ある国の都市で、大量のギアが反乱を始めた。
聖騎士団はようやくの事でギアの反乱を抑え、確認できる全てのギアの処分、
特に、『意志を持つギア』の処分を急いだ。
元聖騎士団長は、生存の確認された1体の意志を持つギアを捕獲しに、
闇深い森に足を向けた。
雨上がりの森は、深い霧に覆われ、手を伸ばせば指先が姿を眩ました。
「ここは・・・通せないよ」
霧の中で、前方に少女が座っているのが感じられた。
「・・・・・お嬢さん、しかし・・・「通せないよ」
再度、少女は繰り返す。
「ディズィーを連れて行く気なら僕があなたを止める。うちのクルーに手は出させない。
ジェリーフィッシュ快賊団、副団長の誇りに賭けて。」
きっぱりと言い放つ少女からは、確かな威厳が感じられた。
「こんなに幼くして、こんなにも誇りと威厳を持ち合わせるとは素晴らしいですね」
素直に騎士は評する。
「僕を子ども扱いするんだね・・・子どもだと思わないほうがいいよ」
少女の声に、多少の怒りが混じった。
「ええ、貴女を子供扱いしてはいけない事は、百も承知です。
通す気がないのなら・・・仕方ないですね。」
封雷剣が硬い音をたてて抜かれる。
「結局こうなるんだね・・・」
少女は言いながら立ち上がり、口笛を吹く。
空から鋭く錨が降って来、轟音と共に地面に突き刺さる。
「・・負けないよ。彼のために・・・あの子のために!!」
宣言と共に錨に手をかけ、持ち上げる。
「私も・・・自らのプライドのために、全力を出させて頂きます・・・!」
深い森の中、青年と、少女が対峙していた――
高く鋭い金属音が、霧によって響く。
互いに、息があがってきた。
もう、何時間互いの武器を交えあった事か。
「終わらせるよっ」
駆け出す少女。
「望む所です!」
構える騎士。
刹那、騎士の周囲の霧が濃くなる。
「・・・・ジョニー直伝・・・・バッカスサイ・・・・・・・・・!」
「しまっ・・・!」
騎士は、自分の腰に少女の腕が回るのを感じた。
「山田さん・・・・頼んだよ・・・!!」
少女が呟くと、嵐のような波音と共にピンクの鯨が泳いでくる。
騎士は回避しようにも、少女の凄まじい怪力に抱きつかれ、身動きが取れない。
「何を!?この状態で技を受ければ貴女も・・・!」
騎士は少女を引き剥がそうともがく。
「解ってるよ。だからやってるんじゃない・・・・」
無邪気に、少女は笑う。
全てを解った上での、子供のようなあどけない笑顔だった。
鯨は、周辺の樹々を薙ぎ倒し、騎士と少女を空高く跳ね上げた。
鯨のつぶらな目元には、海と同じ味の水が、浮かんでいた。
「きゃあぁぁっ!!!」
「ぐっ!」
騎士と少女の身体は地面に叩き付けられる。
少女は背中から騎士の動きを封じていたため、2人分の衝撃を同時に喰らった。
騎士ははっとして少女の腕を自分の腰から外し、少女の顔を覗き込む。
普通の女の子なら、死んでいる衝撃。
「だ・・・大丈夫ですか!?」
少女はうっすら目を開け、微笑むと、騎士の服を掴んだ。
「あーあ・・・失敗しちゃったぁ・・・」
少女は言った。
「ホントなら、山田さんの衝撃で土砂崩れも起こしちゃうつもりだったのに・・・出来なかったね。」
さも残念そうに、溜め息をついてみせる。
「何故ですか・・・何故死ぬような事を・・・!」
騎士は、焦った口調で問い詰めた。
「確実に山田さんでアナタを倒すには・・・ああやってちゃんと攻撃当てないと駄目でしょ・・・?」
弱々しく少女は言った。
「何故そんなに・・・!」
なおも騎士は問う。
「愛する彼の為なら、大切な友達の為なら。僕の命くらい、いくらでも賭けてあげる。」
小さく、しかしはっきりと言い、少女は目を閉じた。
騎士の服から、するりと腕が落ちる。
騎士は慌てて少女を抱き上げる。
規則的に漏れる、安らかな息を確認する。
安堵の息をつき、少女を地面に横にした。
自分も横に倒れる。
改めて激痛が全身を巡り、意識が遠のいて行った。
気が付くと、騎士はベッドの中だった。
あちこちに包帯が巻かれているのが、肌の感触で解る。
執事が現れた。
心配そうな面持ちで、「お疲れ様でした」と頭を下げる。
「空賊の少女は・・・」
「空賊団の船長が連れて帰りました。」
執事の返事に、騎士は安堵の息をつく。
