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意識が覚醒してきて真っ先に思ったのは、腹が減った、ということだ。
腹が減るのは駄目だ。腹が減っては戦もできぬ、身体も動かぬ、女も抱けぬの三重苦。

「はら、へったな」

思わず出た声は寝起きにしては掠れていた。予想外だ。天井から左へと目を向けるとなぜか桃の山。右へと向けるとなぜか目を丸くしたお嬢ちゃんがいた。あれ、お嬢ちゃん?うそだろ本物?これこそ、予想外も予想外だった。

「…なんでいるんだ?」
「桃ならあるぞ」

質問は綺麗に華麗に無視された。俺はあれだけ答えてやってたのに、と恩を仇で返された気分になったが、これ以上声を出すのも億劫だったので頷くことで肯定した。
いつもの手袋を外した、白くて細っこい腕が顔の上を通って桃の山をひとつ崩す。ご丁寧に皿と包丁も用意されていて、ガラシャは意外と手際よく林檎の要領で桃を剥いていく。
白い腕を持つ少女は顔も白かった。白いというか、青白い。疲れているように見えたし、眠っていないようにも見えた。どこか具合でも悪いのだろうか、そういえば。孫市は眉間に皺を寄せる。こんなに喋らない彼女も珍しい。

「どうした。顔色が、悪い」
「……」
「お嬢ちゃん?」
「ひとの心配を」

剥き終えた桃と包丁を皿に置いて、ガラシャは視線を孫市に落とした。涙も落とした。しぼり出す声すら涙にぬれる。

「わ、わらわの心配をする前に、自分の心配をせよ」
「え」
「起きた途端、腹減ったって…何なのじゃ、どれだけ、心配したと…」

自分は一体どれほど眠っていたのだろう。
手が桃の汁でぬれているためぬぐうこともできず涙を流し続けるガラシャに、孫市は眩しいものを見るかのように目を細めた。
桃よりも、空腹の欲求は彼女がいれば満たされる気がするのだ。

動かない手が憎い、なんて。




^^^^^^^^^^^^^
「あなたが倒れたと聞いてあの子が行くと言って聞かないものですから一緒に来てみれば一向に目を覚まさないので塞ぎこんでしまって、目覚めたときに食べられるよう桃でも用意しておいたらどうですと言ったらその日からあなたがいつ起きても食べられるように桃を毎日用意するものだから、腐ってしまうと勿体無いのでその前に食べてしまおうとここ最近食後にはあの子の剥いた桃が出るようになってました。だけどそれでもあなたは一向に目を覚まさないので日に日に消沈してしまって見ている私も心苦しく、周りが雑賀殿は大丈夫かと言うと必ず大丈夫だと答えるのに不安になってくるのか私にだけは『父上、孫は大丈夫かのう』とたずねてきたりして嬉しくもありあの子が心配でもありいっそあなたをそこの川に流してしまおうかとも思いましたが…
ようやく目が覚めたのですね」
「………」
「どうかしましたか?」
「…アンタ、意外と親馬「そんなに川に流されたいなら今すぐ叶えてあげましょう」



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