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大好きやから


『お…おじさん…』

遥からの電話にでてみれば、異常なまでに震えた声に桐生は凍りついた。

「どうした!遥!」

『あのね…きゃっ!!』

「遥!!」

争うような音の後、ぶつりと切れた。
まさか誘拐されて、なんとか逃げだし自分に助けを求めて電話をしたところで…見つかったのか。
こんな物騒な時代。一人で買い物なんかに行かせたせいで…
桐生はいましがたかかってきた番号に、震える指でかけ直す。
大事なものを全て失った自分の生きる意味は、遥が持っている。
遥がいなくなれば桐生の世界は崩壊するのだ。

数コールの呼び出し。そして、繋がった。

「遥!?」

だが、聞こえたのは考えもしなかった…むしろ、二度と関わりたくなかった男の声だった。

『桐生ちゃん、久しぶりやなぁ~vv』

「真島の兄さん!な、なんで!」

まさか、と反射的に電源をきりそうになって、真島と遥が一緒にいることを思い出した。

「遥に何をしたんです」

『嫌やわ、桐生ちゃん何勘違いしてんの。桐生ちゃんの可愛い可愛い遥ちゃんを、送ってあげとるだけやん』

「…送ってる?」

『そや。おお、着いた着いた』

同時に、家の前に車が止まる音がした。ドアが開く乱暴な音と『桐生ちゃ~ん!あ~け~て~!』と、真島の声がする。
桐生は用心のために持っていた古ドスを持ち、玄関へ向かった。
ゆっくりとドアを開け…

「桐生ちゃんや~!ほんまもんや~!」

突進してくる真島を避けきれず、抱きつかれた。

「会いたかったで~!」

「ちょっ…!は、離して下さい!」

「嫌や!遥ちゃんといい桐生ちゃんといい直ぐワシから逃げる!」

真島は後ろの遥を見て、すねる。

「遥ちゃん、偶然そこで会ったんやけど声かけたとたん逃げ出したんやで?傷つくわ」

「だって…おじさんを殺しに…」

「まさか!ワシは桐生ちゃんに会いにきただけや」

「そうなの?」

真島は頷いて桐生から離れた。
車からビニール袋を引っ張り出し、遥に渡す。

「土産やで。まぁそこらへんで売っとる煎餅やけど」

ここがお二人さんの家かいな。真島はうきうきと上がり込んでいった。


まんまと上がり込んだ真島は、遥を膝の上に乗せて居間に陣取った。
遥は緊張にこわばり、桐生は人質をとられている気分で落ち着けない。
事実、真島は可愛がるというよりもそういう意味で遥をだっこしているのだが。

「桐生ちゃん、ええかげんにドス、置いてくれへん?わし桐生ちゃんと殺りあいできるって、期待してまう」

こんな所で暴れられたらかなわない。桐生は素早くドスをしまった。

「それで…本当は何の用できたんです?」

「だ~から~、遊びにきただけやて。可愛い弟分に会いにきただけやん」

「………」

「嫌やわぁ、信じてくれへんの?」

黙り込む桐生に、遥が補足する。

「バッティングセンターに桃源郷」

あの後では、警戒するのが当たり前。
そう遥に教えられ、真島はがははと高笑いする。
遥を離し、頭をぐりぐりと撫でた。

「そんなこともあったなぁ。あんときはすまんかった、嬢ちゃん。許したってぇな」

遥は少なくとも、今は優しいおじさんの真島に首を傾げて…いいよ、と笑った。

「遥ちゃんはええ子やなぁ。こんな子もって、桐生ちゃんは幸せもんや」

「…まぁ」

桐生はしぶしぶ頷いて、遥は頬を染める。
真島はあらあらと、更に大きく笑った。







夜、
おびただしい量の酒を持ってきていた真島によって、桐生はかなりのハイペースで酒を飲むはめになった。
本来なら止めに入る遥だったが、いつの間にか真島になついてしまい…

「今日は泊まっていってね!真島のおじさん!」

と、上機嫌に言った。

「ええんか?…ほな、お礼にサービスやで」

どこからか取り出したのは、一冊のアルバム。
現像に出せばついてくる安っぽい代物だが、デジカメ時代によって絶滅寸前の代物でもある。

「これは?」

「桐生ちゃんの若かりし頃の写真vv」

「兄さん!?」


なぜ真島がそんなものを。
焦った桐生がアルバムを奪おうとするが、先に遥に取られてしまう。

「あはは!おじさんが若い!」

見慣れた白スーツではない、スカジャン姿の桐生に遥は爆笑する。

「まだあるで」

「見たい見たい!」

盛り上がる二人を見て、厄介な相手が遥を手なずけたと桐生は頭が痛くなるのを感じた。


これから先、真島は我が家の常連になりそうだ…と。








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