忍者ブログ
Admin*Write*Comment
うろほろぞ
[1]  [2]  [3]  [4]  [5]  [6]  [7]  [8]  [9
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

jm

 1.邂逅



「――!」
 父さまがさけんだとたんにアタシの目がすごくいたくなって、赤くなった。あんまりいきなりだったからおどろいて、目をぱちぱちとつむった。
 そうしたら次は母さまの手をにぎっていたアタシの手がぬるぬるとして、気もちわるくて、アタシはうっかり母さまの手をはなしてしまった。さっき、父さまがぜったいにはなすなと言った母さまの手を。

 多分、それがだめだったんだと思う。

 どんってせなかをおされてアタシはころびそうになった。でもころばなかった。がんばったんだけど、こんどは父さまと母さまがどこにいるのか分からなくなっちゃった。だって目は赤いまんまだし、手ははなしちゃった。
「――!」
 母さまがアタシの名前を言ったけど、なんだか小さくてどこにいるのか、やっぱり分からなかった。
「父さま、母さま?」
 アタシが呼ぶと、父さまがこたえてくれたんだけど、とてもこわい声だった。
 それから、だれかがアタシの手をもった。強い力だったから父さまかなって思ったけど、父さまよりずっとずっと痛かった。さっきから父さまとけんかしている人だって思った。こわくなった。
 手をおもいっきりふると、すぐに強い手はなくなった。良かったけど、父さまと母さまのところは分からなかった。また、こわいひとがくるんじゃないかって、ずっと手を回してると、父さまが大きな、こわい声で言った。
「走れ!」
 はしれ。ここから走れ? 父さまと母さまといっしょじゃなくて? アタシひとりで?
「お願い走って! 貴方一人で! 父様と母様はいいから!」
 ……うん。
 母さまのかすかすした声もきこえたから、アタシはこわかったけど走ることにした。

 まだ目がよく見えなかったから、とにかく走った。ときどきだれかにぶつかってこわいことを言われたけど、とにかく走った。




 走りすぎてつかれちゃったときには、父さまも母さまも、それからこわい人たちもいないみたいだった。
 すわって、見えないここはどこだろうと思うと、水がアタシのかおに当たった。
「……あめ?」
 やっぱり、雨だった。だんだん雨はいっぱいふってきて、アタシはずぶぬれになっちゃった。
 ぬれてさむいよって言ったんだけど、父さまも母さまもいない。
 ……たぶん、あのこわい人たちにもってかれたんじゃないかなっておもう。アタシがされたみたいに、手をとられて。やられちゃったのかもしれない。きっと、アタシが母さまの手をはなしちゃったから。
 アタシが、母さまの手をはなさなければよかった。ううん、アタシが強かったらよかった。あのこわい人たちより強かったら父さまも母さまも今アタシといっしょにいるんだと思う。
 父さまがむかし、アタシが男の子だったらよかったのにって言ってた。アタシが男の子だったら強くなったのにって言ってた。

 ……だったら、アタシが男の子だったらよかったのかな。
 アタシが男の子だったらうんと強くなって、あのこわい人たちもやっつけちゃって、父さまと母さまもいっしょにいられたかな。
 女の子だから。
 女の子だから父さまも母さまもいない。

 なんだかとってもかなしくなって、アタシは雨といっしょに泣いた。




「ベイビィ」
 よく知らないことばをきいた。あたってた雨が、当たらなくなる。目のまえに、だれかいるのかな。
 赤くていたかったからずっととじたまんまだった目をひらいてみたくなった。ひらこうとしたら、すぐにひらいた。
 とってもひさしぶりに見たのは、ぜんぜん知らないまちと、ぜんぜんしらない黒い人だった。
 目のまえに、黒い人が立ってる。黒い人は、目をめがね――さんぐらすって言うんだ――にして、黒いふくと黒いおぼうし、それから金色のかみの男の人。金色のかみがへんだなって思った。でも、おひるのお日さまみたいだなって思った。
 黒い人は、かさをもってた。うえにかぶせてくれてた。
「ベイビィ、そんなずぶ濡れになっちゃいけない」
 べいびぃってなんていういみなんだろうって思った。
 でも黒い人が言うのは、すごくあったかくて、父さまみたいだって思った。
 父さまはどこに行っちゃったんだろう。男の子じゃないアタシはあのこわい人たちをやっつけてやれなかった。
「おんなのこがいやなの」
 雨にあたってるとき、ずっとそれをかんがえてた。
 男の子だったらよかったのにって。
 黒い人はちょっとあたまをうごかした。
「何故だい?」
「おんなのこはだめなの。こわい人をやっつけれないの。こわい人をやっつけないと、父さまと母さまがいなくなっちゃうの」
 かおはきっとは雨と泣いたのでぐしょぐしょになってるんだと思う。

「……『ボク』が強くならなくちゃいけないの」

 黒い人に言うと、黒い人はかおをへんにして、それからかさをもったままなのに、もういっこの手でボク、をかんたんにもってしまった。
 ボクは、こわくなかった。この人はこわくなかった。たぶん、父さまとおんなじみたいだからだと思う。

