に遥が笑った。友達の方を見て軽く説明する。「ちょっと、ゴメン」
「親戚のおじさんなの。会ったの久しぶりだからちょっとお話してく」
「あ、そうなんだ」
友達たちは伊達を品定めするような目で見たが、すぐににっこり笑って手を振って別れた。伊達は安堵の息を吐く。
変質者のレッテルは貼られなかったようだ。
「伊達のおじさん! 久しぶり!」
遥は嬉しそうに伊達の足元にすがった。
伊達も遥の頭を撫でながら話かける。
「おう。ちょっとこのヘンぶらぶらしててな。どうだ? ドーナツでも食うか?」
「食べるー!!」
伊達は遥と手を繋いでドーナツショップへと入った。



「伊達のおじさん、こんな時間にぶらぶらしてるってことは働いてないの?」
遥はストロベリー・チョコ・ディップドーナツをわしわしと食べながら伊達に問う。
「きつい質問をありがとうよ」
伊達はコーヒーを一口飲んで笑った。
「今は須藤の助手みてえな事をやってるけど、まあ、実質ヒモみてえなモンかな?」
「ひもって?」
屈託のない聞き返しに伊達が口に手を当てた。「あ、いや――」
「須藤の仕事を手伝ってる。……全然働いてねえわけじゃねえぞ?」
「うん。それは分るよ。伊達のおじさんて仕事してないの似合わないもん」
「そうか?」
「そうだよ」
遥は2個目を手にとった。今度はフレンチ・クルーラー。
「前だってそうだったじゃない? すごく頑張ってくれた」
「前?」
伊達はオールド・ファッションにかりっと歯を立てながら聞き返す。
しばし、遥は伊達の目を見た。「ミレニアムタワーで」
「伊達のおじさんがいなかったら、おじさん、刑務所に入ってたんでしょ?」
「それは――」
いきなりの昔話に伊達が戸惑う。
「私最近よく思うの。あの時伊達のおじさんがあそこに居なかったら、もう何もかもが全部違ってたんだろうなって」
遥は指についたクリームを軽く舐めた。
「だってあの時おじさんは何もかも投げてたから」
「まあ、あの状況じゃな」
伊達は苦笑した。笑い話にするために。
正直、母親が目の前で死んだという局面で、遥がそこまで桐生のことを観察できていると思っていなかった。
「伊達のおじさんが怒鳴ってくれたから、おじさんは思いとどまったの」
「いやあ、俺なんか居なくて、拘束された段階でいくらでも申し開きできたぞ?」
遥は2個目のドーナツを完食してから言った。「おじさんは、そのことを一生覚えておくべきなの」
「伊達のおじさんに助けてもらったことを。でも、忘れてる」
「いや、そんなことねえだろ?」
伊達は焦って言い返した。
だが、遥は頑なに言い張った。「忘れてるの!」
「それが時々、すごく嫌な気持ちになるの……私、おかしいのかな?」
遥は潤んだ瞳で伊達を見上げた。
伊達は寂しそうに笑い、遥の頭を撫でた。「俺ぁ、そんなたいそうなことしたわけじゃねえしな」
「それにお前にそんなに感謝されてるってだけで、もう、胸いっぱいだ」
遥はそれでも、悔しそうに唇を噛んだ。
「でも」
「それに桐生は十分俺に対していいやつだから」
伊達は笑って遥の頭を撫で続けた。
遥は暫く難しい顔をして俯いていたが、やがて静かに笑った。



