くらり。
と視界が回り。
がくり。
と床に膝をつく。
力が入らない。
今日突然兄さんから
「一緒に飲もう」
と言われ、兄さんの部屋に無理やり連れ込まれた。
いつもの事だと思っていたのに…
こんな人じゃないと思ってたのに。
帰ろうとしたらコレだ。
「兄さ…ん?」
笑ったのか
哀れんだのか
兄さんの顔が
よく見えなくて分からない。
そっと肩を抱かれたのは少しだけ感じた。
混乱と眠気でいっぱいだった俺の頭。
それで、ふつりと記憶は途絶えた。
「兄さんっ!!」
眠気が薄れて、がばっと桐生は体を起こした。
真島のベッドで寝ていたらしい…真島本人は遠慮してソファーで寝てるワケもなく、桐生の隣でダルそうに返事をした。
「なんやー…大声出すなやー」
「…すいません」
と言いつつ、なんで謝ってるのだろうと桐生は不快になった。
確かに真島は朝に弱いので大声を出すのは悪いと思うが、桐生は昨日の夜の事を思い出すと『謝るのは真島なのでは…』と思う。
「いや…あのですね、兄さん」
「ん~?」
「昨日…」
「何もしてへん」
「は?」
「ベッドにまでは運んだけど、何もしてへんっ」
「…」
上着は脱がせられてたが服が情事後のようにクシャクシャになった痕跡もベルトを外された痕跡もなかった。
「じゃあ…何だったんですか」
「…人肌恋しかっただけや」
「…」
『やっぱり読めない人だな』と思う。
無理やり押し倒す馬鹿力と変人発揮するくせに、襲える機会があるのに妙におとなしいとか…読めない。
「兄さんも…そういう時あるんですね」
「恋人がおるのに部屋で独りはツラいのー」
「恋人がいるなら俺を呼ばないで下さい」
「何言うてんのー?桐生チャンの事やないかい」
「!!!」
「そうじゃないと抱けへんて」
そう言うと真島の腕が桐生の腰に巻かれる。
ついでに頬ずりのオマケ付き。
「!!!!!」
「うははは!!!やっぱり眠っとる桐生チャンより、抵抗しよる桐生チャンの方がヤりたくなるわ///」
「なっ!!兄さん離して下さ…!!!」
「いーやー♪なんか目ぇ覚めたし、昨日我慢してたし」
「やっぱりソレ目当てじゃないですかっ!!!」
朝っぱらから真島建設は騒がしいようです。
一通り終わるまで部屋には出入り禁止。
―――
「おじさん…いつもの所かなぁ」
桐生の帰ってない部屋。ため息をついてフライパンに油を落とす。
「私だって16になったら容赦しないからね!!!」
黄身半熟のつもりで焼いていた目玉焼きが少し焦げた。
end.
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