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うろほろぞ
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ディズィーを追い詰めてしまった罪悪感……そしてディズィーへの贖罪がイノ
への裏切りなっていることへの後ろめたさ………メイは追い詰められる………

「今日はイノさんとデートなんですね?」
「え?………うん……」

急に話を振られて驚いた。なぜならディズィーがイノの話を持ち出すなど今まで
一度もなかったから………
『今日は、きっと楽しくなりますよ………デート』
まるで確信めいた言い方をするディズィーを不審に思いながら、メイは出かけた。

「ふふ………楽しんでくださいね……メイさん………」
一人部屋に残ったディズィーは、そう呟くと電話をとった…………

「………………………………………?」
イノの異変に気が付いたのはすぐだった………いつもと比べ極端に口数が少ない。
それに加え顔色も優れないようだ。
「具合……悪いの?」
「………………別に……」
終始この調子だった、ディズィーに押し倒されたということが辛い事実であっても
イノとのデートはそれを忘れさせてくれた。イノとのデートが息苦しいと思った
のは初めてだった。



「ボク………なにか……した?」
あまりのイノの様子にメイが切り出す。
「……………………………………」
イノは黙ったままだ。メイと視線を合わそうとすらしない…………
気まずい雰囲気が流れる。

「イノさん………その何があったか分からないけど、いつでも相談に乗ります
から………また電話下さい………」
時間になったので、そう告げ、後にする…………
「…………白々しい……………」
「え?」
その言葉に歩を止め、振り返る…………

「………今日、あたしの携帯に電話があったわ…………ディズィーってコから……」
イノは続ける………
「そのコ………あなたとしたんですって…………エッチ………」
メイは思考が停止した。なんでディズィーが……どうして………顔は青ざめ、
狼狽する。
「その様子だと、ホントなんだ…………ウソだと思ってたのにな…………」
帽子で隠されイノの表情を推し量ることは出来ない………だが口調から
悲しさを伺い知ることは出来た……………



「ち、違うんです!」
「あたしのこと分かってくれていると思ってたのにな……………」
メイの弁解も、今のイノへは届きそうも無い……
「あのディズィーってコ、カワイイ声してたし、やっぱり年増のあたしなんかじゃ
だめか………………」
メイの心を罪悪感が覆う……裏切ってしまった、傷つけてしまった………
心底自分のことを最低だと思った。
そして、罪悪感により何も応えることの出来ないメイに対し、イノは言い放った。

「別れましょう………………………」

イノには、メイの顔が絶望に歪むのが分かった………だが
「………浮気した人を好きでいられる自身が無いわ………後でお互い傷つくだけなら
もう………今なら傷も少なくて済むわ……」

『何が起こっているの?』

メイには理解できないでいた。………恋人に全てを知られ、それにより別れを告げられる。
全て夢だと思いたかった………『別れたくない』『イノさんを引き止めたい』
そう頭で思っていても、言葉が出ない。
そして、メイは聞いてしまう……………残酷な現実を

「ありがとう、短かったけど楽しかったよ……………………さよなら



メイシップ………………
「あっ、お帰りなさい……デートどうでした?」
「………………………………どうして………?」
悪びれることも無く、問うディズィーに対しメイは問い詰める…………
「あら、だって恋人同士に、隠し事は駄目じゃないですか………だから気を
利かせたんです」
そう言い放つディズィーからは罪悪感も何も感じられない………むしろ
メイの反応を愉しんでいるようだ…………
「……………ひどい………………」
全てを失い、心も体もボロボロのメイは、涙を浮かべる………………

「酷いのはあの人ですよ……………一回の浮気位で………私なら……私なら
メイさんを幸せにしてあげられます……だから!」

ディズィーはそう言うと、メイをおもいきり抱きしめた。



歪んだ愛情とはいえ、メイに受け入れることが出来たなら、話は違って
いたのかもしれない……………

「………………………もう、イヤ…………離して!!」

どうしても受け入れることが出来なかった……メイはディズィーを
突き飛ばした…………
「なんで!なんでなの!?…………どうして酷いことするの!?………
嬉しくないよ!………ディズィーはボクから幸せを奪っただけじゃない!!
それで好きだなんて言わないで!!」

そう言い放つと、メイは部屋から飛び出した………

「…………………………………ふふ………あはははははははは」
メイから別離とも言える言葉を投げかけられたディズィーは急に笑いだした。
「……やっぱり、やっぱり私じゃ駄目だったんだ………あはは………馬鹿
みたい、結局メイさんを傷つけただけなんて………」
ディズィーは自分が滑稽でならなかった。それと同時に最低だと思った……
最愛の人をもっとも卑劣な手で傷つけてしまったのだから………

「……ねぇ…ネクロ、ウンディーネ………笑ってよ……馬鹿な私を笑って?
………お願い………………」
そう言い放つディズィーの視界が涙で歪む………………
「…………ゴメンナサイ…………ゴメンナサイ………メイさん」
ディズィーには、もう謝ることしか出来なかった…………