 父さまと母さまはどこに行っちゃったんだろう。
 ボクが強くなって、こわい人をやっつけてあげたい。
 そうしたら、いっしょになるよね。



PR
smj

貴方がいないのが悪いの
私が独りで泣いているのに









「ジョニー」






「私は、もうボクじゃないんだ」






いつまでも
貴方は
私を子供のように見ていて







「愛してる」









何度も

何度も




そう告げて













「ごめんね、ジョニー 私はもう一緒にいられない」











好きな貴方を置いていくの








「メイ」


「私はソルと一緒に行くんだ」








「そしてボクはジョニーといつでも一緒にいる」













子供のボクを貴方に残して



大人の私はソルと共に










「ジョニー、大好き、ずっと愛してるよボクは」







「でも私はソルを愛してる」














さようなら初恋の人

私はボクと貴方を置いていくの


もう振り返らずに













「俺も、愛してるよメイ」






















好きでした、ずっとずっと







jmm
あの時からジョニーは僕の騎士様なんだよ。

『夕ご飯までには帰ります。メイ』
こっそりと台所の机にメモを置いて船を出る。
今日は買い物当番でもお手伝い当番でもないから一寸位いいか。
最近ジョニーは船を空けがちだ。
僕は一寸悲しい。
ジョニーの顔が見れなくて声が聞けないのが悲しい。
だから今日はジョニーを探しに行くんだ。
「あなた、ジャパニーズね…?」
突然目の前に赤い帽子のおねえさんが現れる。
…ジョニーの好みってこんな人なのかなぁ…?
色っぽいってこう言う事なのかな?
でもそれより気になった事がある。
「じゃぱ…?」
僕がきょとんとしていると女の人は苛立った様に嫌な感じになった。
よくわかんないけど、なんか闘うみたいだ。
「ふん…!!あんた自覚無いの?」
突然の衝撃に碇を前に持ってくる暇さえなかった。
「きゃっ!!」
思わず出た悲鳴に女の人が舌なめずりしている。
「ふふふ…まぁいいわ……。思わぬ収穫物ですもの…あの方もよろこぶわぁ…」
ウットリした目だ。
…えー…!!ちょ…まってよ…!!じゃ何とかって何!?
僕このままつれてかれちゃうの!?
攻撃は止まらない。
僕もイルカさんの力を借りたり色々攻撃したり抵抗してる。
してるんだけど…。
僕は此処で負けらん無いのに!!
「んっんー…そこでグレートに俺様が登場って訳だ」
聞きなれた声に僕は振り返った。
「駄目だぜぇメイー。…全くとんだじゃじゃ馬姫さんだなこりゃ」
サングラスと帽子を直してひょいと僕に近づくとジョニーは僕を軽く小突いた。
「お説教は後でだ。…とりあえず共同戦線、いっとくかい?」
偶然でもいいよ、ご都合主義でもいいよ。
僕はこうやってジョニーのそばに居られればいいんだもん!!
怒られたって、意味もなくじゃなくって愛があるからなんだから!!
僕は笑顔で頷いた。





jm
「お譲ちゃん、親は如何したんだい?」
少女は下げていた瞳を上げ、潤みを掌で擦る。
其処には黒い帽子、コート、サングラスに長い金髪という男が膝をおって彼女の前に居た。
言葉は出てこなかった。
出せないのではない。
日本という、軟禁状態の国から辛うじて両親と出てきた矢先に少女は一人になった。
目の前で両親はギアに殺された。
其処に颯爽と現れたのがこの男だったのだ。
首を二度大きく振る。
口を開き懸命に何かを言おうとしているが言葉は発声されなかった。
どうして欲しいかも、どうなっているのかも何も言うことが出来なかった。
いうことが出来ないほど少女には恐ろしかった。
そして只泣いた。
男は優しく少女の頭を撫で、男の船らしき所につれてこられた。
状況もよく解らないまま少女はダイニングに連れてこられて暖かいココアを出された。
少し呑む。
そして少女は号泣した。

それ以来少女は尊敬以上の感情を男に向けるようになっていた。
船に居るのは皆似た境遇の少女達だった。
故に彼女達はすぐ打ち解けた。
少女の感情を笑いながらも、皆応援してくれる。
少女が此処に来たのは五月五日のことであった。





「ジョニー!!」

その日、ジョニーは大分怪我して帰ってきた。




.......リベンジ





ボクが駆け出すと、ジョニーはボクの頭をくしゃくしゃとかき回して苦しげに笑う。
「なかなかデンジャラスな輩に出会っちまってね」
自慢のコートは刃に切り刻まれ、ところどころ切り傷が出来ている。

服が切られても寸前でかわした、ということなのだろうか、それとも。



まさかジョニーが誰かと戦って負けたということなのだろうか。―――それだけは信じたくなかった。



ボクが心配のあまりボロボロになった服に手を伸ばすと、ジョニーはまたボクの頭をくしゃっと撫でた。
「そういう訳だが、悪いが換えの服を」
「ジョニー、誰にやられたの」
ボクの声が遮った。

随分強い口調で、ジョニーをも黙らす低さで、ボクの声がジョニーを少し突き刺した。

「お前……」
「ジョニー負けたの?」

下から鋭く睨んだ。


ボクは悔しかったんだ。



あのジョニーが負けたってことじゃない。
あのジョニーを、これだけ無様に仕立てあげたやつがいるってことが。



ボクはそこに置いてあった碇を思いきり担ぐと、ジョニーの来た道を走り始めた。
「お、おい!」
ジョニーの声はもう大分遠くなっていた。


金髪の青い服の剣を持った男がメイシップをまだ見ていた。


「お前! よくもジョニーを!」

ボクは碇を振り下ろして、戦いの幕を切り開いた。



  • ABOUT
うろほらぞ
Copyright © うろほろぞ All Rights Reserved.*Powered by NinjaBlog
Graphics By R-C free web graphics*material by 工房たま素材館*Template by Kaie
忍者ブログ [PR]