「ベルナルド・・・お願いがあるのですが。」
執事は「何でしょう?」と振り向く。
「処分のギアリストから・・・彼女をはずしてください」
「と、言いますと?」
「彼女はギアではありません。今彼女は一人の女性として生きています・・・処分する必要はないでしょう。」
騎士の柔らかい口調に、執事は口許を緩ませ、「畏まりました」と礼をして退室する。
騎士は、ベッドから窓の外を見上げた。
4隻の飛空挺が、瞬く間に通り過ぎた。
気が付くと、少女はベッドの中だった。
あちこちに包帯が巻かれているのが、肌の感触で解る。
船長が現れた。
優しい表情で、「目は覚めたかい?」と少女の額を撫でた。
「・・・警察機構のヒトは・・・?」
「安心しな。ちゃんと帰った。」
船長の返事に、少女は安堵の息をつく。
「ジョニー・・・お願いがあるの。」
船長は「言ってみな?」と笑った。
「警察機構のあの男の人に・・・連絡、取れる?」
「取れるが・・・それがどうかしたか?」
「僕、あの人に話があるの。だから・・・」
少女の必死の口調に船長は口許を緩ませ、「あぁ、解った」と退室した。
少女は、ベッドから窓の外を見た。
次から次へと、雲が流れていた。
『あ・・・もしもし?怪我、大丈夫?』
『はい。そちらの方が重症でしょう、大丈夫ですか?』
『ん、僕の方も大分治ってきたよ。』
『それで、私に用事とは?』
『あの・・・えっとね?ディズィーの事なんだけど・・・』
『彼女でしたら、もう追われることは無いと思いますよ。』
『へ?』
『彼女にかかった賞金は蔵土縁紗夢さんが獲得し、世間では彼女はすでに捕らえられた事になっています。
そして私が手を下して彼女は処分リストから消しておきました。』
『本当に!?・・・でもリストから消したって・・・』
『内密に、ですけどね。』
『あははっそっか・・・うん。解ったよ、ありがとう!』
『はい。またいつかお会いできると良いですね。』
『うん。会えるよ。アナタは警察で、僕は指名手配の快賊なんだから♪』
『ええ。いつまでも追いかけさせて頂きますよ・・・』
聖騎士団はようやくの事でギアの反乱を抑え、確認できる全てのギアの処分、
特に、『意志を持つギア』の処分を急いだ。
元聖騎士団長は、生存の確認された1体の意志を持つギアを捕獲しに、
闇深い森に足を向けた。
雨上がりの森は、深い霧に覆われ、手を伸ばせば指先が姿を眩ました。
「ここは・・・通せないよ」
霧の中で、前方に少女が座っているのが感じられた。
「・・・・・お嬢さん、しかし・・・「通せないよ」
再度、少女は繰り返す。
「ディズィーを連れて行く気なら僕があなたを止める。うちのクルーに手は出させない。
ジェリーフィッシュ快賊団、副団長の誇りに賭けて。」
きっぱりと言い放つ少女からは、確かな威厳が感じられた。
「こんなに幼くして、こんなにも誇りと威厳を持ち合わせるとは素晴らしいですね」
素直に騎士は評する。
「僕を子ども扱いするんだね・・・子どもだと思わないほうがいいよ」
少女の声に、多少の怒りが混じった。
「ええ、貴女を子供扱いしてはいけない事は、百も承知です。
通す気がないのなら・・・仕方ないですね。」
封雷剣が硬い音をたてて抜かれる。
「結局こうなるんだね・・・」
少女は言いながら立ち上がり、口笛を吹く。
空から鋭く錨が降って来、轟音と共に地面に突き刺さる。
「・・負けないよ。彼のために・・・あの子のために!!」
宣言と共に錨に手をかけ、持ち上げる。
「私も・・・自らのプライドのために、全力を出させて頂きます・・・!」
深い森の中、青年と、少女が対峙していた――
高く鋭い金属音が、霧によって響く。
互いに、息があがってきた。
もう、何時間互いの武器を交えあった事か。
「終わらせるよっ」
駆け出す少女。
「望む所です!」
構える騎士。
刹那、騎士の周囲の霧が濃くなる。
「・・・・ジョニー直伝・・・・バッカスサイ・・・・・・・・・!」
「しまっ・・・!」
騎士は、自分の腰に少女の腕が回るのを感じた。
「山田さん・・・・頼んだよ・・・!!」
少女が呟くと、嵐のような波音と共にピンクの鯨が泳いでくる。
騎士は回避しようにも、少女の凄まじい怪力に抱きつかれ、身動きが取れない。
