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れが案外希少だと気づいたのはいつだったか。



「さっきのヤツどう思う?」

たった今後にした村で、一番か二番目に大きい家の息子だった。
ニ日の滞在でガラシャと仲良くなったらしい。別れ際に花を一輪差し出した、ませたガキだ。ガラシャは左手に持っていたその花に目を落とした。

「やさしかった」
「…俺には優しくなかったけどな」

村にずっといてほしい、と言う少年に、いくら乱世とはいえ明智家の息女がこの村にずっといれるわけないと知っている孫市は傍観に徹していたが、ガラシャが「孫が行くからわらわも行く」と返したので、おいおい俺のせいかよと思ったら案の定、きつい視線を向けられたのだ。
少年よ、それは告白を流された八つ当たりというものだぜ。

「孫は、理由にされて嫌だったか?」

流した当の本人はその事実を分かっているのかいないのか。

「別に嫌じゃねぇよ。だからそんな顔すんな」

額をぴんと弾いてやると口を尖らせた。ぎゅう、と握りこまれた花がなんとなく、本当になんとなく不満で、孫なんて嫌いじゃとぶつぶつ言うのを無視してその花を掠め取る。

「なに」
「いいから」

取り返そうと伸びる両腕を片手で押し留めて、手にしたそれを少し迷ってから、髪飾りのそばに挿す。ガラシャの文句はぴたりと止んだ。白い花は驚くほど彼女の赤に映えた。
うし、いい仕事した俺、と孫市は満足げに頷く。ガラシャが花のある辺りへと手をさまよわせるので、「ここだ」とその手を持っていってやれば、孫市を見つめる大きな目がふ、と細められた。

「やっぱり孫は好きじゃ」

そう、花のように笑う。その言葉が両親以外に使われるのは自分くらいだということに気づいたのはいつだったか。懐かれたなぁと思った。案外、こういうのも悪くない。
「褒めても何も出ないぜ」なんて、冗談を言うと案の定、ガラシャは首を振って否定した。

「わらわが好きと言いたいだけなのじゃ」

あ、やっぱり悪い。
不意打ちはダメだろう。前触れなく襲う理屈じゃないその感じを、俺は確かに知っている。
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