「遥ちゃん、久しぶり!」
「薫さん?」
帰宅すると、狭山が台所に立っていた。
「ちょっと休みが取れたから、こっち来てたの。晩御飯、もうすぐできるから」
桐生の姿はまだない。
「おじさん、もう少ししたら帰って来ると思うんだけど……」
「うん。電話でそう言ってた」
台所からはクリームシチューのいい匂いが漂っている。
けれど、遥は食欲がなかった。
それは先ほど食べたドーナツのせいだけとは思えなかった。
遥はリビングのテーブルで宿題のノートを広げた。
「一馬が帰って来たらみんなで食べようね?」
笑顔で振り返る薫に、遥は申し訳なさそうに返した。「……ごめんなさい」
「私、お風呂の後に食べます。今、あんまりおなか空いてなくて」
「あら? どうしたの?」
狭山はエプロンで手を拭きながら遥の側に寄った。
「食欲ないのかな?」
「ううん。さっきミスド行ってたの。伊達のおじさんに会って」
「伊達……?」
狭山は軽く首を傾げて、ああ、と言った。「父さんの部下だった人ね」
「あの、伊達さん? でも、何で伊達さんとミスドなんて?」
「偶然会って、お茶してたの」
「そうなの? いつも?」
「ううん。たまたま」
「そっか、じゃあ、おなか空いたらいっぱい食べてね」
「うん」
遥はノートに漢字の書き取りをしながら言った。「ねえ、薫さん」
「おじさんと居る時、おじさんは伊達のおじさんの話する?」
「ええ?」
台所で狭山は大きく聞き返した。
「ううん。その人の名前あんまりきかないわ。伊達さんがどうかした?」
「うん」
曖昧な遥の態度に、狭山は再び遥に寄り添った。先ほどよりも勢いよく。
「どうしたの? まさか、ヘンなことされたの?」
「バカなこと言わないで!!!」
遥が怒声を上げる。
「何でそんな風に思うの?」
「ご、ごめんなさい……でも、あなたの雰囲気がその……心配で……」
遥ははっとしたように黙った。
だが、すぐに言った。「ごめんなさい……」
「でも、どうして言ってないのか、腹が立って……」
「え?」
「おじさんはね、伊達のおじさんが居てくれたからこの町で暮らしていけるの」
「……え?」
「ミレニアムタワー爆破事件……」
狭山の目が静かに見開かれた。
「私もおじさんもあの場所に居たの。おじさんは、色々なことに関係してるの。もちろん悪くはないよ。でも、あの時おじさんは、すごく投げやりになって……刑務所に入れてくれって自分で言ったの。もう出てこられなくなるの分かってて……私のことだって、もう……」
「まさか……」
「それを守ってくれたのが伊達のおじさんなの」
遥は顔を上げた。
「おじさんを怒って、助けてくれたの。私、新聞を読んだけど難しすぎて書いてることはよく分からなかった。でも、本当に悪かった人を悪く記事にしていたと思う。……あれは、伊達のおじさんのおかげなの」
狭山は血が引くのを感じた。
あの記事。
遠く離れた関東の事件ではあったが、警察庁出身官僚の告発された記事は記憶に残っていた。警察機構における汚点であり、最大のすっぱ抜きだ。その緻密な証拠や実績の検証には内部告発の動きを感じてはいたが。
同じ警察という機関に身を置く狭山には、伊達のしたことが、いかに真摯であり、そして同時に大それた行為であるかが分った。
もう、二度と警察で仕事はできまい。
告発自体命がけだっただろう。
桐生の友人であり、父親の部下。
そんな程度の知識しかなかった狭山は不穏なものを感じた。
一介の友人がそこまでのことをするはずがない。
もしや、伊達は桐生に対して何か特別な感情を――。
「でも、おじさんはそれを忘れてる」
遥の静かな声が狭山を考えから呼び戻した。
「それだけじゃない! 2回!! 同じ事を2回も!!!」
「2回?」
聞き返す狭山に遥は挑戦的に言った。
「あなたもそこに居た!」
狭山は頬が熱くなるのを感じた。
あの屋上。
神室町ヒルズでキスを交わしながら、死ぬことを決めたあの瞬間を。
「おじさんは人の人生を奪って生活してるの! どうしてそれが分らないの? どうしてそんなに簡単に死のうとしたのよ!!」
狭山は何も言葉出ず、ただ遥に圧倒されていた。
遥はすでに落ち着いていて、静かな声で言った。「伊達のおじさんもあの時あのヘリに乗ってたの。あの時の悲しそうな顔、私、忘れられない」
「私、おじさんのこと好きだよ。狭山さんも」
息を吸って、吐いて、遥の目に凄みが増した。
「でもね、あなたたちの幸せは誰かの不幸せの上に成り立ってるの。私はそれを少しでも覚えておいて欲しいの」
アパートの階段を駆け上がる音が聞こえる。
おそらく桐生だろう。
遥は音の方を見て、言った。「おじさんは忘れっぽいから」
「狭山さんだけでも覚えておいてね」
玄関のドアが開いて、ただいまと言う声が聞こえた。桐生だった。
「お、いい匂いだな」
嬉しそうに言って入って来る男に、遥はおかえりと言った。
狭山は、なかなか声が出せなかった。



