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お題で、吾朗×一馬+遥です。

久しぶりにこの3人を書いてみようかと。
TDL・・・・すみません。
すっとばして違うの書いてしまいました・・。

ちょこっとだけ積極的になりつつあるにいさんが書けたかなと。
遥と仲良しなのは相変わらずですけどね。
そして微妙に長いので二つに分けました。
・・・・・・・どど、どうぞ最後までお付き合いください。







「喧嘩は買い取り不可となっております」






なんや微笑ましいなぁと、吾朗は乗っている黒塗りのリムジンの窓から呟く。


本日吾朗は一馬に代わり組のちょっとした会合に出るため珍しく黒いスーツの上下で車の後部座席に座っていた。

丁度渋滞にはまり停車している車の窓から何の気なしに外を見れば、通りの向こうを遥に手を引かれて歩いている一馬が居る。
遠目にも嬉しげに歩く遥となんだか微妙に戸惑ったような一馬の二人連れは親子にしてはなんだか変、と言われそうだが二人の関係を知っている吾朗にしてみれば微笑ましく平和そのものだ。

そもそも何故吾朗が一馬の代わりに滅多に出る事のない会合に出席する事になったかという理由は遥のお願いから始まる。



「おじさん、週末なんだけどね」
「どうした遥?」
「八百屋のおばさんに映画のチケット貰ったの。それでね」
「ああそれは良かったな。・・それで、なんだ?」
「あのね・・」
「友達と行くのか?あんまり遅くなるんじゃないぞ」
「ううん。あのねおじさん、一緒に行かない?」
「・・・俺と?」
「うん、ダメ?」
「・・・・・・い、いや。だが俺じゃなく友達とのほうが遥も楽しいんじゃないのか?」
「友達はみんな塾とか家族と出かけるんだって」
「・・・そうか・・・・」
「おじさん、お仕事ある?」
「・・・・・(確か会合が入っていたような)・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・。・・・真島のおじさん、行ってくれるかなぁ・・・」



と、携帯を眺めて呟いた遥の一言で一馬は映画行きを承諾する事になる。

ちなみに遥が吾朗の名前を出したのは計算ずくだ。

遥にとってみれば一馬が一生懸命仕事をしている事は理解をしている。だから普段は我が侭と言う事を殆ど言わない。けれどやっぱりたまには大好きな一馬とお出かけしたいと思っても責められないだろう。

まぁそこで吾朗の名前を的確に出す辺り女の子は怖いという気もするが。


そして翌日には一馬は吾朗に週末の組の会合に代わりに出席してもらえないかと遥とのやり取りを交えお願いをすることになった。


勿論、遥の最後の一言は言わずに、だ。


もしそんな事を言ったら吾郎はほなら自分が遥ちゃんと一緒に行くわと満面の笑みで言う事は目に見えていて、そんな事態になったら一馬の方がそもそも会合に出席していられない。
間違いなく一馬も一緒に行ってしまう。

つまりは3人で映画行き。

本末転倒もいいところだ。

「そういうわけで、申し訳ないんですが兄さんに週末の会合に出て欲しいんです」
「ああ・・・まぁ、遥ちゃんのためならしゃぁないなぁ・・」

吾朗の言葉に一馬は素直に頭を下げる。

「本当にすみません。ありがとうございます」


「・・・・・・ま、当然一つ貸しっちゅう事やな♪」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい・・」


