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ふと、背後が静かになったことに気づいた。
後ろを見遣れば少女はくうくうと眠っていて、孫市は苦笑する。果たして自分は何刻ほど考え込んでいたのか、と。
参陣要請は織田軍と争っている一揆衆からだった。引き受けたからには任務を遂行しなければならないが、如何せん、現状が分からないときた。一刻も早く大坂に入って探らねぇと、と思考に耽っていたのだ。
孫市が策をめぐらせているとき、ガラシャは基本話しかけてこなかった。その場を離れるか、あるいは側にいてじっと黙っている。
賢い少女だと思う。手間の掛かる子どものくせに、こういうときは大人以上に聡いので孫市は調子が狂う。どう扱っていいのか分からなくなるときがあるのだ。

んん、とガラシャが身じろぎしたので孫市は思わず構えたが、ガラシャはそのまま寝返りを打っただけだった。その様子に詰めていた息をそっと吐き出す。
飯に誘おうと思っていたのに困ったな、と内心呟いた。なんとなく起こせないではないか。
畳の上をにじり寄って、こちらを向いて横になるガラシャを見下ろす。眠りから呼び覚ましても怒らないで、むしろ早く食べに行こうと喜ぶかもしれないが、孫市はそれをせずに息を殺してただ見つめていた。

迷うということを孫市はしないようにしている。それは傭兵であるためであったけれど、戦国乱世に生きる者はみな心がけているかもしれない。一瞬の判断が命を揺るがすことを、体が理解しているのだ。
だからこそ、ガラシャをどう、というか、大人と子どものどちらに扱うべきかが分からないとき、孫市は決まって後者を選んだ。
(あと少ししたら、起こしてやるか)
頬の白さも唇の赤さも全て無視して判断を下す。その一瞬を誤れば命が揺らぐのだけれど、実際は、もう揺らいでいるのかもしれなかった。


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