fin








A doting parent ~親バカ~











「で、俺は一体何をしてるんだ・・・」





桐生は東城会の会合に真島と行ったらしい。だが、そこは子供は入れないとかなんかで

・・・・家に一人の遥を

伊達が面倒を見ているのだ・・・って、見てるってか面倒見られてるようなんですけどぉぉ!?



「伊達さん朝ごはん食べないとメタボリックになっちゃうよ?」

「あ、ああ・・・じゃあ頂くな?」

「パンはゆっくり食べてね、しゃっくりが出て苦しくなるから」

「え・・あ、 ククックック・・(既にしゃっくりが)」

苦しそうに喉あたりを押さえる伊達に急いで牛乳を差し出す遥はまるで世話焼き家政婦。

・・桐生のリズムがない暮らしに家政婦化したのだろうか。



慌しい組み合わせだが、ちょっと一息ついた頃だ。流石に幼い少女が家に缶詰状態も可哀想だろう

「遥ちゃん、どこか行きたいトコロあるかい?」

「いいの!??」

パァっと遥の顔が輝く・・・フッ、沙耶の小さな頃を思い出すなァ・・いや、今も十分可愛いぞ・・

うんうん・・(親バカ)伊達の顔が一瞬緩む。

「じゃ・・・遥、ゲームセンターに行ってみたいな♪そこでクマのぬいぐるみが欲しいの、桐生のおじさん上手なんだよ」

「ゲ・・!?(いいのかなァ・・少女をこんなトコロに連れてって)」

「真島のおじさんとも行ったことあるよ、百発百中やで~っていいながらミスしたり・・ふふ」



天使の笑顔に遂に敗北。

矢先は神室町天下一通りを目指す!!



「ほら、右に・・・・あっ!!」

デロデロデーンと不愉快な音が響く→伊達、見事にクマ救出失敗!!!!

この後、5、6回挑戦するが一匹も手に入らず・・ああ、遥ちゃんを無駄に期待させてしまったようだ

「いいよ、そんなに気にしてないよ―人生、そんなの取れなくたって生きて行けるから」

「!!!!!!!!」

ズキーン!!!遥ァっ!!!!慰めてるようで慰めになってないよ!!伊達はその場に沈黙し生きる屍化するのであった―――・・・・・



「そだ!おじさん、プリクラ撮るのはどう?」

伊達、復活・・・呼び名が『伊達さん』から『おじさん』に変わっただけのことで復活。

そう、これは娘が突然『お父さん』から『パパ』に変わった所謂いまじねーしょ(強制終了に付きお楽しみください)