「何を!?この状態で技を受ければ貴女も・・・!」
騎士は少女を引き剥がそうともがく。
「解ってるよ。だからやってるんじゃない・・・・」
無邪気に、少女は笑う。
全てを解った上での、子供のようなあどけない笑顔だった。
鯨は、周辺の樹々を薙ぎ倒し、騎士と少女を空高く跳ね上げた。
鯨のつぶらな目元には、海と同じ味の水が、浮かんでいた。
「きゃあぁぁっ!!!」
「ぐっ!」
騎士と少女の身体は地面に叩き付けられる。
少女は背中から騎士の動きを封じていたため、2人分の衝撃を同時に喰らった。
騎士ははっとして少女の腕を自分の腰から外し、少女の顔を覗き込む。
普通の女の子なら、死んでいる衝撃。
「だ・・・大丈夫ですか!?」
少女はうっすら目を開け、微笑むと、騎士の服を掴んだ。
「あーあ・・・失敗しちゃったぁ・・・」
少女は言った。
「ホントなら、山田さんの衝撃で土砂崩れも起こしちゃうつもりだったのに・・・出来なかったね。」
さも残念そうに、溜め息をついてみせる。
「何故ですか・・・何故死ぬような事を・・・!」
騎士は、焦った口調で問い詰めた。
「確実に山田さんでアナタを倒すには・・・ああやってちゃんと攻撃当てないと駄目でしょ・・・?」
弱々しく少女は言った。
「何故そんなに・・・!」
なおも騎士は問う。
「愛する彼の為なら、大切な友達の為なら。僕の命くらい、いくらでも賭けてあげる。」
小さく、しかしはっきりと言い、少女は目を閉じた。
騎士の服から、するりと腕が落ちる。
騎士は慌てて少女を抱き上げる。
規則的に漏れる、安らかな息を確認する。
安堵の息をつき、少女を地面に横にした。
自分も横に倒れる。
改めて激痛が全身を巡り、意識が遠のいて行った。
気が付くと、騎士はベッドの中だった。
あちこちに包帯が巻かれているのが、肌の感触で解る。
執事が現れた。
心配そうな面持ちで、「お疲れ様でした」と頭を下げる。
「空賊の少女は・・・」
「空賊団の船長が連れて帰りました。」
執事の返事に、騎士は安堵の息をつく。
「ベルナルド・・・お願いがあるのですが。」
執事は「何でしょう?」と振り向く。
「処分のギアリストから・・・彼女をはずしてください」
「と、言いますと?」
「彼女はギアではありません。今彼女は一人の女性として生きています・・・処分する必要はないでしょう。」
騎士の柔らかい口調に、執事は口許を緩ませ、「畏まりました」と礼をして退室する。
騎士は、ベッドから窓の外を見上げた。
4隻の飛空挺が、瞬く間に通り過ぎた。
気が付くと、少女はベッドの中だった。
あちこちに包帯が巻かれているのが、肌の感触で解る。
船長が現れた。
優しい表情で、「目は覚めたかい?」と少女の額を撫でた。
「・・・警察機構のヒトは・・・?」
「安心しな。ちゃんと帰った。」
船長の返事に、少女は安堵の息をつく。
「ジョニー・・・お願いがあるの。」
船長は「言ってみな?」と笑った。
「警察機構のあの男の人に・・・連絡、取れる?」
「取れるが・・・それがどうかしたか?」
「僕、あの人に話があるの。だから・・・」
少女の必死の口調に船長は口許を緩ませ、「あぁ、解った」と退室した。
少女は、ベッドから窓の外を見た。
次から次へと、雲が流れていた。
『あ・・・もしもし?怪我、大丈夫?』
『はい。そちらの方が重症でしょう、大丈夫ですか?』
『ん、僕の方も大分治ってきたよ。』
『それで、私に用事とは?』
『あの・・・えっとね?ディズィーの事なんだけど・・・』
『彼女でしたら、もう追われることは無いと思いますよ。』
『へ?』
『彼女にかかった賞金は蔵土縁紗夢さんが獲得し、世間では彼女はすでに捕らえられた事になっています。
そして私が手を下して彼女は処分リストから消しておきました。』
『本当に!?・・・でもリストから消したって・・・』
『内密に、ですけどね。』
『あははっそっか・・・うん。解ったよ、ありがとう!』
『はい。またいつかお会いできると良いですね。』
『うん。会えるよ。アナタは警察で、僕は指名手配の快賊なんだから♪』
『ええ。いつまでも追いかけさせて頂きますよ・・・』
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