一馬は頷くしかない。

そうしなければ遥との約束を反故にすることになり、遥と吾朗が映画に行く事になってしまう。そうなったら一馬は会合に・・・と、前述したので止めておこう。

しかしとんでもなく大きな借りを作ってしまったのではと一馬は一抹の不安を覚える。


なにせ借りを作った相手が相手だ。


そのうち借りの事は忘れてくれないかなと、限りなくありえそうも無い希望を一馬は持っているのだが恐らく無理だろう。



「ど~んとこっちは任せて、遥ちゃんと楽しんできぃや」


「ありがとうございます」


そして妙に素直に笑顔を向ける一馬に思わず吾朗も笑み返してしまう。



「しかし映画デートとはええのう」

「デートと言うのかどうか・・」

「・・・あない可愛い遥ちゃん独り占めや。何時もの調子で喧嘩なんか買わへんように気ぃつけや」


犬も歩けば棒に当たるといいたくなるほど、一馬が道を歩くと喧嘩を売られる。


それはもう大盤振る舞い年末バーゲン状態だ。


堂島組幹部として正式に極道に復帰してから大分顔を知られたのか回数は減ったが、何故かまだまだ無くなる事が無い。

一馬にしてみればどうして自分だけと言う思いがあるのだが、周囲にしてみれば妙に頷けたりする。



そう結局桐生一馬という男は強い。
そして強い男を倒せば名前が上がる。



簡単な力の論理から一馬は常に喧嘩を売られる立場になっているのだ。


ならば同程度の実力を持つ吾朗は何故売られないのかと言うと、まぁ言うまでも無く誰だって名前は上げたいが死にたくはないと言うところだろう。


「買う気は無いんですが・・・」
「売る気満々なヤツラやからなぁ」
「今回は昼間で映画ですからそんなに無いと思うんですが」


「・・・・・・ま、気ぃつけや」


「はい」


甘い甘いでぇ~桐生ちゃん!とキメ台詞を言いたいところを吾朗はぐっと抑えて気遣う言葉をかける。
先ほど妙に素直に向けられた笑顔が今回の遥との映画を一馬自身も楽しみにしている事を示していて、流石の吾朗も水を刺す台詞はいえなかった。
そんなかんだで週末、吾朗は着慣れないスーツに身を包んで車に乗り込み渋滞にはまり窓の外を見たら遥に腕を引かれた一馬を発見したと言うわけだ。



「・・・・ん?」



相変わらずのろのろとしか動かない車に吾朗は通りの向こうを歩く遥と一馬を見物していた。


「・・ああ、アホやなぁ桐生ちゃん。立ち止まらなええのに・・・売られとるわ、喧嘩」


丁度わき道に入る辺りを遥に手を引かれて歩く一馬は無意識でそちらの方へ視線を向けていた。すると運悪くいかにもな少年と目が合う。そこからは何時ものパターンだ。



「まぁ、問題ないやろけどな。・・・ほんま難儀な星の下の生まれたわ・・」



呟くと丁度渋滞を抜けたのか車が本格的に動き出す。
事の次第は夜にでも聞こうと吾郎は一人頷いて窓の外から視線を離した。




事の次第は夜にでも聞こうと吾郎は一人頷いて窓の外から視線を離した。






「喧嘩は買い取り不可となっております」2






吾朗が会合を終え堂島組事務所に戻ったのは夜10時過ぎだった。


詰めている組員に一馬と遥が2階の事務所で待っていると聞き吾朗はきっちり締めたネクタイを五月蝿そうに緩めなが2階へ向かった。
なんや待っててくれたんやて、とドアを開けながら言いかけた吾朗は口に手を当てて静かにと言いたげな一馬の姿に口を噤む。


「すみません、遥が待ちくたびれて・・」


小声で言う一馬の示す先には一馬の膝に身体を預けた天使の寝顔の遥が居る。


「・・・・」

「土産遥が渡したいって言うんで。さっきまで起きてたんですけど」

「ああ、遊びつかれたんやなぁ」

「そうらしいです」

「可愛い事してくれるわ。ほんま、ええ子やなぁ」

そういう吾朗の言葉に嬉しげに一馬は目を細める。


なんだかちょっと親子の図的になっている気がするが、それはここではあえて触れないでおこう。


「そらそうと、やっぱり昼間喧嘩売られてたやろ?」

しゅるとネクタイを取り上着を脱ぎながら言う吾朗に一馬が首を傾げる。

「兄さん、なんで知ってるんですか?」
「丁度車で通りかかってな。・・・で、どないした?」


「・・・・・・いえ、実は」


なんだか微妙な苦笑いを一馬は浮かべる。


「なんや?」
「まぁ何時ものような感じだったんですが、今日は遥が」

「遥ちゃんが?」


「こう、間にいきなり入ってきて『今日は喧嘩は買取不可です!映画間に合わなくなっちゃうからダメ!!』って・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「・・・・流石に俺も相手もなんというか、まぁ・・・」