「これは・・(ん、沙耶がよく言ってる”ぷりくら”か)一回400円だな」

「割り勘しよう♪」

「い、いや・・俺が全部「駄目だよ!!二人で撮るんだから」

俺が全部払ってやるぜという父親らしきキメ台詞が中断される・・・よくできた子だ。

「一人、200円ずつ入れてね」

流石に、お金の投入口は間違わなかった。

「あっちのカメラを見てね」



『はい、チーズッ♪』

可愛らしい声の合図で1分くらい経つと下から「カンッ」の音と同時期に一枚のカードが舞い落ちる。

「おじさん、半分あげる。・・・・遥・・おじさん好きだな」

「な・・え、ええ!?(なっ、この子はいきなり・・・年の差考えろ!)」

「桐生のおじさん、撮っても笑ってないもん。でも、おじさんは凄いイイ笑顔だよね!」

「そ、そうか?(なんだ、そっちか・・安心安心)」

安心と、遥の笑顔についつい、顔がデレっとなってしまう。その顔のまま、隣のプリクラから出てきた女性を見てしまった。



「沙耶!?」

「おとっ・・!?・・なんでココに・・・」

まずは伊達の顔ツキにビックリする。で、下を見れば少女・・・ぷりくら見ればおじさん笑顔全開のマイファザー・・・・



「ばっ、バカ親父っ!!」

「は・・な、な・・バッ・・!???」

一目散に沙耶はゲームセンタ―を網羅&GOをする。ああ、父親失格。



「―・・・おじさん?」



「・・・・・・・カタカタカタ」



伊達の法則~五つの伊達魂~

①いつも真面目に

②人間の為に働いて

③沙耶命

④死ぬの覚悟で当って砕けろ

⑤ゴラァっ━!!



見事に五つとも砕け散った。



「カムバッ―――――――――クッッ!!!沙耶ァァァァ!!!!!」





















「で、伊達さん・・・こないなったんか」

「真島のおじさん、おじさん・・遥のせいかな?」

「ちゃうと願ごうとるでぇ」

「絶対違うな・・・」



マンションのベットのは力なく泣きじゃくる伊達さんがころんでいる。

こうなったのは、きっと伊達さんが娘の悪いほうの執着心がやばかったからだと思う。



END



お誕生日おめでとう! 錦山!!

と、いうわけで、伊達さん日記、お誕生日バージョンです。

祝えているかは別として(笑)




