某ビル近く。
俺は、そのビルに近くたびに、なんで新米の俺なんかを取り引きに任せたのか考えていた。
『お前だったら上手くいく。取り引きぐらい見てたから分かるだろ?』
そう親父から言われたが意味が分からない。
俺は取り引きに付き添ったことが4、5回あるだけなんだぞ?
一応、喧嘩ふっかけられようが打ち負かす自信があるからいいとして…
…入っていいのか…
この取り引きで失敗すれば俺はどうなるんだ?
妙な不安が頭を回る。
ププーッ
どうするか…
やっぱり
行くしかないな。
プップーッ!!!!!
「なんだ、うるさ…」
車の窓から上半身乗り出して、思いっきり手をふる人。…あの人だ。
ここは
嶋野組事務所前。
「なんや桐生ちゃん遊びに来たんか?」
「いや、違うんです」
「また仕事かいな~…どうせ取り引きかなんかやろっ!!!
嘘でもワシに会いとうなって来た言うてやぁ」
不思議な人だ。
こんな人が本当に『狂犬』と呼ばれた男なのだろうか…と疑問が浮ぶ。
「はぁ…?スイマセン」
「ええよ★取り引きは『成立』にさせときゃええんやろ?」
「え、でも…」
「おしっ!!!ドライブに行くで!!!」
強制ドライブ。
断る隙さえなかった。
…いいか。
どうせ戻って来るんだ。怒られたって兄さんのせいにできる(かもしれない)
「桐生ちゃん」
「はい?」
「ここら辺気をつけぇよー?阿呆のガキばーっかりおってなぁ…ワシ、そいつらに教育してやったんやで★」
「へぇ…兄さん(顔に似合わず)良いことしましたねぇ。で、そいつらは?」
「ん~?半殺しやvV」
「…」
兄さんは笑ったまま前を見てて…
俺は…沈黙した。
真島の兄さんに喧嘩売るなんて死ぬのと一緒……そう部下の人だって言っていた。
「(確かに阿呆なガキどもだな)」
俺はまだ、そんな姿見たことないけど…そう思うと口元が緩んだ。
「お?笑っちゃって。ワシがガキども教育すんの、そんなにおかしかったんか?」
「いいえ。ガキどもが良い方向に更正されるといいな、って思って」
「せやろ?」
この世界の人で、錦山や風間の親っさん以外に此処まで和む(?)ことがあるだろうか…
ましてや別の組にいる人なんかとくに…
「兄さん…ありがとうございます…」
「何が?」
「なんとなく。感謝したくて」
「はははっ!!!そりゃええなぁ!!!
なんにしても桐生ちゃんに感謝されるならワシ嬉しいで♪」
…?…後半の言葉の意味が分からない。
なので苦笑するしかなかった。
「兄さん」
「ん?」
「目的地ないなら兄さんの事務所まで戻ってくれません?」
「ぅ"え"ぇ"~っ!!?戻るんかいなー…確かに目的地…モニョモニョ」
「どこか行くつもりでしたか?」
「…ええよっ。目的地はいつでも行けるし」
思い悩んでたみたいだけれど戻ってくれるらしい。
やっぱり兄さんは優しいと思う。
半殺しを想像すると何も言えないが…。
「ありがとうございます」
「あんまし、お礼言わんといてや///ワシ照れるでぇ///」
事務所前。
「ワシが言っておくから行かんでもええのに…」
「いえ、俺の仕事ですから」
「桐生ちゃんはホンマに真面目ちゃんやなぁ…ま、頑張ってや」
「はい」
肩をポンポンと叩かれ、兄さんは先に事務所に入って行った。
兄さんに任せてちゃいけない。
これが今の俺の仕事。
親父のために、今出来る俺の仕事。
足早に事務所の扉の前へ行き、躊躇せずに扉を開く。
兄さんといた車内の会話や雰囲気を思い出したら、なぜだか楽になった。
end.