容易に想像できる情景に吾朗は声を殺して肩を震わせ笑い出す。



遥らしいというか遥だからできたという、とにかくなかなかかっこいい。



ようやくで笑いを治めて吾朗は未だ眠りの中の遥をそっと撫でる。


「肝座っとるわ。ええ女になるでぇ、遥ちゃん」


そうしてちゅと軽いキスを遥の髪の毛に落とす。
その吾朗の行動に驚いたのは一馬だ。


「なにするんですかっ?」

「ん?ええやん、減るもんでもなし」


「・・・・・・・・そうですが、遥が起きます」


明らかに一馬の目はそんな事しないで下さいと言っている。

大事な大事な、古臭い表現で言うなら目の中に入れても痛くないほど大切な遥に兄貴分とはいえそう言う事をされると父親代わりとして面白くない。


ふぅんと幾分吾朗は不満げに目を細め、眉を寄せている一馬を見遣りほならと笑う。



一馬の中の警報が鳴り始めるより先に吾朗の手が一馬の両手首を掴んだ。



「にっ・・」


「あんま動くと、遥ちゃん起きるで」


「ちょっ、なにを・・」


「しぃ~や、しぃ~」


ぐと一馬の身体を押さえつけるように掴んだ手に力をこめながらにこにこと楽しげに吾朗は一馬に顔を寄せる。


一馬的には絶体絶命だ。


吾朗を突き飛ばす事も可能だがそれではもれなく遥が起きる。

べつに起きても構わないと思うが、どうしたのと遥に訊ねられて口下手の一馬ははぐらかせる自信が無い。

だからささやかな抵抗とばかりに思い切り顔を背けて無駄とは知りつつ小声で抗議の言葉を口にする。


「どうして何時も何時も人の事からかうんです!?」
「おもろいからや」

速攻で返答をするあたり面白具合の良さが伺える。

「俺は面白くありません」
「当たり前や。わしがおもろいんやから」
「・・・・・・・・・・・」


「それとな」


ちゅと背けられた一馬の耳元へ唇を押し当てながらくくと吾朗は笑う。


「まじめぇにやりたいんやけど、桐生ちゃん分かってないからなぁ」


「んっ、ちょ・・なにを。にいさんっ」


「こういう機会でもないとできへんしな。・・・チャンスは逃がさない主義なんや」


「ほんっ、とに、やめてくださいっ・・」


一馬の耳元の柔らかい皮膚の上を吾朗の舌が動く。その感触と囁く声とかかる息が逃げられないもどかしさと相まってぞくぞくと一馬の背筋を粟出させた。





「・・・・・・お・・眠り姫が起きそうやな・・」





不意に吾朗は一馬から離れちらと遥に顔を向ける。

「っ、え!?」

もぞと一馬の膝の上の遥が動き、まだ眠そうに目を擦りながら身体を起こす。


「あれ、真島のおじさん・・・」


「お目覚めやなぁ。どや、今日は楽しかったか?」
「・・・うん。楽しかったよ。真島のおじさん、本当にありがとう」

「ん?なんでや?」

「だっておじさんのお仕事代わってくれたんでしょ。だから、ありがとう」

にこりと天使の笑みを向ける遥につられるように吾朗も笑みを返す。

「可愛い遥ちゃんのためやからな」
「えへへ、嬉しいな。それでね、お土産あるの」

ごそごそとカバンから小さな袋を遥は取り出し、吾朗へ手渡す。



「あのねお揃いのストラップなんだ」



「・・・・・・・・・・なにっ!?」



先ほどまで傍観を決め込んでいた一馬が何かに気付いたように声を上げる。



「うわびっくりした、どうしたのおじさん?」
「ほんまや。なんやねん桐生ちゃん」