 そろそろ今年の手帳が終わるから来年のを買わないとな、と思いながらぱらぱら捲っていたら、今日は錦山の誕生日だった!
 やばい、やばいあと少しで忘れるところだった。
 俺はもともと人の誕生日とか記念日とかを覚えている方ではなくて、よくそれで失敗するのだ。
 錦山はそういう祝い事みたいなことを一見全然気にしてないような様子を装ってるが、忘れられたら実は腹の底でメチャクチャ怒るタイプなので、思い出して本当によかった。
「おい、今日錦山の誕生日だった。今から何か買いに行って間に合うかなあ?」
 もう夜の八時を過ぎていた。
 ちょっとした雑貨屋やケーキ屋なんかは店じまいの時刻だ。
 去年は一日遅れでネクタイピンをくれてやったのだが、ネチネチネチネチと嫌味を言われたのを思い出す。
「ああ、なるほど。洒落たピンだよなあ。一日がかりで選んでくれてたんだよなあ」とかなんとかだ。今年もそんなことになったら、またネチネチネチネチ責められてしまう。
 慌てて桐生や遥に相談したら、遥が驚いて言った。
「錦山さん誕生日だったの? 私もお祝いしたいけど、もうお店いろいろ閉まってるよね?」
「だよな? どうしよう」
 そこで遥が小さく「あっ」と叫んだ。
「あ、じゃあ、私この土曜日に友達とケーキパーティーするけど、その材料で錦山さんにケーキ作ってあげたらいいんじゃない?」
「ええ? でも、遥のケーキパーティーが」とおろおろと言ったら、「また材料買いなおせば平気だよー」と言ってくれた。遥のいい子さに救われる。
 そうとなったら、ケーキ作りだ。
 遥先生の言うにはハンドミキサーで卵と砂糖をふわふわになるまで混ぜなければならないが、うちにはそんな洒落たもんはないので、桐生に手伝わせようとすると、「いや、俺は錦にちゃんとプレゼント用意してるから」と言って、お笑いのテレビとか見ていやがる。
「てめえ! 知ってたなら事前に俺たちにも教えやがれ」と桐生の背中をドカドカ蹴りながらあわ立てていると、遥に「やめて! 泡立ってるけど! なんか憎しみとかこもりそうだからやめて!!」と怒られた。
 そんなこんなで、遥直伝のチョコレートケーキの焼けた。ココアのスポンジにチョコレートのクリームをこってり塗りつけて、ラズベリーとブルーベリーを飾って出来上がりだ。
 ケーキパーティー用の材料というだけあり、豪華でとても美味そうだ。これをくれてやるのは正直勿体ねえ、と思ったし、桐生も今にも手づかみで喰らいそうな勢いだったが、遥に怒られて控えた。
「早く私に行こうよ!」
「そうだな。じゃあ、車出すか」
 俺一人だとケーキは持てないので3人で錦山組事務所に向かった。行き道、桐生が感慨深く、俺に向かって語り出した。
「伊達さん……聞いてくれるか?」
「ええ? またこのパターンか? どうせ勝手に言うんだろ?」
「俺は、実は錦とはガキの頃からお互いに誕生日にプレゼントを贈りあってきたんだ……」
「それ普通にいい話じゃねえか? それがどうかしたのか?」
「今年はいいネクタイが見つかったんで、それにした。渡すのが楽しみだ……」
 そういってプレゼントの箱をそっと撫でる桐生の笑みは、バックミラーごしに見るとやたらまがまがしい。
 なんだか嫌な予感を感じながら錦山組に入ると、案の定強面どもがフロアーで盛大にパーティーしていた。
 高級そうなローテーブルとソファセットに悠々と座り、ゴージャスな料理をつまむ錦山と、シャンパンを開けている新藤。
 荒瀬は芸術品のような、チョコレートのケーキをナイフで切り分けている。それを見て俺と遥の動きがなんとなく止まってしまった。
 そうだよな、確かにいいところのケーキくらい取り寄せてるよな。
「遅かったな、お前ら」
 錦山は口調は憎まれ口だが、明らか嬉しそうな顔でソファの向かいを促してきた。何せでかいソファなのだ。俺ら3人座ることも可能だが、本当に3人座ったら、なんか絵的におかしいだろうから俺と遥だけが錦山の対面に座り、「誕生日おめでとう」とだけ言う。
「それだけか? そのでかい箱、俺にだろ?」
 遥の持つ箱を錦山がちょっと強引に奪うと、蓋を開けた。
「あ~。比べんなよ? その横のケーキと。その……手作りだからよ……俺と遥の……」
 ついつい語尾がかすれてしまう。遥は恥ずかしそうに俯いている。
 しまった。やはり何か買って持ってくるべきだったなあ。
 だが、錦山は、前もって用意してあったケーキを横にどけて、正面に俺たちが作ったケーキを置いた。
「荒瀬。ザッハトルテ好きだろ? お前が全部喰え。俺はこのケーキを喰う」
「え? いいの?!」
 遥が顔を上げて目を丸めた。錦山はくしゃくしゃに笑って遥の頭を撫でながら言った。
「いいも何も、こっちの方が美味そうだ。俺、チョコレートのクリームのケーキが好きなんだよ」
「いーなー、親父、俺もガナッシュのチョコレートケーキ喰いたいー」