俺は、そのビルに近くたびに、なんで新米の俺なんかを取り引きに任せたのか考えていた。
『お前だったら上手くいく。取り引きぐらい見てたから分かるだろ?』
そう親父から言われたが意味が分からない。
俺は取り引きに付き添ったことが4、5回あるだけなんだぞ?
一応、喧嘩ふっかけられようが打ち負かす自信があるからいいとして…
…入っていいのか…
この取り引きで失敗すれば俺はどうなるんだ?
妙な不安が頭を回る。
ププーッ
どうするか…
やっぱり
行くしかないな。
プップーッ!!!!!
「なんだ、うるさ…」
車の窓から上半身乗り出して、思いっきり手をふる人。…あの人だ。
ここは
嶋野組事務所前。
「なんや桐生ちゃん遊びに来たんか?」
「いや、違うんです」
「また仕事かいな~…どうせ取り引きかなんかやろっ!!!
嘘でもワシに会いとうなって来た言うてやぁ」
不思議な人だ。
こんな人が本当に『狂犬』と呼ばれた男なのだろうか…と疑問が浮ぶ。
「はぁ…?スイマセン」
「ええよ★取り引きは『成立』にさせときゃええんやろ?」
「え、でも…」
「おしっ!!!ドライブに行くで!!!」
強制ドライブ。
断る隙さえなかった。
…いいか。
どうせ戻って来るんだ。怒られたって兄さんのせいにできる(かもしれない)
「桐生ちゃん」
「はい?」
「ここら辺気をつけぇよー?阿呆のガキばーっかりおってなぁ…ワシ、そいつらに教育してやったんやで★」
「へぇ…兄さん(顔に似合わず)良いことしましたねぇ。で、そいつらは?」
「ん~?半殺しやvV」
「…」
兄さんは笑ったまま前を見てて…
俺は…沈黙した。
真島の兄さんに喧嘩売るなんて死ぬのと一緒……そう部下の人だって言っていた。
「(確かに阿呆なガキどもだな)」
俺はまだ、そんな姿見たことないけど…そう思うと口元が緩んだ。
「お?笑っちゃって。ワシがガキども教育すんの、そんなにおかしかったんか?」
「いいえ。ガキどもが良い方向に更正されるといいな、って思って」
「せやろ?」
この世界の人で、錦山や風間の親っさん以外に此処まで和む(?)ことがあるだろうか…
ましてや別の組にいる人なんかとくに…
「兄さん…ありがとうございます…」
「何が?」
「なんとなく。感謝したくて」
「はははっ!!!そりゃええなぁ!!!
なんにしても桐生ちゃんに感謝されるならワシ嬉しいで♪」
…?…後半の言葉の意味が分からない。
なので苦笑するしかなかった。
「兄さん」
「ん?」
「目的地ないなら兄さんの事務所まで戻ってくれません?」
「ぅ"え"ぇ"~っ!!?戻るんかいなー…確かに目的地…モニョモニョ」
「どこか行くつもりでしたか?」
「…ええよっ。目的地はいつでも行けるし」
思い悩んでたみたいだけれど戻ってくれるらしい。
やっぱり兄さんは優しいと思う。
半殺しを想像すると何も言えないが…。
「ありがとうございます」
「あんまし、お礼言わんといてや///ワシ照れるでぇ///」
事務所前。
「ワシが言っておくから行かんでもええのに…」
「いえ、俺の仕事ですから」
「桐生ちゃんはホンマに真面目ちゃんやなぁ…ま、頑張ってや」
「はい」
肩をポンポンと叩かれ、兄さんは先に事務所に入って行った。
兄さんに任せてちゃいけない。
これが今の俺の仕事。
親父のために、今出来る俺の仕事。
足早に事務所の扉の前へ行き、躊躇せずに扉を開く。
兄さんといた車内の会話や雰囲気を思い出したら、なぜだか楽になった。
end.
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