「・・・遥、そのストラップって昼間一緒に買った物か?」

「うんそうだよ」

笑顔で頷く遥にやっぱりと一馬は目線を落として溜息をつく。


そうストラップは3人お揃いの物だ。


そういえば遥がもう一つを買っていたような気がすると一馬はぼんやり思い出すがその時は誰にだろうと大して疑問には思わなかった。

ちなみにこういうところを深く考えないのは一馬の悪い癖と言えるかもしれない。


「3人でお揃いで色違いだよ。おじさんも真島のおじさんも大事にしてね」
「おう、大事にさせてもらうわ」

「・・・・・・・・・・・・・・大事にする・・」

「??どうしたのおじさん?」
「なんや元気ないでぇ?」

「・・・・・・・・」

どうしてこれほど遥は兄さんに懐いているのだろうと一馬は遥の将来に不安を感じてしまう。
将来遥が彼氏だと連れてくる男が兄さんのようなタイプだったらどうすれば良いんだ、とまるっきり父親な悩みが急に沸きその不安に負けて一馬は口を開く。




「・・遥、お前兄さんのような男が好きなのか?」




若干十歳の女の子に聞くような質問でもないとは思うが、至って一馬は真面目だ。
ぱちくりと遥は目を瞬かせそれから一馬と吾朗の顔を交互に見て、くすりと大人びた笑みを見せる。


「うん、好きだよ」


「・・・・・・・・・」



「でもね、一番好きなのはおじさんだよ」



え?と驚いたような一馬の頬に遥は小さくキスをしてえへへと何時ものように笑う。


「・・・遥・・・・」


一馬にしてみればパパが一番好きと言われているのと同じだ。
遥の意図を若干勘違いはしているが、本人が感動しているのだから余計な事は無しとしよう。


「桐生ちゃんだけずるいわ。二番目のわしにはちゅ~してくれへんのか?」


そんな二人にすいと吾朗が遥の隣にしゃがみ込み遥の顔を覗けばあははと遥は笑って吾朗の頬へ同じようにキスする。


「ほならお返しや」


隻眼を細めて吾朗は笑い慣れた仕草で遥の頬へキスを返す。
はっきり言ってこの二人の方が一連の仕草が様になっている。




「・・・・・・兄さん。遥はダメですからね」




そんな二人の様子に眉を寄せて一馬は吾朗に近寄ると遥に聞こえないような小声で囁く。

幾らなんでも十歳の女児相手にというか、そもそも一馬は勘違いしてる。大きな大きな勘違いだ。

一瞬呆気に取られたように一馬を見てから吾朗はにやりと口の端で笑うと一馬の耳元へ口を寄せる。




「・・ほなら・・・桐生ちゃんがええわ」




ほんの僅か耳に触れるくらいまで唇を寄せて囁くとぺろと悪戯のように一馬の耳を舐める。

「っつ!!」

不意の事に一馬は飛びのくように身体を離し、どうしたの?という遥の視線に言葉を失う。


「・・・・・・・・・・いや、なんでもない」


咎めるように一馬は視線だけを吾朗に向けるが吾朗は何知らぬ顔でその視線を流し、壁の時計に顔を向ける。

「もうこない時間や。とりあえずそろそろ帰ろか?」

送らせるで~という吾朗に遥は笑顔で答え、一馬は大分微妙な顔でありがとうございますと頭を下げる。
ほなら帰ろうやと遥と一馬を促しながら吾朗は一言、一馬に囁く。




「そうそう。一つ貸しがあること、忘れんとってや桐生ちゃん」
















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