 荒瀬までうらやましそうに見ている。俺にはどう見ても荒瀬の切ってるケーキのが美味そうに見えるが、それでも、こういう場面でこんなことを言える錦山はいい男だ。部下に慕われるわけだぜ。
「うん。美味い。マジで美味い」
 言うが早いかぱくぱく食いだした。そういうシンプルな感想は作ったものとしては嬉しい。遥も嬉しそうに足をぱたぱたしている。
「じゃあ、そろそろ俺のプレゼントを出させてもらおうとするか」
 錦山がカットケーキを喰い終えるころ、いきなり桐生が錦山の横にゆらりと立った。しかし、登場のタイミングも、台詞も、なんだか悪役っぽい。
 そして、二人を見守る構成員たちは、なんだか緊張した面持ちで二人の様子を見守っている。何だ? この状況。
「さあ、錦。これが俺からのプレゼントだ。開けてみてくれ」
 桐生は錦山に包みを手渡した。錦山がそれを奪うように受け取ると、ラッピングの用紙を引きちぎるように開ける。ごくり、と固唾を飲む構成員。
 錦山の指がケースを開ける。そこからはネクタイがするりと引き抜かれた。
「はうあ!!」
 奇声を上げたのは荒瀬だった。だが、俺も喉元まで「ウグ!」と妙な声が出た。
 錦山の手にしていたネクタイ。
 それは、鮭の写真がまるごと一匹の形でプリントされた、物凄く趣味の悪いネクタイだった。
 いや、それだけではない。
 鮭の死んだように濁った白い目とそれに反比例する、うろこのツヤツヤてかてかしたシャイニーな質感。気味悪さもまた普通ではない。そしてネクタイのシルエット自体がヘンに膨らんでいる。
 おそらく、このネクタイを締めることによって本当に鮭を首からぶら下げたように見せるようになされた工夫だろう。しかしそれが工夫と呼べるのだろうか。
 断言できる。誕生日にもらいたくないネクタイというランキングをつけたら、このネクタイはぶっちぎりのナンバーワンを獲れるだろう。
 錦山は無言でネクタイを睨みつけている。その表情は険しい。当たり前だけど。
「ケミカルウォッシュのジーンズと悩んだが……普段使いもできるようにネクタイにしたぜ? 今度の定例会でぜひ締めてくれ」
 桐生が笑いながら恐ろしいことを言っている。これを締めた組長なんて、定例会では灰皿を投げつけられても誰も同情しないだろう。
「おい、桐生、お前誕生日になんてものを――」
 言いかけると、新藤が側で耳打ちした。「シッ! 伊達さん」
「実は親父と伯父貴は、お互いに誕生日に『もらったら困ってしまうもの』を贈りあっているんです」
「何だそりゃ? 何でそんなこと」
「もともとは中学生の頃に、伯父貴が冗談で親父に『白色しか入ってない色鉛筆』をプレゼントしたことから始まったそうです」
「ば、ばかじゃねえの……」
「でも、親父はその色鉛筆で白地図を最後まで塗り上げたそうです」
「それ、塗れてねえだろ」
「そして二人の間に暗黙のルールが課せられたのです。嫌なものをもらってしまっても、必ずそれを使うということが!」
「あ、あのネクタイ錦山がするのか……」
 呆然と見守っていたら、ふと気になった。
「そういや、新藤。錦山はこの間の桐生の誕生日に何を贈ったんだ?」
「確かマルセル・プルーストの『失われた時を求めて』全巻です」
 それは確か翻訳者は死ぬとさえ噂されている長さを誇る、長編海外文学作品だ。流石錦山。嫌がらせも洗練されている。しかし、はた、と思い直す。
「桐生、それってお前がこの間のフリマで出展した奴じゃねえか?」
「な、何を言いだすんだよ? 伊達さん」
 いや、確かに出した。重くてかさばるから車で運びたいと言うので、俺が車出してやったのだ。そのせいでよく覚えている。
「なんか、近所の上品なジイちゃんが買って行ってくれて。お前、その後バザーでコーヒー奢ってくれたよな? 売り上げで」
「ば、ばか言うなって! 伊達さん。俺が錦のくれた『失われた時を求めて』全巻をパック料金で売ったりなんかするわけないだろ? ポップとか付けて『新品同様です』なんて書くわけねえだろ。思ったよりいい値段で売れたから、コーヒーでも飲んで帰るか? なんて言うわけねえだろ?」
「てめえ桐生!!」
 錦山が鬼の首を取ったかのように笑い出した。
「よくも俺のプレゼントを横流ししやがったな! つまりこれは俺も同じことをしていいってことだよなあ!!」
「ああっ、畜生……伊達さんが余計なことを言ったばっかりに……」
「フッ……まあ、いい。このネクタイは俺のガキが下手打った時に戒めとして締めさせるネクタイとして保管しておこう」
 そう言った時に構成員どもの顔色が変わった。そりゃそうだろうな。よく見ると、生臭さまで漂ってくる気がするくらいリアルな鮭のネクタイだもんな。
「まあ、今年はなかなか楽しい誕生日だな」
 と錦山は打ちひしがれる桐生を見てにやにやしながらチョコレートケーキを食べていた。
 
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