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4.お茶会


 柔らかく、湯が流れる音がする。
 クッションの傍らで座り込みながらエデが茶の支度を進めていた。洗練された、何の淀みもなく動くその姿は、思わず見惚れるような美しさだった。

 普段なら茶の支度はベルッチオの役目だった。だから珍しくエデが進んで茶を煎れるというのだから、伯爵は彼女が何か想う所があるのだろうと緩く考えた。やがて慎ましく東洋の湯のみを白魚のような手で差し出される。湯の色は、どこまでも透明な金色。東方宇宙の茶特有の淡く、それでいて濃厚な香りは…伯爵の知らないものであった。
「………これは?」
「桃花茶と言って、古代宇宙での秘茶です。毎年、決められた最高級の桃の実を100日の間干して乾かし、茶の葉と化せしめるのです。」
 ほぅ、と感心したような呟きを一つ。そしてゆらゆらと陶器の湯を揺らす、まるでワインか何かを楽しむように。エデはさり気なく、伯爵のそんな様子を幸せそうに眺める。彼女は飲み物を飲んでいる伯爵がとても好きだった。伯爵はもう眠ることも無く、食事を取ることも無い。人として当然のことが無いということは、とても哀しいことだから。だから、せめて、と。いつも主には「せめて」「せめて」でしか、力にはなれないのだから。

 エデは微笑みながら、目の前の主人に、心の中で呟く。
 あなたの御友人が、これ以上あなたを切り裂きはしないよう。どうか、わたくしの気休めを、お許しください。
 …伯爵、桃花茶には、飲用した者に降りかかるあらゆる不幸を追い払うことが出来るそうですよ?

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 伯爵が飲んで消えないかだけ心配です。


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