イノは自分の気持ちが吹っ切れていない事にイラついていた………
それと同時にメイとの思い出が、溢れて辛かった。
「…………メイ……」
イノはそう呟くと、メイと一緒に撮った写真を見やった………
『愛しい…………………』
それしか浮かばなかった。だからこそ辛かった………メイが自分を差し置いて
他の子とエッチをしてしまったという事実が。
「……ずるいよ…他の子としちゃうなんて……………」
イノの目には涙が浮かんでいる……自分から別れを切り出したとはいえ、あまりに
辛すぎる別れだった。
メイの笑顔が見たい・笑い声が聞きたい………もう一度会いたい…………
ただ純粋にそう思った。

「!?」

その時イノの携帯が鳴り出した、感傷に浸っていたイノはすこぶる驚き、
掛かってきた番号を見る………………表情が凍りついた………
今一番見たくなかった番号……決して忘れることのできない番号…………

電話はディズィーからだった……………………


「今さら、何の用?」
ぶっきらぼうにディズィーに尋ねる。
二人は今メイシップの甲板で向かい合っている、イノは正直ディズィーに
会いたくなかった。自分から幸せを奪った女………おそらく呼び出した
用件によっては『この女を殺してしまう』とまで思っていた。

すっかり日は落ち、二人を照らすのは月の光だ…………心なしかディズィーの
表情がかげっているのは気のせいか。

「………………駄目なんです………私じゃ…………………」

黒い感情を胸にやってきたイノは耳を疑った……イヤ正確にいえば何を言ったのか
理解出来なかった、といった方が正しいのかもしれない。
頭の整理がおぼつかないイノを尻目にディズィーは続ける………

「………傷つけちゃったんです……………好きだったのに…………もう……
私じゃ駄目なんです………イノさんでなければ……」

イノがメイの事だと気が付くのに、そう時間は掛からなかった。それと同時に
黒い感情が涌き出る。



「結局自分じゃ駄目だから、あたしに押し付けるってワケ?」
「ち・違いま………」

甲板に乾いた音が鳴った………ディズィーが弁解をする間を与えず、イノは
彼女の頬を叩いた。
「ふざけないで!!あなたがあたし達に何をしたか分かってるの!?……
その上都合が悪くなったら、押し付けるの!?」
イノの心の底にたまった感情があふれ出る………だが
「………………ゴメンナサイ………ゴメンナサイ……」
そう呟き、うな垂れるディズィーを見たとたん、イノを支配していた黒い感情
が収まる………理由を聞かれたらこう答えただろう。
『昔のあたしとそっくりの目をしていたから』………と

「……………ごめんなさい、手荒なことして」
素直に出た言葉だった。
「……いいえ………それだけの事しましたから…………メイさんのこと
お願いします……………」
自分が叩かれたことなど、二の次にディズィーはメイのことを懇願する
「………分かったわ」
そのディズィーの態度に動かされたのかイノはディズィーの願いを聞き入れた。

「…………あたし達、もっと違う形で会ってたなら……友達になれたかもね……」
イノはそう言うと、その場を後にしメイの部屋へと向かった……



………とは言ったものの、イノはメイの部屋で自問自答していた。
『どうしよう…………』と
すっかり夜もふけ、メイは寝床の中で寝息を立てている。寝顔がおさない……

「可愛いな………………って違う違う……どうしよう」

イノはこの状態での自分の身の振り方に悩まされていた。メイの部屋まで来た
はいい………問題は夜明けまで自分はどうしたらいいのか?ということだ、
メイを起こそうか?………駄目だ、そんなこととても出来ない。
本でも読もうか?…………あたし、本は苦手だ……
音楽でも聴いていようか?……メイが起きちゃう………

数多の方法が思い浮かんでは消えていく…………そしてイノは一つの結論に達した。

「…………………………………寝よ」

―夜明け―
「…………う………ん」
いつもより早く目を覚ましてしまった。………………あんなことがあったせいだ。
イノから別れを告げられ、ディズィーに別れを告げる……最悪の一日だった。
目が覚めたら全てが夢であってほしかった………
だが現実は厳しい……メイは思い知った、昨日のことは夢などではなく全て現実
だったのだと。



辛い現実に耐えられず涙を浮かべたとき、メイはやけにベットが狭苦しいことに
気が付いた。原因を探るため寝返って後ろを向く。

「…………え?」

そこには見慣れた姿があった。もしもこの『見慣れた姿』がクルーの誰かだった
ならメイはここまで驚かなかっただろう。だがベットで寝ていたのは紛れも無く
イノ本人であった。
(え?え?なんで?どうして!?………?)
混乱した、何故イノが自分のベットに眠っているのだろうか?昨晩の記憶………
確かに一人で寝床に入った。にもかかわらず起きたら寝床に一人増えている、
しかも相手はほんの数時間前、別れを告げられたばかりの恋人…………
混乱するなという方が無理である。
「……痛!」
頬をツネル……夢じゃない。
「夢じゃないんだ……………イノさん……」

やけに胸が高まる、別れたといってもお互い納得しないままの別れであったし、
なによりもメイはイノの事が好きだ。良からぬ思いが胸をよぎる。

『………ってそんなこと出来るわけ無いじゃない!!ボクの馬鹿馬鹿!!……
けどイノさんの寝顔って可愛いな……』




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